「うちは決算書だけ見られたら、ただの中堅の電気工事会社だ」。そう感じたことはないでしょうか。
第一種電気工事士も、電気工事施工管理技士もそろっている。元請とは二十年以上の付き合いが続いている。それでも譲渡の話になると、話題は純資産と利益の額ばかりです。
結論から申し上げます。電気工事会社の値打ちは、貸借対照表に載らないところに集まっています。
そして、その値打ちは売り手が自分で示さない限り、買い手の評価には反映されません。黙っていれば、会社は数字だけで値踏みされます。
- 後継者がおらず第三者承継を考える方
- 資格者と技術を残したい経営者の方
- 決算書だけの評価に納得できない方
- 元請との関係の引き継ぎが不安な方
- 何から準備すべきか分からない方
- 電気工事会社の価値が決算書に表れにくい理由
- 買い手が高く評価する3つの無形資産の中身
- 事業の棚卸しで無形資産を見える形にする具体的な手順
- 有資格者・取引関係・施工実績の示し方と証拠資料
- 税理士・司法書士・弁護士との役割の切り分け
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、法人支援150社以上の実績で承継の全体設計に伴走してきました。
読み終えるころには、明日どの棚のどの書類から手をつければよいかが分かります。
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電気工事 M&Aで評価が伸び悩む理由と、無形資産を放置したときに起きること

この記事が前提にするのは第三者承継(M&A)です。親族や社内に後継者がいないため、会社を外部の相手へ引き継ぐ場面を想定しています。
結論を先に述べます。電気工事会社の評価が伸び悩む最大の理由は、会社の稼ぐ力の源泉が決算書に載っていないからです。
電気工事業は、機械や不動産をあまり持たなくても成り立つ業種です。だからこそ、資産の額だけを見ると小さく見えてしまいます。
無形資産とは何か
無形資産とは、形を持たないのに会社の稼ぐ力を支えている経営資源のことです。人が持つ資格や技能、取引先との関係、過去の実績などが当てはまります。
会社が自分で育てた無形資産は、原則として貸借対照表に金額として載りません。買収などで対価を払って手に入れた場合を除き、帳簿に計上する仕組みがないためです。
つまり、育てた強みほど、決算書からは消えて見えるという構造があります。ここが電気工事会社の評価で最初につまずく点です。
| 決算書に載るもの | 載らないのに価値があるもの |
|---|---|
| 高所作業車・工具・計測器 | 第一種電気工事士など有資格者の層の厚さ |
| 現金預金・売掛金 | 元請や施主との継続的な取引関係 |
| 本社や資材置き場の土地建物 | 公共工事や特定分野の施工実績 |
| 借入金・未成工事受入金 | 安全管理と無事故の記録 |
| 売上高・営業利益 | 職人の育成の仕組みと定着率 |
買い手が電気工事会社を買う本当の理由
買い手は、工具や車両がほしくて会社を買うわけではありません。人と仕事の流れがほしくて買います。
電気工事の現場は、資格を持つ人がいなければ動きません。工事を請け負う体制そのものが、買い手にとっての目的物です。
建設業法では、電気工事業の許可を受けるために、営業所ごとに専任の技術者を置くことが求められます。工事現場にも主任技術者や監理技術者を配置する必要があります。
また、電気工事業の業務の適正化に関する法律により、一般用電気工作物の工事を行う営業所ごとに主任電気工事士を置くことが求められます。
言い換えれば、有資格者は事業を続けるための前提条件です。買い手はそこを最初に確認します。
無形資産を示さないまま交渉に入ると何が起きるか
準備をしないまま交渉のテーブルに着くと、話は数字だけで進みます。そこで起きることは、おおむね次の3つです。
- 純資産と直近の利益だけで、おおまかな価格の枠が決まってしまう
- 買い手のデューデリジェンスで弱点だけが見つかり、価格の引き下げ材料になる
- 強みが社長個人の記憶の中にあるため、引き継げないと判断される
3つ目は特に見落とされます。社長の頭の中にしかない情報は、買い手から見れば承継できないリスクだからです。
元請の担当者と社長が長年築いた信頼も、書面がなければ「社長が退けば消えるもの」と受け取られます。強みが逆に減点要因へ変わってしまう場面です。
先送りするほど無形資産は目減りする
無形資産は放っておくと静かに減っていきます。理由は単純で、資格者にも定年があるからです。
ベテランの第一種電気工事士が数年内に退職を控えているなら、その事実は評価に響きます。若手が育っていなければ、体制の継続性に疑問が付きます。
施工実績も同じです。公共工事の実績は、時間が経つほど参照されにくくなります。
要するに、電気工事会社の評価は「持っている資産の額」ではなく「続けられる体制の証明」で決まります。次の章では、その証明の中身を3つに絞って説明します。
電気工事 M&Aで高く評価される3つの無形資産と、事業の棚卸しで示す手順

結論から述べます。買い手が高く評価する無形資産は、有資格者の体制・継続的な取引関係・施工実績の3つに集約されます。
この3つは、どれも「工事を受注し、法令を守って完成させる力」を裏づけるものです。だから買い手は真っ先に確認します。
そして3つとも、事業の棚卸しという手順を踏めば、数字と事実の形で示すことができます。
事業の棚卸しとは何か
事業の棚卸しとは、会社の事業そのものの中身を調べ、稼ぐ力の源泉と将来性を明らかにする調査のことです。ビジネスデューデリジェンスとも呼ばれます。
財務の調査が数字の正しさを、法務の調査が契約や許認可の適法性を確かめるのに対し、事業の棚卸しは「なぜこの会社は仕事を取れているのか」を扱います。
買い手も事業の棚卸しを行いますが、それは主にリスクを見つけるための調査です。強みを示すには、売り手が先に自社で事業の棚卸しを行うことが有効です。
1つ目の無形資産 有資格者と技術者の体制
最も分かりやすく、そして最も強く評価されるのが有資格者の体制です。電気工事業は資格がなければ工事そのものができません。
電気工事士法にもとづく資格として、第二種電気工事士と第一種電気工事士があります。第一種電気工事士は、一般用電気工作物に加えて、一定規模の自家用電気工作物の工事にも従事できます。
施工管理の面では、建設業法にもとづく国家資格として1級・2級の電気工事施工管理技士があります。1級は、規模の大きな現場で監理技術者として配置できる点で重みがあります。
保安の面では、電気事業法にもとづく電気主任技術者があります。自家用電気工作物の保安管理まで手がける会社なら、この資格の有無が事業の幅を左右します。
買い手が見るのは、資格の名前だけではありません。誰が、いつ取得し、あと何年働くのかという時間軸です。
2つ目の無形資産 元請・施主との継続的な取引関係
2つ目は、元請や施主との継続的な取引関係です。買い手にとっては、承継後の売上が読めるかどうかに直結します。
電気工事業では、ゼネコンや設備会社からの下請、あるいは施主からの直接受注が売上の柱になります。付き合いの長さそのものが、品質と納期への信頼の証明です。
ここで示すべきは、取引先ごとの継続年数と、受注の反復性です。単発の大型工事より、毎年続く保守や改修の仕事のほうが高く見られる場合があります。
ビルや工場の電気設備は、定期的な点検と更新が欠かせません。保守や更新の仕事が積み上がっている会社は、収益の見通しが立てやすいと評価されます。
一方で、特定の1社に売上が偏っている状態は注意が必要です。承継後にその1社との関係が切れると、事業が一気に細るためです。
偏りがある場合は、隠さず示したうえで、担当者だけでなく組織対組織の関係になっている根拠を添えます。基本契約書、年間の発注実績、複数部署との取引などが根拠になります。
3つ目の無形資産 公共工事や特定分野の施工実績
3つ目は施工実績です。とりわけ公共工事の実績と、特定分野に絞った実績は、他社が短期間では真似できません。
公共工事を元請として受注するには、建設業の許可に加えて、経営事項審査を受けたうえで入札参加資格を得る必要があります。経営事項審査では、技術職員の数や完成工事高などが評価項目に含まれます。
この積み上げは、書類を整えれば明日できるというものではありません。だからこそ、買い手にとっては時間で買えない価値になります。
特定分野の実績も同じです。病院、データセンター、工場の受変電設備、鉄道や道路の照明など、分野に固有の作法を知っている会社は限られます。
官公庁の庁舎や学校の改修、特定業種の設備更新といった実績があるなら、分野別に整理して示します。件数と規模、担当した工種まで書き出すことが大切です。
| 無形資産 | 買い手が見る観点 | 用意する証拠資料 |
|---|---|---|
| 有資格者と技術者の体制 | 資格の種類と人数、年齢構成、承継後も残るか | 資格者一覧(資格名・取得年・年齢層)、技術者の配置状況、育成計画 |
| 元請・施主との取引関係 | 継続年数、反復性、売上の偏り、組織対組織か | 取引先別の売上推移、基本契約書、保守契約の一覧 |
| 公共工事や特定分野の施工実績 | 入札参加資格の有無、分野の専門性、再現性 | 工事経歴書、経営事項審査の結果通知、分野別の実績一覧 |
事業の棚卸しで3つの無形資産を洗い出す手順
手順は次の5つです。順番どおりに進めると、資料が自然につながります。
- 許認可と資格を確認する。建設業許可、電気工事業の登録、入札参加資格の有効期限を一覧にする
- 人の棚卸しをする。資格者を氏名ではなく職種と資格で整理し、年齢層と勤続年数を添える
- 取引先を数字にする。直近3期の取引先別売上と、継続年数、契約の有無を並べる
- 工事を分類する。工事経歴書をもとに、発注者の種別と分野、規模ごとに件数を集計する
- 弱点を先に書き出す。資格者の高齢化や取引の偏りを、対策とセットで文章にする
5つ目を飛ばさないことが要点です。弱点を先に開示した会社は、買い手から「情報が正確だ」と受け止められます。
逆に、後から買い手の調査で見つかった弱点は、価格の引き下げと信頼の低下の両方を招きます。同じ事実でも、伝える順番で結果が変わります。
企業価値 評価にどう効くのかという考え方
ここで正直に申し上げます。無形資産を整理したから価格がいくら上がる、という計算式はありません。
第三者承継の価格は、最後は交渉で決まります。買い手の事業計画と、譲れない条件のすり合わせの結果です。
ただし、交渉の目安の考え方はあります。買い手は「承継後にこの事業をどれだけ続けられるか」を見て、将来の収益の確からしさを判断します。
資格者が残り、取引が続き、実績が使えるなら、買い手の見通しは立てやすくなります。見通しが立つほど、買い手は強気の条件を出しにくくなります。
逆に不確かな点が多いほど、買い手はリスクを条件に織り込みます。表明保証や、支払いを後ろ倒しにする条件が付くこともあります。
なお、相続税や贈与税の計算で使う自社株の評価は、これとは別の話です。類似業種比準方式や純資産価額方式といった考え方があり、税務上の株価評価と税額の計算は税理士の領域です。
私たちは事業の価値を言葉と数字にする側を担い、税務の判断は税理士に委ねます。両方を混ぜて考えると、判断を誤ります。
3つの無形資産の整理と全体設計をどう進めるかは、電気工事会社のM&Aを見据えた事業承継コンサルティングのページでも説明しています。
資料が手元にそろっていない段階でも、お話だけで構いません。売り込みは一切なく、その場でのご契約もありません。何から手をつけるかだけでも整理できます。
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3つの無形資産を可視化して手に入る未来と、第三者承継の進めやすさ

無形資産を棚卸しすると、何が変わるのか。変化は3つの軸で現れます。
交渉の土俵、従業員の処遇、そして経営者自身の時間です。順に見ていきます。
1つ目の未来 交渉の土俵が数字と事実に変わる
資料がそろうと、話の始まり方が変わります。買い手からの最初の質問に、その場で答えられるようになるからです。
「有資格者は何人ですか」「承継後も残りますか」「公共工事の実績はどの分野ですか」。これらは必ず聞かれます。
その場で一覧を示せる会社と、「調べて折り返します」と答える会社では、受ける印象が違います。情報が整っていること自体が、経営の質の証明になります。
さらに、複数の買い手候補に同じ資料を出せるようになります。比較検討ができる状態は、売り手にとって大きな意味を持ちます。
条件が合わない相手には、無理に合わせなくてよくなります。断る自由が残る状態が、交渉では何より効きます。
2つ目の未来 従業員と資格者の処遇を守れる
多くの経営者が最後まで気にされるのは、価格よりも従業員のことです。この点でも、無形資産の可視化は効きます。
資格者の体制が会社の価値の中心だと買い手が理解すれば、その人たちを大切に扱う動機が生まれます。買い手にとっても、辞められては困る人だからです。
だからこそ、雇用の継続や処遇の維持を条件として交渉しやすくなります。抽象的なお願いではなく、事業上の理由をもって話せます。
資格取得の支援制度や、若手の育成の仕組みも同じです。仕組みとして書面化しておけば、承継後も残りやすくなります。
長年一緒に現場へ出てきた人たちの居場所を守ること。それは価格交渉と同じくらい、承継の成否を決める要素です。
3つ目の未来 経営者自身が納得して次へ進める
3つ目は、経営者自身の納得です。自社の強みを言葉にする作業は、これまでの仕事を振り返る作業でもあります。
どの現場で何を身につけ、誰と信頼を築いてきたのか。それを書き出すと、会社の輪郭がはっきりします。
結果として、譲る相手を選ぶ基準が自分の中に生まれます。基準があれば、迷いが減ります。
そして交渉に費やす時間も短くなります。資料の追加依頼のたびに現場が止まる、という事態を避けられるからです。
数字と事実で語れる状態、従業員の居場所が守られる状態、そして経営者自身が納得できる状態。この3つを共に手に入れましょう。
自社だけで電気工事 M&Aの準備を進める限界と、事業承継士による伴走支援

ここまでの手順は、理屈のうえでは自社だけでも進められます。ただし、実際にやり切れる会社は多くありません。
理由は3つあります。時間、客観性、そして専門領域の切り分けです。
自社だけで進めるときの3つの壁
1つ目は時間です。工事の繁忙期と重なれば、資料づくりは後回しになります。
2つ目は客観性です。自社の強みは、内部の人間にとっては当たり前すぎて言葉になりません。
「うちは特別なことはしていません」。この一言で、価値が伝わらないまま終わる場面を何度も見てきました。
3つ目は専門領域の切り分けです。承継の実務には、複数の専門家が関わります。誰に何を頼むかを間違えると、時間もお金も無駄になります。
誰が何を担当するのか
第三者承継では、専門家の役割がはっきり分かれています。次の表のとおりです。
| 担い手 | 担当する領域 |
|---|---|
| 中小企業診断士・事業承継士(KICK) | 承継全体の設計、事業の棚卸しによる無形資産の可視化、資料づくりの伴走 |
| 税理士 | 税務判断、税務申告、税額の計算、税務上の自社株評価 |
| 弁護士 | 契約書の作成と確認、法律判断、紛争への対応 |
| 司法書士 | 株式や役員に関する登記 |
| 行政書士 | 建設業許可などの許認可に関する手続 |
この分担は、どれが上でどれが下という話ではありません。それぞれの領域に、それぞれの専門性があります。
問題が起きるのは、分担が曖昧なまま時間だけが過ぎるときです。全体を見る人がいない状態が、承継の準備を止めます。
KICKが担うこと
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、承継の全体設計と伴走を担います。認定経営革新等支援機関でもあります。
電気工事会社の第三者承継では、次のような形でお手伝いします。
- 強みとなる無形資産の洗い出しと、買い手に伝わる資料への整理
- 有資格者の体制と育成の仕組みを、承継後も続く形に整えること
- 取引先との関係を、個人ではなく組織の資産として言葉にすること
- 施工実績を分野別に集計し、専門性の輪郭をはっきりさせること
- 税理士・弁護士など、必要な専門家との橋渡し
あわせて、事業承継専属の保険代理店として、法人保険の役割を承継の設計に合わせて見直すこともできます。減らすための見直しではなく、守るための再設計という考え方です。
削りすぎれば、万一のときに事業の継続や家族の生活に影響が出ます。いまの契約が、いまの目的と合っているかを点検する価値があります。
法人保険の税制上の取扱いは、2019年の法人税基本通達の改正により、最高解約返戻率に応じて区分されるようになりました。古い契約と新しい契約で扱いが違う点にも注意がいります。
具体的な処理は、必ず顧問税理士と確認しながら進めます。私たちが税務判断を代わって行うことはありません。
準備の途中で止まっている会社ほど、お役に立てます。売り込みは一切ありません。ご相談だけで終えていただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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電気工事 M&Aと企業価値 評価に関するよくある質問

実際のご相談で多い質問をまとめました。気になる項目から読んでください。
Q. 電気工事会社の企業価値はどうやって決まりますか
A. 第三者承継の価格は、最終的には売り手と買い手の交渉で決まります。出発点になるのは、純資産の額と、これから見込める利益です。
そこに、承継後も事業を続けられるかという判断が加わります。有資格者が残るか、取引が続くか、実績が使えるかという点です。
まずは自社の無形資産を一覧にして、交渉の材料をそろえるところから始めてください。
Q. 有資格者が多いと、本当に評価は上がりますか
A. 人数そのものより、体制として続くかどうかが見られます。資格者がいても全員が定年間近なら、買い手は不安を感じます。
評価につながるのは、資格の種類と年齢構成のバランスです。若手が資格を取る仕組みがあることも、大きな加点材料になります。
資格者の一覧に、取得年と年齢層、育成計画を添えて整理してみてください。
Q. 事業の棚卸しは売り手が先に行う必要がありますか
A. 義務ではありませんが、行う価値は大きいと考えています。買い手が行う事業の棚卸しは、リスクを見つけることが主な目的だからです。
売り手が先に行えば、強みを示す資料を自分の言葉で用意できます。弱点も、対策とセットで先に伝えられます。
交渉が具体化する前の、時間に余裕がある段階で着手するのが向いています。
Q. 事業の棚卸しではどんな資料を用意すればよいですか
A. 大きく3種類です。許認可に関するもの、人に関するもの、工事と取引先に関するものです。
具体的には、建設業許可の通知、電気工事業の登録に関する書類、資格者の一覧、工事経歴書、取引先別の売上推移などが基本になります。
まずは手元にある書類を集め、足りないものを洗い出すところから始めてください。全部そろっていなくても着手できます。
Q. 公共工事の実績は第三者承継で有利になりますか
A. 有利に働く場面が多いと言えます。公共工事の元請受注には、建設業の許可に加え、経営事項審査と入札参加資格が必要だからです。
この積み上げは短期間では作れません。買い手が新しい分野へ広げたい場合、実績のある会社は魅力的に映ります。
工事経歴書をもとに、発注者の種別と分野ごとに件数を集計しておくと、そのまま説明資料になります。
Q. 元請との取引は、承継後も続きますか
A. 続く場合も、見直される場合もあります。取引が社長個人の関係に依存しているほど、切れる可能性は高くなります。
逆に、複数の担当者や部署とやり取りがあり、基本契約や保守契約が結ばれていれば、承継後も続きやすくなります。
いまのうちに、担当者以外の接点を増やし、契約の形を整えておくことをおすすめします。
Q. 従業員や資格者には、いつM&Aを伝えればよいですか
A. 一般的には、条件がある程度固まった段階で伝えます。早すぎると憶測が広がり、資格者の離職につながる恐れがあるためです。
ただし、伝え方の設計は最初から考えておく必要があります。誰に、どの順番で、何を話すかを決めておくことです。
伝える内容には、雇用と処遇がどうなるかを必ず含めてください。そこが最大の関心事だからです。
Q. 相続税の株価評価と、M&Aの企業価値評価は同じですか
A. 別のものです。相続税や贈与税で使う自社株の評価は、財産評価の考え方にもとづき、類似業種比準方式や純資産価額方式などで計算します。
一方、第三者承継の価格は、買い手が将来どれだけ稼げると見るかで決まります。両者の額が一致しないことは珍しくありません。
税務上の株価評価と税額の計算は税理士の領域です。まず顧問税理士に相談し、事業の価値の整理は別に進めてください。
Q. 赤字が続いていても第三者承継はできますか
A. 可能性はあります。買い手が見ているのは、直近の損益だけではないためです。
有資格者の体制、取引先との関係、施工実績が残っていれば、それ自体が事業の基盤として評価される場合があります。赤字の理由が一時的なものかどうかも見られます。
赤字の背景を数字で説明できるよう、原価の内訳と工事ごとの採算を整理しておいてください。
Q. まず何から始めればよいですか
A. 許認可と資格の棚卸しからです。建設業許可、電気工事業の登録、入札参加資格の有効期限を一覧にしてください。
次に、資格者の一覧と、取引先別の売上推移を作ります。この2つがあれば、話し合いの土台ができます。
作りながら迷った時点で、外部に相談するのが早道です。何をどこまで書くかの基準は、経験がないと決めにくいためです。
まとめ

電気工事会社の値打ちは、貸借対照表の外にあります。それを示すのは、売り手自身の仕事です。
高く評価される無形資産は3つでした。有資格者と技術者の体制、元請・施主との継続的な取引関係、公共工事や特定分野の施工実績です。
この3つを事業の棚卸しで洗い出し、数字と事実の形にする。手順は、許認可の確認、人の棚卸し、取引先の数値化、工事の分類、弱点の先出しの5つでした。
価格そのものは交渉で決まります。ただし、見通しの立つ会社ほど、条件の話し合いは落ち着いて進みます。
税務上の株価評価と税額の計算は税理士の領域です。私たちは事業の価値を言葉と数字にし、全体の設計に伴走します。
準備を始めるのに、決算の締めを待つ必要はありません。今日、書類の棚を開けるところから始められます。
まだ譲ると決めていない段階でも構いません。売り込みは一切なく、その場でのご契約もありません。お断りいただいても、何も変わりません。
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