
中間決算の数字を見ながら来期の設備投資を考えていた製造業の社長が、顧問税理士からこう言われた。「新しい工場の計画、設備を買う前に経済産業省の確認を取れば、建物も含めて税金の優遇が使えるかもしれませんよ」
ところが、制度の名前は「大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)」。漢字が長すぎて、どんな制度なのか、自社が使えるのか、すぐには分かりません。
分からないまま、いつもどおり設備を発注して引き渡しを受けてしまうと、あとから気づいても手遅れです。この税制は、経済産業大臣の「確認書」をもらう前に取得した設備は対象外になるからです。数億円規模の投資では、使えるかどうかで数千万円単位の差が出ることもあります。
「名前が難しいから、うちには関係ない」と読み飛ばしていませんか?
実は、中小企業でも5億円以上の設備投資を計画していれば、対象になる可能性がある制度です。
本記事では、中小企業診断士が、この制度を専門用語をできるだけ使わず、たとえ話と数字でゼロから解説します。経済産業省のパンフレットと申請要領(2026年9月時点)をもとに、対象になる会社と設備、使うための3つの条件、税金がどれだけ軽くなるか、申請の流れ、落とし穴まで順番に見ていきます。
この記事はこんな方におすすめです
- 5億円以上の工場新設や設備の入れ替えを検討している中小企業の社長
- 建物やソフトウェアも含めた大型投資を計画している経営者
- 「大胆な投資促進税制」の名前は聞いたが、中身がよく分からない方
- 経営力向上計画など、ほかの設備投資の税制との違いを知りたい方
この記事で分かること
- 大胆な投資促進税制が「ひとことで言うと」どんな制度か
- 対象になる会社・設備と、使うための3つの条件
- 即時償却と税額控除で、税金がどう軽くなるか
- 申請の流れと、やってしまいがちな落とし穴
※本記事は、経済産業省が公表しているパンフレット・申請要領・制度ページ(2026年8月31日更新)をもとに、2026年9月時点の情報で作成しています。税務の個別判断は、税理士にご確認ください。
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大胆な投資促進税制の基本

ひとことで言うと「大きな設備投資への税金のごほうび」
ひとことで言うと国が、「日本国内で、大きくて、しっかりもうかる設備投資」をする会社に、税金を軽くするごほうびを用意した制度です。
正式な名前は「特定生産性向上設備等投資促進税制」です。令和8年度税制改正で新しく作られ、経済産業省は「大胆な投資促進税制」という呼び名で案内しています。
経済産業省のパンフレットでは、制度の目的を、国内投資を増やして日本企業の「稼ぐ力」を高め、賃上げを含めた好循環をつくることと説明しています。つまり、国は「会社がもうかる設備に投資し、その成果を次の投資や社員の給料に回してほしい」と考えているわけです。
押さえたい3つのポイント
| ポイント | 制度の中身 | かんたんに言うと |
|---|---|---|
| 1 対象が広い | 企業規模や業種を問わない(風俗営業等に使う場合などを除く) | 大企業も中小企業も、製造業もサービス業も対象になりうる |
| 2 ごほうびを選べる | 即時償却または税額控除(最大7%) | 経費を一気に計上するか、税金から直接割り引くかを選べる |
| 3 期間が長い | 令和11年3月31日までに確認を受け、確認の日から5年以内に取得・事業供用 | 先に「国のOK」をもらえば、5年かけて設備を入れてもよい |
いつから、いつまで使えるか
経済産業省は2026年7月31日に、確認申請の受付開始を公表しました。大切な日付は次の4つです。
| 日付 | 意味 |
|---|---|
| 令和7年(2025年)12月26日 | この日以降に、取締役会などで決めた投資計画が対象 |
| 2026年7月31日 | 確認申請の受付開始 |
| 令和11年(2029年)3月31日 | 経済産業大臣の確認を受ける期限 |
| 確認を受けた日から5年 | 設備を取得し、事業に使い始める期限 |
令和11年4月1日以後に確認を受けた設備は、税制の対象になりません。工場の建設のように準備に何年もかかる投資ほど、確認申請の時期を早めに決めておくことが大切です。なお、制度の期限や要件は税制改正で変わることがあるため、最新情報は経済産業省のページでご確認ください。
対象になる会社と設備

対象になる会社
申請要領では、青色申告書を提出する法人・個人が対象とされています。業種は幅広く、風俗営業や性風俗関連特殊営業に使う場合を除けば、製造業、建設業、小売業、サービス業なども対象になりえます。
「中小企業者等」に当てはまるか
このあと説明する「5億円以上」という低めのラインを使えるのは、「中小企業者等」に当てはまる会社だけです。主な範囲は次のとおりです。
- 資本金または出資金が1億円以下の法人
- 資本や出資を持たない法人のうち、常時使用する従業員が1,000人以下の法人
- 常時使用する従業員が1,000人以下の個人
- 農業協同組合等
ただし、資本金1億円以下の法人でも、同じ大規模法人(資本金1億円超の法人など)に株式の2分の1以上を持たれている場合や、2つ以上の大規模法人に3分の2以上を持たれている場合は外れます。大企業グループの子会社は、資本金が小さくても中小企業者等にならないことがあるので注意しましょう。
対象になる設備と金額の下限
対象は、事業で稼ぐための「生産等設備」を構成する設備で、種類ごとに1つあたりの金額の下限があります。
| 設備の種類 | 1つあたりの取得価額の下限 | イメージしやすい例 |
|---|---|---|
| 機械装置 | 1台・1基160万円以上 | 生産ライン、加工機 |
| 工具、器具備品 | 1台・1基120万円以上(40万円以上で、1事業年度の合計が120万円以上のものも含む) | 検査機器、サーバー |
| 建物 | 1つ1,000万円以上 | 工場、倉庫、店舗 |
| 建物附属設備、構築物 | 1つ120万円以上(建物附属設備は60万円以上で、1事業年度の合計が120万円以上のものも含む) | 空調設備、舗装、塀 |
| ソフトウエア | 1つ70万円以上(複写して販売するための原本を除く) | 生産管理システム |
※合計額は「投資計画」単位で判定されます。例の欄は分かりやすさのためのイメージで、実際の資産の区分は税理士にご確認ください。
機械やソフトウエアだけでなく、工場などの建物まで含めて、1つの投資計画でまとめて対象にできるのが、この制度の大きな特徴です。
対象外になるもの
- 中古の設備
- 人に貸すための設備(貸付用資産)
- 研究開発(試験研究)に使う設備
- 国外に置く設備
- 建物だけの投資計画(建物に加えて、機械などの設備投資が必要)
- 経済産業大臣の確認を受ける前に取得した設備
本社の事務用設備などが「生産等設備」に当たるかは判断が分かれやすい点です。迷う場合は、申請前に経済産業局へ相談しましょう。
使うための3つの条件

国のOK(経済産業大臣の確認)をもらうには、投資計画が次の3つの条件を満たす必要があります。たとえるなら、「投資の大きさ」「もうける力」「会社としての本気度」の3つです。
条件1 投資の大きさ(中小企業は5億円以上)
対象設備の取得価額の合計が、35億円以上である必要があります。中小企業者等は5億円以上です。
この金額は、設備1台ずつではなく、「投資計画」全体の合計で判定します。投資計画は、工場単位や店舗単位など、投資の効果を正確に計算できる単位でまとめるのが基本です。離れた場所への投資でも、共通の投資で相乗効果が出る場合は、1つの計画として扱うのが適切とされています。
条件2 投資利益率(ROI)が年平均15%以上
投資利益率は、「設備を入れたことで、会社のもうけが毎年どれだけ増えるか」を表す数字です。計算式は次のとおりです。
投資利益率=(営業利益+減価償却費)の1年あたりの増加額÷設備投資額≧15%
もっとかんたんに、金額で言いかえてみます。
| 投資額 | 毎年必要な「営業利益+減価償却費」の増加額 |
|---|---|
| 5億円(中小企業者等の下限) | 7,500万円以上 |
| 10億円 | 1億5,000万円以上 |
| 35億円(大企業の下限) | 5億2,500万円以上 |
たとえば、5億円の投資で「営業利益+減価償却費」が年平均8,000万円増える計画なら、8,000万円÷5億円=16%で条件を満たします。5億円の投資なら、毎年7,500万円以上の上積みを数字で示す必要があると考えると、ハードルの高さが分かります。
計算のルールも決まっています。
- 平均を出す期間は、取得する設備のうち最も長い減価償却期間まで
- 営業利益は、5〜10年の範囲で会社が期間を決め、その最終年度の金額をそれ以降の年も同じとして計算
- 経済産業省が「投資利益率エクセル計算シート」を用意
計算の根拠は、申請前に公認会計士または税理士が「事前確認」でチェックします。売上や原価の見込みに裏付けがない「数字合わせ」の計画は通りにくいと考え、根拠資料と一緒に作り込みましょう。
条件3 取締役会などでの正式な決定
投資計画は、取締役会などの適切な機関で正式に決めたものである必要があります。決定は令和7年12月26日以降に新たに行われたものに限られ、この税制を使って実現する投資だと分かる議事録などを提出します。
取締役会以外の会議体で決めた場合も、内規などで権限が適切に委任されていれば認められます。その場合は、委任が分かる書類もあわせて提出します。
そのほかに書く・出すもの
- 資金の集め方(自己資金、借入、株式発行など)
- 今後も成長投資を増やしていく方針
- パートナーシップ構築宣言を公表していることを示す書類
- 暴力団員等に該当しないことを示す書類
パートナーシップ構築宣言は、取引先との適切な関係づくりを宣言するものです。申請しただけでは足りず、公表されていることまで求められるため、まだの会社は早めに準備しましょう。
3つの条件のうち、社内で判断が分かれやすいのが投資利益率15%の積算根拠です。収益計画の前提の置き方や、取締役会での正式決定までの進め方は、特定生産性向上設備等投資計画支援のページでステップごとに整理しています。
税金がどれだけ軽くなるか

確認を受けた設備には、設備ごとに「即時償却」か「税額控除」のどちらかを選んで使えます。2つの違いを、たとえ話で整理します。
即時償却とは
設備を買ったお金は、ふつうは何年もかけて少しずつ経費にします。これを減価償却といいます。即時償却は、取得して使い始めた年に、全額を経費にできるしくみです。
バナナでたとえると、「10年に分けて食べる約束だった10房のバナナを、1年目に全部食べてよくなる」ようなものです。1年目の経費が大きく増えるので、その年の利益が減り、税金も大きく減ります。
ただし、2年目以降に食べるバナナ(経費)は残りません。トータルの税金が消えるのではなく、税金の支払いを後ろにずらす効果だと理解しておきましょう。その分、投資した直後の手元資金を厚くできるのがメリットです。
税額控除とは
税額控除は、計算した税金から取得価額の7%(建物、建物附属設備、構築物は4%)を直接差し引くしくみです。こちらは「税金の割引券」のイメージで、税金そのものが減ります。
ただし、差し引ける金額には上限があり、その年の法人税額の20%までです。
経済産業省の試算例
申請要領には、工場を新設する場合の簡易的な試算例が載っています(法人税率30%で機械的に計算した参考値)。
| 対象資産 | 中身 | 投資額 | 選んだ措置 | 税制の効果 |
|---|---|---|---|---|
| 建物 | 工場の建屋を新設 | 50億円 | 即時償却 | 15億円のキャッシュフロー改善効果 |
| 機械装置 | 生産拡大のための機械 | 30億円 | 税額控除7% | 2.1億円の減税効果 |
| ソフトウエア | 製造ラインを自動制御するソフト | 20億円 | 税額控除7% | 1.4億円の減税効果 |
即時償却と税額控除の比べ方
| 観点 | 即時償却 | 税額控除 |
|---|---|---|
| しくみ | 取得した年に全額を経費にする | 税金から7%(建物等は4%)を直接差し引く |
| 税金への効果 | 支払いを先送りする(トータルは原則変わらない) | 税金そのものが減る |
| 合いやすい会社 | その年の利益が大きく、早く手元資金を残したい会社 | 毎年安定して法人税を納めている会社 |
| 注意点 | 翌年以降の減価償却費がなくなる | 控除はその年の法人税額の20%まで |
中小企業が気をつけたい「控除上限20%」
架空の中小製造業B社で考えてみます。B社は機械装置4億円と建物2億円、合計6億円の投資を計画しました。
- 機械装置 4億円×7%=2,800万円
- 建物 2億円×4%=800万円
- 税額控除の合計 3,600万円
ところが、B社の法人税額が年3,000万円だとすると、差し引けるのは20%の600万円までです。控除しきれない分を翌年以降に回せるのは、後で説明する「国際経済事情激変事業適応計画」の認定を受けた会社だけです。
このように、会社の規模に比べて投資額が大きいと、税額控除を使い切れないことがあります。設備ごとに措置を選べるので、「一部は税額控除、残りは即時償却」といった組み合わせも考えられます。どれが有利かは今後数年の利益見込みで変わるため、税理士と一緒に試算してから選ぶのが安全です。
控除しきれない分を繰り越せる特例
産業競争力強化法の「国際経済事情激変事業適応計画」の認定を受けた会社は、税額控除を最大3年間繰り越せます。認定には、主に次の要件をすべて満たす必要があります。
| 要件 | 主な中身 |
|---|---|
| 計画期間 | 9年以内(投資の実行は5年以内) |
| 生産性の向上または新需要の開拓 | 修正ROA2%ポイント向上、有形固定資産回転率5%向上、従業員1人当たり付加価値額6%向上のいずれか、または業種の売上高伸び率を3%上回る成長など |
| 財務の健全性 | 計画終了年度に、有利子負債÷キャッシュフロー10倍以内、経常収入が経常支出を上回る |
| 前向きな取組 | 対象設備の導入に加え、新商品の売上1%以上、製造原価5%以上削減などのいずれか |
| 影響要件 | 国際的な事業環境の急激な変動で、前年度の売上高が5%以上、または売上高営業利益率が20%以上減少している |
| 全社的取組 | 取締役会などによる組織的な意思決定に基づく |
認定を受けると、日本政策金融公庫の長期・大規模な資金調達への低利融資(ツーステップローン)や、中小企業基盤整備機構による債務保証(最大5割・25億円)などの特例も使える場合があります。
申請から税務申告までの流れ

8つのステップ
| 順番 | やること | 相手・窓口 |
|---|---|---|
| 1 | 取締役会などで投資計画を正式に決め、議事録を残す | 自社 |
| 2 | 確認申請書(様式第一)と添付書類、投資利益率の計算シートを作る | 自社(必要に応じて専門家が支援) |
| 3 | 対象設備と投資利益率の算出方法について事前確認を受け、事前確認書をもらう | 公認会計士または税理士 |
| 4 | 本社所在地を管轄する経済産業局へ、Gビズフォームで確認申請する(事前相談がおすすめ) | 経済産業局 |
| 5 | 確認書(様式第二)を受け取る(受付から30日程度) | 経済産業局 |
| 6 | 確認の日から5年以内に設備を取得し、事業に使い始める | 自社 |
| 7 | 導入した年度に適合証明申請書(様式第八)を出し、適合証明書(様式第九)を受け取る(30日程度) | 経済産業局 |
| 8 | 確定申告で、確認書と適合証明書を使って特例を申告する | 税務署 |
処理期間の30日程度には、休日や書類の補正にかかる日数は含まれません。確認書が出る前に設備を取得すると、その設備は対象外です。設備の引き渡し時期から逆算して、余裕を持って申請しましょう。
申請先と問い合わせ先
制度の一般的な質問は「大胆な投資促進税制サポートセンター」(電話0570-093-930、平日9時〜17時30分)で受け付けています。申請は、本社所在地を管轄する経済産業局に行います。
| 経済産業局 | 電話 | 管轄地域 |
|---|---|---|
| 北海道経済産業局 地域経済課 | 011-709-1782 | 北海道 |
| 東北経済産業局 地域経済課 | 022-221-4876 | 青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県 |
| 関東経済産業局 企業立地支援課 | 048-600-0268 | 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、静岡県 |
| 中部経済産業局 地域未来投資促進室 | 052-951-8457 | 岐阜県、愛知県、三重県、富山県、石川県 |
| 近畿経済産業局 創業・経営支援課 経営力向上室 | 06-6966-6065 | 福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県 |
| 中国経済産業局 地域経済課 | 082-224-5684 | 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 |
| 四国経済産業局 地域経済課 | 087-811-8513 | 徳島県、香川県、愛媛県、高知県 |
| 九州経済産業局 企業成長支援課 | 092-482-5437 | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県 |
| 沖縄総合事務局 地域経済課 | 098-866-1730 | 沖縄県 |
※個別の申請が確認されるかどうかや、審査状況の問い合わせには対応していないと案内されています。資産の種類の判断や税法の規定については、税理士や税務署に確認します。
計画を変えたくなったら
確認を受けたあとに計画が変わる場合、変更の中身によって手続きが違います。
| 変わる内容 | 変更確認申請 |
|---|---|
| 投資の目的・内容(何のための投資か) | 必要 |
| 設備の種類・用途 | 必要 |
| 設備の金額・数量 | 原則不要 |
| 導入する場所(ライン、店舗、拠点) | 原則不要 |
| 取得・使い始めの時期 | 原則不要 |
「原則不要」の変更でも、投資額の下限や投資利益率15%を下回る場合は、計画の同じ扱いが保てなくなるので注意が必要です。
使ったあとにやること
税制を使ったあとも、必要に応じて投資計画の進み具合を経済産業省へ報告します。計画を下回っても特段の罰則はないとされていますが、虚偽の内容など悪質な場合は社名の公表などが予定されています。また、政策効果を検証するための調査(EBPM)への協力も求められます。
確認申請の準備から確認後の報告まで、通常業務と並行して社内だけで進めると、担当者の負担が一気に重くなります。実務の段取りと顧問税理士との役割分担の考え方は、大胆な投資促進税制の申請支援サービスのページでご案内しています。
知らないと損する5つの落とし穴

落とし穴1 確認書の前に設備を取得してしまう
特に注意したい、取り返しのつかない失敗です。確認書が出る前に取得した設備は、税制の対象になりません。設備メーカーや建設会社との契約・引き渡しのスケジュールは、確認申請の時期とセットで決めましょう。
落とし穴2 ほかの設備投資の税制が使えなくなる
確認を受けた会社は、投資計画の実施期間を含む事業年度について、会社(事業者)単位で次の3つの税制が使えなくなります。
- 中小企業経営強化税制(経営力向上計画にもとづく税制)
- 地域未来投資促進税制
- カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
同じ期間に、別の設備で経営力向上計画の即時償却を使う予定があった会社は、その分の優遇を失うおそれがあります。どちらが得かを必ず比べてから申請しましょう。また、戦略分野国内生産促進税制を使う場合も、控除上限の計算に影響があります。
落とし穴3 税額控除を使い切れない
前の章で見たとおり、税額控除は法人税額の20%までです。繰越の特例を使えない会社が税額控除だけを選ぶと、計算上の控除額の多くを使えないことがあります。
落とし穴4 パートナーシップ構築宣言の「公表」が済んでいない
申請にはパートナーシップ構築宣言の公表を示す書類が必要です。宣言を出していない会社は、申請書づくりと並行して準備を進めましょう。
落とし穴5 令和7年12月25日以前に決めた計画をそのまま出す
対象は、令和7年12月26日以降に正式に決めた投資計画です。それより前に決めた計画は原則として対象外ですが、次のような要件をすべて満たす変更を12月26日以降に決めた場合は、使える可能性があります。
- 当初の計画から投資額を50%以上増やす(当初の150%以上にする)
- 投資利益率が当初の計画を上回る
- 当初と追加の投資で事業目的が共通し、追加の設備がその目的に必要不可欠である
- 当初の計画を決めた日から5年以内に変更を決めている
- 設備に質的・構造的な向上があり、それが投資利益率の上昇につながる
この場合も、税制の対象になるのは変更によって向上した部分だけです。
大企業の場合の注意
大企業は、所得が前の年より増えた事業年度に、賃上げと国内設備投資の一定水準(継続雇用者の給与等支給額の増加率1%以上、国内設備投資額が当期償却費総額の30%超など。規模が大きい会社は2%・40%)を満たさないと、この税制(繰越税額控除を除く)を使えません。要件の判定は税理士に確認しましょう。
5つの落とし穴は、いずれも設備を発注する前に段取りを決めておけば避けられるものです。確認書の取得までを4つのステップに分けた進め方は、設備投資の確認申請サポートのページにまとめています。
ほかの設備投資の税制との違い

設備投資で使える税制は、この制度だけではありません。中小企業がよく検討する制度と比べると、次のようになります。
| 観点 | 大胆な投資促進税制 | 中小企業経営強化税制 | 先端設備等導入計画 |
|---|---|---|---|
| 向いている投資 | 建物も含む大型投資(中小企業者等は5億円以上) | 中小企業の設備投資 | 中小企業の設備投資 |
| 事前の手続き | 経済産業大臣の確認(経済産業局) | 経営力向上計画の認定 | 市区町村の認定 |
| 主な効果 | 即時償却または税額控除(最大7%) | 即時償却または税額控除 | 固定資産税の軽減 |
※各制度の対象設備や率、期限は改正で変わるため、所管省庁の最新情報をご確認ください。
ひとことで言えば、5億円を超える大型投資なら大胆な投資促進税制、それより小さい投資なら経営力向上計画などが現実的な選択肢です。ただし、落とし穴2のとおり同じ期間に両方は使えないため、数年分の投資計画をまとめて見渡して選びましょう。経営力向上計画については、次の記事で詳しく解説しています。
「設備投資を予定しているが、使える税制優遇はないか」「認定を受けると補助金で有利になると聞いた」。設備投資や人材育成など、会社の経営力を高める取り組みを後押ししてくれるのが、国の「経営力向上計画」です。認定を受けると、税制優遇や金融支援など、さまざまなメリットが受けられます。 この...
自社が使えるか分かる5つのチェック

次の5つに、いくつ当てはまるか確認してみてください。
- □ 建物・機械・ソフトなどを合わせて5億円以上(大企業は35億円以上)の国内投資を計画している
- □ その投資で「営業利益+減価償却費」が毎年、投資額の15%以上増える見込みを数字で説明できる
- □ 設備の取得(引き渡し)までに、事前確認と約30日の審査を待つ時間がある
- □ 令和7年12月26日以降に、取締役会などで正式に投資を決めた(または決める予定がある)
- □ パートナーシップ構築宣言を公表している(または公表の準備ができる)
すべてに当てはまれば、検討する価値は十分にあります。1つでも迷う項目があれば、設備を発注する前に専門家へ相談しましょう。
なお、投資計画と投資利益率の根拠づくりについては、特定生産性向上設備等投資計画の作成支援のページで、内容と流れをご案内しています。
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まとめ 大胆な投資促進税制の要点

大胆な投資促進税制は、名前こそ難しいものの、中身は「国内で、大きくて、もうかる設備投資をする会社に、税金のごほうびを出す」というシンプルな制度です。
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| 対象 | 青色申告の法人・個人(業種は幅広い) |
| 投資の大きさ | 35億円以上(中小企業者等は5億円以上) |
| もうける力 | 投資利益率が年平均15%以上 |
| 対象設備 | 機械装置、工具・器具備品、建物、建物附属設備・構築物、ソフトウエア |
| ごほうび | 即時償却または税額控除7%(建物等は4%)、控除は法人税額の20%まで |
| 期限 | 令和11年3月31日までに確認を受け、その日から5年以内に取得・事業供用 |
| 最大の注意点 | 確認書の前に取得した設備は対象外、ほかの設備投資税制が使えなくなる |
大型投資は、一度決めると何年も会社の数字を左右します。設備を発注する前に、計画・税金・資金繰りを一緒に設計しておけば、この制度の効果を最大限に引き出せます。来期の設備投資を考え始めたいまが、検討を始めるよいタイミングです。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)の設備投資税制の活用支援

大型投資の計画づくりから伴走します
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士が代表を務める認定経営革新等支援機関です。法人支援実績150社以上の経験をもとに、税制を使う前提で、設備投資の計画づくりから伴走します。
- 投資計画・事業計画づくり。売上・原価の見込みを整理し、投資利益率の試算の根拠づくりをお手伝いします。
- 資金調達の計画。自己資金と借入のバランスを考え、金融機関への説明資料を整えます。
- ほかの税制との比較。経営力向上計画や先端設備等導入計画など、使える制度を並べて比較します。
- 専門家との連携。公認会計士・税理士による事前確認や、即時償却・税額控除の選択などの税務判断は、公認会計士・税理士と連携して進めます。
中小企業診断士 · 認定経営革新等支援機関 5億円以上の設備投資なら、建物も含めて 即時償却 または 最大7%の税額控除。 「大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)」は、令和8年度税制改正で新設された国の制度です。工場・倉庫・店舗などの建物まで対象になる点が、こ...
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)では、中小企業診断士(経済産業大臣登録)にて 次の【設備投資の税制優遇活用支援】を行っています。 \一覧表(税制優遇)/ 01. 固定資産税軽減による初期負担抑制の先端設備等導入計画(こちらをクリック) 02...
サービス提供の流れ
- お申し込み。お問い合わせフォームからお申し込みください。直近の決算書と、設備投資の概要(見積書など)をご用意いただくとスムーズです。
- ヒアリング。投資の目的、設備の内容、導入スケジュール、資金計画をお聞きします。
- 制度の選定と計画づくり。使える制度を比較し、投資計画と投資利益率の根拠資料を整えます。
- 申請に向けた伴走。公認会計士・税理士の事前確認や経済産業局への相談に向けて、書類づくりをサポートします。
「5億円に届くか分からない」「どの税制が合うか分からない」という段階でも構いません。設備を発注する前のご相談が、いちばん選択肢を広く残せます。
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大胆な投資促進税制のよくある質問

大胆な投資促進税制とは何ですか?
国内で大規模かつ高付加価値な設備投資をする事業者に、即時償却または税額控除(最大7%)を認める税制です。令和8年度税制改正で創設され、正式名称は「特定生産性向上設備等投資促進税制」です。経済産業大臣の確認を受けた設備が対象になります。
いつから申請できますか?
経済産業省は2026年7月31日に確認申請の受付開始を公表しています。令和11年(2029年)3月31日までに確認を受け、確認の日から5年以内に設備を取得し、事業に使い始めることが必要です。
中小企業でも使えますか?
使えます。企業規模や業種を問わない制度で、中小企業者等は対象設備の取得価額の合計が5億円以上(大企業は35億円以上)であれば対象になりえます。あわせて投資利益率が年平均15%以上などの要件を満たす必要があります。
投資額が5億円に届かない場合はどうすればよいですか?
この制度は使えません。中小企業であれば、経営力向上計画の認定による中小企業経営強化税制や、先端設備等導入計画による固定資産税の軽減など、ほかの制度を検討するのが現実的です。
建物だけの投資でも対象になりますか?
建物だけの投資計画は対象外です。建物に加えて、機械装置やソフトウエアなど、生産等設備を構成するほかの設備への投資を含める必要があります。
中古の設備は対象になりますか?
中古資産は対象外です。人に貸すための設備、研究開発に使う設備、国外に置く設備も対象になりません。
個人事業主も使えますか?
申請要領では、青色申告書を提出する法人・個人が対象とされています。常時使用する従業員が1,000人以下の個人は中小企業者等にあたり、投資下限額は5億円以上です。
投資利益率15%はどう計算しますか?
(営業利益+減価償却費)の1年あたりの増加額を、設備投資額で割って計算します。5億円の投資なら、毎年7,500万円以上の増加が必要です。経済産業省が投資利益率のエクセル計算シートを公開しています。
確認書が出る前に設備を取得したらどうなりますか?
確認書の発行前に取得した設備は、税制の対象になりません。申請から確認書の発行までは30日程度(休日や補正の日数を除く)かかるため、設備の引き渡し時期から逆算して余裕を持って申請することが大切です。
即時償却と税額控除はどちらが得ですか?
会社の利益の状況によって変わります。即時償却は税金の支払いを先送りして手元資金を厚くする効果、税額控除は税金そのものを減らす効果があります。税額控除は法人税額の20%が上限のため、投資額に比べて法人税額が小さい会社は使い切れないことがあります。設備ごとに選べるので、税理士と試算して決めるのが安全です。
中小企業経営強化税制と一緒に使えますか?
確認を受けた投資計画の実施期間を含む事業年度は、会社単位で中小企業経営強化税制、地域未来投資促進税制、カーボンニュートラルに向けた投資促進税制が使えなくなります。どちらが有利か比べてから申請しましょう。
事前確認は誰に頼めばよいですか?
公認会計士または税理士です。確認申請書と裏付け資料に食い違いがないか、対象設備や投資利益率の算出方法を確認し、事前確認書を発行します。
計画どおりに利益が出なかったら罰則はありますか?
申請要領では、投資計画の終了時に当初計画を下回っていても特段の罰則はないとされています。ただし、計画が虚偽の内容など悪質な場合は、社名の公表などの対応が予定されています。
どこに申請・相談すればよいですか?
申請は、本社所在地を管轄する経済産業局にGビズフォームで行います。申請前の事前相談がすすめられています。制度の一般的な質問は、大胆な投資促進税制サポートセンター(0570-093-930、平日9時〜17時30分)で受け付けています。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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参考資料
- 経済産業省「大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)」(2026年8月31日更新)
- 経済産業省「大胆な投資促進税制 パンフレット」
- 経済産業省 経済産業政策局 産業創造課「大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)について」(申請要領)
- 経済産業省「大胆な投資促進税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)の申請受付開始について」(2026年7月31日)
- パートナーシップ構築宣言ポータルサイト
※本記事は2026年9月時点の公表情報をもとにした一般的な情報提供です。制度の期限や要件は改正により変わることがあります。個別の税務判断は、税理士・公認会計士にご相談ください。
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