
「債務超過だけど、技能実習生の受け入れを続けたい」「企業評価書をどう書けば審査に通るのかわからない」──解体工事業・内装工事業の経営者から、こうした相談が後を絶ちません。
建設業のなかでも、解体業と内装業は資金繰りが悪化しやすい業種構造を持っています。元請依存・入金サイトの長期化・外注費の先行支払いが重なり、決算上は債務超過に陥る企業が少なくありません。しかし、債務超過だからといって、必ず不許可になるわけではありません。
本記事では、中小企業診断士の視点から、解体工事・内装工事に特化した企業評価書の書き方・通過戦略・改善計画の設計方法を、具体的な事例やテンプレートとともに解説します。
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なぜ解体・内装工事で企業評価書が問題になるのか

企業評価書の制度上の位置づけ
外国人技能実習生や特定技能外国人を受け入れる建設企業は、技能実習制度・特定技能制度の要件に加え、国土交通省が定める「建設特定技能受入計画」の認定を受ける必要があります。この認定手続きのうち、債務超過企業にとって中核となる書類が「企業評価書」です。
企業評価書とは、受入企業の財務状況・経営の安定性・技能実習の実施体制を第三者の専門家が評価し、書面にまとめたものです。とくに債務超過の企業に対しては、改善の見通しや事業継続性について厳格な記載が求められます。
解体・内装工事業に特有の経営構造
建設業全般に企業評価書の問題はありますが、解体業と内装業には、債務超過を招きやすい業種特有の構造があります。
| 特徴 | 解体工事業 | 内装工事業 |
|---|---|---|
| 元請依存率 | 高い(ゼネコン下請が中心) | 高い(ゼネコン・ハウスメーカー下請) |
| 案件単価のブレ | 大きい(物件規模に依存) | 大きい(テナント規模で変動) |
| 工期の特性 | 短期・スポット型の案件が多い | 短期〜中期、繁閑差が大きい |
| 入金サイト | 60〜90日が一般的 | 60〜120日も珍しくない |
| 外注費の構造 | 重機リース等が先行 | 資材・職人手配が先行 |
なぜ債務超過が多発するのか
解体・内装業では、「先に費用が出て、入金は後」というキャッシュフロー構造が一般的です。具体的には次のような流れになります。
- 外注費・資材費の先行支払い:工事着手時に重機レンタルや資材購入が必要
- 入金サイトの遅延:元請からの入金が60〜120日後
- 季節変動:解体は天候、内装はテナント入替時期に左右される
その結果、帳簿上は利益が出ていても、決算タイミングでは債務超過に見えるケースが多発します。さらに、設備投資や人材採用にかかる借入が重なると、純資産のマイナスが常態化する企業も珍しくありません。
こうした構造的な問題を理解したうえで企業評価書を作成しなければ、審査で的外れな評価となり、不許可のリスクが高まります。
債務超過でも通る解体・内装業者の特徴

結論から言えば、債務超過でも企業評価書の審査は通ります。ただし、通過する企業には明確な共通点があります。
通過企業に共通する3つの条件
| 条件 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ①案件確保力(受注残) | 今後の売上が見込める受注残高があること | 契約書・注文書など、書面で裏付けできること |
| ②原価管理の改善余地 | 外注費や材料費を削減できる具体策がある | 数値ベースで改善幅を示すこと |
| ③継続性の裏付け | 事業が将来にわたって続けられる根拠がある | 取引先との継続契約・公共工事実績など |
解体業の通過パターン
解体工事業で審査を通過する典型的なパターンは、公共工事や大手元請からの継続案件を持っているケースです。
- 自治体発注の公共解体工事の受注実績がある
- ゼネコンとの年間基本契約を締結している
- 特定エリアでの解体工事で安定したリピート受注がある
これらを「受注残一覧」や「取引先リスト」として書面化し、評価書に添付することで、審査官に対して事業継続性を示すことができます。
内装業の通過パターン
内装工事業では、テナント案件の回転率の高さが評価されやすい傾向にあります。
- 商業施設のテナント入替に伴う定期的な内装工事
- 不動産管理会社との継続的な取引関係
- オフィス移転・リニューアル案件の安定受注
とくに「同一の元請から年間を通じて複数件の受注がある」事実は、審査上の強い裏付けになります。
NGパターン──こんな企業は通らない
一方で、以下のようなケースは不許可になるリスクが高いです。
- 単発案件への依存:受注の見通しが立たず、売上計画に根拠がない
- 受注見込みが曖昧:「今後増える予定」だけで契約書等の裏付けがない
- 改善施策が抽象的:「コスト削減に取り組む」だけで具体的な数値がない
審査は「期待」ではなく「根拠」で判断されます。書類で証明できるかどうかが分かれ目です。
審査で見られる「解体・内装特有の評価ポイント」

企業評価書の審査では、単なる財務数値だけでなく、業種ごとの事業構造が正しく理解されているかが重要な評価ポイントになります。
審査官が重視する2つの視点
審査官は、大きく分けて「工事の継続性」と「労務確保の安定性」の2つの観点から企業を評価します。
- 工事継続性:今後も安定的に工事を受注できるか。受注残や元請との関係性が鍵。
- 労務確保:外国人材を受け入れる体制が整っているか。安全管理・教育体制が問われる。
解体業で特に見られるポイント
| 評価項目 | 具体的に見られる内容 |
|---|---|
| 許可関連 | 解体工事業登録または建設業許可(解体工事業)の有無 |
| 安全管理体制 | 安全衛生責任者の配置、石綿(アスベスト)対策の実施状況 |
| 施工実績 | 過去の工事件数・金額・発注者の属性(公共/民間) |
解体工事は危険度が高い業種として認識されているため、安全管理体制の記載が不十分だと、経営面で問題がなくても指摘を受ける可能性があります。
内装業で特に見られるポイント
| 評価項目 | 具体的に見られる内容 |
|---|---|
| 元請との関係性 | 主要取引先との取引年数・契約形態(年間契約の有無) |
| 継続受注構造 | リピート率・定期案件の有無・受注の安定性 |
| 施工管理体制 | 施工管理技士の在籍、品質管理の仕組み |
内装業は解体業に比べて許可要件のハードルは低い一方、「なぜ安定的に受注できるのか」を説明する力が求められます。
重要KPI──数値で示すべき3指標
審査を通過するためには、以下の3つの財務KPIを企業評価書内に明示し、改善の道筋を示すことが重要です。
| KPI | 目安 | 意味 |
|---|---|---|
| 売上総利益率(粗利率) | 20〜30%以上 | 工事の収益性を示す最重要指標 |
| 外注比率 | 50%以下が望ましい | 自社施工力の高さを示す |
| 人件費比率 | 売上の20〜25% | 労務管理の適正さを示す |
これらの数値を過去3期分の推移で示し、改善傾向にあることを可視化すると、審査の説得力が大幅に増します。
債務超過の改善見通しの書き方(解体・内装特化テンプレ)

企業評価書のなかで最も重要かつ難易度が高いのが、「債務超過の改善見通し」の記載です。ここでは、解体業・内装業に特化した構成テンプレートを紹介します。
改善見通しの4ステップ構成
債務超過の改善見通しは、次の4ステップ構成で整理すると、審査官に伝わりやすくなります。
| ステップ | 記載内容 | 記載のポイント |
|---|---|---|
| ①現状 | 債務超過の金額と発生時期 | 決算書の数値をそのまま記載 |
| ②原因 | なぜ債務超過に至ったか | 業界特性と紐付けて説明 |
| ③改善施策 | 具体的な打ち手 | 業種に即した実現可能な施策 |
| ④数値計画 | 3〜5年の改善シミュレーション | 粗利率・純資産の推移を数値で示す |
解体業の改善施策(具体例)
解体工事業の場合、以下のような施策が審査上の説得力を持ちます。
- 外注費の削減:重機の自社保有への切替え、外注先の見直し・競争入札の導入
- 自社施工比率の向上:技能実習生の戦力化により、自社職人でカバーする工程を増やす
- 公共工事比率の引き上げ:入金が確実な公共案件への営業強化
内装業の改善施策(具体例)
内装工事業では、「単価の向上」と「取引構造の見直し」が主な改善軸です。
- 高付加価値案件へのシフト:デザイン性の高いオフィス内装・店舗内装へ軸足を移す
- 元請直受注比率の向上:下請から脱却し、利益率の高い直接取引を拡大
- 定期メンテナンス契約の獲得:フロー型中心の売上構造から、ストック型収益を組み込んだ構造へのシフト
数値設計の考え方
改善計画の数値は、「実現可能性」を最も重視してください。過度に楽観的な数値は審査官に見抜かれます。
目安となる改善幅
- 粗利率の改善:年間5〜10%の改善が現実的な範囲
- 外注比率の改善:技能実習生の受入により年間3〜5%の削減
- 債務超過解消の目標:3〜5年以内の解消計画が望ましい
NG例──こう書くと通らない
- ✕「売上増加予定です」→ 根拠となる受注残や契約書がない
- ✕「コスト削減に取り組みます」→ 何をいくら削減するか不明
- ✕「来期には黒字化する見込み」→ 数値の積み上げ根拠がない
審査官は「意気込み」ではなく「数値の整合性」を見ています。施策 → 効果 → 数値のつながりを一貫させてください。
評価書で差がつく「ストーリー設計」

なぜストーリーが重要なのか
企業評価書は単なる数値の羅列ではありません。審査官も人間です。「この企業は今後やっていけるのか」を判断する際、数値とともに経営のストーリー(物語)が伝わるかどうかが、合否を分けるポイントになります。
とくに債務超過の企業では、なぜそうなったのか、今どう立て直しているのか、将来どうなるのか──この「過去 → 現在 → 未来」の一貫した流れが求められます。
良いストーリーの構造
| 時間軸 | 記載する内容 | 審査官に伝えるメッセージ |
|---|---|---|
| 過去 | 債務超過に至った経緯と原因 | 「原因を正しく認識している」 |
| 現在 | すでに着手している改善策 | 「手をこまねいていない」 |
| 未来 | 数値に裏付けられた改善計画 | 「具体的な見通しがある」 |
解体業のストーリー例
- 【過去】大型解体案件の追加費用(アスベスト除去の想定外発生)により、前期に一時的な損失を計上。これにより純資産がマイナスに転落。
- 【現在】損失の原因となった見積精度を改善。事前調査の徹底により、追加費用リスクを低減。加えて、自治体発注の公共解体案件を2件受注し、安定収益を確保。
- 【未来】技能実習生の受入により自社施工比率を現状の40%から60%へ引き上げ。外注費を年間約500万円削減し、3年以内に債務超過を解消する計画。
内装業のストーリー例
- 【過去】コロナ禍によるテナント撤退が相次ぎ、内装工事の受注が大幅に減少。売上が前々期比で40%減となり、固定費の負担から債務超過に転落。
- 【現在】経済活動の正常化に伴い、商業施設のリニューアル案件が回復傾向。大手不動産管理会社との年間契約を新たに2社締結。受注残は前期比150%に増加。
- 【未来】高付加価値案件(デザインオフィス内装)への注力により、粗利率を現状の18%から25%へ改善。2年以内に債務超過を解消する見通し。
数値との整合性が命
ストーリーでどれだけ良いことを書いても、数値計画と矛盾していれば審査は通りません。たとえば、「外注費を削減する」と書いておきながら、数値計画上の外注費が減っていなければ、審査官は矛盾を指摘します。
ストーリーと数値は必ずセットで設計し、整合性を確認してください。
中小企業診断士が必要な理由

第三者としての客観性
企業評価書は、企業が自社で作成するものではなく、第三者の専門家による評価が求められます。この「第三者性」が担保されていなければ、審査上の信頼性が大きく損なわれます。
中小企業診断士は、国が認める唯一の経営コンサルタントの国家資格です。企業評価書の作成において、財務分析・経営戦略・事業継続性の評価を客観的に行う適任者として、制度上も位置づけられています。
経営視点からの評価が不可欠
企業評価書は、税務書類の延長ではありません。「この企業は今後も事業を継続し、外国人技能実習生を適切に受け入れられるか」という経営判断に関わる書類です。
そのため、単に決算書の数値を転記するだけでは不十分であり、経営環境の分析・改善施策の立案・数値計画の策定といった経営コンサルティングの知見が必要になります。
金融機関向けと入管向けの違いを理解する
企業評価書の作成では、金融機関(銀行)向けの事業計画書と混同しないことが重要です。
| 項目 | 金融機関向け | 企業評価書(入管・国交省向け) |
|---|---|---|
| 目的 | 融資の返済可能性を示す | 事業継続性と受入体制を示す |
| 重視される点 | キャッシュフロー・担保 | 経営改善の見通し・労務体制 |
| 審査する側 | 銀行の審査部門 | 出入国在留管理庁、国土交通省、OTIT(外国人技能実習機構) |
このように、求められる視点がまったく異なるため、入管・国交省の審査基準を熟知した専門家への依頼が不可欠です。
KICKの強み
当事務所(KICK)では、以下の点で他社と差別化した支援を行っています。
- 実務ベースの支援:単なる書類作成ではなく、経営改善の実行支援まで対応
- 債務超過案件の豊富な対応実績:解体・内装業界に特化した知見を蓄積
- 中小企業診断士が直接対応:下請けや外注に丸投げせず、有資格者が一貫して担当
解体・内装業の支援事例

事例:解体工事業A社の場合
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業概要 | 首都圏の解体工事業者/従業員12名/売上高約1.5億円 |
| 課題 | 前期決算で約800万円の債務超過。技能実習生の更新時期が迫り、企業評価書の提出が必要 |
| 対応 | 中小企業診断士がヒアリングを実施。受注残の整理・粗利率の分析・改善計画の策定を行い、企業評価書を作成 |
| 結果 | 審査通過。技能実習の継続許可を取得 |
通過のポイント
この事例で審査通過の決め手となったのは、以下の3点です。
- 受注残の「見える化」:契約書・注文書ベースで今後12ヶ月の受注残を一覧化
- 外注費削減の具体的施策:技能実習生の戦力化により、外注費を年間300万円削減する計画を提示
- 債務超過解消の数値ロードマップ:3年以内に純資産をプラスに転換させる段階的な改善計画を策定
重要なのは、「数値」「施策」「時間軸」の3つが一貫していたことです。審査官に対して「この企業は計画的に改善に取り組んでいる」という印象を与えることができました。
よくある質問(Q&A)

Q. 解体業で債務超過ですが、企業評価書は通りますか?
A. 通る可能性はあります。債務超過=即不許可ではありません。改善計画の具体性と受注残の裏付けがあれば、審査を通過した実績は多数あります。ただし、改善見通しの書き方が非常に重要になるため、専門家への相談を強くお勧めします。
Q. 内装工事業は技能実習・特定技能の対象ですか?
A. はい、対象です。「内装仕上げ施工」は技能実習の対象職種として告示されています。また特定技能についても、建設分野の対象業務の一つとして位置付けられています。
Q. 企業評価書はどのくらいの期間で作成できますか?
A. 資料が揃った状態からおおむね2〜4週間が目安です。ただし、債務超過の場合は改善計画の策定に時間がかかることがあるため、余裕を持って1〜2ヶ月前からのご相談をお勧めします。
Q. 費用はどれくらいかかりますか?
A. 企業の状況や債務超過の程度によって異なります。まずは初回無料相談にて、お見積りをご提示いたします。
Q. 税理士でも企業評価書は作成できますか?
A. 制度上、税理士が作成すること自体は可能です。ただし、企業評価書は税務ではなく「経営の評価」が求められる書類です。債務超過の改善計画や経営戦略の策定には、中小企業診断士の知見がより適しています。
依頼から納品までの流れ

| ステップ | 内容 | 所要期間の目安 |
|---|---|---|
| お問い合わせ | 電話・メール・フォームよりご連絡 | 即日対応 |
| 初回ヒアリング(無料) | 現状の経営状況・債務超過の有無・更新時期を確認 | 1〜3営業日 |
| 資料収集 | 決算書(3期分)・受注残一覧・契約書等をご提供いただく | 1〜2週間 |
| 評価書作成 | 財務分析・改善計画策定・企業評価書のドラフト作成 | 2〜3週間 |
| 納品・提出支援 | 最終版の納品。必要に応じて提出先への説明もサポート | 1〜3営業日 |
トータルで約1〜2ヶ月が標準的な期間です。更新期限が迫っている場合は、最短スケジュールでの対応も可能ですので、まずはお早めにご相談ください。
今すぐ相談すべき企業の特徴

以下に当てはまる企業は、早急に専門家へ相談することを強くお勧めします。
| チェック項目 | 詳細 |
|---|---|
| ✓ 直近決算で債務超過 | 直近の事業年度末で純資産がマイナスとなっており、そのため企業評価書の提出を求められている。 |
| ✓ 更新期限が3ヶ月以内 | 技能実習計画の更新時期が迫っており、準備が間に合わない恐れがある |
| ✓ OTITから指摘を受けた | 外国人技能実習機構から改善指導や是正勧告を受けた実績がある |
| ✓ 過去に不許可になった | 以前の申請で企業評価書が理由で不許可となった経験がある |
| ✓ 自社で作成したが不安 | 税理士や自社で作成したが、内容に自信がなく専門家のレビューを受けたい |
初回相談は無料です。解体業・内装業に特化した中小企業診断士が、御社の状況を丁寧にヒアリングし、最適な対応策をご提案いたします。
更新期限が迫っている場合は最短スケジュールでの対応も可能です。「まだ大丈夫」と思っているうちに期限を過ぎてしまうケースは少なくありません。まずはお気軽にお問い合わせください。









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