
「清掃品質にはクレームなんて出ていないのに、決算はなぜか赤字続き」——ホテルの客室清掃(ハウスキーピング)を受託している会社の経営者から、そんな声をよく耳にします。
10月は最低賃金の改定が話題になる時期です。時給を上げなければ早朝・深夜のシフトが埋まらない一方で、発注元のホテルに示している清掃1室あたりの受託単価は、何年も据え置かれたまま——そんな状況ではないでしょうか。
人件費だけが上がり続け、気づけば決算は赤字、そして債務超過に。
そこに追い打ちをかけるのが、外国人材(特定技能・技能実習/育成就労)を受け入れたいときに求められる「企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)」の提出です。
債務超過のままでは審査が通らないのではないか、そう不安に感じている方も多いはずです。
結論からお伝えすると、赤字・債務超過の理由が明確で、改善の見通しを客観的に示せれば、特定技能人材の受入れは可能です。ただし、その「示し方」には押さえるべき型があります。
同じように受託単価と人件費の板挟みで苦しむ経営者は、あなただけではありません。この記事では、客室清掃受託業の実情に沿って、企業評価書をどう準備すればよいかを具体的にお伝えします。
この記事はこんな方におすすめです
- 受託単価が据え置かれ人件費だけ増えている方
- 赤字・債務超過で受入れ審査が不安な方
- 企業評価書を誰に頼めばよいか分からない方
- 早朝・深夜の人手不足を特定技能で補いたい方
この記事で分かること
- 客室清掃受託業が赤字・債務超過に陥る本当の理由
- 企業評価書にどのような項目を書けばよいか
- 特定技能人材を受入れるまでの具体的な流れ
- 自社だけで進める場合に見落としやすいリスク
私たちKICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士として150社以上の法人支援に携わってきました。この記事を読み終えるころには、自社の状況を整理し、次の一歩が見えるはずです。
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客室清掃受託業が受託単価の据え置きと債務超過で企業評価書を求められる理由

客室清掃受託業が赤字・債務超過に陥る理由は、単純な経営努力不足ではありません。発注元との力関係の中で自社だけでは動かせない要因が重なっていることがほとんどです。
| 原因 | 客室清掃受託業への影響 |
|---|---|
| 受託単価(清掃1室あたりの単価)の据え置き | 契約更新のたびに交渉しても、単価が数年前の水準のまま |
| 最低賃金の継続的な引き上げ | 時給を上げざるを得ず、原価だけが先に上昇する |
| 早朝・深夜シフトの人手不足 | 欠員補充の応援派遣・残業代など追加コストが発生 |
厚生労働省が示す地域別最低賃金は、毎年10月頃に改定されます。清掃スタッフの多くが時給制で働く客室清掃受託業では、最低賃金の引き上げがそのまま原価の上昇に直結します。一方で、発注元であるホテル・旅館側との契約は年単位で固定されていることが多く、「原価は毎年上がるのに、売上(受託単価)は据え置かれる」というねじれが起きやすい業種です。
なぜ「単価交渉ができないから」では審査が通らないのか
特定技能や技能実習(育成就労)の受入れ審査では、監理団体・登録支援機関が「事業の継続性」と「賃金の支払能力」を確認します。
そのとき審査する側が知りたいのは、単価が上がらないという事実そのものではなく、その先にある見通しです。「このまま赤字が続くのか」「立て直す方法はあるのか」を、経営者自身の言葉だけでなく、客観的な資料で説明できるかが問われます。
決算書の数字だけを提出しても、この問いには答えられません。だからこそ、第三者による評価書面が求められるのです。この評価書面は、「なぜ赤字になったのか」を説明する理由書としての側面も持っています。
放置すると何が起きるか
受託単価の据え置きを「業界の慣習だから仕方ない」と放置すると、資金繰りはじわじわと悪化していきます。
最低賃金は毎年のように引き上げられる一方、入ってくるお金(受託単価)は変わらないという状態が続けば、純資産の毀損は加速します。
純資産がマイナスの状態が続くと、金融機関からの追加融資も難しくなります。運転資金が細るなかで、特定技能人材の受入れ準備まで手が回らなくなるという悪循環に陥りかねません。
監理団体や登録支援機関、行政書士から「決算書だけでは説明が難しい」と言われて、初めて企業評価書の存在を知る経営者も少なくありません。
債務超過という数字だけを見せられても、審査する側は「今後も悪化し続けるのか」「立て直せる見込みがあるのか」を判断できません。だからこそ、客観的な評価書面が必要になるのです。
OTIT(外国人技能実習機構)の提出書類の中でも、この評価書面は「改善の見通しに関する評価」として位置づけられており、中小企業診断士が名指しされている数少ない領域のひとつです。
「うちだけではない」と知っておく
客室清掃受託業に限らず、オフィスビルメンテナンスや商業施設清掃でも、発注元との力関係で価格転嫁が進みにくい構造は珍しくありません。
「自社の経営が甘かったから赤字になった」と抱え込みすぎず、外部要因を客観的に説明できる材料をそろえることに意識を向けることが、最初の一歩になります。
企業評価書の基本を先に押さえたい方へ
企業評価書が必要になる条件、作成できる専門家、混同されやすい「評価調書」との違いを、中小企業診断士が1本の記事にまとめています。
特定技能の受入れに向けた企業評価書の書き方4つの条件

厚生労働省の資料では、監理団体の財産的基礎について、直近期末に債務超過がある場合は「中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が改善の見通しについて評価を行った書面」の提出を求める旨が示されています。
客室清掃受託業のように受託単価の壁で赤字・債務超過に陥った企業が、この書面をどう用意すればよいか。押さえるべき条件は次の4つです。
条件1.受託単価と人件費のギャップを客観的な資料で整理する
「単価が上がらない」という一言で済ませず、最低賃金の推移と受託単価の推移を並べて資料に残すことが第一歩です。
- 過去3〜5期分の受託件数・受託単価の推移
- 地域別最低賃金の改定推移(厚生労働省公表資料)
- 人件費・応援派遣費・交通費など原価の内訳
- 契約先ホテルとの契約更新時期・交渉記録
これらを整理するだけでも、「経営努力を怠った赤字」ではなく「構造的な要因による業績悪化」であることが伝わりやすくなります。
条件2.中小企業診断士の企業評価書サンプルで「改善の見通し」を数値で示す
企業評価書には、企業概要・財務状況と債務超過の理由・改善の見通しという3つの柱があります。企業評価書のサンプルとして、中小企業診断士が客観的な立場から評価し記載する一般的なイメージは次の通りです。
| 記載項目 | 記載する内容の例 |
|---|---|
| 企業概要 | 事業内容・受託先の業態(ホテル・旅館等)・従業員数 |
| 財務状況・債務超過の理由 | 受託単価の据え置きと最低賃金上昇など、赤字に至った客観的な理由 |
| 改善の見通し | 数値目標を伴う収益改善計画、特定技能人材の活用方針 |
架空の数値を並べても、審査する側には見抜かれます。実際の契約更新計画や受託件数の見通しに基づいた、根拠のある数字で組み立てることが欠かせません。
改善の見通しに盛り込む具体策は、次のような選択肢が考えられます。
- 次回契約更新時に、原価上昇分を反映した単価交渉を行う
- 清掃1室あたりの作業効率を見直し、生産性を高める
- 受託先の業態を分散し、特定の発注元への依存度を下げる
- 特定技能人材の計画的な受入れで、早朝・深夜シフトの人手不足を解消する
すべてを一度に実行する必要はありません。「何を」「いつまでに」「どの程度」改善するのかを数値で示すことが、企業評価書の説得力を左右します。
改善の見通しを書くときは、単年度の黒字化だけを目標にしないことも大切です。3〜5年程度の中期的な視点で、純資産がどう回復していくかを描くと、審査する側にも計画性が伝わりやすくなります。
この企業評価書がどのような役割を果たすものか、詳しくは次のページにまとめています。
外国人技能実習・特定技能の企業評価書について 社長やご担当者の方へ。“あなた”は今、このようなお悩みを抱えていませんか。 外国人技能実習制度を活用したいが、企業評価書の作成方法が分からないという方 特定技能外国人の受入れにあたり、経営改善の見通しについて評価が必要だ...
条件3.早朝・深夜シフトの人員体制を特定技能で補う計画を立てる
客室清掃は、チェックアウトからチェックインまでの限られた時間に人員を集中させる必要がある仕事です。早朝・深夜のシフトを日本人スタッフだけで埋めようとすると、採用コストと欠員リスクが慢性的に高止まりします。
特定技能14分野のうち「ビルクリーニング」は客室清掃業務も含む分野として位置づけられており、技能実習(育成就労)でも建物清掃業として受入れの実績があります。人員体制の見直しを、改善の見通しの中に具体的に織り込むことがポイントです。
条件4.特定技能人材の受入れ計画と改善計画を連動させる
企業評価書は「赤字の言い訳」を書く書類ではありません。特定技能人材を迎え入れることで、どう収益を立て直すのかまでを一体で描く必要があります。
人手不足で欠員補充の応援派遣費がかさんでいるなら、それも赤字要因の一つとして整理できます。特定技能人材の受入れそのものが、改善計画の一部になり得るのです。
外国人技能実習(育成就労への移行が2027年4月に予定されています)や特定技能では、ビルクリーニング分野の技能評価試験・日本語試験に合格した人材を受け入れる仕組みが用意されています。
採用計画・配置計画・教育計画を、企業評価書の「改善の見通し」と同じ数値目標に紐づけておくと、審査する側にも一貫したストーリーとして伝わります。
逆に、決算の数字と受入れ計画がばらばらなまま提出すると、「思いつきの計画ではないか」と見なされるリスクがあります。
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受託単価の壁を乗り越え特定技能の受入れで手に入る未来

企業評価書を整え、特定技能人材の受入れが実現すると、経営はどう変わるのでしょうか。3つの軸で具体的に見ていきます。
数字の軸
早朝・深夜シフトに必要な人員を、ようやく安定して確保できます。欠員による応援派遣費が減り、突発的な追加コストを取りこぼさずに済むようになります。
受託件数を無理に絞らずに済むため、契約更新時の単価交渉でも「安定して人員を供給できる会社」として発注元に評価されやすくなります。
時間の軸
経営者がシフト調整や急な欠員対応に追われる時間が減り、受託先の新規開拓や契約条件の見直しに時間を割けるようになります。
特定技能人材が現場を支えることで、少人数の管理体制でも、繁忙期に無理なく対応できる余力が生まれます。
関係性の軸
企業評価書を整え、金融機関へ改善の見通しを説明できるようになると、融資や条件変更の相談がしやすくなります。監理団体・登録支援機関との関係も築きやすくなります。
発注元のホテル・旅館に対しても、「なんとなく人手が足りなそう」ではなく「見通しを持って体制を整えている」という印象を与えられます。数字に裏付けられた説明は、取引先との信頼関係そのものを支えます。
受託単価という自社だけでは動かせない条件を、人材と体制の見直しで乗り越える。この道筋を、共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

「自社の決算書に一番詳しいのは自分たちだから」と、経営者や総務担当者が自力で評価書面を作成しようとするケースがあります。
ただし、企業評価書を作成できるのは、中小企業診断士または公認会計士に限られます。顧問の税理士であっても、この書面を作成する立場にはありません。
専門的な立場からの評価でなければ、審査する側に「客観性のない自己申告」と受け取られかねません。
自社だけで進めようとすると、次のような壁にぶつかりがちです。
- 専門性の壁:どの資料をどう整理すれば「改善の見通し」として認められるか分からない
- 時間コスト:日々のシフト管理・クレーム対応の合間に、書類作成の時間を確保しづらい
- 判断ミスのリスク:数値の根拠が弱いまま提出し、差し戻しや審査の長期化を招く
だからこそ、企業評価書の作成に精通した専門家へ相談する経営者が増えています。自己流で仕上げてから相談するより、早い段階で伴走してもらうほうが、結果的に近道になることが多いのです。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士として法人支援150社以上、認定経営革新等支援機関(中小企業庁)としての実績があります。
ビルクリーニング業をはじめとする受託型ビジネス特有の「発注元との力関係による価格転嫁の難しさ」も踏まえ、決算書の数字だけでは伝わらない事情を、審査で通用する形に整理します。
ご支援の流れは、次のようなイメージです。
- 無料相談で、決算状況と受入れたい人材の人数・時期をお聞きします
- 受託単価・人件費の推移など、必要な情報を一緒に洗い出します
- 企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)を作成します
- 監理団体・登録支援機関・行政書士とのやり取りをサポートします
企業評価書の作成だけでなく、特定技能人材の受入れ計画づくりまで、伴走してご支援します。
「まずは話を聞いてほしい」という段階でも構いません。決算の数字を見られることに抵抗がある経営者もいらっしゃいますが、早めに相談いただくほど、選べる改善策の幅は広がります。
資金繰りが厳しくなってから慌てて準備を始めるより、単価据え置きの構造に気づいた時点で相談を始めるほうが、選択肢は多く残ります。
企業評価書をまとめて確認したい方へ
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企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

Q. 企業評価書とは何ですか?
A. 直近期末に債務超過がある企業が、外国人材(特定技能・技能実習/育成就労)を受け入れる際に求められる評価書面です。企業概要・財務状況と債務超過の理由・改善の見通しの3点を、中小企業診断士または公認会計士が客観的に評価して記載します。決算書の提出だけでは説明が難しい部分を補う位置づけの書類です。
Q. 客室清掃受託業でも特定技能を受入れできますか?
A. ビルクリーニングは特定技能の対象分野に含まれており、客室清掃業務もその範囲に含まれます。受託単価の据え置きが原因の赤字・債務超過であっても、その理由と改善の見通しを客観的に示せれば、受入れは可能です。受託件数の多さや会社規模の大小は、審査可否を直接左右する要素ではありません。
Q. 赤字や債務超過があると受入れは認められませんか?
A. 債務超過があるだけで一律に不可になるわけではありません。原因が明確で、改善の見通しに数値の裏付けがあれば、審査の対象として検討されます。逆に、原因があいまいなまま数字だけを提出すると、説明不足と受け取られやすくなります。
Q. 企業評価書は税理士に依頼できますか?
A. できません。企業評価書を作成できるのは中小企業診断士または公認会計士に限られます。顧問税理士に相談する場合も、作成自体は別の専門家に依頼する必要があります。決算業務と評価書面の作成は、担う専門家が異なる点に注意が必要です。
Q. 特定技能の定期報告でも企業評価書は必要になりますか?
A. 特定技能では定期的な届出が求められており、その基準のひとつに「過去一定期間、債務超過となっていないこと」が挙げられています。受入れ後に債務超過となった場合も、あらためて改善の見通しを示す評価書面が必要になる場面があります。受入れ時だけでなく、その後の運用も見据えて準備しておくと安心です。
Q. 受託単価が上がらないままでも「改善の見通し」を示せますか?
A. 示せます。最低賃金の推移と受託単価の推移を資料として整理したうえで、契約更新時の単価交渉や特定技能人材の活用による効率化など、収益改善計画を数値で示すことがポイントです。原因の分析と改善策を切り離さず、一体のストーリーとして描くことが重要です。
Q. 企業評価書にはどのような項目を記載しますか?
A. 一般的には企業概要、財務状況と債務超過に至った理由、改善の見通しという3つの柱で構成されます。業種や状況に応じて、記載する具体的な内容は変わります。客室清掃受託業であれば、受託先の業態や契約形態に触れることもあります。
Q. 育成就労制度に変わると企業評価書の扱いはどうなりますか?
A. 育成就労制度は2027年4月の施行が予定されています。監理支援機関(現在の監理団体に相当)の財産的基礎の考え方は現行制度と近く、債務超過がある場合の評価書面という位置づけも引き継がれる見込みです。制度の詳細は今後の運用要領で確定していくため、最新情報を確認しながら準備を進めることをおすすめします。
Q. 企業評価書の作成にはどのような資料が必要ですか?
A. 直近数期分の決算書に加え、赤字・債務超過の原因を裏付ける資料が必要です。客室清掃受託業であれば、受託単価の推移や最低賃金の改定推移、応援派遣費の内訳などが該当します。手元にある資料から棚卸しを始めるとよいでしょう。
Q. 中小企業診断士に依頼するとどのようなメリットがありますか?
A. 決算書の数字だけでは伝わりにくい業績変動の背景を、審査で通用する客観的な資料として整理できます。特定技能人材の受入れ計画づくりまで一体で相談できる点も強みです。第三者の視点が入ることで、経営課題そのものの整理にもつながります。
まとめ
客室清掃受託業の赤字・債務超過は、経営努力だけでは避けられない受託単価の据え置きと最低賃金の上昇が背景にあることが少なくありません。
大切なのは、その事実から目をそらさず、客観的な企業評価書で「改善の見通し」を数字で示すことです。
今回お伝えした4つの条件をあらためて振り返ります。
- 受託単価と人件費のギャップを客観的な資料で整理する
- 中小企業診断士の企業評価書サンプルで「改善の見通し」を数値で示す
- 早朝・深夜シフトの人員体制を特定技能で補う計画を立てる
- 特定技能人材の受入れ計画と改善計画を連動させる
企業評価書は、中小企業診断士または公認会計士だけが作成できる書面です。自社だけで抱え込まず、専門家と一緒に、次の一歩を踏み出しませんか。
受託単価という自社では変えられない条件と向き合いながらも、変えられる部分に手を打つ経営者から、特定技能人材という新しい戦力を迎え入れています。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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