
酪農家が特定技能の受入れについて、加入している出入国在留管理庁の窓口に相談したところ、「決算が債務超過のままでは受入れの手続きが進められません。企業評価書を用意してください」と言われた。
債務超過の原因は、配合飼料価格の高止まりと生乳価格が上がらないことにあります。酪農経営はここ数年、輸入原料への依存と円安の影響を強く受け、頭数を減らさざるを得ない農家が全国で増えています。
このまま企業評価書を用意できなければ、今いる特定技能・技能実習(育成就労)人材の継続雇用すらできなくなります。継続雇用できなければ搾乳・飼育に必要な人手を確保できず、確保できなければ生乳生産を維持できず、売上は作れません。最悪の場合、酪農経営そのものが立ち行かなくなります。
ただし、債務超過があっても、中小企業診断士による「企業評価書(改善の見通しについて評価を行った書面)」を適切に整えれば、受入れを継続できる可能性は十分にあります。
この記事はこんな方におすすめです
- 配合飼料価格の高騰で収益が圧迫されている方
- 生乳価格が伸び悩み、赤字が続いている方
- 決算が債務超過で受入れ審査が不安な方
- 企業評価書を誰に頼めばいいか分からない方
この記事では、酪農家が債務超過に陥る典型的な構造から、企業評価書の中身、中小企業診断士に依頼する具体的な流れまでを、初めて依頼する方にも分かるようにまとめました。
「何をどこから揃えればいいのか分からない」という状態のままでは、審査の直前になって慌てることになりかねません。落ち着いて準備を進めるための地図として活用してください。
この記事で分かること
- 酪農家が債務超過に陥る典型的な原因
- 企業評価書(改善の見通しについて評価を行った書面)の中身
- 中小企業診断士に依頼する3つの手順
- 企業評価書を整えたあとに手に入る経営の未来
中小企業診断士として150社以上の法人支援を行ってきた経験をもとに、実務でつまずきやすいポイントを中心に解説します。まずは現状を整理するところから始めましょう。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
配合飼料高騰と乳価低迷で酪農家が陥る債務超過の構造

結論から言うと、酪農家の債務超過は「経営者の努力不足」で起きているのではなく、業界構造そのものが原因になっているケースが少なくありません。
まず押さえておきたいのは、原因が主に3つに整理できるという点です。
原因1|配合飼料価格の高止まりと円安
日本の配合飼料は、トウモロコシや大豆油かすなど輸入原料への依存度が高く、自給率は2〜3割程度にとどまります。
農林水産省の農業物価指数によれば、家畜用飼料価格は一時2年間で約38%上昇した一方、農産物の販売価格の上昇はごくわずかにとどまり、コストを価格へ転嫁しきれない状態が続きました。
円安局面が続くほど、輸入原料のコストは経営を圧迫し続けます。
帝国データバンクの調査でも、飼料コストの高止まりが酪農業の経営を圧迫する要因として継続的に指摘されており、収益性の厳しさは業界全体の構造的な課題として認識されています。
原因2|生乳需給の緩和による乳価の伸び悩み
生乳は需給バランスの影響を受けやすく、需要が緩めば乳価の引き上げも進みにくくなります。
飼料コストが上がっているのに、収入側の乳価が追いつかない状態が続けば、粗利益はじわじわと目減りしていきます。
原因3|搾乳ロボット等の設備投資に伴う借入負担
省力化のために搾乳ロボットや自動給餌機を導入した酪農家も多くいますが、借入の返済負担が重なると、収益が悪化した局面で資金繰りを一気に圧迫します。
農林水産省「畜産統計」でも、乳用牛の飼養頭数・飼養戸数はともに減少傾向が続いており、離農や規模縮小に追い込まれる農家が一定数存在することが読み取れます。
| 原因 | 経営への影響 |
|---|---|
| 配合飼料価格の高止まり | 変動費の増大で粗利益が圧迫される |
| 生乳需給の緩和・乳価の伸び悩み | コスト増を販売価格に転嫁しづらい |
| 設備投資に伴う借入負担 | 資金繰りが硬直化し赤字が資本を侵食する |
なぜ企業評価書が必要になるのか
特定技能や技能実習(育成就労)の在留資格審査では、外国人技能実習機構(OTIT)等が定める提出書類の一つとして、決算書が債務超過の場合に「改善の見通しについて評価を行った書面」の提出が求められます。
これは、単に「赤字だから受入れ不可」と機械的に判断するのではなく、専門家の目を通して「今後改善が見込めるかどうか」を客観的に確認するための仕組みです。
逆に言えば、債務超過そのものが即NGなのではなく、改善の道筋を説明できるかどうかが審査の分かれ目になります。
この点を理解しないまま、決算書だけを提出して不許可になってしまう酪農家も少なくありません。企業評価書の意味を正しく理解しておくことが、遠回りを避ける第一歩です。
見落としがちな原因|季節変動と後継者難
酪農にはもう一つ、見落とされがちな構造要因があります。生乳生産量には季節変動があり、需要が落ち込む時期に生産調整を求められることもあります。
加えて、家族経営が中心の酪農業では後継者不在の農家も多く、後継者が決まらないまま設備更新の判断を先送りにした結果、老朽化した設備の維持コストがじわじわ利益を圧迫するケースも見られます。
搾乳ロボットや牛舎の修繕を先延ばしにすると、故障や事故のリスクが高まり、かえって突発的な出費がかさむこともあります。日々の忙しさの中で「今は仕方ない」と後回しにした判断が、数年後の資金繰りに響いてくるのです。
こうした複数の要因が重なることで、単年度の赤字が2期・3期と積み重なり、純資産がマイナスの債務超過へと移行していきます。
放置したときに起きること
この構造を放置すると、赤字が2期・3期と続き、純資産がマイナス、つまり債務超過に転じます。
農林水産省「畜産統計」でも乳用牛の飼養戸数・飼養頭数がともに前年から減少していることが示されており、離農や規模縮小の流れは酪農家個社だけの問題ではなく、業界全体の構造として続いています。
債務超過のまま何も手を打たないと、特定技能や技能実習(育成就労)の在留資格更新・新規受入れの審査で「事業の継続性」に疑義を持たれ、外国人技能実習企業評価書に相当する書面の提出を求められる可能性が高まります。
搾乳や飼養管理の担い手を外国人材に頼っている酪農家にとって、受入れが止まることは頭数維持そのものが難しくなることを意味します。
人手が減れば搾乳回数や飼養管理の質が落ち、生産性が下がってさらに収益が悪化するという、負のスパイラルに入りかねません。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
酪農家が特定技能・技能実習の受入れを続けるための企業評価書の作り方

結論として、押さえるべき手順は3つです。抽象的な心構えではなく、実務レベルで進め方を確認していきましょう。
手順1|決算書と試算表で債務超過の実態を把握する
最初に行うのは、直近2期分の決算書と最新の試算表を突き合わせ、どの科目が悪化しているのかを数字で把握することです。
飼料費や借入金の返済負担がどこまで利益を圧迫しているかを可視化すると、次の改善計画が具体的になります。
手順2|改善の見通しについて評価を行った書面の土台となる改善計画を作る
次に、飼料コストの管理方法、搾乳頭数や乳量の改善目標、価格転嫁の余地など、実行可能な改善計画を数値目標つきでまとめます。
ここが甘いと、企業評価書の説得力が弱くなり、審査官に「本当に改善するのか」という疑問を持たれやすくなります。
債務超過 理由書のサンプルを探している方も多いですが、理由書単体ではなく、改善計画とセットで整えることが重要です。
手順3|中小企業診断士へ依頼し企業評価書を作成する
改善見通しについて評価を行う書面、いわゆる企業評価書は、出入国在留管理庁が定める審査要領のもと、中小企業診断士または公認会計士が作成する必要があります。
「企業評価書 税理士」と検索して探す方もいますが、税理士は制度上この評価書面を作成できません。誤った専門家に依頼して時間をロスしないよう、最初から対応できる資格者を選ぶことが大切です。
企業評価書のサンプルやフォーマットを確認しながら、自社の決算内容・改善計画に沿った内容で作成を進めます。
作成にあたっては、次のような項目を診断士とすり合わせながら固めていきます。
- 直近2期分の決算内容と債務超過の金額
- 飼料費・借入返済など収益を圧迫している具体的な費目
- 頭数・乳量・価格転嫁などの改善計画とその根拠
- 改善計画を実行した場合の今後の見通し
この4点が揃っていると、審査官が読んだときに「一時的な赤字であり、改善の道筋が明確」と判断しやすくなります。
企業評価書の作成については、中小企業診断士による企業評価書作成サポートで詳しい流れを確認できます。
企業評価書は「一度出せば終わり」ではなく、特定技能の定期報告や在留資格更新のたびに、経営状況の説明を求められる場面で活用します。最初にしっかり土台を作ることが、その後の負担軽減につながります。
依頼のタイミングと進め方の考え方
「決算が確定してから相談すればいい」と考える方もいますが、試算表の段階で早めに相談したほうが、改善計画に反映できる選択肢が多く残ります。
費用の具体額は経営状況によって異なるため、この記事では明記しませんが、無料相談の時点で概算の考え方を確認することができます。まずは決算書と試算表を手元に用意し、現状を整理するところから始めてみてください。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
企業評価書を整えた酪農家が手に入る3つの未来

企業評価書を整えることで、抽象的な安心感ではなく、次の3つの軸で変化が実感できるようになります。
数字|金融機関・審査官に説明できる経営になる
改善計画の数値目標が明確になることで、金融機関との返済交渉や、特定技能・技能実習の審査でも、自社の状況を根拠を持って説明できるようになります。
「なんとなく厳しい」ではなく、「どの費目が・どれだけ・いつまでに改善するか」を数字で語れることは、金融機関からの信頼にも直結します。
時間|搾乳・飼養管理の担い手を安定して確保できる
受入れ審査が通れば、外国人材による搾乳・飼養管理の体制を維持できます。人手を確保できている酪農家ほど、経営者自身が改善計画の実行に時間を割けるようになります。
逆に、受入れが滞ると、経営者自身が搾乳や飼養管理の現場に張り付かざるを得なくなり、経営を立て直すための時間そのものが失われてしまいます。
関係性|家族・後継者と数字を共有できる経営になる
企業評価書の作成過程で経営状況を整理すると、家族経営の中でも「なぜ厳しいのか」「何をすれば改善するのか」を共有しやすくなります。
後継者がいる場合は、数字で語れる経営基盤を引き継げることが、将来の事業継続にもつながります。
金融機関、外国人材、そして家族。3つの関係者すべてに「この経営は前に進んでいる」と伝えられる状態をつくることが、企業評価書を整える本当の価値です。
数字・時間・関係性のどれか一つではなく、この3つが揃って初めて、経営者自身が「この先も酪農を続けていける」という安心感を持てるようになります。
配合飼料高騰という業界構造の逆風があっても、経営の土台を整えた酪農家から、この3つの未来を共に手に入れましょう。
酪農家が自社だけで進める限界と、KICKコンサルティングの支援

ここまでの手順を読んで、「理屈は分かるが、自社だけで進めるのは難しい」と感じた方も多いのではないでしょうか。
企業評価書の作成には専門性の壁があります。財務分析の知識だけでなく、出入国在留管理庁の審査要領に沿った書き方を理解していないと、せっかく作成しても審査で疑義を持たれてしまうことがあります。
日々の搾乳・飼養管理で手一杯の中、決算書の読み込みや改善計画の作成に時間を割くのは大きな負担です。判断を誤ると、審査のやり直しでさらに時間を失うリスクもあります。
特に、改善計画の数値目標を「実行できない水準」で設定してしまうと、後になって計画未達が続き、かえって信頼を損なう結果にもなりかねません。実行可能性まで見据えた計画づくりには、財務の専門知識が欠かせません。
だからこそ、専門家に任せる酪農家が増えています。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)では、代表・松本昌史(中小企業診断士)が、法人支援150社以上の実績をもとに、決算分析から改善計画の策定、企業評価書の作成まで一貫して対応しています。
認定経営革新等支援機関(中小企業庁)として、酪農業を含む畜産・農業分野の経営課題にも向き合ってきました。
具体的には、次のような支援を行っています。
- 決算書・試算表を踏まえた債務超過の原因分析
- 飼料コスト管理や乳量改善を織り込んだ改善計画の策定支援
- 出入国在留管理庁の審査要領に沿った企業評価書の作成
- 特定技能の定期報告・在留資格更新時の経営状況説明のサポート
「何から手をつければいいか分からない」という段階からでも、決算資料をお持ちいただければ、現状の整理からご一緒できます。
初めて専門家に相談する経営者ほど、「こんな細かいことまで聞いていいのか」と遠慮しがちですが、飼料の仕入れ方法や牛群の入れ替え方針など、現場の細部を伺うことが、実行できる改善計画づくりの第一歩になります。
お断りいただいても、費用は一切かかりません。1社ごとに時間をかけて向き合うため、月あたりのご相談数には限りがあります。まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問

Q. 酪農家でも特定技能や技能実習の外国人材を受け入れられますか?
A. 農業は特定技能の対象14分野の一つで、酪農(畜産)も受入れ可能な業務区分に含まれます。決算が債務超過であっても、企業評価書を提出することで受入れが認められる可能性があります。
Q. 企業評価書とはどのような書類ですか?
A. 直近期末が債務超過の企業について、中小企業診断士または公認会計士が「改善の見通し」を評価してまとめる書面です。出入国在留管理庁の審査要領上、必要書類の一つに位置付けられています。
Q. 企業評価書は誰でも作成できますか?
A. いいえ。作成できるのは、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格者、具体的には中小企業診断士または公認会計士に限られます。税理士は作成できない点に注意が必要です。
Q. 企業評価書のサンプルやフォーマットはありますか?
A. 決算内容や改善計画の中身によって記載事項が変わるため、汎用のフォーマットをそのまま使うことはおすすめできません。決算の状態、飼料費や借入負担の水準、改善計画の実現可能性によって、盛り込むべき内容は一社ごとに異なります。自社の状況に合わせて、専門家と一緒に作成することが望ましいです。
Q. 債務超過の理由書はどのように書けばいいですか?
A. 単に「赤字だった」と書くのではなく、配合飼料高騰など外的要因と、頭数・乳量などの内的要因を分けて整理し、改善計画と結び付けて書くことが求められます。
Q. 企業評価書の作成にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 決算内容の分析から改善計画の策定、評価書の仕上げまで含めると、一般的に数週間程度を見込むケースが多いです。決算資料が整っているほど短縮できます。
Q. 育成就労制度に移行しても企業評価書は必要ですか?
A. 2027年4月に施行予定の育成就労制度でも、財務状況に関する要件は引き続き重視される見込みです。債務超過がある場合の対応方針は、早めに専門家へ確認しておくと安心です。
Q. 技能実習と特定技能で必要になる書類は違いますか?
A. 制度ごとに提出書類の細部は異なりますが、債務超過がある場合に改善見通しの評価書面が求められる点は共通しています。どちらの在留資格かによって専門家と確認しながら進めます。
Q. 決算が2期連続赤字でも相談できますか?
A. はい。むしろ赤字が続いている段階で早めに相談いただくほうが、改善計画に盛り込める選択肢が多く残っています。決算が固まる前の試算表の段階でもご相談いただけます。
Q. 家族経営の小規模な酪農家でも依頼できますか?
A. はい。経営規模の大小にかかわらず、決算が債務超過であれば企業評価書が求められる可能性があります。従業員数名の家族経営でも、これまで多くの中小企業を支援してきた実務経験をもとに対応しています。
Q. 無料相談では何を聞かれますか?
A. 直近の決算状況、外国人材の受入れ状況や在留資格の種類、審査で指摘された内容などをお伺いします。その場での契約を迫ることはありませんので、安心してご相談ください。
Q. 遠方の酪農家でも相談できますか?
A. はい。決算書や試算表のデータをオンラインで共有いただければ、全国どこからでも相談を進められます。まずは現状の資料をご用意のうえお問い合わせください。
まとめ

配合飼料価格の高止まりと生乳価格の伸び悩みは、酪農家一社の努力だけでは解決しづらい構造的な逆風です。
それでも、決算が債務超過だからといって、特定技能・技能実習(育成就労)の受入れを諦める必要はありません。
中小企業診断士による企業評価書(改善の見通しについて評価を行った書面)を適切に整えることで、審査を通し、搾乳・飼養管理を支える外国人材の受入れを続けられる可能性があります。
大切なのは、決算書と向き合い、改善計画を数字で語れる形にすることです。
配合飼料価格の動向や生乳需給は、酪農家一社の力だけではコントロールできません。だからこそ、自社でコントロールできる「改善計画の中身」と「それを説明する企業評価書の質」に力を注ぐことが、遠回りに見えて最短の道になります。
まずは現状の決算内容を整理するところから、専門家と一緒に一歩を踏み出してみてください。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
関連記事








コメント