
宿泊業の会社が特定技能の受入れについて、加入している外国人技能実習機構(OTIT)に相談したところ、「決算内容に債務超過が見られるため、改善の見通しに関する評価書面を出していただかないと受入れは難しいです」と言われた。
債務超過の原因は、コロナ禍で受けたいわゆるゼロゼロ融資の返済負担にあります。帝国データバンクの調査によると、2025年度に業績が判明した全国の旅館・ホテル約3,800社のうち、債務超過企業の割合は28.6%に達し、コロナ前の2019年度(24.8%)を上回りました。
このまま企業評価書を用意できなければ、今いる特定技能・育成就労人材の継続雇用すらできなくなります。継続雇用できなければ客室を回すための人手を確保できず、客室を回せなければ売上は作れません。最悪の場合、会社そのものが立ち行かなくなります。
あなたの旅館・ホテルも、同じ状況ではないでしょうか。決して珍しいことではなく、多くの宿泊施設が同じ壁にぶつかっています。訪日需要が回復し、客室は埋まっているのに、手元の現金は増えない。そのギャップに戸惑いながら、日々の運営を続けている経営者は少なくありません。
この記事は、次のようなお悩みをお持ちの方に向けて書いています。
- ゼロゼロ融資の返済負担で、決算が債務超過になっている方
- 人手不足で、特定技能・育成就労の受入れを急ぎたい方
- 企業評価書を誰に頼めばよいか分からない方
- 受入れ審査に落ちるのではと不安な社長・総務担当の方
結論からお伝えすると、債務超過があっても、改善の見通しを客観的に示す「企業評価書」があれば、特定技能・育成就労の受入れは可能です。ただし、誰に何を作成してもらうかで結果は大きく変わります。
この状態を放置すれば、採用計画が遅れ、現場の人手不足がさらに深刻化しかねません。この記事では、宿泊業特有の事情を踏まえ、審査を一発で通す企業評価書の実務ポイントを整理しました。
- 宿泊業が債務超過に陥りやすい3つの構造的な原因
- ゼロゼロ融資返済でも特定技能を受入れる3つの秘訣
- 企業評価書を誰に依頼すべきか(顧問税理士では不可な理由)
- 受入れ後に手に入る、人手不足解消と資金繰り改善の未来
執筆者は、中小企業診断士・MBA(経営管理修士)であり、認定経営革新等支援機関(中小企業庁)として法人支援実績150社以上を持つKICKコンサルティング株式会社(銀座本社)代表・松本昌史です。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
宿泊業が「債務超過」に陥る問題の構造

宿泊業の債務超過は、単純な「売上不振」だけが原因ではありません。むしろ売上が回復しているのに債務超過が解消しないという、一見矛盾した現象が起きています。観光旅館、ビジネスホテル、リゾートホテル運営会社のいずれでも、同じ構造が見られます。
帝国データバンクによると、2025年度の旅館・ホテル市場全体の売上高は6.5兆円と4年連続で増加し、過去最高の見込みです。しかし、増収企業は32.4%にとどまり、減収企業の割合も2年連続で1割を超えるなど、経営の二極化が鮮明になっています。
2025年の宿泊業の倒産は89件(前年78件から14.1%増)、休廃業・解散は178件で、合計267件が市場から退出しました(帝国データバンク調べ)。とくに倒産・廃業の75.3%は三大都市圏を除く地方に集中しています。
東京都は増収企業割合が54.1%と全国最高水準である一方、地方や交通アクセスに課題を抱える施設ほど、円安によるインバウンド需要の取り込みが限定的だという指摘もあります(帝国データバンク調べ)。同じ「宿泊業」でも、立地と設備投資力によって明暗が分かれているのが実情です。
業界メディアでは、2026年下半期にホテル・旅館の倒産がさらに加速するとの見方も出ています。ゼロゼロ融資の返済負担に加え、清掃費・人件費の高止まりが重なり、体力の乏しい施設から順に資金繰りが行き詰まる構図が続くと見られています。「今は大丈夫」と感じている施設ほど、早めの対策が結果的に有利に働きます。
債務超過を引き起こす3つの原因
本質的な原因は、次の3つに整理できます。「頑張っているのに数字が良くならない」背景には、必ず構造があります。決算書だけを見ていても、この構造は見えてきません。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| ゼロゼロ融資の返済負担 | 2026年4月〜9月、コロナ借換保証を利用した企業の返済開始が最後のピークを迎えます(東京商工リサーチ調べ)。据置期間が終わり、元本返済が一気に始まる施設が少なくありません。 |
| 人件費・光熱費・原材料費の高騰 | 清掃費は1部屋あたり平均1.8倍に上昇し、電気料金も高止まりが続きます。人手不足による採用コスト・時給上昇も利益を圧迫します。 |
| 設備老朽化による改修負担 | 高単価・高付加価値志向の訪日需要に応えるには大規模改修が欠かせませんが、投資できない施設ほど競争力を失いやすい状況です。 |
この3つが重なると、「稼働率は悪くないのに現金が残らない」という状態に陥ります。これが、宿泊業特有の債務超過の正体です。
とくにゼロゼロ融資は、据置期間中は返済負担が表面化しにくいため、「まだ大丈夫」と感じたまま据置期間の終了を迎える経営者が少なくありません。据置期間が切れた瞬間に、月々のキャッシュアウトが一気に増え、決算の数字と手元資金の感覚がずれていきます。
放置すると起きること
この状態を放置すると、次の悪化シナリオが現実になります。
- 特定技能・育成就労の受入れ審査で企業評価書の提出を求められ、準備が間に合わない
- 金融機関との交渉が後手に回り、返済猶予・借換えの選択肢が狭まる
- 人手不足がさらに深刻化し、サービス品質が落ちて客離れが起きる
出入国在留管理庁は、直近事業年度が債務超過の企業に対して「改善の見通しについて評価を行った書面(企業評価書)」の提出を求めており、これがなければ申請は原則不受理になります。「知らなかった」では済まされない実務です。
さらに、観光庁の調査では、旅館・ホテル経営者の約3割が「事業承継をしたいが進んでいない」と回答し、約1割が廃業を検討していると答えています。黒字であっても後継者問題を理由に廃業する「黒字廃業」が地方の老舗旅館で目立つとの指摘もあり、財務体質の改善は事業承継の準備としても重要な意味を持ちます。
ゼロゼロ融資返済でも特定技能を受入れる3つの秘訣

宿泊業は構造的な人手不足が続いており、政府試算では今後5年間で約10万人が不足するとされています。令和7年12月末時点で、特定技能1号(宿泊分野)の在留者は2,207人にとどまり、政府は受入れ見込数を14,800人、育成就労を5,200人へと引き上げています(出入国在留管理庁)。人手不足の解消を先延ばしにする余裕はありません。
ここからは、債務超過があっても特定技能・育成就労の受入れを進めるための、実務レベルの3つの秘訣を紹介します。抽象論ではなく、今日から着手できる手順です。
秘訣① 自社の財務状況を正確に棚卸しする
まず取り組むべきは、ゼロゼロ融資の残高・返済スケジュール・据置期間の終了時期を一覧にすることです。「なんとなく厳しい」を、数字で見える化する作業が出発点になります。
具体的には、次の3点を1枚の資料にまとめることから始めます。
- 直近3期分の決算書に基づく、債務超過額の推移
- 借入金ごとの残高・金利・返済期日を一覧にした返済スケジュール表
- 月次の入出金を12か月先まで見通す資金繰り表
決算書だけでなく、直近の資金繰り表と合わせて確認すると、債務超過額と月次のキャッシュの動きが同時に把握できます。ここが曖昧なままでは、次のどの選択肢を取るべきかも判断できません。まずは現状を正確に知ることが、改善の第一歩になります。
秘訣② 返済負担を軽くする選択肢を検討する
コロナ借換保証やリスケジュール(返済条件の変更)は、金融機関が用意している正式な制度です。返済が厳しいまま放置するより、早い段階で金融機関に相談する方が選択肢は広がります。
日本経済新聞も、リスケジュールへの慣れが返済計画の甘さを招く弊害を指摘していますが、それは「相談しない方がよい」という意味ではありません。相談するタイミングが早いほど、改善計画の説得力も高まります。
検討の際は、次の観点を金融機関との対話の軸にすると話が進みやすくなります。
- 返済期間の延長により、月々の返済額をどこまで軽減できるか
- 据置期間の再設定が可能か(繁忙期・閑散期の季節変動を踏まえる)
- 複数の借入をまとめる借換えで、金利・手続きの負担を圧縮できるか
これらの選択肢は、いずれも「返済できません」という相談ではなく、「こう改善して返済していきます」という改善計画とセットで提示することが前提になります。数字の裏付けがない相談は、金融機関にとっても判断が難しく、結果的に交渉が長引く原因になります。
秘訣③ 改善の見通しを裏付ける企業評価書を第三者に作成してもらう
秘訣①・②で整理した数字を、そのまま在留資格の申請書類に使うことはできません。出入国在留管理庁が求めるのは、客観的な第三者による評価だからです。
この評価書面(企業評価書)を作成できるのは、中小企業診断士または公認会計士に限られます。顧問税理士に相談しても、税理士単独では要件を満たさない点に注意が必要です。
宿泊業の企業評価書では、一般的な財務指標に加えて、稼働率・客室単価(ADR)・季節変動といった業種特有の数字を、改善計画の根拠として組み込む必要があります。繁忙期と閑散期の落差を無視した計画は、審査官から見て説得力を欠いてしまいます。
KICKコンサルティングでは、宿泊業の企業評価書作成支援を通じて、決算の実態と改善計画を客観的に整理し、審査に耐えうる書面に仕上げます。
相談したからといって、必ず契約しなければならないわけではありません。まずは今の数字を一緒に確認するところから始められます。費用は一切かかりません。
企業評価書を整えた先に、手に入る未来

企業評価書を整え、受入れ審査の土台を整備すると、経営には次の3つの変化が生まれます。これは単なる書類作成の成果ではなく、経営そのものの体質改善につながる変化です。数字・時間・関係性という3つの軸で、変化を具体的に見ていきましょう。
人手不足という数字の変化
特定技能・育成就労の受入れが進めば、フロント・清掃・レストランサービスなど、慢性的に人手が足りなかった業務に人員を配置できます。採用計画の遅延という不安から解放されるのが、最初に実感できる変化です。政府は宿泊分野の特定技能1号の受入れ見込数を14,800人、育成就労を5,200人と設定しており、業界全体で受入れ体制が広がっていく局面にあります。人手が確保できれば、既存スタッフの残業や休日出勤も減り、離職の連鎖を防ぐことにもつながります。
資金繰りという時間の変化
財務状況を棚卸しし、返済計画を見直す過程で、資金繰り表を毎月確認する習慣が根づきます。「決算が終わってから慌てる」経営から「先を見て動く」経営へ変わることが、最大の時間的な余裕を生みます。毎月の着地が見えていれば、繁忙期の投資判断も落ち着いて下せるようになります。
金融機関という関係性の変化
改善の見通しを第三者が裏付けた企業評価書は、在留資格の審査だけでなく、金融機関との対話でも役立ちます。「この経営者は数字を把握している」という信頼は、次の融資交渉を有利にします。設備投資の借入や、繁忙期の運転資金の相談もしやすくなります。
人手不足の解消・資金繰りの安定・金融機関との信頼関係。この3つを共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、KICKコンサルティングの支援

企業評価書は、フォーマットに数字を当てはめれば完成する書類ではありません。「なぜ債務超過に至ったか」「どのように改善するか」を、客観的なデータで筋道立てて説明する専門性が求められます。
自社だけで作成しようとすると、次のような壁にぶつかりがちです。
- 専門性の壁:財務分析と改善計画の両方を、客観的な立場で説明する経験がない
- 時間コストの壁:日々の運営に追われ、書類作成に割ける時間が確保できない
- 判断ミスのリスク:数字の根拠が弱く、審査で追加資料を求められ計画が遅れる
だからこそ、多くの宿泊業の経営者が、中小企業診断士による企業評価書の作成支援を選んでいます。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、経済産業大臣登録の中小企業診断士が、決算書・資金繰り表の分析から改善計画の策定、企業評価書の作成までを一気通貫で支援します。法人支援実績は150社以上にのぼり、全国オンライン対応のため来社の必要もありません。
支援の内容は、大きく次の3ステップで進みます。
- 決算書・資金繰り表をもとに、債務超過に至った要因を財務面から分析する
- ゼロゼロ融資の返済計画や設備投資の見通しを踏まえ、改善計画を数値で組み立てる
- 改善計画をもとに、審査に耐えうる企業評価書として書面化する
宿泊業は、稼働率・客室単価・季節変動といった業種特有の指標を扱うため、業種の実情を理解した第三者による分析が、審査の通過率を左右します。数字だけを切り出すのではなく、経営の実態に沿った改善計画を組み立てることを大切にしています。
また、全国オンライン対応のため、地方の旅館・ホテルであっても来社せずに相談を進められます。決算資料をオンラインで共有いただければ、初回の財務分析までスムーズに着手できる体制を整えています。
1社ごとに時間をかけて向き合うため、まずは現状をお聞かせください。その場での契約や、しつこい営業は一切ありません。お断りいただいても構いません。
よくある質問

Q. 企業評価書とは何ですか?
A. 外国人技能実習機構(OTIT)が定める提出書類のうち、別紙②-1・番号20に該当する「改善の見通しについて評価を行った書面」の通称です。直近事業年度が債務超過の企業が、特定技能・育成就労の受入れを申請する際に提出を求められます。書面には、債務超過に至った要因の分析と、今後どのように改善していくかという見通しの両方を記載します。
Q. 企業評価書は顧問税理士に作成してもらえますか?
A. 作成できるのは中小企業診断士または公認会計士に限られ、税理士単独では要件を満たしません。顧問税理士に決算の相談をしている場合でも、企業評価書は別途、中小企業診断士等に依頼する必要があります。「企業評価書 税理士」と検索して相談先を探す経営者の方は、この点を誤解しやすいため注意してください。
Q. ゼロゼロ融資の返済負担があっても、特定技能は受け入れられますか?
A. 受け入れ可能です。一時的な債務超過であっても、改善の見通しが客観的に示されていれば審査を通過できます。重要なのは、返済負担の実態と改善計画を、企業評価書で筋道立てて説明することです。数字を隠さず、正直に整理する姿勢が結果的に審査を通りやすくします。
Q. 企業評価書の作成にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 決算書・資金繰り表の分析から書面の完成まで、案件の複雑さによって期間は変わります。決算資料が整っているほど早く着手できるため、受入れの予定が決まった時点で早めにご相談いただくことをおすすめします。
Q. 育成就労制度に移行すると、企業評価書の扱いは変わりますか?
A. 育成就労制度は2027年4月の施行が予定されています。制度移行後も、債務超過企業に対する財務面の審査という基本的な考え方は引き継がれる見通しです。今のうちに財務体質を整えておくことが、将来の受入れ計画にも役立ちます。
Q. 企業評価書のサンプルやフォーマットはありますか?
A. 決まった様式はありますが、記載する数字や改善計画の中身は企業ごとに異なります。宿泊業特有の季節変動や稼働率の実態を踏まえた記載が必要になるため、業種の実情に沿った作成支援を受けることをおすすめします。ひな形をそのまま流用しても、実態と合わなければ審査で説得力を持ちません。
Q. 「債務超過の理由書」と企業評価書は同じものですか?
A. 実務上は同じ書面を指すことが多いですが、呼び方が複数存在します。重要なのは名称ではなく、改善の見通しを客観的なデータで裏付けられているかどうかです。理由書という言葉だけを検索して探している方も、この記事の内容がそのまま当てはまります。
Q. 特定技能の定期報告でも企業評価書は必要ですか?
A. 受入れ後、決算が引き続き債務超過の状態であれば、定期報告の際にも改善状況を示す資料の提出を求められる場合があります。受入れ時だけでなく、その後の財務改善も継続的に意識する必要があります。
Q. カプセルホテルでも特定技能(宿泊分野)を利用できますか?
A. カプセルホテル(簡易宿所営業)は、特定技能(宿泊分野)の受入れ対象外とされています。旅館業法上の営業種別によって対象が異なるため、事前の確認が必要です。旅館・ホテル営業に該当するかどうかを、まず確認しておきましょう。
Q. 相談だけでも対応してもらえますか?
A. 対応可能です。契約前提のご相談ではなく、現状の数字を一緒に確認するところから始められます。売り込みは一切ありませんので、まずはお気軽にお問い合わせください。
まとめ

宿泊業の債務超過は、ゼロゼロ融資の返済負担・コスト高・設備老朽化という3つの構造が重なって生まれます。売上が回復していても、現金が残らないのはあなたの経営努力が足りないからではありません。
大切なのは、①財務状況の棚卸し、②返済負担を軽くする選択肢の検討、③第三者による企業評価書の作成、という3つの秘訣を、順番に実行することです。
人手不足の解消と資金繰りの安定は、決算書を眺めているだけでは手に入りません。今日、最初の一歩を踏み出すかどうかが、来年の決算を変えます。
2026年4月からはコロナ借換保証の返済開始が続き、宿泊業を取り巻く資金繰りの局面はさらに厳しさを増すと見込まれています。人手不足が慢性化する前に、財務の立て直しと外国人材の受入れ準備を、同時に進めておくことが得策です。
数字と向き合うことは、決して楽な作業ではありません。それでも、現状を正確に把握した経営者から、次の一手を選び取ることができます。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。
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