
この記事は、更新を控えた外国人経営者を顧問先に持つ税理士の先生と、申請を受任する行政書士の先生に向けて書いています。
ある日、顧問先の外国人社長が「更新までに資本金を3,000万円にしないと、日本にいられなくなるのですか」と青い顔で事務所に来ます。同じ問いは、出入国在留管理庁(入管)が「特にお問合せが多い質問」として公表しているほどの不安です。さらに入管の公表資料には、経過措置の期間中の更新について「経営に関する専門家の評価を受けた文書を提出いただくことがあります」という一文があり、社長が受け取った資料提出通知書でその文書を求められていることもあります。
日本語の通知を前にした社長がまず頼るのは、決算書を作っている顧問税理士の先生です。更新を担当する行政書士の先生に、同じ不安が持ち込まれることもあるでしょう。ところが顧問税理士の先生は、第三者性の観点から自社の顧問先の評価を避けたいと判断される場合もあり、その場合は決算と税務を先生が、評価書面を外部の中小企業診断士が担う分担になります。周りに中小企業診断士の知り合いがいないと、そこで手が止まりがちです。
顧問先・依頼者に最初に伝えていただきたい一文は、「令和10年(2028年)10月16日までの更新は、3,000万円に満たないことだけを理由に不許可にはならない。ただし、経営状況と、新しい基準に近づく見込みは見られる」です。そして先生が最初に確認すべきは3,000万円ではなく、直近の貸借対照表の純資産と、税・社会保険の納付状況です。この記事では、入管の公表資料の原文を示しながら、経過措置の中身と、専門家の評価文書への備え方を整理します。
この記事で分かること
- 更新手数料の改定後の金額
- 経過措置の原文と期限の整理
- 専門家の評価文書で分かっていること
- 税理士・行政書士・診断士の役割分担
- 増資・雇用・日本語の見込みを示す観点
顧問先が抱きやすい更新と3,000万円の誤解

顧問先が抱きやすい誤解は、大きく3つに分かれます。いずれも入管が公表しているよくある質問とQ&Aに答えがあり、先生が面談の場で原文を見せながら訂正できる内容です。
今すぐ増資しないと更新できないという誤解
入管は、改正前から在留している人の施行後3年以内の更新について、次のように回答しています。
「施行後3年が経過するまで(令和10年10月16日まで)の間は、新たな基準を満たさない場合でも、そのことのみをもって在留期間更新許可申請が不許可になることはありません。」
出典:出入国在留管理庁『在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について』特にお問合せが多い質問(令和8年6月26日更新)問1
慌てて借入で増資しようとする顧問先には、まずこの原文を見せて落ち着いてもらうのが先です。「そのことのみをもって」という言葉が付いている点も、あわせて伝えてください。新基準に届かないこと以外の問題があれば、それは従来どおり審査で見られます。
令和10年まで何もしなくてよいという誤解
経過措置は審査を免除するものではありません。更新のたびに、事業の継続性、税や社会保険の納付、経営への関与の実態は確認されます。そのうえで、新基準にどう近づいていくのかという見込みも見られます。さらに、3年の経過後も、3,000万円に満たないことだけで一律に不許可になるわけではないと、入管は次のように説明しています。
「事実ではありません。」「施行日から3年を経過した後になされた在留期間更新許可申請時において、改正後の許可基準に適合しない場合であっても、経営状況が良好であり、法人税等の納付義務を適切に履行しており、次回更新時までに改正後の許可基準を満たす見込みがあるときは、その他の在留状況を総合的に考慮し、許否判断を行いますので、「申請に係る事業の用に供される財産の総額」(法人の場合は資本金額、個人事業主の場合は事業を営むために必要なものとして投下されている総額)が、3,000万円に満たないことのみをもって一律に不許可処分となるものではありません。」
出典:出入国在留管理庁『在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について』特にお問合せが多い質問(令和8年6月26日更新)問3
ここで読み落としたくないのは、条件として「経営状況が良好」「法人税等の納付義務を適切に履行」「次回更新時までに改正後の許可基準を満たす見込み」の3つが並んでいることです。顧問先には「3年の猶予は、何もしなくてよい期間ではなく、準備に使える期間です」と伝えると、かみ砕いた形で伝わります。
個人事業主も資本金3,000万円が要るという誤解
個人事業の場合は資本金ではありません。よくある質問(令和8年6月26日更新)問4は、個人の場合は「資本金を準備していただくものではなく、改正に関するガイドラインでお示ししているとおり、事業所の確保や雇用する職員の給与(1年間分)、設備投資経費など事業を営むために必要なものとして投下されている総額をさします。」と回答しています。証明の方法は、Q&A 問12で「具体的には直近年度の決算文書を提出していただくほか、必要に応じ、事業経費などに関する領収書などを提出願います。」とされています。個人事業の依頼者を抱える先生は、帳簿上の投下額の集計から話を始めると整理しやすくなります。
申請の時期で変わる判断の基準

改正は令和7年(2025年)10月16日に施行されました。更新のときにどの基準が使われるかは、申請を受け付けられた時期で決まります。経過措置の根拠になっている原文は次のとおりです。
「既に「経営・管理」で在留中の方が施行日から 3年 を経過する日(令和10年10月16日)までの間に在留期間更新許可申請を行う場合については、改正後の基準に適合しない場合であっても、経営状況や改正後の基準に適合する見込み等を踏まえ、許否判断を行います。」「なお、審査においては、経営に関する専門家の評価を受けた文書を提出いただくことがあります。」
出典:出入国在留管理庁『在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について』施行に伴う留意点2
顧問先ごとに在留期間の満了日を押さえ、次の表のどの行に当たるかを先に確認しておくと、助言の前提がぶれません。
| 申請の時期 | 適用される基準と判断 |
|---|---|
| 施行日の前日までに受け付けられ、審査を継続している申請 | 改正前の許可基準を適用(施行に伴う留意点1)。ただし、その許可を受けた方も、施行日から3年を経過した後は改正後の許可基準を満たす必要あり(Q&A 問30) |
| 令和10年10月16日までの更新申請 | 改正後の基準に適合しなくても、経営状況や適合する見込み等を踏まえて判断。経営に関する専門家の評価を受けた文書の提出を求められることがある(施行に伴う留意点2) |
| 施行日から3年を経過した後の更新申請 | 改正後の基準に適合する必要あり。適合しない場合でも、経営状況が良好で、法人税等の納付義務を適切に履行し、次回更新申請時までに新基準を満たす見込みがあれば、その他の在留状況を総合的に考慮して判断(施行に伴う留意点2の注、よくある質問 問3) |
| 「経営・管理」などからの永住許可、「高度専門職1号ハ」から「高度専門職2号」への変更 | 施行日後、改正後の許可基準に適合していない場合は認められない(申請に関する取扱い3) |
見落とされやすいのが最後の行です。更新は経過措置の対象でも、永住許可は改正後の許可基準に適合していなければ認められません。顧問先が将来の永住を考えているかどうかは、先生から早めに聞いておきたい点です。永住を望む顧問先には、更新の計画と永住の計画を分けて考えるよう促してください。
経営に関する専門家の評価を受けた文書の位置付け
経過措置の原文にある「経営に関する専門家の評価を受けた文書」は、名前が似た書類がほかに2つあるため、顧問先も先生方も混同しやすい部分です。公表資料で確認できる範囲を並べると、次のようになります。
| 書類 | 求められる場面 | 作成者についての記載 | 様式・条件 |
|---|---|---|---|
| 経営に関する専門家の評価を受けた文書(施行に伴う留意点2) | 令和10年10月16日までの更新で、改正後の基準に適合しない場合の審査で「提出いただくことがあります」 | 公表資料では確認できていない | 公表された様式は確認できていない |
| 改善の見通しについて評価を行った書面(明確化ガイドライン「3 事業の継続性について」(1)b(イ)など) | 直近期末に債務超過で、直近期前期末は債務超過でない場合など | 「中小企業診断士や公認会計士等」の公的資格を有する第三者。税理士が含まれるかは公的資料に明記がなく不明 | 「評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。」。公表された様式は確認できていない |
| 事業計画書の専門家の確認(主な改正内容5、Q&A 問16〜18) | 在留資格決定時に提出する事業計画書 | 中小企業診断士、公認会計士及び税理士(Q&A 問16) | 「申請人が経営する会社の役員や従業員の場合は、客観性の確保の観点から評価者として認められません。」「外部顧問となっている公認会計士や税理士の場合については、評価者として差し支えありません。」(Q&A 問18)。これは事業計画書の評価についての回答で、債務超過の評価書面に同じ扱いが及ぶかは記載がなく不明 |
1行目の文書については、誰が作成するのか、どのような様式なのか、2行目の書面と同じものを指すのかは、公表資料からは確認できていません。そのため、通知書でこの文書を求められたら、まず通知書の文言をそのまま読み、何について評価した文書を求められているのかを申請取次の行政書士の先生と確認するのが確実です。
原文の言葉から読み取れるのは、経過措置の期間中は「経営状況や改正後の基準に適合する見込み等」を踏まえて判断されるという点です。評価の文書を用意する場合も、経営状況と、新基準に適合する見込みの2つに答える内容にしておくと、審査の判断材料として筋が通ります。在留資格決定時の事業計画書の確認と、更新時の評価の書面は別の制度だという点は、経営管理ビザの事業計画書の書き方とあわせて押さえておくと整理しやすくなります。
適合する見込みを示す4つの材料と先生の確認先

「改正後の基準に適合する見込み」は、口頭の決意ではなく、計画と数字で示すものです。新基準のうち、既存の在留者が更新時に問われやすい項目は次の4つで、いずれも先生の手元にある資料から確認を始められます。
資本金等の増資計画と登記事項証明書
法人の場合、3,000万円の判定に使われるのは、原則として払込済みの資本金の額、または出資の総額です(有償新株予約権の払込金は、明確化ガイドライン「5 有償新株予約権の発行により調達した資金について」の条件を満たす部分に限り計上できるとされています)。Q&A 問7は「資本準備金、資本剰余金、利益剰余金は、「事業の用に供される財産の総額」に含まれません。」と回答し、問8は従業員の給与額や事務所の維持費などと「合算することはできません。」としています。先生は登記事項証明書と貸借対照表の株主資本の内訳で、現在の資本金の額を確認してください。見込みを示すには、誰が、いつまでに、いくらを払い込むのか、その資金の出所は何かを計画に書くことになります。一度に3,000万円が難しい場合は、段階的な増資の予定と、その裏付けとなる手元資金や調達の見通しを示すことが、見込みを説明する材料の一つとして考えられます(入管が示した基準ではなく、当社の考え方です)。
常勤職員1名の雇用計画と給与台帳
常勤職員の対象は、日本人、特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者に限られます(主な改正内容1、Q&A 問1)。常勤かどうかは、Q&A 問3で、労働日数が5日以上かつ年間217日以上で週労働時間が30時間以上であること、年次有給休暇の付与、雇用保険の被保険者であることなどの観点から判断するとされています。給与台帳と雇用保険の加入状況を見れば、いまの従業員が対象になるかどうかは先生の側で見当がつきます。計画では、採用の時期、想定する給与、その人件費を払える売上の見通しが整合していることが大切です。
日本語能力の確認
申請者本人か常勤職員のいずれかが、「日本語教育の参照枠」におけるB2相当以上の日本語能力を有することが必要です。日本人又は特別永住者以外は、日本語能力試験(JLPT)N2以上、BJTビジネス日本語能力テスト400点以上、中長期在留者として20年以上の在留、日本の大学等高等教育機関の卒業、日本の義務教育の修了と高等学校の卒業のいずれかで確認されます(主な改正内容3、Q&A 問13)。本人が満たせない場合は、雇用計画と合わせて検討することになります。顧問先には、合格証や卒業証明書の写しが手元にあるかを先に確認してもらうと段取りが早まります。
公的義務の履行と事業所の実態
更新時には、雇用保険や労災保険、健康保険や厚生年金、法人税や消費税、法人住民税や法人事業税などの納付状況が確認されます(申請に関する取扱い5、Q&A 問24)。自宅を事業所と兼ねることは原則として認められず、事業に必要な許認可の取得状況も見られます。よくある質問 問2では、労働関係法令の遵守状況や社会保険等の加入・納付状況に問題がある場合、「審査において消極的な要素と判断され、更新が認められない事例もあります」とされています。ここに未納や不備があると、資本金の計画以前の問題になります。税目の納付状況は税理士の先生が、許認可や事業所の要件は行政書士の先生が、それぞれ最も早く気づける立場にあります。
見込みを評価するときの観点
経過措置の評価文書について、評価の観点を定めた公表資料は確認できていません。参考になるのは、在留資格決定時の事業計画書について入管が示している「その計画に具体性、合理性が認められ、かつ、実現可能なものであるかを評価する」という考え方(主な改正内容5)です。当社では、増資・雇用・日本語の見込みを、この3つの観点で次のように確かめています。
| 材料 | 確かめる観点 | 主な根拠資料 |
|---|---|---|
| 増資 | 払込みの主体・時期・金額が決まっているか(具体性)。資金の出所と手元資金の動きに無理がないか(合理性)。資本準備金に振り分ける予定と混同していないか | 登記事項証明書、株主資本の内訳、資金の出所が分かる記録 |
| 雇用 | 対象となる在留資格の人を想定しているか。採用時期と給与が月次の損益で払える見通しか(実現可能性) | 給与台帳、雇用保険の加入状況、月次試算表 |
| 日本語能力 | 申請者と常勤職員のどちらで満たすのか。証明書類をそろえられるか | 合格証や成績証明書、卒業証明書、住民票 |
| 経営状況 | 直近期末の区分と、今後1年間の損益の見通しが計画と整合しているか | 決算書2期分、直近の月次試算表 |
3つの材料は、互いの数字がつながっているかも確かめます。たとえば採用の計画を立てたのに、月次の損益にその人件費が入っていなければ、見込みとしての説得力が下がります。
経営状況の確認と決算の3段階

経過措置の期間中でも、事業の継続性は直近2期の決算で判断されます。明確化ガイドラインは「直近二期の決算状況により次のとおり取り扱うこととします。」としたうえで、直近期又は直近期前期に売上総利益がある場合(3(1))について、直近期末に剰余金がある場合や剰余金も欠損金もない場合は事業の継続性を認め、直近期末に欠損金があっても債務超過でなければ((1)b(ア))、今後1年間の事業計画書と予想収益を示した資料を求めるとしています。この(ア)でも、資料の内容によっては第三者の評価書面の提出を更に求める場合があるとされています。直近期末に欠損金があり、直近期末は債務超過で直近期前期末は債務超過でない場合((1)b(イ))は、次の書面の提出が求められます。
「中小企業診断士や公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が、改善の見通し(1年以内に債務超過の状態でなくなることの見通しを含む。)について評価を行った書面(評価の根拠となる理由が記載されているものに限る。)」
出典:出入国在留管理庁『「経営・管理」の在留資格の明確化等について』(令和8年6月改訂)「3 事業の継続性について」(1)b(イ)
直近期末と直近期前期末がともに債務超過の場合は、原則として事業の継続性があるとは認められません。例外は設立5年以内の国内非上場企業(新興企業)で、評価書面などの書類を踏まえ、債務超過となっていることについて合理的な理由があると判断される場合に限り、柔軟に判断するとされています。
つまり、3,000万円への見込みを語る前に、まず直近の貸借対照表の純資産がプラスかどうかを確認する必要があります。これは決算書を持つ税理士の先生なら、面談の前に判定できる項目です。顧問先には「会社の純資産がマイナスかどうかで、更新に必要な書類が変わります」と伝えると分かりやすいでしょう。債務超過の会社が増資をすれば、資本金の積み上げと純資産の改善を同時に進めることになるため、改善見通しの評価書面と適合見込みの説明は、一つの計画として整理しやすくなります。更新の流れと必要書類の全体像は、経営管理ビザ更新の流れと必要書類の記事で整理しています。
面談の前に先生の手元でそろえておくと話が早い資料は、次のとおりです。
- 給与台帳
- 登記事項証明書
- 直近2期の決算書
- 直近の月次試算表
- 税と社会保険の納付状況
更新申請の手数料(令和8年10月1日改定)
令和8年(2026年)10月1日以後に申請して許可を受ける場合、在留期間更新の手数料は、許可される在留期間の区分に応じて決まります。入管は「在留資格の変更の許可及び在留期間の更新の許可に係る手数料について、当該許可に係る在留期間の区分に応じて手数料の額を定めています。」と案内しており、金額は次のとおりです。
| 許可される在留期間 | 窓口申請 | オンライン申請 |
|---|---|---|
| 3か月以下 | 10,000円 | 10,000円 |
| 3か月超6か月以下 | 18,000円 | 15,000円 |
| 6か月超1年未満 | 25,000円 | 21,000円 |
| 1年 | 33,000円 | 27,000円 |
| 1年超3年未満 | 48,000円 | 42,000円 |
| 3年以上5年未満 | 64,000円 | 56,000円 |
| 5年以上 | 75,000円 | 65,000円 |
改定前は、窓口申請が6,000円、オンライン申請が5,500円でした。オンライン申請はコンビニ決済か銀行決済による納付で、表の手数料とは別に決済手数料がかかります。窓口は従来どおり収入印紙です。令和8年9月30日までに受け付けた申請は、許可が10月1日以降になっても改定前の手数料です(出入国在留管理庁「令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について」)。在留期間が短く更新の回数が多い顧問先ほど、手数料の負担も積み重なる点を、資金計画の中で伝えておくと親切です。
顧問税理士の先生から届いた相談と当社の支援事例

当社が支援した株式会社Q様の事例をご紹介します。事例ページでは社名を匿名(株式会社Q様)で掲載しています。
株式会社Q様(千葉県・インド料理店2店舗・外国籍の経営者・売上高約4,000万円・従業員約10名)は、在留資格「経営・管理」の更新のタイミングで直近の決算が債務超過となり、出入国在留管理局からの通知で、1週間以内に評価書面を出すよう求められていました。外国籍の経営者から通知を持ち込まれた顧問税理士の先生の周りに中小企業診断士がおらず、当社にご依頼いただきました。
当社がまず確かめたのは、本業が構造的に赤字なのか、成長のための先行投資なのかという切り分けです。債務超過の原因は2号店の立ち上げに伴う一時的なもので、先行投資と判断しました。同社はすでに増資、経費の見直し、夜間の売上強化に着手していました。そのうえで、改善の見通しを控えめな見方から前向きな見方まで複数の筋道で示し、解消しきれない場合の備えとして、経営者が会社に貸し付けている資金を返済不要とする選択肢も整理しました。朝にオンラインでヒアリングを行い、その日のうちに書類ができ、期限内に提出できる見込みが立ちました。顧問税理士の先生とは決算書や試算表の面で連携しています。
3,000万円がテーマの事例ではありませんが、更新の場面で改善見通しの評価書面を求められた一例として、本記事と重なります。当日中に書類ができたのはこの1件の実例で、審査の結果を約束するものではありません。最終的な判断は入管が行います。詳しくは経営管理ビザ更新で債務超過だった株式会社Q様の事例をご覧ください。
経過措置の期限までの準備スケジュール

経過措置の期間は、裏を返せば新基準に合わせるために使える3年間です。顧問先の更新の時期から逆算すると、動く順番は次のようになります。
- 決算確定時に、純資産と納税状況を確認
- 更新申請の前に、増資・雇用・日本語の計画を数字にする
- 行政書士の先生と申請の時期と必要書類を確認し、更新を申請
- 資料提出通知書が届いたら、記載された期限内に評価の書面などを提出
- 施行日から3年を経過した後の更新では、改正後の基準への適合を示す
1は税理士の先生の決算業務の延長で、2は先生と中小企業診断士が試算表を囲んで進める段階、3と4は行政書士の先生が主に担う段階です。資料提出通知書の提出期限について、法令上の一律の期限は確認できていません。解説記事では2週間程度とされる例もありますが、一次資料では確認できていません。当社が支援した株式会社Q様の事例では、出入国在留管理局からの通知で示された期限は1週間でした。通知書が届いてから計画づくりを始めると間に合わないおそれがあるため、2の段階で計画を数字にしておくと、通知書が届いても慌てずに済みます。期限について入管へ確認・相談する場合は、通知書に記載の連絡先へ、申請取次の行政書士の先生がいればその先生を通じて行います。期限内に連絡すると延長が認められる場合があるという解説もありますが、一次資料では確認できておらず、延長は保証されません。
在留期間が短い顧問先は、令和10年10月16日までに更新の機会が複数回ある場合があります。先の更新で「見込み」を示し、次の更新で「実績」を示せる状態にしておくと、3年経過後の更新に向けた準備が自然につながります。
税理士・行政書士の先生と中小企業診断士の分担

経過措置の期間中の更新は、決算、計画の確認と評価、申請の3つの仕事に分かれます。誰がどこを担うかを最初に決めておくと、顧問先への説明が一本になり、資料のやり取りも重複しません。
| 担当 | 担う範囲 | 担わない範囲 |
|---|---|---|
| 外国人社長(申請人) | 申請人本人。入管への申請(本人申請も可)、ヒアリングへの協力、改善策や増資・雇用の計画の実行 | 評価書面の作成 |
| 顧問税理士 | 決算書・試算表の提供、税務の判断(増資・債務免除・DESの税務など)、顧問先への説明 | 自社の顧問先の評価(第三者性の観点から避けたいと判断される場合もある) |
| 行政書士(または弁護士) | 申請取次、資料提出通知書への対応窓口、期限についての入管への確認・相談(延長の可否は公表資料で確認できていない) | 評価書面の作成 |
| KICKコンサルティング(中小企業診断士) | 決算分析、経営者への直接のヒアリング(60分程度、Zoom可)、1年間の改善見通しの検証、評価書面の作成(PDF納品、日本語のみ)、申請サポート(評価書面の内容についての顧問税理士・行政書士への説明、行政書士・顧問税理士との連携) | 申請取次・入管への申請手続、税務の判断 |
税理士の先生は、顧問先の決算書と試算表で純資産と納税状況を押さえ、増資の時期と金額、採用の時期と給与の数字を確かめる立場です。行政書士の先生は、在留期間と申請時期の管理、申請書類の作成、入管とのやり取りを担います。どちらの先生から見ても、「適合する見込み」を数字と所見でまとめる作業は、本来の業務の外側にはみ出しやすい部分です。そこを中小企業診断士が引き受けることで、先生は顧問関係・依頼関係を保ったまま更新を後押しできます。税理士の先生との連携の進め方は、税理士の先生向けの協業のご案内にまとめています。
当社の支援範囲と行政書士との役割分担

KICKコンサルティング株式会社(東京都中央区銀座)は、経済産業大臣登録の中小企業診断士として、事業計画書の確認、債務超過の改善見通しに関する評価書面の作成、申請サポート(評価書面の内容についての顧問税理士・行政書士への説明、行政書士・顧問税理士との連携)を行っています。当社(中小企業診断士)は申請取次も入管への申請手続も行いません。申請は申請人本人か、申請取次の行政書士・弁護士が行います。改正ページには、書類作成について次の注意書きもあります。「なお、弁護士及び行政書士以外の方が、官公署に提出する申請書等の書類の作成を報酬を得て業として行うことは、行政書士法違反に当たるおそれがありますので御留意願います。」すでに依頼されている行政書士の先生がいらっしゃれば、その先生と連携して進めます。
評価書面は日本語で作成し、全国オンラインで対応しています。ヒアリングも日本語で行い、顧問税理士や行政書士の先生の同席をおすすめしています。料金と依頼方法は経営管理ビザの評価書面作成サービスのページでご確認ください。経営管理ビザの制度全体は、経営・管理ビザの評価書の解説にまとめています。
経営管理ビザの更新と3,000万円のよくある質問

Q. 資本金が3,000万円に届かないまま、経過措置の期間中に更新できるのか
令和10年10月16日までの更新申請では、新たな基準を満たさないことのみをもって不許可にはならないと公表されています(よくある質問 問1)。経営状況や改正後の基準に適合する見込み等を踏まえて判断されるため、増資や雇用の計画を数字で用意しておくよう顧問先に案内してください。最終的な判断は入管が行います。
Q. 資本準備金を含めれば3,000万円になる場合の扱い
法人の場合は原則として払込済みの資本金の額、または出資の総額で判断され、資本準備金、資本剰余金、利益剰余金は含まれないとされています(Q&A 問7)。有償新株予約権の払込金は、明確化ガイドライン5の条件を満たす部分に限り計上できるとされています。株主資本の内訳を見て、顧問先に誤解がないかを先生から確認してください。
Q. 経過措置の期間中でも評価の書面を求められるのか
求められることがあります。施行に伴う留意点2に「なお、審査においては、経営に関する専門家の評価を受けた文書を提出いただくことがあります。」と明記されています。また、直近期末のみ債務超過(直近期前期末は債務超過でない)の場合は、明確化ガイドライン3(1)b(イ)に基づき、改善の見通しについて第三者が評価を行った書面の提出を求められます。2期連続の債務超過は原則として事業の継続性が認められず、評価書面などで柔軟に判断されるのは、合理的な理由があると判断される新興企業に限られます。
Q. 次の更新申請が令和10年10月16日より後になる顧問先の備え
施行日から3年を経過した後の更新申請になるため、改正後の基準に適合する必要があります。経営状況が良好で納税義務を適切に履行し、次回更新申請時までに新基準を満たす見込みがあれば総合的に判断されますが、それまでの更新の機会が少ない分、増資と雇用の実績を前もって積み上げておくことが大切です。
Q. 増資の資金を親族や知人から借りて払い込む場合の注意点
3,000万円の判定に使われるのは、原則として払込済みの資本金の額です。資金の出所については、送金記録や出資の経緯を説明できる状態にしておくことが大切です。当社は資金の出所を含めて計画の合理性を確認しますが、借入の税務は顧問税理士の先生、審査上の扱いは入管の判断で、申請手続きについては行政書士の先生にご確認ください。
まとめ
経営管理ビザの更新で3,000万円が今すぐ必要かという顧問先の問いに、先生から返す答えは、令和10年10月16日までは、新たな基準を満たさないことだけを理由に不許可にはならない、です。ただし、審査では経営状況と新基準に適合する見込みが見られ、経営に関する専門家の評価を受けた文書を求められることもあります。その文書の作成者や様式は公表資料では確認できていないため、通知書の文言を行政書士の先生と確認するところから始めてください。
先生が最初に確認するのは、直近の決算の純資産と、税と社会保険の納付状況です。そのうえで、増資の時期と金額、常勤職員の採用計画、日本語能力の証明を数字と期日で整えておくことが、3年経過後の更新に向けた備えになります。決算は税理士の先生、申請は行政書士の先生、計画の確認と評価書面は中小企業診断士という分担で、顧問先の更新を支えていきましょう。
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この記事の執筆・監修
松本昌史(中小企業診断士・経済産業大臣登録)
KICKコンサルティング株式会社 代表取締役(東京都中央区銀座)
認定経営革新等支援機関、事業再生マネージャー、事業承継士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、MBA(法政大学経営大学院)。大手生命保険代理店に8年勤務したのち独立。支援実績は150社以上(経営支援全体の実績)。外国人技能実習・育成就労・特定技能向けの「債務超過の改善見通しに関する評価書面(企業評価書)」の作成経験をもとに、経営・管理の評価書面を作成しています。
参考資料:出入国在留管理庁『在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について』(特にお問合せが多い質問は令和8年6月26日更新、Q&A)、同庁『「経営・管理」の在留資格の明確化等について』(令和8年6月改訂)、同庁「令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について」









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