受注は途切れていない。決算も黒字が続いている。それでも、自分の代で会社を畳むしかないと考え始めてはいないでしょうか。
子どもは別の道に進み、社内を見渡しても、経営まで引き受けられる人が見当たらない。管工事会社の経営者から、いちばん多く届くご相談です。
結論から申し上げます。後継者がいないことと、会社を残せないことは、まったく別の問題です。
会社を残す道は、廃業を含めて4つあります。そして、この記事の主軸は4つ目の第三者承継(M&A)です。
決断を先送りするほど、選べる道は静かに減っていきます。
- 黒字なのに廃業を考え始めた経営者の方
- 親族にも社内にも後継者がいない方
- 従業員の行く先が気がかりな方
- 長年の顧客への責任を感じている方
- 職人の技術を残したい管工事会社の方
- 管工事会社で後継者不在と黒字廃業が起きる理由
- 廃業を選んだときに現場・従業員・顧客に起きること
- 会社を残す4つの選択肢と、それぞれの向き不向き
- 第三者承継(M&A)で技術承継をつなぐ進め方
- 税理士・弁護士とKICKの役割の切り分け
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、法人支援150社以上の実績で承継の全体設計に伴走してきました。
読み終えるころには、まだ元気なうちに何から手をつければよいかが見えているはずです。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは会社の現状をお聞かせください。
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管工事の事業承継が後継者不在で止まる理由と、黒字廃業という結末

結論を先に述べます。管工事会社の事業承継が止まる原因は、業績ではありません。引き継ぐ相手が決まらないまま、時間だけが過ぎることです。
だから黒字でも廃業が起きます。まずは、その構造を分けて見ていきます。
黒字廃業とは何か
黒字廃業とは、利益が出ていて債務超過でもない会社が、後継者不在などの理由で事業をやめることをいいます。業績不振による倒産とは、性質がまったく違います。
倒産は「続けられなくなる」現象です。黒字廃業は「続けられるのに、続ける人がいない」現象です。
この違いは大きな意味を持ちます。続けられる会社なら、引き受けたいと考える相手が存在するからです。
管工事会社で後継者不在が起きやすい3つの事情
管工事業には、承継を難しくする業種特有の事情があります。代表的なものは次の3つです。
- 資格と経験がそろった人でなければ、現場と会社の両方を任せられない
- 社長自身が最も腕の立つ技術者で、営業も見積もりも一人で担っている
- 役員・幹部が社長と同世代で、一緒に年を重ねてきた
管工事業は建設業許可の業種のひとつです。許可を維持するには、経営業務の管理責任者にあたる人と、営業所ごとの専任技術者が必要になります。
専任技術者になれるのは、管工事施工管理技士などの資格を持つ人や、一定の実務経験を積んだ人です。その要件を満たす人が社長ひとりだけ、という会社は珍しくありません。
つまり管工事会社の承継は、株式を渡すだけでは終わりません。許可を支える人まで含めて引き継ぐ必要があります。
「まだ現役だから」が先送りを生む
体が動くうちは、社長が現場に出れば会社は回ります。だからこそ、承継の話が後回しになります。
ところが、後回しにしている間にも会社の中身は変わっていきます。ベテランの職人が定年を迎え、若手の採用は思うように進みません。
気づいたときには、社長が抜けた後の姿を誰も描けない状態になっています。ここまで来ると、打てる手はかなり限られます。
廃業を選んだときに実際に起きる3つのこと
ここで大事なことを申し上げます。廃業は悪い選択ではありません。納得したうえで選ぶのであれば、立派な決断です。
ただし、何が起きるかを知らないまま選ぶのは避けたいところです。廃業では、主に次の3つのことが同時に起こります。
1つ目は、設備と資産の処分です。工事車両、機械工具、資材、倉庫や資材置場、そして事務所。これらを引き取り手のある順に片づけていく作業が発生します。
手間も時間もかかります。処分にどれだけの費用がかかるかは、保有資産や不動産の状況で大きく変わるため、一律には言えません。
2つ目は、従業員の再就職です。資格を持つ技術者は他社でも歓迎されます。しかし全員が同じ条件で移れるとは限りません。
長く勤めた人ほど、いまの給与・通勤・人間関係を前提に生活を組み立てています。会社が無くなれば、その前提ごと組み直すことになります。
3つ目は、顧客のメンテナンス先が失われることです。ここが管工事業でいちばん見落とされます。
技術承継が止まると、顧客の建物が困る
管工事は、工事を納めて終わりの仕事ではありません。配管の更新、詰まりや漏水の対応、空調や給湯の入替え。建物がある限り、面倒を見続ける仕事です。
そして、その建物の図面にない配管の癖を知っているのは、施工した会社だけということがよくあります。どこを触ると漏れるかを知っているのは、実際に触ってきた職人です。
会社が無くなれば、その知識も一緒に消えます。顧客は新しい業者を探し、その業者は建物の中身を一から調べ直すことになります。
これが、技術承継が止まるということの中身です。技術は資格の紙ではなく、現場の判断の積み重ねだからです。
放置したときに、いちばん困るのは誰か
整理すると、決断を先送りした結果として困るのは、経営者本人だけではありません。
- 従業員 └ 働く場所と、積み上げた経験の行き先を失う
- 顧客 └ 建物の面倒を見てくれる相手を失う
- 取引先 └ 長く続いた仕事の流れが途切れる
- 家族 └ 会社の後始末と、その後の生活設計に向き合うことになる
だからこそ、早い段階で選択肢を並べて比べる価値があります。次の章で、その4つを見ていきます。
管工事の事業承継で会社を残す4つの選択肢|第三者承継(M&A)を軸に比べる

結論を先に述べます。後継者不在の管工事会社が取りうる道は、次の4つです。
- 廃業(自らの意思で会社を閉じる)
- 親族内承継(子や親族へ引き継ぐ)
- 役員・従業員承継(社内の人へ引き継ぐ)
- 第三者承継(M&A)(社外の会社・人へ引き継ぐ)
このうち、親族にも社内にも候補がいない会社にとって現実的な軸になるのが、4つ目の第三者承継(M&A)です。この記事も、そこを主軸として扱います。
ただし最初から1つに絞る必要はありません。まず4つを同じ物差しで比べます。
4つの選択肢を同じ物差しで比べる
比べる軸は、雇用・技術と顧客・準備にかかる時間・主な課題の4つです。
| 選択肢 | 雇用 | 技術と顧客 | 準備の目安 | 主な課題 |
|---|---|---|---|---|
| 廃業 | 残らない | 残らない | 半年〜1年程度 | 資産の処分・従業員の再就職・顧客への説明 |
| 親族内承継 | 残る | 残る | 5年〜10年 | 後継者の育成・株式と相続の整理・個人保証 |
| 役員・従業員承継 | 残る | 残る | 3年〜5年 | 株式の買取資金・個人保証の引継ぎ・役員の年齢 |
| 第三者承継(M&A) | 原則として残る | 残る | 1年〜3年 | 相手探し・条件のすり合わせ・社内への説明の順序 |
準備の目安は、あくまで一般的な目安です。会社の規模や株主構成、資格者の状況によって前後します。
この表で気づいていただきたいのは、雇用と技術が残る道は3つあるということです。後継者がいないという一点だけで、廃業に直行する必要はありません。
選択肢1 廃業を納得して選ぶ場合
廃業が向いているのは、事業の継続そのものに無理がある場合です。たとえば売上の大半が社長個人の腕と人脈で成り立ち、他の人が引き継いでも成立しないケースです。
この場合、無理に誰かへ渡すほうが、渡された側を苦しめます。納得して閉じるほうが、関わる人にとって誠実な選択になることもあります。
大切なのは、比べたうえで選ぶことです。他の3つを検討しないまま「うちは無理だ」と決めてしまうのは、もったいない話です。
選択肢2 親族内承継が成り立つ条件
親族内承継とは、子や親族へ株式と経営を引き継ぐ方法のことです。会社の歴史や取引先との関係をそのまま受け継げるのが強みです。
ただし、条件は厳しめです。後継者本人にその意思があり、現場の経験を積み、資格の取得まで進める時間が必要になります。
管工事業では、施工管理の実務経験が資格の要件に関わります。だから育成には年単位の時間がかかります。本人が「継ぐ」と言っていない段階で計画だけ進めるのは、危険です。
あわせて、株式と相続の整理も必要です。ここは税務の個別判断が絡むため、顧問税理士との連携が欠かせません。
選択肢3 役員・従業員承継で壁になるもの
役員・従業員承継とは、社内の役員や従業員が株式を買い取り、経営を引き継ぐ方法のことです。現場を知る人が継ぐため、従業員や顧客の納得を得やすい方法です。
壁は主に2つあります。1つは、株式を買い取る資金です。もう1つは、金融機関からの借入に付いている経営者保証の引継ぎです。
経営者保証については、金融機関側の対応の考え方をまとめた「経営者保証に関するガイドライン」があります。承継の場面での取扱いについては、取引金融機関に早めに相談しておく価値があります。
そしてもう1つ、見落とされがちな点があります。候補となる役員が社長と同世代なら、その人もまた数年後に同じ問題を抱えるということです。
選択肢4 第三者承継(M&A)という現実的な道
第三者承継(M&A)とは、親族や社内ではなく、社外の会社や個人へ株式や事業を引き継ぐ方法のことです。中小企業の後継者不在への対応として、広く使われるようになりました。
管工事会社が第三者承継に向いている理由は、はっきりしています。
- 建設業許可と有資格の技術者は、相手にとって価値がある
- 建物がある限り、保守と更新の仕事が続く
- 元請けや管理会社との取引実績は、新規では作りにくい
- 職人の採用難が続き、人ごと引き継ぎたい会社が多い
言い換えると、後継者がいないという弱みは、相手から見れば「そのまま欲しい会社」という意味になり得ます。
もちろん、相手なら誰でもよいわけではありません。従業員の雇用をどう扱うか、屋号や社名を残すか、社長がいつまで関わるか。条件は交渉で決めていきます。
なお、株式や事業の譲渡では契約書の中身が結果を左右します。契約内容の法律判断や紛争に関することは弁護士の領域です。専門家を並べて進める前提で考えてください。
会社全体の設計をどう組むかは、管工事会社の事業承継コンサルティングのページでも整理しています。
決断が遅れるほど、選べる道が減っていく
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。4つの選択肢は、いつまでも4つのままではありません。
時間の経過とともに、次のように減っていきます。
つまり、待っていても選択肢は増えません。選べるうちに選ぶ、というのが承継の基本です。
制度の面でも期限があります。親族内承継や社内での承継で使われる事業承継税制(法人版・特例措置)では、特例承継計画の提出期限が令和9年(2027年)9月30日とされています。
一方で、実際に株式の贈与や相続を行う期限は令和9年(2027年)12月31日で、こちらは延長されない見込みです。
計画の提出期限が延びたからといって、余裕ができたわけではありません。実行が間に合わなければ特例は使えないからです。
この制度は納税を猶予するしくみであり、要件を満たさなくなれば猶予が打ち切られることもあります。使えるかどうかは会社ごとの要件次第です。適用の可否や税額の判断は税理士の領域になります。
いま始めるなら、この4手順から
難しく考える必要はありません。次の順番で進めれば、判断材料はそろいます。
- 会社の現状を書き出す(株主、資格者、許可、借入、個人保証、主要顧客)
- 4つの選択肢を自社の事情に当てはめ、消える順番を確かめる
- 従業員と顧客について、譲れない条件を先に決める
- 専門家を並べ、誰に何を任せるかの役割を決める
特に3つ目が大事です。「雇用は守る」「屋号は残す」といった条件を先に決めておくと、相手選びの物差しになります。
ご相談の場で、どれかの選択肢をお勧めすることはありません。廃業を選ぶという結論も含めて、比べるところまでご一緒します。売り込みもお断りの気まずさもありません。
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管工事の技術承継をやり切った先に手に入る3つの未来

結論から述べます。会社を残す道をやり切ると、手に入るものは3つあります。従業員の居場所、顧客との関係、そして経営者自身の穏やかな時間です。
順番に、具体的に見ていきます。
従業員が、これまでの経験のまま働き続けられる
第三者承継(M&A)で会社が続けば、従業員は転職活動をせずに済みます。通勤も、担当している現場も、いままでどおりです。
それだけではありません。相手が同業や設備関連の会社であれば、扱う仕事の幅が広がることがあります。
若手にとっては、教えてくれる先輩がいる環境が続くことに意味があります。技術承継とは、資料を渡すことではなく、教える人と教わる人が同じ現場にいる状態を保つことだからです。
また、大きな組織の下に入ることで、就業規則や社会保険、資格取得の支援といった制度が整うこともあります。従業員にとっては、安心して長く働ける条件が増える方向に働きます。
長年の顧客が、これまでどおり相談できる
ビルの管理会社、工場の設備担当、病院や学校の施設担当。長く付き合ってきた相手ほど、緊急時に頼れることを重視しています。
会社が残れば、その連絡先は変わりません。図面にない配管の癖を知る職人も、そのまま現場に残ります。
顧客にとっては、業者を探し直す手間も、建物の中身を説明し直す手間も発生しません。これは、目立たないけれど大きな価値です。
そして、更新工事や大規模改修といった数年先の話も、途切れずに続けられます。続いている関係を、続いたまま渡せるのが、会社を残す最大の意味です。
経営者自身が、次の時間を選べるようになる
最後は経営者ご本人の話です。承継が決まると、まず個人保証の扱いに道筋がつきます。
借入と会社が個人の生活から切り離されれば、家族の生活設計も立てやすくなります。ここは配偶者やお子さんにとっても、大きな安心につながる部分です。
引継ぎ後の関わり方も選べます。数年は顧問や技術指導として残る方もいれば、一定期間で完全に離れる方もいます。
あわせて、退職金の準備や、法人で加入している保険の役割を点検しておくと、その後の見通しが立てやすくなります。保険は減らすためではなく、承継の局面で守るべきものを守るために整えるものです。削りすぎれば、万一のときに事業や家族の生活へ影響が出ます。
なお、法人向けの保険は2019年(令和元年)の法人税基本通達の改正により、最高解約返戻率に応じて税務上の取扱いが分かれます。契約の時期によっても扱いが違うため、いまの契約が承継の目的と合っているかを点検する価値があります。
従業員の居場所と、顧客との関係と、ご自身の穏やかな時間。この3つを、共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、事業承継士による伴走支援

結論を先に述べます。事業承継は、社長ひとりで進めきれる仕事ではありません。理由は、必要な判断が複数の専門領域にまたがるからです。
社長ひとりで進めると起きる3つの詰まり
ご相談をいただく前に、多くの経営者が同じ場所でつまずいています。
1つ目は、誰にも相談できないことです。従業員に話せば動揺が広がります。取引先に漏れれば受注に影響します。だから胸の中だけで考え続けることになります。
2つ目は、専門家の話が噛み合わないことです。税理士は税務の話をし、保険の担当者は保険の話をします。それぞれ正しいのに、全体としてどう進めるかを描く人がいません。
3つ目は、日々の仕事が優先されることです。現場が回っている限り、承継は今日やらなくてよい仕事に見えます。そうして年が変わっていきます。
共通しているのは、人が悪いわけではないという点です。問題は、全体をつなぐ役がいないまま時間が過ぎることにあります。
誰が何を担当するのかを整理する
専門家の役割は、法律で分かれています。ここを知っておくと、頼み先で迷わなくなります。
| 領域 | 担当する専門家 |
|---|---|
| 税務判断・税務申告・税額計算 | 税理士 |
| 契約書の中身・法律判断・紛争 | 弁護士 |
| 登記(役員変更・組織再編など) | 司法書士 |
| 建設業許可などの許認可の手続 | 行政書士 |
| 承継全体の設計・進行・伴走 | 中小企業診断士・事業承継士 |
KICKが担うのは、いちばん下の行です。税務も登記も許認可も、それぞれの専門家が行います。
その代わり、全体の順番を決め、抜けを見つけ、専門家同士をつなぐ役を引き受けます。ここが空いていることが、承継が進まない最大の理由だからです。
KICKがご一緒すること
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士であり、認定経営革新等支援機関でもあります。法人支援の実績は150社を超えます。
管工事会社の事業承継では、次のような形でご一緒します。
- 会社の現状を棚卸しし、4つの選択肢を同じ物差しで並べる
- 技術者・許可・顧客関係という、決算書に出ない価値を言葉にする
- 従業員と顧客に関する「譲れない条件」を先に決める
- 税理士・弁護士など、必要な専門家との役割分担を組む
- 事業承継専属の保険代理店として、法人保険の役割を再設計する
保険については、商品をお勧めするところから始めません。契約の目的、保険金額、受取人、承継後の役割を洗い出し、過剰なものと足りないものを可視化するところから始めます。
まず現状を並べるだけでも、進む順番がはっきりします。
ご相談前に、これだけはお約束します
初回のご相談は無料です。その場で契約を求めることはありません。特定の選択肢へ誘導することもありません。
資料が整っていなくても構いません。決算書が手元にない状態でも、お話を伺うところから始められます。
「まだ何も決めていない」という段階こそ、いちばん相談する価値のある時期です。決めてしまってからでは、選び直せないことが増えるからです。
売り込みは一切いたしません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。決めていない段階のままで大丈夫です。
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管工事の事業承継と第三者承継(M&A)のよくある質問

ご相談の場でよくいただく質問を、順番にお答えします。
Q. 事業承継の準備はいつから始めればよいですか
A. 経営者が60歳を迎えたころが、ひとつの目安です。もっと早くても構いません。
理由は、選択肢の多さが時間で決まるからです。親族内承継なら育成に5年から10年、社内での承継でも3年から5年はかかります。
まずは会社の現状を書き出すところから始めてください。株主、資格者、許可、借入、個人保証、主要顧客。この6つを1枚にまとめるだけで、話が前に進みます。
Q. 黒字なのに廃業するのは、もったいないことですか
A. 比べたうえで納得して選んだのであれば、もったいなくはありません。
気をつけたいのは、比べずに廃業へ進んでしまう場合です。会社を残す道が3つあることを知らないまま決めると、後から悔いが残ります。
まずは4つを並べてみてください。そのうえで廃業を選ぶのであれば、それは納得のいく決断です。
Q. 第三者承継(M&A)を選ぶと、従業員は解雇されますか
A. 原則として、雇用はそのまま引き継がれる形で進めます。
買い手の多くは、人材と技術を目的に会社を引き受けます。特に管工事業では、資格者と経験者の確保が動機になることが多いためです。
ただし、これは交渉で決める事項です。雇用の維持を条件として最初に提示しておくことが大切です。契約書へどう書くかは弁護士に確認してください。
Q. 第三者承継にはどれくらいの期間がかかりますか
A. 準備から引継ぎの完了まで、1年から3年程度をみておくと安全です。
内訳は、社内の整理と資料づくりに数か月、相手探しと条件のすり合わせに半年から1年、その後の引継ぎに数か月から1年ほどです。
準備が整っている会社ほど短くなります。急ぐ場合でも、株主の整理と決算書の説明資料だけは先に用意してください。
Q. 建設業許可は引き継げますか
A. 引き継げる場合があります。株式を譲る形であれば、会社そのものは変わらないため許可も原則として続きます。
事業譲渡や合併といった形を取る場合は、あらかじめ認可を受けることで許可を承継できるしくみがあります。2020年10月に施行された改正建設業法で設けられたものです。
ただし要件と手続があります。許認可の手続は行政書士の領域ですので、どの形で進めるかを決める段階で確認してください。
Q. 会社の借入に付いている個人保証はどうなりますか
A. 承継の形と金融機関の判断によって変わります。自動的に外れるわけではありません。
第三者承継では、譲渡の実行にあわせて保証の解除を交渉することが一般的です。社内での承継では、後継者が新たに保証を引き受けるかどうかが論点になります。
取扱いの考え方をまとめた「経営者保証に関するガイドライン」があります。まずは取引金融機関へ、承継を検討している旨を早めに伝えてください。
Q. 従業員や取引先に知られずに進められますか
A. 進められます。初期の作業は、経営者とごく限られた人だけで完結できます。
ただし、資料の依頼が急に増えると社内で気づかれることがあります。依頼の理由をどう説明するかを、着手前に決めておいてください。
従業員へ伝える時期と順番は、事前に設計します。伝え方を誤ると、その後の引継ぎがうまく進まなくなります。
Q. 会社の値段はどうやって決まりますか
A. 複数の考え方を組み合わせ、最後は相手との合意で決まります。純資産から見る方法、利益から見る方法、将来の稼ぎから見る方法などがあります。
管工事会社の場合、資格者の在籍状況、許可の種類、保守契約の継続性が評価に影響します。決算書に出ない部分ほど、説明が必要です。
相続税の計算に使う株価の評価とは、目的も考え方も別のものです。税額の判断が必要な場面では税理士へご確認ください。
Q. 事業承継税制は、うちの会社でも使えますか
A. 会社ごとの要件によります。使えると断定できる制度ではありません。
法人版の特例措置では、特例承継計画の提出期限が令和9年(2027年)9月30日、贈与や相続を実行する期限が令和9年(2027年)12月31日とされています。実行の期限は延長されない見込みです。
また、この制度は納税を猶予するしくみです。要件を満たさなくなれば猶予が打ち切られることもあります。適用の可否は、必ず税理士へご確認ください。
Q. どこに相談すればよいのか分かりません
A. 目的で分かれます。全体の設計と進行は中小企業診断士・事業承継士、税務は税理士、契約は弁護士です。
公的な窓口としては、各都道府県に事業承継・引継ぎ支援センターが置かれています。民間の支援機関とあわせて使い分けることができます。
迷ったときは、まず全体を見る人に会うのが早道です。そこで役割分担が決まれば、その後の相談先で迷わなくなります。
まとめ

管工事会社の事業承継で後継者不在に直面したとき、会社を残す道は4つあります。
- 廃業
- 親族内承継
- 役員・従業員承継
- 第三者承継(M&A)
親族にも社内にも候補がいない会社にとって、現実的な軸になるのは第三者承継(M&A)です。建設業許可と有資格の技術者、そして長く続く保守の関係は、相手にとって確かな価値になります。
廃業を選ぶこと自体は、間違いではありません。ただし、廃業では設備の処分、従業員の再就職、顧客のメンテナンス先の喪失が同時に起こります。
そして決断が遅れるほど、選べる道は静かに減っていきます。育成の時間、候補者の年齢、資格者の在籍。どれも時間とともに変わるからです。
だからこそ、まだ元気なうちに並べて比べておく価値があります。急いで決める必要はありません。比べておくだけでいいのです。
まずは、株主・資格者・許可・借入・個人保証・主要顧客の6つを1枚に書き出してみてください。そこから、進む順番が見えてきます。
ご相談の場で、契約をお勧めすることはありません。特定の選択肢へ誘導することもありません。まだ何も決めていない段階のままで構いません。いまの状況を、そのままお聞かせください。
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