【まるっと解説】新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?3つの申請枠・補助上限額・賃上げ要件・第1回公募の締切をわかりやすく解説

「ものづくり補助金に申請しようと準備していたら、制度が変わったと聞いた」「新事業進出補助金と統合されたそうだが、自社はどの枠で申請すればよいのかわからない」。2026年の夏以降、相談現場ではこうした声が急増しています。この記事では、2026年度に新しくスタートした新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(通称、新事業・ものづくり補助金)の全体像を、2026年10月時点の第1回公募の情報をもとに、中小企業診断士の実務目線でわかりやすく整理します。

この記事は次のような方におすすめです

  • 旧ものづくり補助金・旧新事業進出補助金との違いを知りたい経営者の方
  • 3つの申請枠のどれが自社に合うのか迷っている方
  • 補助上限額・補助率・賃上げ要件を正確に把握したい方
  • 第1回公募(締切2026年10月30日)への申請を検討中の方

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは、中小企業等が革新的な新製品・新サービスの開発、新市場への進出、海外展開に向けた設備投資などを行う際に、その費用の一部を国が補助する制度のことです。2026年度に「中小企業新事業進出補助金」と「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」が統合されて誕生した新制度で、生産性向上と賃上げの実現が前提となります。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?統合の経緯と制度の目的

結論から申し上げると、この補助金は「設備投資で生産性を上げ、その成果を賃上げに回す中小企業」を国が後押しするための制度です。中小企業庁・中小企業基盤整備機構が所管し、2026年度から公募が始まりました。

統合の経緯を整理すると、もともと2つの補助金が別々に運用されていました。ひとつは、2024年度まで22次公募にわたって続いた「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」、いわゆるものづくり補助金です。もうひとつは、2025年度に新設された「中小企業新事業進出補助金」で、既存事業とは異なる新市場への進出を支援する制度でした。いずれも「企業規模の拡大と付加価値向上」という同じ政策目的を持っていたため、2026年度に統合され、申請枠を分けて一本化されたのが現在の制度です。

旧ものづくり補助金の仕組みについては、ものづくり補助金とは?対象企業・要件・設備投資の考え方で詳しく解説しています。旧制度の申請経験がある方ほど「以前と同じ感覚」で準備してしまいがちですが、補助上限額・要件・加点項目が大きく変わっていますので、必ず新制度の公募要領で確認してください。

POINT対象となるのは、日本国内に本社または補助事業の実施場所を持つ中小企業等です。従業員0名の事業者、創業1年未満の事業者(新事業進出枠)、みなし大企業、過去に不正受給や未返還のある事業者は対象外とされています。

3つの申請枠|革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠

申請枠は次の3つに分かれています。自社の投資内容がどの枠に当たるかを最初に見極めることが、採択への第一歩です。

革新的新製品・サービス枠

自社の技術を活かした新製品・新サービスの「開発」を支援する枠です。旧ものづくり補助金の中心的な類型を引き継いでいます。注意点として、機械装置を導入するだけで開発を伴わないもの、同業者にすでに相当普及している開発は対象外とされています。「新しい設備を買う」のではなく「設備を使って何を新しく生み出すか」が問われます。

新事業進出枠

既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。旧新事業進出補助金を引き継いでおり、建物費も対象経費に含まれる点が大きな特徴です。事務局は「新市場・高付加価値事業の考え方」という資料を公表しており、既存事業との違いをどう説明するかが審査の要になります。

グローバル枠

海外販路開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化を支援する枠です。補助率が2/3と高く、海外旅費や通訳・翻訳費も対象経費に加わります。

補助上限額と補助率|従業員規模別の早見表

補助上限額は申請枠と従業員数で決まります。2026年10月時点の公募要領(第1.3版)をもとに整理すると次の通りです。

申請枠従業員数補助上限額賃上げ特例適用時補助率
革新的新製品・サービス枠1〜5人750万円850万円中小企業1/2
小規模・再生事業者2/3
6〜20人1,000万円1,250万円
21〜50人1,500万円2,500万円
51人以上2,500万円3,500万円
新事業進出枠1〜20人2,500万円3,000万円1/2
小規模・再生事業者2/3
21〜50人4,000万円5,000万円
51〜100人5,500万円7,000万円
101人以上7,000万円9,000万円
グローバル枠新事業進出枠と同じ最大7,000万円最大9,000万円2/3

補助金額の下限は、革新的新製品・サービス枠が100万円、新事業進出枠とグローバル枠が750万円です。つまり新事業進出枠では、補助率1/2の場合に最低でも1,500万円規模の投資が必要になります。また、地域別最低賃金の引上げに関する特例を満たすと、中小企業でも補助率が1/2から2/3に引き上げられます。

基本要件|付加価値額・給与・最低賃金・両立支援の4点セット

この補助金は、採択されて終わりではありません。補助事業終了後3〜5年の事業計画期間にわたって、次の要件を満たし続けることが求められます。健康診断で毎年数値をチェックされるように、事業化状況報告で毎年確認される点を押さえておきましょう。

要件基準未達の場合
付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)年平均成長率+4.0%以上給与要件と組み合わせて判定
一人当たり給与支給総額年平均成長率+3.5%以上達成率に応じて返還(成長率ゼロ以下は全額返還)
事業場内最低賃金地域別最低賃金+30円以上交付額÷計画年数の額を返還
ワークライフバランス一般事業主行動計画を策定し「両立支援のひろば」に公表申請要件(締切時点で有効な計画が必要)
子育て・職場環境ライフデザインサービス活用、家事代行・ベビーシッター活用、子育て支援制度の周知のいずれか1つ申請要件(くるみん等の認定取得者は免除)

とくに見落としやすいのが一般事業主行動計画の公表です。「両立支援のひろば」への公表には1〜2週間かかるとされており、締切直前に気づいても間に合いません。金融機関から資金調達する場合は「金融機関による確認書」も必要です。

賃上げ特例と最低賃金引上げ特例|上限額と補助率を引き上げる2つの仕組み

より大きな支援を受けたい企業向けに、2つの特例が用意されています。

賃上げ特例は、一人当たり給与支給総額の年平均成長率を+6.0%以上(基本要件+2.5%)、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上(基本要件+20円)とすることで、補助上限額が引き上げられる仕組みです。ただし、未達の場合は上乗せ分の全額返還となります。相談現場では「上限が上がるなら特例を使いたい」という声をよく聞きますが、5年間にわたって年6%の賃上げを続けられる収益構造があるかを、先に検証することをおすすめします。

地域別最低賃金引上げ特例は、2024年10月から2025年9月の間に、地域別最低賃金以上かつ2025年度改定後の最低賃金未満で雇用する従業員が全従業員の30%以上となる月が3か月以上ある事業者が対象で、補助率が1/2から2/3に上がります。最低賃金近辺の賃金で多くの従業員を雇用している企業ほど恩恵が大きい特例です。

「自社はどの申請枠で、どの特例を使うべきか」まずはご相談ください。

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補助対象経費と対象外経費|申請前に必ず確認したい線引き

全枠に共通する対象経費は、機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費です。革新的新製品・サービス枠では機械装置・システム構築費が必須、新事業進出枠では建物費が加わり、機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが必須となります。グローバル枠はさらに海外旅費、通訳・翻訳費が対象です。

一方で、対象外経費も明確に示されています。船舶・航空機・車両・運搬具、既存設備の単なる置き換え、特許庁への手数料、市販のウイルス対策ソフト、パソコン・タブレット・スマートフォン本体、設置場所の整備や基礎工事、建物の単純購入・賃貸、終了時の未使用原材料などです。事業計画作成支援者への支払いや、申請者自身が行うべき手続きを外部に委ねる費用も専門家経費の対象外ですので、ご注意ください。

経費区分ごとに上限もあり、応募時に計上した経費がすべて認められるわけではありません。相談現場では、見積書の仕様と事業計画の記載がずれていたために交付申請段階で経費が減額されるケースも見受けられます。申請前に両者の整合性を確認しておくことが大切です。

第1回公募のスケジュール|2026年10月30日18時締切

第1回公募のスケジュールは次の通りです。当初の予定から変更されている点に注意してください。

項目日程
公募開始2026年6月29日(月)
申請受付開始2026年9月30日(水)18時(当初8月31日から延期)
応募締切2026年10月30日(金)18時厳守(当初9月30日から延期)
補助事業実施期間革新的新製品・サービス枠は交付決定から10か月以内、新事業進出枠・グローバル枠は14か月以内
事業化状況報告補助事業終了後5年間

申請は電子申請システムのみで、GビズIDプライムアカウントが必須です。発行には約1週間かかり、GビズIDの取得遅れを理由とした締切延長はありません。まだ取得していない方は今すぐ手続きを始めてください。事務局は、中小企業基盤整備機構から委託を受けた全国中小企業団体中央会を主幹事とするコンソーシアム(都道府県中小企業団体中央会、博報堂、アクセンチュア、博報堂プロダクツで構成)が運営しており、電話相談は完全予約制のコールバック予約システムで受け付けています。

審査の観点|書面審査7項目と口頭審査

審査は外部有識者による審査委員会の書面審査で行われ、観点は次の7項目です。補助対象事業としての適格性、経営戦略との整合性、事業の実現可能性、新規事業の新市場性・高付加価値性(新事業進出枠のみ)、公的補助の必要性、政策面、大規模な賃上げ計画の妥当性(賃上げ特例希望者のみ)です。

加点項目は17あり、パートナーシップ構築宣言、くるみん・えるぼし認定、健康経営優良法人2026、経営革新計画、事業継続力強化計画、DX認定、研究開発費の計上、技術情報管理認証、アトツギ甲子園、事業場内最低賃金の引上げ(63円以上)などが挙げられています。一方で減点項目も5つあり、過去3年以内に交付決定を受けている場合や、類似テーマへの集中・過剰投資などが該当します。

旧制度と大きく違うのは口頭審査の導入です。必要に応じてZoom等のオンラインで1社15分程度行われ、事業者本人のみが対象で支援者の同席はできません。不受験は不採択となります。事業計画は申請者自身が作成することが前提で、外部への丸投げは認められていません。当社の申請サポートでも、経営者ご自身が計画を語れる状態になることを重視しています。

返還要件と財産処分の制限|採択後に続く義務

補助金は「もらって終わり」ではありません。給与要件が未達の場合は交付額に未達成率を乗じた額を返還し、成長率がゼロ以下なら全額返還となります(付加価値額が増えず計画期間の過半が営業赤字の場合や天災等は除外)。事業場内最低賃金が未達なら交付額を計画年数で割った額を返還します。補助金で取得した設備を目的外に使用・処分する場合は、残存簿価相当額または譲渡額を納付する財産処分の制限もあります。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のよくある失敗・注意点

相談現場で見てきた失敗のパターンは、おおむね次の4つに集約されます。

ひとつめは、枠の選択ミスです。「新しい機械を入れる」だけの計画を革新的新製品・サービス枠で出しても、開発を伴わないため対象外と判断されます。ふたつめは、既存事業との違いが説明できないまま新事業進出枠に申請するケースです。三つめは、賃上げ要件を軽く見て特例を使い、後から返還リスクに気づくケースです。四つめは、中小企業省力化投資補助金や中小企業成長加速化補助金との棲み分けを整理せずに申請し、審査官の意図とずれてしまうケースです。

人手不足の解消が主目的なら省力化投資補助金、生産性向上の投資を税制面で後押ししたいなら経営力向上計画との併用も選択肢になります。経営革新計画の承認は本補助金の加点項目にもなっていますので、投資計画全体を俯瞰して制度を組み合わせることが大切です。

相談先の選び方|認定支援機関の実績と「自分で語れる計画」

相談先を選ぶ際は、第一に本補助金および旧制度での支援実績、第二に経営戦略と投資計画を一体で設計できるか、第三に採択後の事業化状況報告まで伴走してくれるかを確認してください。KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、経済産業大臣登録の中小企業診断士・MBA・1級ファイナンシャル・プランニング技能士が在籍する認定経営革新等支援機関で、支援実績は150社以上です。旧ものづくり補助金・旧新事業進出補助金の双方で培った申請サポートのノウハウをもとに、経営者ご自身が口頭審査で語れる事業計画づくりを支援しています。補助金全体の一覧は資金調達(補助金)一覧をご覧ください。

まとめ|新事業・ものづくり補助金は「投資×賃上げ」の計画が採択の鍵

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の3つの申請枠を持ち、従業員規模に応じて最大7,000万円(賃上げ特例で9,000万円)が補助される制度です。一方で、付加価値額+4.0%、一人当たり給与+3.5%、最低賃金+30円という要件を5年間守り続ける必要があり、未達の場合は返還が生じます。第1回公募の締切は2026年10月30日18時です。補助金がなくても投資する価値があるかという視点で計画を組み立てることが、結果的に採択後の負担を減らす近道になります。

「投資計画と賃上げ計画の両立を一緒に検討したい」まずはご相談ください。

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新事業進出・ものづくり商業サービス補助金に関するよくあるご質問(FAQ)

POINT旧制度との違いや申請枠の選び方、GビズIDの取得時期など、相談現場で特によく寄せられる5つの質問をまとめました。

Q. 旧ものづくり補助金で採択されたことがありますが、今回も申請できますか?

A. 申請自体は可能ですが、過去3年以内に交付決定を1回受けている場合は減点項目に該当します。また、過去の補助事業で事業化段階が3以下の場合も減点対象です。前回の事業化状況を整理したうえで、申請の是非を判断することをおすすめします。

Q. 革新的新製品・サービス枠と新事業進出枠の両方に申請できますか?

A. 同一の事業者が複数の枠に重複して申請することは想定されていません。自社の投資が「既存事業の延長での開発」なのか「既存事業と異なる新市場への進出」なのかを整理し、ひとつの枠を選んでください。迷う場合は事務局のコールバック予約や専門家へのご相談をおすすめします。

Q. GビズIDプライムはいつまでに取得すればよいですか?

A. 発行には約1週間かかるとされています。締切は2026年10月30日18時で、GビズIDの取得遅れによる延長はありませんので、申請を検討した時点ですぐに手続きを始めてください。

Q. 賃上げ要件を達成できなかった場合、どうなりますか?

A. 一人当たり給与支給総額の成長率が未達の場合、交付額に未達成率を乗じた額の返還が必要です。成長率がゼロ以下の場合は全額返還となります。ただし、付加価値額が増えず計画期間の過半が営業赤字だった場合や天災等のやむを得ない事情は除外されます。

Q. 事業計画書の作成をすべて専門家に任せることはできますか?

A. 事業計画は申請者自身が作成することが前提で、外部への丸投げは認められていません。口頭審査も事業者本人のみが対象です。専門家は、計画の構成整理や数値の根拠づくりをサポートする立場であり、当社も経営者ご自身が語れる計画づくりを支援しています。

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