
「紙代もインク代も、去年よりまた上がった気がする」「受注は減っているのに、原価だけは膨らんでいく」——印刷会社の経営者・総務担当の方から、こうした声を聞くことが増えています。気づけば決算は債務超過。そんな状態で、特定技能や技能実習(育成就労)の外国人材を受け入れられるのか不安という相談も、ここ一年で目立って増えました。
結論からお伝えすると、債務超過であっても、正しい手順を踏めば受け入れは十分に可能です。ただし、そこには「改善見通しに関する評価書面(企業評価書)」という、専門家にしか作成できない書類が関わってきます。決して自己流や思い込みで進めてよい領域ではありません。あなただけが特別に苦しい状況にあるわけではなく、同じ悩みを抱えながら乗り越えてきた印刷会社は、決して少なくないのです。
この記事では、次のことが分かります。
この記事で分かること
- 印刷・製本業が特定技能を受け入れるための最新要件
- 紙代・インク代高騰で赤字でも審査を通す考え方
- 企業評価書(改善見通し評価書面)の中身と作成の流れ
- 依頼から下書き準備までの実務的な4つのポイント
執筆者は、法人支援実績150社以上・認定経営革新等支援機関のKICKコンサルティング株式会社(銀座本社)代表・中小企業診断士の松本昌史です。読み終える頃には、「自社の場合、何から手をつければいいか」の見通しが具体的に見えているはずです。
この記事はこんな人におすすめ
- 紙代・インク代の高騰で利益が圧迫されている印刷会社の方
- 赤字・債務超過で特定技能の受け入れ審査が不安な方
- 企業評価書を誰に、どう頼めばいいか分からない方
- 人手不足で外国人材の採用を急ぎたい印刷・製本業の方
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
印刷業の赤字・債務超過が深刻化する構造と、放置したときに起きること

印刷業の経営が苦しくなっている背景は、一つではありません。帝国データバンクの調査によれば、印刷業の休廃業・解散は2025年度に230件と過去最多を更新し、倒産91件と合わせて年間300件を超える事業者が市場から退出しました。原因は複合的ですが、共通して指摘されるのが原価構造の変化です。
紙・インク・物流費が同時に上がる「原価の三重苦」
印刷用紙、インキ、電気代、物流費、人件費——あらゆるコストが同時に上昇しています。日本印刷産業連合会が公表した資料では、資材の調達コストは5年前と比較して約40〜50%増という水準にまで達しているとされています。一方で、取引先への価格転嫁は思うように進みません。「失注を恐れて値上げを言い出せない」という現場の声が、利益率を静かに削っていきます。
| 項目 | 5年前との比較の目安 | 経営への影響 |
|---|---|---|
| 印刷用紙・インキ代 | 約40〜50%増 | 粗利率の圧迫 |
| 電気代・物流費 | 上昇傾向が継続 | 固定費の増加 |
| 受注単価 | 価格転嫁が遅れがち | 増収でも利益が残らない |
| 紙媒体の需要 | ペーパーレス化で縮小 | 受注量そのものの減少 |
ここに、デジタル化・ペーパーレス化による紙媒体需要の構造的な縮小が重なります。「原価は上がる、単価は上げにくい、そもそもの仕事量も減る」という三重苦が、印刷業の赤字・債務超過を生む典型的な構図です。
2024年に加わった「印刷・製本」区分という新しい選択肢
この苦境に対して、制度面では一つの動きがありました。2024年3月、工業製品製造業分野の特定技能1号の対象区分に「印刷・製本」が新たに加わったのです。これにより、慢性的な人手不足に悩んでいた印刷会社にとって、外国人材の受け入れという選択肢が現実的なものになりました。
ただし、区分が新設されたばかりであるがゆえに、「うちの決算は赤字続きだが、それでも受け入れられるのか」という不安を持つ経営者が多いのも実情です。制度自体は新しくても、赤字・債務超過企業の受け入れ審査で求められる「改善見通しに関する評価書面」の考え方は、他業種で先行して運用されてきたルールと変わりません。ここから先は、その具体的な進め方を見ていきます。
このまま放置すると、何が起きるか
問題は、これが一時的な逆風ではなく構造的な変化だという点です。何も手を打たないまま数年が経過すると、次のような悪化シナリオが現実味を帯びてきます。景気の一時的な波と違い、原価構造とペーパーレス化の流れは自然に元へ戻るものではないという前提で、向き合い方を考える必要があります。
- 原価上昇分を価格転嫁できず、粗利率が年々低下する
- 設備更新(デジタル印刷機等)の投資が滞り、生産性でも劣後する
- 債務超過が続き、金融機関からの追加融資の判断が慎重になる
- 人手不足を補うための外国人材の受け入れも、審査面での説明が必要になる
とくに最後の点は見落とされがちです。特定技能や技能実習(育成就労)で外国人材を受け入れる際、直近期が赤字かつ債務超過の場合、出入国在留管理庁への提出書類として「改善見通しに関する評価書面(企業評価書)」の提出が求められます。これは中小企業診断士や公認会計士など、企業評価の専門資格を持つ第三者が作成するものであり、税理士は作成者として認められていません。つまり、決算書の数字を正しく計算する専門家と、改善のストーリーを描いて審査官に説明する専門家は、そもそも役割が違うのです。
「価格転嫁できない」と「人手不足」が同時に進む怖さ
印刷業の現場でとくに深刻なのは、原価上昇と人手不足が同時進行している点です。単価を上げられないまま人員が減れば、既存スタッフ一人あたりの負担が増え、納期遅延や品質低下のリスクが高まります。無理な受注を続けた結果、さらに利益が薄くなるという悪循環に陥っている印刷会社も少なくありません。この悪循環を断ち切るには、原価と価格のバランスを見直す経営改善と、現場を支える人材の確保を、同時に進めていく発想が必要です。
印刷業が特定技能を受け入れるための解決策と4つのポイント

ここからは、印刷会社が赤字・債務超過の状態から特定技能の受け入れを進めるための、実務的な手順を解説します。抽象論ではなく、実際に何をどの順番で進めるかを整理しました。ポイントは次の4つです。
ポイント1 特定技能「印刷・製本」区分の対象業務を正確に理解する
印刷・製本は、工業製品製造業分野の特定技能1号の対象区分に追加された比較的新しい枠組みです。オフセット印刷や製本の技能評価試験に合格した人材、または技能実習2号を良好に修了した人材が対象になります。まずは自社の業務(印刷職種・製本職種のどちらに該当するか)を正確に整理することが出発点です。自社の主力工程がオフセット印刷なのか、グラビア印刷なのか、あるいは製本・加工が中心なのかによって、確認すべき試験区分や書類が変わってきます。
ポイント2 業界団体への加入状況を確認する
印刷・製本分野で特定技能人材を受け入れるには、全日本印刷工業組合連合会、全国グラビア協同組合連合会、全日本製本工業組合連合会のいずれかに所属していることが要件とされています。未加入のまま受け入れ手続きを進めてしまい、後から差し戻しになるケースは少なくありません。早い段階で所属状況を確認しておきましょう。地域の組合支部によって手続きの案内が異なる場合もあるため、疑問点があれば所属予定の組合窓口にも早めに問い合わせておくと、後工程での手戻りを防げます。
ポイント3 中小企業診断士による企業評価書を準備する
直近期が赤字かつ債務超過の場合、または直近期は債務超過だが前期は債務超過でなかった場合には、改善の見通しについて専門家が評価した書面の提出が必要になります。記載すべき内容に厳密な指定はありませんが、一般的には次の要素が求められます。
紙代・インク代の高騰という外部要因が主因である場合、それを客観的なデータで裏付けたうえで、価格転嫁や生産性向上によってどう改善に向かうのかを、数字で説明できる形に整理する必要があります。この整理と評価書の作成を専門に行っているのが、企業評価書(改善見通しに関する評価書面)の作成支援サービスです。自社の数字を、審査官に伝わる形に翻訳する作業だとイメージしてください。
ポイント4 管理会計で原価と資金繰りを見える化する
評価書の説得力を高めるには、印刷・製本ごとの原価差異や、紙・インキの調達コストの推移を数字で把握できる体制が欠かせません。どんぶり勘定のままでは、改善の見通しを具体的な数字で示すことができず、評価書の説得力も弱くなります。月次で原価と資金繰りを見える化する管理会計の仕組みを整えることが、評価書の質を高めるだけでなく、その後の経営改善そのものにも直結します。
例えば、案件ごとの粗利率を月次で集計するだけでも、「どの工程・どの取引先で利益が薄くなっているか」が具体的に見えてきます。原因が特定の紙種にあるのか、特定の取引先の単価設定にあるのかが分かれば、評価書に記載する改善策も、抽象的な言葉ではなく実行可能な打ち手として説明できるようになります。
お断りいただいても、費用は一切かかりません。まずは決算書をお持ちいただき、現状を整理するところから始められます。
企業評価書を整えた先に、印刷会社が手に入る未来

企業評価書をきちんと整え、審査を通過した先には、書類上の安心にとどまらない変化があります。ここでは3つの軸で具体的に描きます。
数字の軸 人手不足の解消と受注機会の拡大
印刷・製本の現場を支える人材が確保できれば、繁忙期の受注を断らずに済むようになります。人手不足を理由に取りこぼしていた案件を受けられることは、売上の回復に直結します。さらに、生産ラインの稼働率が安定すれば、1件あたりの製造原価も平準化しやすくなり、価格転嫁と合わせて粗利率の改善効果を数字で確認しやすくなります。
時間の軸 書類不備による差し戻しのない、スムーズな審査
企業評価書の記載内容に不備があると、審査に想定以上の時間がかかったり、追加資料の提出を求められたりします。専門家が最初から要点を押さえた評価書を作成すれば、無駄な往復を避け、最短の見通しで手続きを進められます。「いつ人材が確保できるか分からない」という状態から抜け出し、採用計画や設備投資のスケジュールを具体的に組み立てられるようになることも、時間の軸で得られる大きな変化です。
関係性の軸 金融機関や取引先からの信頼の維持
債務超過という数字だけを見せれば、金融機関や主要取引先は不安を感じます。しかし「なぜ債務超過になったのか」「どう改善に向かうのか」を専門家の評価とともに説明できれば、印象は大きく変わります。改善のストーリーを持つ会社として、これまでの信頼関係を保ちながら次の一手に進むことができます。人手不足の解消、スムーズな審査、そして取引先との信頼——この3つを共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、KICKコンサルティングの支援

ここまで読んで、「言っていることは分かるが、自社だけで対応するのは難しそうだ」と感じた方もいるのではないでしょうか。その感覚は正しいものです。企業評価書の作成には、専門性の壁、時間コストの壁、そして判断ミスのリスクという、3つの壁があります。
企業評価を行う資格を持つ専門家は限られており、しかも入管の審査で通用する評価書を書ける専門家となると、さらに絞られます。自己流で作成した評価書が「改善の見通しの根拠が弱い」として差し戻され、再申請までの数か月、外国人材の受け入れが止まってしまったという相談も実際に寄せられています。だからこそ、企業評価書の作成は専門家に任せる経営者が増えているのです。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、法人支援実績150社以上、認定経営革新等支援機関として、企業評価書の作成支援から、その先の資金繰り改善・利益改善までを一気通貫でサポートしています。単なる書類作成の代わりではなく、紙代・インク代の高騰という外部環境の変化に対し、数字を見える化し、利益が残る構造へ転換するところまでを伴走支援します。
代表の松本昌史は、MBA(経営管理修士)・中小企業診断士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)に加え、一般社団法人金融検定協会の「中小企業事業再生マネージャー」認定を持ち、財務改善と事業再生の両面から企業を支援してきました。企業評価書の作成は、単に審査を通すための作業ではなく、自社の経営課題を客観的に棚卸しする機会でもあります。紙代・インク代の高騰にどう向き合うかという問いは、特定技能の受け入れが終わった後も、印刷会社の経営そのものに関わり続けるテーマです。
ご相談いただいても、しつこい営業は一切ありません。その場でのご契約を求めることもありません。まずは現状の決算書を見せていただくところから始めませんか。
よくある質問

Q. 企業評価書とは、そもそも何ですか。
A. 中小企業診断士や公認会計士など、企業評価の能力を持つと認められた専門資格者が、赤字や債務超過の企業について「改善の見通し」を評価した書面です。特定技能や技能実習(育成就労)、経営管理などの在留資格の審査で、直近期が赤字かつ債務超過の場合などに提出が求められます。
Q. 印刷業でも特定技能の受け入れは可能ですか。
A. 可能です。印刷・製本は工業製品製造業分野の特定技能1号の対象区分に含まれています。ただし、対象業務の範囲や業界団体への加入といった要件があるため、事前の確認が欠かせません。制度が新設されて間もないこともあり、確認すべき項目を見落としやすい点にも注意が必要です。
Q. 債務超過だと、それだけで受け入れは認められませんか。
A. 債務超過という事実だけで一律に不許可になるわけではありません。改善の見通しについて専門家が評価した書面を提出することで、審査を通過できる可能性は十分にあります。
Q. 企業評価書は税理士に頼んでもよいのでしょうか。
A. 税理士は企業評価書の作成者として認められていません。作成できるのは中小企業診断士または公認会計士です。顧問税理士がいる場合でも、評価書についてはこの2つの資格を持つ専門家に別途相談する必要があります。
Q. 企業評価書は、初めてでも依頼できますか。
A. 依頼できます。多くの経営者にとって初めての依頼になるものです。決算書や試算表をもとに、専門家が原因分析から改善の見通しまでを整理しますので、まずは現状の数字を共有するところから始めれば問題ありません。
Q. 企業評価書は誰に頼めばよいですか。
A. 中小企業診断士協会に所属する診断士や、企業評価書の作成実績がある事務所に依頼するのが一般的です。入管審査での通過実績があるかどうかを確認しておくと安心です。
Q. 紙代・インク代の高騰が原因の赤字でも、評価書は書けますか。
A. 書けます。むしろ、外部環境の変化という客観的な要因を裏付けデータとともに示せることは、評価書の説得力を高める材料になります。原価上昇の推移や価格転嫁の状況を数字で整理しておくとスムーズです。
Q. 企業評価書の作成にはどのくらいの期間がかかりますか。
A. 決算書等の資料が揃っている状態であれば、比較的短い期間で対応可能な場合が多いです。ただし、資料が不足している場合や、改善計画の裏付けが薄い場合は、ヒアリングや資料整理に時間を要することがあります。特定技能の在留資格更新は毎年発生するため、初回だけでなく翌年以降を見据えて、早めに相談しておくことをおすすめします。
Q. 評価書を提出すれば、必ず審査に通りますか。
A. 評価書はあくまで審査資料の一つであり、提出すれば必ず通過するというものではありません。とはいえ、根拠のある改善見通しを客観的な立場から示すことは、審査官の判断材料として重要な役割を果たします。逆に、根拠の薄い評価書は「改善の見通しが示されていない」と判断され、追加資料を求められる原因にもなります。
Q. すでに技能実習生を受け入れている場合、育成就労への移行でも評価書は必要ですか。
A. 技能実習から育成就労制度への移行後も、直近期が赤字かつ債務超過であるなど一定の条件に該当する場合は、改善見通しに関する評価書面の提出が求められる可能性があります。制度改正のタイミングでは要件が変わることもあるため、更新時期が近づいたら早めに専門家へ確認することをおすすめします。
まとめ

紙代・インク代の高騰は、一過性の逆風ではなく、印刷業界全体が向き合っている構造的な変化です。大切なのは、その事実から目をそらすことではなく、「なぜそうなったのか」「どう改善に向かうのか」を数字で説明できる状態を作ることです。それができれば、債務超過という状況であっても、特定技能や技能実習(育成就労)による人材確保への道は開けます。
企業評価書は、税理士ではなく中小企業診断士や公認会計士にしか作成できない専門性の高い書類です。自己流での対応にはリスクが伴います。「印刷・製本」という新しい特定技能区分の要件確認、業界団体への加入状況の整理、評価書の作成、そして原価と資金繰りの見える化——この4つのポイントを一つずつ進めていくことが、遠回りに見えて最も確実な道筋です。
紙代・インク代の高騰は、経営者一人の努力だけでコントロールできるものではありません。だからこそ、外部の専門家の視点を借りて、自社の数字を客観的に整理し、改善の道筋を示すことに価値があります。「今の決算のままでは受け入れが難しいのでは」と一人で抱え込む前に、まずは現状を専門家に共有してみてください。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場での契約やしつこい営業もなく、お断りいただいても費用は一切かかりません。まずは決算書をお持ちのうえ、現状をお聞かせください。
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