【プロが解説】経営改善と事業承継を同時に進めるための5つの手順

決算書を開くたびに、ため息が出る。借入金の残高、薄い利益、細っていく手元の資金。

「この財務状態では、とても子どもに継がせられない」——そう考えて、承継の話を先送りにしてはいないでしょうか。

結論から申し上げます。経営改善と事業承継は、順番に片付けるものではなく、同時に進められます

むしろ改善が終わるのを待つほど、選べる道は狭くなります。経営者のご年齢と、後継者の人生の予定は待ってくれません。

この記事はこんな方におすすめです

  • 借入が重く承継に踏み切れない経営者の方
  • 赤字の会社を子に継がせたくない社長の方
  • 資金繰りに追われ先を描けない経営者の方
  • 経営改善計画の作り方が分からない方
  • 継ぐかどうか迷っている後継者の方
この記事で分かること

  • 経営改善と事業承継を同時に進める5つの手順
  • 事業の棚卸しと資金繰り表で現状を数字にする方法
  • 経営改善計画を金融機関と共有するときの考え方
  • 経営改善計画策定支援事業(405事業)と認定支援機関の役割
  • 改善の途中から後継者の育成を始める理由

KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、法人支援150社以上の実績で承継の全体設計に伴走してきました。

読み終えるころには、来週どの数字から手をつければよいかが分かります。

ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは決算書と資金繰りの現状をお聞かせください。

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「経営改善が終わってから事業承継」が危ない理由と、先送りで起きること

この記事が前提にするのは親族内承継です。お子さんやご親族へ会社を引き継ぐ場面を想定しています。

結論を先に述べます。経営改善が片付くのを待ってから承継に着手する進め方は、時間の使い方として不利になりがちです。

改善には数年かかります。その数年のあいだ、承継の準備は一歩も進まないからです。

経営改善と事業承継は、別々の作業ではない

経営改善とは、収益力と資金繰りを立て直し、返済を続けられる状態に会社を戻していく取り組みのことです。

事業承継とは、会社の経営権・株式・個人保証・人と技術を、次の世代へ渡していく取り組みのことです。

この2つは、扱う資料がかなり重なります。決算書、借入の一覧、資金繰り表、取引先の構成、現場の業務内容。

どちらを進めるにしても、最初にそろえる書類はほとんど同じです。だから同時に進められます。

言い換えれば、経営改善のために作った資料は、そのまま事業承継の設計図になります

先送りにしたときに起きる3つのこと

「もう少し数字が良くなってから」と考えているあいだに、静かに進んでしまうことがあります。

  • 後継者が別の道を選ぶ └ 継ぐ話が出ないまま30代後半を迎え、転職や独立を決める
  • 株式が広がっていく └ 相続が重なり、株主が兄弟・いとこへと散らばる
  • 選べる打ち手が減る └ 体調や年齢の問題が起きてから動くと、時間の余裕がない

特に株式の分散は、あとから元に戻すのが難しい問題です。

株主が増えるほど、買い取りの資金も、話し合いの手間も増えていきます。

財務が悪いこと自体は、承継を止める理由にならない

「赤字だから継がせられない」というお気持ちは、よく分かります。

ただ、財務の状態が悪いことと、承継の準備を始められないことは、本来つながっていません。

むしろ財務が厳しい会社ほど、承継の準備を先に始める価値があります。理由は3つあります。

  1. 株式の評価が高くない時期は、株を渡しやすい局面になり得る
  2. 後継者が改善の過程に加わると、経営の中身を最短で学べる
  3. 金融機関に「次の代の体制」を示せると、対話の材料が1つ増える

3つめは補足が必要です。後継者が決まっているかどうかは、金融機関にとって関心事の1つです。

返済は長期にわたります。10年先も会社が続く前提を、相手も知りたいからです。

経営改善と事業承継のどちらを先にするか、という問いの立て方をやめる。これが最初の一歩です。両方の材料をそろえる作業から始めれば、迷う時間そのものが減ります。

順番に進める場合と、同時に進める場合の違い

同じ3年を使っても、進め方で到達点が変わります。整理すると次のようになります。

観点改善のあとに承継経営改善と事業承継を同時に
作る資料改善用と承継用を別々に作る1つの資料を両方に使う
後継者の関与改善が終わるまで蚊帳の外初期から数字と現場に触れる
株式・保証手つかずのまま時間が過ぎる改善と並行して整理が進む
金融機関との対話返済の話だけになりやすい次の体制まで含めて話せる
3年後の状態改善の途中で、承継は未着手改善が進み、承継の道筋もある

この違いは、能力の差ではありません。着手の順番を変えただけの差です。

経営改善と事業承継を同時に進める5つの手順

結論として、進め方は5つの手順に整理できます。上から順に進めれば、途中で行き止まりになりにくい順番です。

  1. 現状を数字で確かめる(事業の棚卸しと資金繰り表)
  2. 返済と資金繰りの見通しを立てる
  3. 経営改善計画を作り、金融機関と共有する
  4. 並行して株式・個人保証・保険を整理する
  5. 改善の途中でも後継者の育成を始める

ここからは、それぞれで何をするのかを具体的に見ていきます。

現状を数字で確かめる(事業の棚卸しと資金繰り表)

最初にやることは、対策を考えることではありません。現状を正確に把握することです。

事業の棚卸しとは、会社の事業そのものを調べ、利益の出どころと弱点を明らかにする作業のことです。会社の強みと弱みを洗い出す現状把握、と言い換えてもかまいません。

財務の数字だけを見ても、なぜ儲からないのかは分かりません。現場の中身まで踏み込む必要があります。

事業の棚卸しで見ていくのは、たとえば次のような点です。

  • 売上を事業別・顧客別・商品別に分解した内訳
  • それぞれの粗利率と、赤字になっている取引
  • 主要な取引先への依存度と、契約の安定性
  • 現場の人員構成と、技術が属人化している箇所
  • 設備の老朽化の度合いと、更新にかかる時期

あわせて作るのが資金繰り表です。資金繰り表とは、月ごとのお金の入りと出を並べ、手元資金の残高の推移を見える形にした表のことです。

損益計算書で利益が出ていても、資金が回らなければ会社は続きません。逆に赤字でも、資金が回っていれば時間は稼げます。

この2つがそろうと、感覚ではなく数字で会社を語れるようになります。

そして事業の棚卸しの結果は、そのまま後継者への引継ぎ資料になります。会社の稼ぎ方が言葉になっているからです。

返済と資金繰りの見通しを立てる

次に、借入の返済がこの先どうなるかを確かめます。

用意するのは借入金の一覧です。金融機関ごとに、残高・毎月の返済額・完済予定・担保・保証の状況を並べます。

そのうえで、手順1の資金繰り表に返済額を重ねます。すると、どの月に資金が薄くなるかが見えてきます。

ここで初めて、打ち手の候補が現実味を持ちます。売上を伸ばす、原価を下げる、固定費を見直す、設備投資の時期をずらす。

返済の負担が重すぎる場合、リスケジュール(返済条件の変更)を検討する場面もあります。

リスケジュールは、金融機関にお願いすれば必ず認められるものではありません。返済を一時的に軽くする代わりに、改善の道筋を示す責任が生じます。安易な手段として考えず、専門家と相談したうえで判断してください。

大切なのは、金融機関を交渉の相手とだけ見ないことです。

返済が続く状態に戻ることは、会社にとっても金融機関にとっても望ましい結果です。同じ方向を向ける相手だと考えて話を組み立てます。

経営改善計画を作り、金融機関と共有する

経営改善計画とは、現状の分析・課題・具体的な改善策・数値計画・返済の見通しを、1つの資料にまとめたもののことです。

頭の中にある構想は、計画とは呼べません。数字と期限が入って初めて、他人と共有できる形になります。

盛り込む中身は、おおむね次のとおりです。

項目書く内容
現状分析事業の棚卸しで分かった強みと弱み、赤字の原因
改善策誰が・いつまでに・何をするかまで落とした行動
数値計画数年先までの損益と資金繰りの見通し
返済計画金融機関ごとの返済の考え方
経営体制後継者を含む、これからの役割分担

最後の「経営体制」の欄が、承継と重なる部分です。ここに後継者の名前と役割を書けると、計画の説得力が変わります。

作った計画は、金融機関に説明して共有します。取引が複数行にわたる場合は、同じ内容を各行に伝えるのが基本です。

ここで使えるのが経営改善計画策定支援事業(通称405事業)です。

これは、経営改善計画を作るときに使える国の制度です。認定経営革新等支援機関の支援を受けた場合に、専門家へ支払う費用の一部について補助を受けられます。

認定経営革新等支援機関(認定支援機関)とは、国が認定した中小企業の支援機関のことです。専門的な知識と実務経験があると認められた機関が該当します。

中小企業診断士・税理士・金融機関などが認定を受けています。KICKコンサルティング株式会社も認定支援機関です。

補助の割合や上限は制度の内容と個社の状況で変わります。使えるかどうかを含め、認定支援機関や取引金融機関にご確認ください。

計画づくりと並行して、承継の設計も進めます。株式・保証・後継者の育成をどう扱うか。

この部分は、経営改善と事業承継の全体設計コンサルティングで、計画とひとつながりに整理していきます。

株式・個人保証・保険を並行して整理する

経営改善が進んでいる最中でも、承継の実務は動かせます。中心になるのは3つです。

【株式】 まず、株主名簿を確認します。名義と実態が食い違っていないか、分散していないかを見ます。

自社株の評価は、類似業種比準方式や純資産価額方式といった考え方で行われます。会社の規模や業種によって使う方式が変わります。

具体的な評価額の計算や、渡し方に伴う税務の判断は税理士の領域です。診断士が代わりに判断することはできません。

そのうえで、贈与・譲渡・遺言といった渡し方の選択肢を、税理士と一緒に検討していきます。

【個人保証】 借入に経営者の個人保証が付いている場合、承継の大きな論点になります。

後継者が保証を引き継ぐことに不安を感じ、承継そのものをためらう例は少なくありません。

この点については「経営者保証に関するガイドライン」という考え方が示されています。法人と個人の資産や経理が明確に分けられていること、財務基盤が整っていることなどが判断の材料になります。

つまり、経営改善が進むこと自体が、保証の話を前に進める材料になります。ここでも2つの取り組みはつながっています。

【保険】 法人契約の保険は、加入した当時の目的のまま残っていることがあります。

契約の目的、保険金額、受取人、財務への影響、承継時に果たす役割。この5点を洗い出し、いまの目的と合っているかを点検する価値があります。

2019年の法人税基本通達の改正により、法人向け定期保険等の取扱いは変わりました。最高解約返戻率に応じて、損金算入できる割合が区分されます。

「保険料は全額が損金になる」と一般論で考えるのは正しくありません。契約の時期と内容によって取扱いが変わります。

資金繰りが苦しいと、保険料を減らす方向へ話が傾きがちです。ただ、削りすぎれば万一のときに事業の継続や家族の生活に影響が出ます。減らすための見直しではなく、守るための再設計として考えます。

改善の途中でも後継者の育成を始める

最後の手順は、後継者の育成です。改善が終わってからではなく、途中から始めます。

理由は単純です。会社を立て直す過程ほど、経営の勘所が身につく教材はありません

順調な会社の社長業を見ていても、判断の理由までは分かりません。苦しい局面での取捨選択にこそ、経営の中身が表れます。

具体的には、次のような関わり方から始められます。

  1. 月次の資金繰り表を、後継者が自分の手で更新する
  2. 改善策のうち1つを担当し、期限まで責任を持つ
  3. 金融機関との面談に同席し、説明の一部を任される
  4. 主要な取引先へ、現経営者と一緒にあいさつに回る
  5. 現場の管理職と、月1回の話し合いの場を持つ

3つめは特に効果があります。数字を自分の言葉で説明する経験は、机上では得られません。

なお、ここまでの5つの手順は、親族内承継を前提に書いてきました。

後継者が親族にいない場合の第三者承継(M&A)でも、手順1から手順4までの順序はそのまま使えます。現状を数字にし、返済の見通しを立て、計画を共有し、株式と保証を整理する。この流れは変わりません。

ご相談の場で、契約をお勧めすることはありません。計画の途中でも、まだ何も手をつけていなくても構いません。5つの手順のどこから始めるべきかだけでも、一緒に整理できます。

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経営改善と事業承継を同時に進めた先に手に入る3つの未来

5つの手順をやり切ると、会社の状態は3つの軸で変わります。数字の話だけではありません。

数字で会社を語れるようになる

いちばん大きな変化は、経営者ご自身の手元に「説明できる材料」が残ることです。

どの事業でいくら稼ぎ、どこで失っているのか。来月の資金はいくら残り、返済にいくら回るのか。

これらが即答できる状態になります。会議での議論も、感覚のぶつけ合いではなくなります。

そして、この材料は改善が終わったあとも残ります。会社に蓄積される資産です。

金融機関との関係が、報告から対話に変わる

経営改善計画を共有し、進捗を定期的に報告していると、やり取りの中身が変わっていきます。

計画と実績の差が出たとき、その理由と次の手を自分から説明できるからです。

「聞かれてから答える」関係から、「先に伝える」関係へと移っていきます。

もちろん、それで融資の判断がどうなるかは、そのときの状況によります。ただ、話し合いの土台が整うことは確かです。

後継者が同席していれば、次の代の顔も知ってもらえます。承継のあとの取引を考えると、これは小さくない意味を持ちます。

後継者が、納得して継ぐ決断ができる

最も大きな変化かもしれません。後継者にとって、いちばん怖いのは「分からないまま背負うこと」です。

借入がいくらあり、返済がどう進み、何が課題で、どう手を打っているのか。

それが見えていれば、たとえ財務が厳しくても、判断ができます。腹をくくることができます。

逆に、何も知らされないまま「そろそろ継いでくれ」と言われれば、迷って当然です。

数字の見通しと、金融機関との対話と、納得して継ぐ後継者。この3つを共に手に入れましょう。

自社だけで経営改善と事業承継を進める限界と、KICKの支援

ここまでの手順は、理屈のうえでは自社だけでも進められます。ただ、実務では3つの壁にぶつかりがちです。

自社だけで進めるときにぶつかる3つの壁

1つめは、日常業務に押し流されることです。資金繰り表の更新も、事業別の粗利の集計も、締切がありません。

目の前の受注と支払いに追われ、3か月経っても着手できていない。よくあることです。

2つめは、身内だから見えないことです。長く続けてきた取引や、昔からの慣行は、社内の人ほど疑いにくくなります。

赤字の取引を「付き合いだから」と続けている理由が、当事者には見えません。

3つめは、専門家がバラバラに動くことです。税理士は税務を、保険担当者は保険を、金融機関は融資を見ています。

それぞれが正しくても、全体としてつながっていないことがあります。

共通の敵は、人ではありません。バラバラのまま時間だけが過ぎる状況です。

誰が何を担当するのかを整理する

役割を分けて考えると、相談先に迷わなくなります。

領域担当する専門家
税務判断・税務申告・税額計算税理士
登記の手続き司法書士
許認可の手続き行政書士
法律判断・紛争の対応弁護士
経営改善と承継の全体設計・伴走中小企業診断士・事業承継士

自社株の評価額の計算や、株式を渡すときの税務の判断は税理士の領域です。KICKが税務代理を行うことはありません。

私たちの役割は、それぞれの専門家の間に立ち、1本の計画としてつなぐことです。

KICKコンサルティングができること

KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、法人支援150社以上の実績があります。

認定経営革新等支援機関として、経営改善計画の策定を支援しています。あわせて、事業承継専属の保険代理店として法人保険の再設計も行います。

具体的には、次のような形でお手伝いします。

  • 事業の棚卸しによる現状把握と、資金繰り表の整備
  • 経営改善計画の策定と、金融機関への説明の同席
  • 株式・個人保証・保険を含む承継全体の設計
  • 後継者が計画の実行に加わるための役割づくり
  • 税理士・司法書士など他の専門家との連携の調整

すでに顧問税理士や取引金融機関がいらっしゃる場合も、その関係はそのままで構いません。既存の関係を否定することはありません。

ご相談いただいた時点で、何かをお決めいただく必要はありません。売り込みも、その場でのご契約も、しつこい連絡もありません。話を聞いたうえで「今はやらない」という判断でも大丈夫です。

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経営改善と事業承継についてよくある質問

Q. 赤字や債務超過でも事業承継はできますか

A. 進めることはできます。財務の状態が悪いこと自体は、承継の手続きを止める理由になりません。

ただし、後継者が引き受ける負担は重くなります。だからこそ、経営改善と同時に進めて、引き継ぐ会社の状態を良くしていく考え方が有効です。

まずは事業の棚卸しと資金繰り表で、いまの姿を正確につかむところから始めてください。

Q. 経営改善計画を作るのに、どのくらいの期間がかかりますか

A. 会社の規模と資料の整い方によりますが、数か月かかることが多いと考えてください。

時間の大半は、計画を書く作業ではなく、現状を調べる作業に使われます。売上の内訳や原価の実態を洗い出す工程です。

資料が整っていれば短くなります。まずは直近3期分の決算書と、借入金の一覧をそろえてみてください。

Q. 405事業とは何ですか

A. 経営改善計画策定支援事業の通称です。認定経営革新等支援機関の支援を受けて、経営改善計画を作るときに使えます。

専門家へ支払う費用の一部について、国の補助を受けられる制度です。

金融機関との調整を伴う計画づくりを想定した制度で、計画を作ったあとの進捗の確認(モニタリング)も対象に含まれます。

補助の割合や上限、対象になる条件は制度の内容によって変わります。利用の可否を含め、認定支援機関や取引金融機関にご確認ください。

Q. 認定経営革新等支援機関とは何ですか

A. 中小企業を支援する専門的な知識と実務経験があるとして、国が認定した機関のことです。認定支援機関と略されます。

中小企業診断士・税理士・公認会計士・金融機関などが認定を受けています。経営改善計画の策定支援や、各種制度の利用の場面で関わります。

KICKコンサルティング株式会社も認定支援機関です。どの機関に頼むかは、自社の課題との相性で選んでください。

Q. リスケジュールをお願いすると、その後の借入ができなくなりますか

A. 一概には言えません。その後の取引がどうなるかは、会社の状況と改善の進み方によって変わります。

大切なのは、返済条件の変更を「その場しのぎ」で終わらせないことです。改善の道筋を示し、進捗を報告し続ける姿勢が土台になります。

また、条件の変更に応じてもらえるかどうかも、事前には決まっていません。まず資金繰り表を作り、実際にどの月が厳しいのかを確かめたうえで相談してください。

Q. 資金繰り表は何か月先まで作ればよいですか

A. まずは向こう12か月を月単位で作るところから始めてください。年間の資金の山と谷が見えます。

資金が特に厳しい時期は、週単位に細かくすると判断しやすくなります。賞与や納税、決算の支払いが重なる月は要注意です。

経営改善計画に載せる数値計画は、さらに数年先まで延ばします。まず12か月分を作り、そこから延ばしていく順序が現実的です。

Q. 個人保証は後継者が引き継がなければならないのですか

A. 自動的に引き継がれると決まっているわけではありません。金融機関との個別の話し合いになります。

「経営者保証に関するガイドライン」では、判断の材料が示されています。法人と個人の資産や経理が明確に分かれていること、財務基盤が整っていることなどです。

つまり、経営改善が進むことが保証の話を前に進める材料になります。承継の時期が見えた段階で、早めに金融機関へ相談してください。

Q. 事業承継税制の期限はいつまでですか

A. 法人版の特例措置には、性質の違う2つの期限があります。混同しないことが大切です。

特例承継計画の提出期限は令和9年(2027年)9月30日です。一方、贈与や相続を実際に行う期限は令和9年(2027年)12月31日で、こちらは延長されない見込みです。

計画の提出期限が延びたことをもって、余裕があると考えるのは危険です。実行が間に合わなければ特例は使えません。

また、この制度は納税を猶予する仕組みです。要件を満たさなくなれば猶予が打ち切られます。適用の可否は個社の状況によるため、税理士にご確認ください。

Q. 後継者の育成はいつから始めればよいですか

A. 経営改善の途中から始めてください。改善が終わるのを待つ必要はありません。

立て直しの過程は、経営判断の理由が最もよく見える場面です。順調なときには学べない部分が学べます。

まずは資金繰り表の更新を任せるところからで構いません。数字に毎月触れる習慣が、いちばんの土台になります。

Q. 第三者への承継を考える場合も、同じ手順が使えますか

A. 手順1から手順4までは、そのまま使えます。現状を数字にし、返済の見通しを立て、計画を共有し、株式と保証を整理する流れは共通です。

違いが出るのは手順5です。親族内承継では後継者の育成が中心になりますが、第三者承継では相手探しと条件の交渉に置き換わります。

いずれにせよ、事業の棚卸しで会社の稼ぐ力を言葉にしておく作業は、どちらの道でも役に立ちます。

まとめ

「この財務状態では継がせられない」というお気持ちは、会社を大切に思うからこそ生まれるものです。

ただ、改善が終わるのを待つあいだにも、後継者の人生は進んでいきます。株式も、じわじわと散らばっていきます。

2つの取り組みは、同時に進められます。手順は5つでした。

  1. 現状を数字で確かめる(事業の棚卸しと資金繰り表)
  2. 返済と資金繰りの見通しを立てる
  3. 経営改善計画を作り、金融機関と共有する
  4. 並行して株式・個人保証・保険を整理する
  5. 改善の途中でも後継者の育成を始める

経営改善のために作った資料は、そのまま事業承継の設計図として使えます。だから、二度手間にはなりません。

計画づくりでは、経営改善計画策定支援事業(405事業)が使える場合があります。認定支援機関の支援にかかる専門家費用の一部について、国の補助を受けられる制度です。

何から手をつけるか迷ったら、まず直近12か月の資金繰り表を作ってみてください。数字が並ぶだけで、見える景色が変わります。

お話をうかがったうえで、何もお勧めしないこともあります。売り込みも、その場でのご契約もありません。数字が整っていない段階でも、途中で止まっている計画があっても構いません。

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