
「毎月の支払日が近づくたびに、通帳の残高が気になって眠れない」。売上はそれなりにあるのに、なぜか手元にお金が残らない。借入の返済、仕入や外注費の支払い、人件費――お金は入ってくるそばから出ていき、気づけば資金繰りに追われる毎日になっている。そんな状況に、心当たりはありませんか。資金繰りの不安は、経営者だけが抱え込みやすく、誰にも相談できないまま膨らんでいくものです。
最初に結論をお伝えします。資金繰りが厳しいのは、経営者の能力が足りないからではありません。多くの場合、原因は「お金の流れが見えていない」「利益が手元に残らない構造になっている」という、仕組みの問題です。そして仕組みの問題は、正しい順番で手を打てば、必ず改善の方向に向かいます。
この記事では、年商5億〜50億円規模の建設業・製造業・サービス業を中心に経営改善の伴走支援を行ってきた中小企業診断士・認定経営革新等支援機関の視点から、資金繰りが厳しい会社が今すぐ取り組むべき立て直し策を5つ、できるだけ具体的に解説します。さらに、専門家の力を費用を抑えて借りられる国の制度「早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)」の活用法までご案内します。読み終えるころには、「明日から何をすればいいか」がはっきり見えているはずです。
この記事を読むと、次のことが分かります。
- なぜ「黒字なのに資金繰りが厳しい」のか、その本当の理由
- 資金繰りを立て直すために、何から・どの順番で取り組むべきか
- 資金繰りが厳しいときに、やってはいけない判断
- 専門家の伴走支援を、費用を抑えて受ける方法
相談しても売り込みはありません。義務は一切ありません。
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そもそも、なぜ資金繰りは厳しくなるのか

資金繰りの相談で最も多いのが、「決算書では利益が出ているのに、現金がまったく増えない」というお悩みです。これは矛盾ではありません。利益とお金(キャッシュ)は、まったく別物だからです。
会計上の利益は、売上が立った時点で計上されます。しかし建設業の出来高や製造業・卸売業の掛け取引では、売上が立ってから実際に入金されるまでに、数十日から数か月のタイムラグが生じます。その間も、仕入代金・外注費・給与の支払いは待ってくれません。つまり、利益が出ていても、入金より先に支払いが来れば、手元の資金は不足するのです。これが、資金繰りが厳しくなる第一のメカニズムです。
さらに見落とされがちなのが、借入金の元本返済です。元本の返済は費用になりません。利益の計算には出てこないのに、現金は確実に出ていきます。ここに「黒字なのにお金がない」最大のからくりがあります。たとえば、税引後利益と減価償却費を合わせて年600万円のお金を生む会社が、年800万円の元本を返済していれば、利益は出ていても毎年200万円ずつ現金が減っていく計算になります。これを長く続ければ、いずれ資金はショートします。下の表で、利益とお金の違いを整理しておきましょう。
| 項目 | 利益への影響 | お金(現金)への影響 |
|---|---|---|
| 売掛金(未回収の売上) | 利益は増える | 入金まで現金は増えない |
| 在庫・仕掛品の増加 | 利益に影響しにくい | 現金は減る(資金が眠る) |
| 借入金の元本返済 | 費用にならない | 現金は確実に減る |
| 設備投資 | 減価償却で数年に分けて費用化 | 支払時に一度に現金が出る |
| 納税 | 利益に対して課税 | 納付月にまとまった現金が出る |
ここで多くの経営者がやってしまうのが、「とにかく売上を増やせば楽になる」という考え方です。ところが売上が伸びるほど、先に立て替える仕入・外注・人件費も膨らみます。これが「増収貧乏」「忙しいのに儲からない」状態です。資金繰りの問題は、売上の大小ではなく「お金の入りと出のタイミングと構造」で決まります。だからこそ、立て直しには順番があります。次章から、その具体策を5つに分けて見ていきましょう。
資金繰りが厳しい会社の立て直し策5選

ここからは、実際の伴走支援で効果の大きい順に、5つの立て直し策をご紹介します。いずれも特別な才能は不要で、「見える化 → 構造の組み替え → 伴走」という流れで進めるのが成功のポイントです。
立て直し策1:12か月の資金繰り表で「先のお金」を見える化する
最も根深い問題は、これから3か月・6か月・12か月でお金がどう動くかを示す「資金繰り表」がないことです。過去を映す試算表はあっても、未来を映す表がない。先が見えないから、ショートしそうになって初めて慌てて銀行に駆け込む。これでは交渉も後手に回り、条件も不利になりがちです。
資金繰りは、起きてから対処するものではなく、起きる前に見るものです。まずは「月初残高+入金予定−支払予定=月末残高」という単純な形でかまいません。Excel一枚で十分です。12か月分を横に並べるだけで、「何月に、いくら足りなくなるか」が一目で見えてきます。危険な月が3か月前に分かれば、融資の相談、支払いの調整、入金の前倒しなど、打てる手は何通りもあります。
さらに、資金繰り表は金融機関との対話でも強力な武器になります。融資の相談に資金繰り表を持参するだけで、「この会社は自社の数字を分かっている」と伝わり、信頼が一段上がります。逆に、資金繰り表がないまま「お金が足りないので貸してほしい」と相談に行くと、根拠が示せず、交渉は難航します。まずは見える化。すべてはここから始まります。
立て直し策2:売掛金の回収と在庫を見直し、眠ったお金を動かす
回収が遅い売掛金、過剰な在庫や仕掛品は、形を変えた「使えないお金」です。帳簿上は資産でも、現金化されるまでは資金繰りを圧迫します。資産が多い会社が、資金繰りに強い会社とは限りません。むしろ「資産は多いのに現金がない」会社ほど、資金繰りに苦しみがちです。
具体的には、回収サイト(売上から入金までの期間)の短縮と支払サイトの適正化を見直します。回収が翌々月末の取引先に翌月末への前倒しを交渉する、着手金・中間金の設定を見直す、長期滞留している在庫や不動在庫を処分して現金化する。一つひとつは地味ですが、効果は確実です。たとえば、月商の1か月分の売掛金を10日早く回収できれば、それだけで手元資金は大きく厚くなります。
売上を増やさなくても、お金の流れを整えるだけで手元資金は厚くなります。建設業なら出来高請求のタイミング、製造業なら在庫水準と発注ロット、サービス業なら前払い・サブスク化など、業種ごとに見直しの勘どころがあります。自社にとっての「眠っているお金」がどこにあるかを洗い出すことが、第二の立て直し策です。眠っているお金を動かすだけで、新たに借りなくても資金繰りは大きく改善します。
立て直し策3:借入の返済計画を「返済原資」から組み直す
「税引後利益+減価償却費」よりも「年間の借入元本返済額」が大きいと、構造的にお金は減り続けます。これを返済原資の不足といいます。コロナ禍のいわゆるゼロゼロ融資で一時的に資金を確保したものの、据置期間が終わって返済が本格化し、返済額が利益を上回ってしまっているケースが、いま急増しています。
このときに必要なのは、根性で返すことではなく、返せる形に組み直すことです。複数の借入を一本化して月々の返済を平準化する、返済期間を延ばして毎月の負担を下げる、必要に応じて条件変更(リスケジュール)を検討する。いずれも有効な選択肢です。大切なのは、きちんとした計画と根拠があってこそ、金融機関は前向きに検討してくれるということです。
場当たり的に「返済を待ってほしい」と頼むのと、資金繰り計画と改善の道筋を示したうえで相談するのとでは、金融機関の受け止め方はまったく違います。返済の見直しは、決して恥ずかしいことではありません。むしろ、早めに相談する会社ほど、選べる選択肢は多く残されています。手遅れになる前に、「返せる形」を一緒に設計することが第三の立て直し策です。
立て直し策4:粗利率を改善し、残るお金を増やす
どの商品・どの現場・どの取引先で本当に利益が出ているのか。これが見えていないと、「売上は大きいが利益はほとんど残らない仕事」を一生懸命に回し続けることになります。会社を苦しめているのは、赤字の仕事ではなく、赤字に気づけない仕組みです。
取引先別・商品別・現場別に粗利を並べてみると、「実は赤字だった仕事」が必ずと言っていいほど見つかります。そこから、値決めの見直し、原価管理の徹底、不採算取引からの撤退や条件交渉を検討します。粗利率はわずか1%の改善でも、年間のキャッシュを大きく変えます。たとえば年商5億円の会社なら、粗利率1%の改善は年500万円の利益改善に相当します。これは、そのまま返済原資や手元資金の余裕につながります。
売上を1割増やすのは大変ですが、粗利率を1%改善するのは、値決めと原価の見直しで十分に狙えます。「安くしないと受注できない」という思い込みを一度疑い、自社の強みに見合った価格を設定し直す。売上を追う前に、まず「残る利益」を見直す。これが、資金繰り改善に最も即効性のあるアプローチです。
立て直し策5:早期経営改善計画策定支援で専門家と伴走する
ここまでの4つを「自社だけでやり切れる」会社は多くありません。日々の業務に追われるなかで、数字の見える化と構造改善を同時に進めるのは、簡単ではないからです。そこで活用したいのが、国の制度「早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)」です。
これは、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の支援を受けながら、資金繰り計画やビジネスモデル俯瞰図などを含む早期の経営改善計画を策定する取り組みを、国が後押しする制度です。専門家に支払う計画策定費用の一部(原則3分の2)を国が補助するため、自己負担を抑えて伴走支援を受けられます。「専門家に頼みたいが費用が心配」という経営者にとって、まさに使い勝手のよい入り口です。一人で抱え込まず、伴走者と一緒に数字と向き合うことで、改善のスピードは大きく変わります。次章で、この制度をもう少し詳しく見ていきましょう。
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資金繰りが厳しいときに避けたい3つの判断

正しい打ち手と同じくらい大切なのが、「やってはいけないこと」を知っておくことです。資金繰りが厳しいとき、次の3つの判断は状況をさらに悪化させかねません。
- 高金利のノンバンク・ファクタリングに安易に頼る:一時的に資金は入りますが、手数料や金利の負担が重く、かえって資金繰りを悪化させることがあります。利用する場合は条件を慎重に見極めましょう。
- 金融機関への相談を後回しにする:「言いづらい」と先延ばしにするほど、選べる選択肢は減っていきます。資金繰りの相談は、早ければ早いほど有利です。
- 数字を見ずに「気合い」で乗り切ろうとする:精神論では資金繰りは改善しません。必要なのは構造の見直しです。
これらを避けるだけでも、立て直しの成功率は大きく上がります。迷ったときは、自己判断の前に専門家へ相談するのが安全です。
資金繰り改善を進める3つのステップ

5つの立て直し策を、実際にどう進めればよいのか。順番に迷わないよう、3つのステップに整理します。
- 見える化する:月次試算表と12か月の資金繰り表を整え、「いつ・いくら足りなくなるか」「どこで利益が出ているか」を数字で把握します。すべての改善はここから始まります。
- 構造を組み替える:回収・支払サイト、借入の返済計画、粗利率、不採算事業を見直し、お金が残る構造へと変えていきます。一度に全部ではなく、効果の大きいものから着手します。
- 伴走で続ける:計画を作って終わりにせず、毎月の数字を金融機関と共有しながら、軌道修正を続けます。資金繰り改善は、単発のイベントではなく、続ける仕組みづくりです。
この3ステップを、専門家の伴走で、しかも費用を抑えて実行できるのが、早期経営改善計画策定支援です。
早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)とは

早期経営改善計画策定支援は、本格的な経営難に陥る前の「早期段階」で、資金繰りや経営の改善に着手する中小企業・小規模事業者を後押しする制度です。大きな特長は次の2点です。
- 専門家費用の一部(原則3分の2)を国が補助するため、費用負担を抑えて専門家の伴走を受けられる。
- 計画づくりだけでなく、策定後のモニタリング(進捗確認)まで支援対象に含まれ、「作って終わり」になりにくい。
よく混同される「経営改善計画策定支援(通称405事業)」との違いを、下の表で整理します。
| 項目 | 早期経営改善計画策定支援(バリューアップ) | 経営改善計画策定支援(405事業) |
|---|---|---|
| 想定する局面 | 本格的な悪化の前(早期段階) | すでに金融支援が必要な局面 |
| 計画の内容 | 資金繰り計画・ビジネスモデル俯瞰図など比較的シンプル | より詳細な経営改善計画・金融機関調整 |
| 金融機関の同意 | 原則不要(取組として共有) | 金融支援に向けた調整が前提 |
| 着手のしやすさ | 早期に・気軽に着手しやすい | 状況が深刻化してから |
ポイントは、これが「申請を代行してもらう制度」ではなく、経営者と専門家が一緒に手を動かして自社の数字と向き合う”支援”の制度だということです。KICKコンサルティングは認定経営革新等支援機関として、この伴走支援を強みにしています。※制度の対象・補助上限・要件は年度により変わる場合があるため、最新情報は中小企業庁等でご確認ください。
今日からできる3つのアクション

最後に、専門家へ相談する前でも、ご自身ですぐに着手できることを3つご紹介します。これだけでも、資金繰りの「見え方」は大きく変わります。
- 直近3か月の入金予定と支払予定を1枚に書き出す。これだけで、資金がショートしそうな月が見えてきます。まずは大きな金額だけでも構いません。
- 年間の借入元本返済額を合計し、「税引後利益+減価償却費」と比べる。返済額のほうが大きければ、構造の見直しが必要なサインです。
- 主要な取引先・商品ごとの粗利をざっくり並べる。「数字がすぐ出てこない=見える化ができていない」ということに気づくはずです。
もし書き出してみて「判断がつかない」「かえって不安が大きくなった」と感じたら、それは専門家と一緒に取り組むべきサインです。一人で抱え込む必要はありません。
業種別に見る、資金繰りがつまずきやすいポイント

資金繰りの悩みは共通していても、つまずく場所は業種によって異なります。自社に近い例を参考に、どこに資金が滞っているかを点検してみてください。
建設業:出来高と立替で、資金が先に出ていく
建設業では、材料費・外注費を先に支払い、入金は工事の進捗(出来高)や完成後になりがちです。大きな現場ほど立替負担が膨らみ、受注が増えるほど資金繰りが苦しくなるという逆転が起きます。着手金・中間金の設定や、出来高請求のタイミングの見直しが効果的です。
製造業:在庫・仕掛品に資金が眠りやすい
製造業では、原材料・仕掛品・製品在庫に資金が形を変えて滞留します。在庫は「いつでも売れる資産」ではなく「動かない現金」になりがちです。発注ロットや在庫水準の適正化、滞留在庫の早期処分が、資金繰り改善に直結します。
サービス業:固定費と季節変動に注意
サービス業は、人件費や家賃などの固定費の比率が高く、売上の季節変動の影響を受けやすい傾向があります。閑散期の資金不足を見越した資金繰り表の整備と、前払い・回数券・サブスクなど入金を前倒しにする仕組みづくりが有効です。
よくある質問(Q&A)

Q1. 赤字でも早期経営改善計画策定支援は使えますか?
A. この制度は、深刻な経営難に陥る前の「早期段階」での改善を後押しするものです。赤字であっても、早く動くほど選べる打ち手は多くなります。「まだ大丈夫」と思える今こそ、着手の好機です。
Q2. 計画を作っても、結局その通りにいかないのでは?
A. 計画は「予言」ではなく「経営の地図」です。ずれたら直せばよいのです。だからこそ、作って終わりにせず、毎月の数字を見ながら軌道修正する伴走支援が重要になります。
Q3. 顧問税理士がいても相談していいですか?
A. もちろんです。税務と、資金繰り・経営改善の伴走支援は役割が異なります。顧問税理士と連携しながら進めるケースも多く、むしろスムーズに進みます。
Q4. どれくらいの期間で資金繰りは改善しますか?
A. 状況によりますが、資金繰り表の整備や回収・支払サイトの見直しは、着手すれば比較的早く効果が表れます。一方、粗利構造の改善は数か月〜1年単位で取り組むテーマです。まずは見える化から始め、効果の出やすいものから着実に進めるのが近道です。
Q5. 相談すると、すぐに契約を迫られませんか?
A. まずは現状をお聞きし、最適な進め方をご提案するところから始めます。無理に契約を迫ることはありません。状況を整理するだけでも、頭の中がすっきりし、次の一手が見えてきます。
Q6. 自社だけで資金繰り表を作るのが難しいです。
A. 最初は誰でも難しく感じるものです。早期経営改善計画策定支援を使えば、認定支援機関が資金繰り計画の作成から伴走します。費用の一部は国の補助対象となるため、専門家と一緒に「使える資金繰り表」を無理なく整えられます。
まとめ:資金繰りの不安は「早期の計画づくり」で立て直せる

資金繰りが厳しいのは、経営者の能力不足ではありません。多くは「お金の流れが見えていない」「利益が残らない構造になっている」という、仕組みの問題です。仕組みは、整えれば必ず変わります。そして、より早く着手するほど、選べる打ち手は多くなります。
「忙しいのに儲からない」会社から、「利益が手元に残る」会社へ。その第一歩が、早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)です。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・認定経営革新等支援機関として、年商5億〜50億円規模の建設業・製造業・サービス業を中心に、資金繰り改善・経営改善の伴走支援を行っています。専門家への費用の一部(原則3分の2)を国が補助するため、自己負担を抑えて取り組めます。
※補助の対象・上限額・要件は年度により変わる場合があります。最新情報は中小企業庁等でご確認ください(参考:中小企業庁)。
| まずやること | 窓口 |
|---|---|
| 制度・支援内容を詳しく知りたい | 早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)の詳細ページ |
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