
「真面目に現場を回してきたのに、なぜ外国人の雇用ができないんだ」
ウッドショックによるパネコート(型枠工事で使われる合板。片面が塗装されたコンクリート成形用の板のこと)の高騰、資材全体の値上がり、そして元請けから押し付けられる固定単価。この三重苦によって、多くの型枠工事業者が「債務超過」に追い込まれました。
債務超過とは、会社の借金が財産を上回っている状態のことです。たとえば、会社に1億円の財産があっても借金が1億2,000万円あれば、2,000万円の債務超過です。この状態になると、外国人材の雇用が不許可になるリスクが高まります。
しかし、債務超過=即不許可ではありません。中小企業診断士や公認会計士が作成する「企業評価書」を提出することで、経営改善の見通しを入管に証明し、許可を勝ち取る道があります。
この記事では、型枠工事業者が債務超過の状態でも特定技能外国人を受け入れるための具体的な方法を、企業評価書の作成実績をもつ中小企業診断士の立場から解説します。
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型枠工事の「2024年問題」と人手不足の実態

型枠工事業界は、かつてないほど深刻な人手不足に直面しています。その背景には、建設業界全体に影響を与えた「2024年問題」と、若手日本人の入職減少があります。ここでは、型枠工事業者が外国人材に頼らざるを得ない理由を、具体的なデータで整理します。
型枠工の不足率は全職種ワースト級
「2024年問題」とは、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)が適用されたことで、工事現場の労働力がさらに不足する問題のことです。違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が科されます。
国土交通省の「建設労働需給調査」によると、型枠工、左官、とび工、鉄筋工などの全職種で人手不足が続いており、特に土木における型枠工の不足は顕著です。建設・採掘従事者の有効求人倍率は5.22倍と、全産業平均(1.19倍)の約4倍以上に達しています。1人の求職者に対して5件以上の求人がある計算です。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況について~参考統計表~」(2025年2月実績、2025年4月1日公開)
また、建設業全体の就業者数は、1997年のピーク時から約29%減少しています。60歳以上の高齢者が全体の約26%を占める一方、若手入職者はその半数以下にとどまっており、今後10年で大量離職が見込まれています。
出典:国土交通省「建設業を取り巻く現状と課題」
若手の8割が外国人材という現実
こうした状況の中、型枠工事の現場では「拾い出し」(図面から必要な型枠の数量や寸法を計算する作業)、「墨出し」(コンクリートを打つ位置を現場に印をつける作業)、「建て込み」(型枠を組み立てて設置する作業)、そして「スラブ」(床や屋根などの水平なコンクリート面)の型枠設置まで、すべての工程で人の手が必要です。
特定技能の在留外国人数は2024年12月末で約28万4千人超と急増しました。5〜50名規模の型枠工事会社では、若手の8割超が外国人というケースも珍しくありません。彼らがいなくなれば、文字どおり現場は止まります。
出典:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」
つまり、外国人材の雇用ができなくなることは、単なる「人手不足」ではなく、会社の存続そのものが危うくなるということです。
債務超過でも外国人雇用は不許可にならない――入管審査の本当のルール

「うちは債務超過だから、もう外国人は雇えない」。そう諦めてしまう経営者は少なくありません。しかし、これは正確ではありません。入管の審査基準を正しく理解すれば、債務超過でも許可を取得できる道があります。
「債務超過=即不許可」は誤解
法務省の「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」および特定技能の運用要領では、債務超過の企業に対して「即不許可」とはしていません。入管は、財務状況の数字だけでなく、受け入れ企業の全体的な安定性や支援体制を総合的に判断します。
具体的には、次のように区分されています。
| 状況 | 入管の対応 |
|---|---|
| 直近期末が債務超過だが、前期は債務超過でない(1期のみ) | 中小企業診断士等の企業評価書を提出し、改善の見通し(1年以内の解消を含む)が認められれば許可の可能性あり |
| 直近2期以上が債務超過 | 企業評価書に加え、より具体的な改善計画の提出が必要。3年以内の債務超過解消見通しが重視される |
| 直近2期連続で売上総利益がない(ゼロまたはマイナス) | 事業継続性が認められにくく、許可は非常に困難 |
出典:法務省「外国人経営者の在留資格基準の明確化について」/ 出入国在留管理庁「特定技能運用要領」
入管が本当に見ているのは「事業継続性」
入管の審査で最も重視されるのは、「この会社は今後も事業を続けられるのか」という一点です。貸借対照表の純資産がマイナスであっても、利益が出ていて債務超過が改善傾向にあるのか、今後どのように経営を立て直すのか。その「ストーリー」を、公的資格を持つ第三者が客観的に評価した書面が「企業評価書」です。
逆に言えば、この書類がなければ、入管は判断する材料がないため、不許可にせざるを得ません。企業評価書の有無が、許可と不許可の分かれ道になるのです。
なぜ型枠工事業者は赤字に追い込まれたのか――理不尽な外部要因の整理

債務超過に陥った型枠工事業者の多くは、「経営能力が不足していたから赤字になった」わけではありません。背景には、社長の力ではどうにもならない外部要因が重なり合っています。企業評価書を作成するうえでも、この「外部要因の整理」は極めて重要です。
ウッドショックとパネコート高騰
2021年から始まった「ウッドショック」とは、コロナ禍をきっかけに世界的な木材需要が急増し、木材価格が急騰した現象のことです。型枠工事で毎日使うパネコートも例外ではありません。
ピーク時には木材価格が2倍以上に跳ね上がりました。さらに2022年のロシアによるウクライナ侵攻で原油高が重なり、輸入材の価格は高止まりしたままでした。日本銀行の企業物価指数(2026年1月速報)でも、木材・木製品の指数は137.1と、2020年平均を大きく上回る水準が続いています。
出典:日本銀行「企業物価指数」(2026年1月速報)
加えて、2022年春頃から進行した歴史的な円安(一時1ドル=150円超)が、輸入材の価格をさらに押し上げました。型枠工事の資材コストは、社長がどれだけ努力しても下げられない構造になっていたのです。
固定単価制という構造的な罠
型枠工事業者が最も苦しめられているのが、元請けからの「固定単価制」です。パネコートの仕入れ値が上がっても、元請けからもらう単価は変わりません。つまり、資材費の上昇分がそのまま利益を圧迫し、赤字に直結します。これは下請けの立場では自社だけで解決できる問題ではありません。
これらの事実は、企業評価書の中で「債務超過に至った原因は外部要因である」ことを入管に説明するための重要な材料になります。いわば、社長の経営責任ではなく、市場環境の変化によるものであることを、専門家が第三者として証明するのです。
顧問税理士や監理団体では対応できない理由

債務超過の話を最初に相談する相手は、たいてい顧問税理士か監理団体です。しかし、そこで「難しいですね」と言われて諦めてしまう方が非常に多いのが現実です。なぜ彼らでは対応できないのか、その構造的な理由を解説します。
税理士は「過去の数字」のプロ
顧問税理士は、決算書を作成し、税務申告を正確に行うプロフェッショナルです。しかし、入管が求めているのは「過去の数字」ではなく「将来の改善ストーリー」です。
決算書を作ることと、経営改善計画を策定することは、まったく別の専門性です。税理士が企業評価書を作成できないわけではありませんが(特定技能では税理士も認められています)、入管を納得させる「経営改善の見通し」を描くには、財務分析だけでなく、業界構造の理解や事業計画の策定能力が求められます。
監理団体も同様です。外国人材の受け入れ手続きには詳しいものの、財務分析や事業計画の策定は本来の業務範囲外であることがほとんどです。
入管が求めるのは「将来の改善ストーリー」
だからこそ、経営診断と改善計画の策定を専門とする中小企業診断士の出番です。中小企業診断士は、国が認めた経営コンサルタントの唯一の国家資格です。「過去の数字」と「将来の改善計画」の両方を繋げ、入管が納得する形で書面にまとめることができます。
なお、中小企業診断士は「申請代行」を行う資格ではありません。あくまでも経営改善計画の策定と企業評価を行い、その結果を書面にまとめる「支援・サポート」が役割です。
中小企業診断士が作成する「企業評価書」とは

企業評価書は、入管に対して「この会社は債務超過だが、事業継続性がある」と証明するための書類です。ここでは、企業評価書に記載すべき3つの核心と、入管が重視する「3年以内の改善計画」の具体的な作り方を解説します。
企業評価書に記載する3つの核心
企業評価書で入管を納得させるためには、次の3つの核心が必要です。
| 項目 | 内容 | 型枠工事業者の具体例 |
|---|---|---|
| 原因分析 | 債務超過に至った原因を客観的データで証明 | ウッドショック、パネコート高騰、円安、固定単価制 |
| 改善計画 | 年次別の売上・利益目標と具体的な施策 | 元請けとの単価交渉、新規受注先の開拓、不採算工事の選別 |
| 解消見込み | 債務超過を解消できる期間の見通し | 3年以内に純資産をプラスに転換するロードマップ |
入管が求めているのは、単なる「決算書の数字の説明」ではありません。「なぜ赤字になったのか」「どうやって立て直すのか」「いつ解消するのか」という一連のストーリーを、公的資格者が第三者として評価した書面です。
3年以内の債務超過解消計画の作り方
「3年以内の債務超過解消」は、入管の審査で実務上重視されるポイントです。計画は小学生でもわかる算数レベルの数字で示すことが重要です。
たとえば、債務超過額が2,000万円の型枠工事会社の場合、次のようなイメージです。
| 年度 | 主な施策 | 純資産の変化(イメージ) |
|---|---|---|
| 1年目 | 元請けとの単価交渉(資材高騰分の上乗せ)、固定費の見直し | ▲2,000万円 → ▲1,200万円(800万円改善) |
| 2年目 | 新規元請け2社の開拓、不採算工事の選別受注 | ▲1,200万円 → ▲400万円(800万円改善) |
| 3年目 | 売上基盤の安定、利益率の改善定着 | ▲400万円 → +400万円(債務超過解消) |
この計画で重要なのは、「絵に描いた餅」ではなく、実行可能な具体策に裏付けられていることです。「拾い出し」や「建て込み」の工程を理解し、パネコートの原価構造を把握したうえで、初めて入管を納得させる計画が描けます。型枠工事の現場を知らない専門家には書けない内容です。
企業評価書の作成費用・依頼の流れ・必要書類

「企業評価書は高額なのではないか」「手続きが面倒ではないか」と心配される社長も多いです。ここでは、費用の相場感、依頼から納品までの流れ、準備すべき書類を具体的に解説します。
費用相場は15万〜20万円(税抜)
企業評価書の作成費用は、一般的に15万円〜20万円程度(税抜)が相場です。依頼先が中小企業診断士でも公認会計士でも、大きな金額差はありません。料金は主に、債務超過の額や複雑さ、対応の緊急度によって変動します。
外国人材1人あたりの受け入れコスト(年間の給与・社会保険・支援費用など)と比較すれば、企業評価書の費用は「現場の戦力を守るための投資」として十分に回収できる金額です。
依頼から納品までの流れ
依頼の流れはシンプルです。
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 1 | 専門家に問い合わせ・見積もり依頼 | 即日 |
| 2 | 直近3期分の決算書を提出 | 1〜2日 |
| 3 | ヒアリング(対面またはオンライン)で債務超過の背景・今後の見通しを説明 | 10〜20分 |
| 4 | 専門家が企業評価書を作成・納品 | 最短3日〜 |
| 5 | 入管に提出(行政書士または監理団体を通じて) | — |
必要書類は直近3期分の決算書が基本です。それ以外の情報は、ヒアリングを通じて口頭で説明すれば十分です。過度に資料を準備する必要はありません。
注意すべきは、入管からの提出期限は短いことが多いという点です。「債務超過ですね。企業評価書を提出してください」と言われてから専門家を探し始めるのでは、間に合わない可能性があります。できれば、債務超過が判明した時点で早めに専門家に相談しておくことを強くおすすめします。
よくある質問(Q&A)

Q. 債務超過の企業が特定技能外国人を受け入れるには何が必要ですか?
A. 中小企業診断士や公認会計士が作成する「企業評価書」(改善の見通しについて評価を行った書面)の提出が必要です。この書面には、債務超過に至った原因の分析、今後の経営改善計画、債務超過を解消できる期間の見込みが記載されます。入管はこの書面を参考にして、事業の継続性を判断します。
Q. 企業評価書は誰が作成できますか?
A. 中小企業診断士、公認会計士など、「企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者」が作成します。特定技能の場合は税理士も認められています。ただし、入管が求める「将来の改善ストーリー」を描くには、経営改善計画の策定経験が豊富な専門家に依頼することが重要です。
Q. 企業評価書の作成にはどのくらいの費用と期間がかかりますか?
A. 費用は15万円〜20万円程度(税抜)が相場です。必要書類(直近3期分の決算書)が揃っていれば、最短3日程度で納品が可能な場合もあります。ただし、入管からの提出期限は短いことが多いため、債務超過が判明した段階で早めに専門家へ相談することをおすすめします。
Q. 2期以上連続で債務超過の場合でも、許可は取れますか?
A. 可能性はあります。2期以上連続で債務超過の場合は、1期のみの場合よりもより具体的な改善計画が求められますが、中小企業診断士の企業評価書で「3年以内に債務超過を解消できる見通し」を客観的に示すことができれば、許可が下りた実例は多数あります。ただし、直近2期連続で売上総利益がない(ゼロまたはマイナス)場合は非常に厳しくなります。
Q. 顧問税理士に企業評価書を頼めませんか?
A. 制度上、特定技能では税理士も企業評価書の作成が認められています。ただし、入管が求める「将来の経営改善の見通し」を説得力ある形で描くには、経営診断と改善計画策定の専門知識が必要です。決算書の作成と経営改善計画の策定はまったく別の専門性であるため、企業評価書の作成実績がある専門家に依頼することをおすすめします。
Q. 型枠工事業者に特有の事情はありますか?
A. あります。型枠工事業者は、ウッドショックによるパネコート高騰と元請けからの固定単価制という業界特有の構造的問題を抱えています。企業評価書では、この業界特有の外部要因を入管に正しく説明することが重要です。型枠工事の現場(拾い出し、墨出し、建て込み、スラブ施工など)を理解した専門家であれば、より説得力のある改善計画を策定できます。
まとめ――現場の戦力を守るために、今すぐ行動を

型枠工事業界は人手不足が極めて深刻です。建設・採掘従事者の有効求人倍率は5倍を超え、若手の8割超が外国人という現場も珍しくありません。外国人材の雇用が不許可になることは、会社の存続に直結する問題です。
しかし、債務超過=即不許可ではありません。中小企業診断士が作成する「企業評価書」を通じて、債務超過の原因が外部要因(ウッドショック、資材高騰、固定単価制)であることを証明し、実現可能な経営改善計画を示すことで、許可を勝ち取る道が開けます。
ウッドショックや資材高騰による赤字は、社長のせいではありません。その事実を、入管が納得する形で証明できるのが、経営診断と改善計画策定を専門とする中小企業診断士です。
ただし、更新期限は待ってくれません。「債務超過がわかった時点で、すぐに専門家に相談する」ことが、現場の戦力を守り抜くための最善手です。
お問い合わせ・無料相談はこちら
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)
初回相談無料。「許可の可能性を診断してほしい」だけでもお気軽にどうぞ。
債務超過の状況でも外国人材の受け入れを実現した多数の実績があります。
「うちの決算書で許可は取れるのか?」その一言だけでも、お気軽にご相談ください。








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