
溶接・機械加工業者が特定技能の受入れについて、厚生労働省から「決算が債務超過の状態では、受入れの手続きを進められません。企業評価書を用意してください」と言われた。
債務超過の原因は、熟練工の高齢化と技能承継の停滞にあります。生産能力の低下と外注費の増加につながり、取引先への価格転嫁も思うように進みません。
このまま企業評価書を用意できなければ、今いる特定技能人材の継続雇用すらできなくなります。継続雇用できなければ生産ラインの人手を確保できず、人手を確保できなければ受注をこなせず、売上は作れません。最悪の場合、会社そのものが立ち行かなくなります。
9月は上期の数字が固まり、下期でどう挽回するかを考え始める時期でもあります。生産能力の落ち込みが決算にも表れ始め、頭を悩ませている経営者も多いはずです。上期の着地を見て、下期こそ人材確保に本腰を入れたいと考える経営者も少なくないでしょう。
結論から言うと、直近決算が債務超過であっても、特定技能や外国人技能実習(育成就労)による人材の受入れは可能です。ただし、その際に中小企業診断士等による「企業評価書」(改善の見通しに関する評価書面)の提出を求められる場合があります。この書面をどう用意すればよいかが、本記事のテーマです。
- 熟練工の高齢化で生産能力が落ちている方
- 決算が赤字・債務超過で受入れ審査が不安な方
- 特定技能の受入れを急いで進めたい方
- 企業評価書を誰に頼めばよいか迷っている方
- 溶接・機械加工業が債務超過に陥る3つの原因
- 特定技能を受入れるための3つの手順
- 企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)の記載イメージ
- 受入れ後に会社が手に入る未来
私たちKICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、認定経営革新等支援機関として150社以上の中小企業を支援してきました。この記事を読み終える頃には、自社の状況を整理し、次に何をすればよいかが見えているはずです。
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溶接・機械加工業が債務超過で特定技能の企業評価書を求められる理由

溶接・機械加工業は、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業の3分野の中核をなす業種です。特定技能・外国人技能実習の受入れが多い業種の上位にも入り、外国人材の受入れニーズが特に高い業界のひとつです。
自動車部品、産業機械、建設機械など、幅広い分野の下請けを担う会社が多く、1社の技術力が最終製品の品質を支えているケースも珍しくありません。だからこそ、生産能力の維持は単なる社内の課題ではなく、取引先からも注視される経営課題になっています。
その一方で、赤字や債務超過に陥る会社も目立ちます。原因は主に3つに整理できます。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| ①熟練工の高齢化・退職 | 溶接工・機械加工技能者の定年退職が相次ぎ、生産能力そのものが縮小する |
| ②技能承継の停滞 | 若手の採用難と定着難で、次世代への技能の受け渡しが進まない |
| ③外注費の増加と価格転嫁の遅れ | 自社で処理しきれない工程を外注に回す割合が増え、原価が上がる一方、主要取引先への価格転嫁が追いつかない |
厚生労働省「一般職業紹介状況」でも、金属加工・溶接関連の職種は有効求人倍率が高い水準で推移していると公表されています。人材の確保しづらさは、統計にも表れている現実です。
この状態を放置すると、受注できる仕事量そのものが減り、固定費だけが残って赤字が定着するという悪循環に陥ります。経済産業省「ものづくり白書」でも、製造現場の高齢化と技能人材の不足が生産性の課題として繰り返し指摘されています。
「忙しいのに儲からない」構造に陥る背景
溶接・機械加工業の現場でよく聞かれるのが、「受注はあるのに、決算は赤字」という声です。これは精神論の問題ではなく、構造の問題です。
外注に頼る割合が増えると、外注先への支払いが先行し、自社の付加価値部分は目減りします。さらに、主要取引先が自動車メーカーや産業機械メーカーなど大手1社への依存度が高い会社ほど、原材料や電気料金が上がっても価格転嫁の交渉力が弱く、原価上昇分を自社でかぶりやすくなります。
帝国データバンクの調査でも、人手不足を要因とする倒産が増加傾向にあると指摘されています。人手不足は単なる採用の問題ではなく、経営の根幹を揺るがす財務の問題として向き合う必要があります。
特定技能の定期報告にある「一定の基準」とは
特定技能を受入れている企業は、原則として年1回、受入れ状況の定期報告が求められます。この報告には「一定の基準」を満たす法人であれば手続きを簡素化できる仕組みがあり、その基準のひとつに「過去3年間に債務超過となっていない法人」という要件が含まれています。
つまり、直近の決算で債務超過が確認されると、この簡素化の対象から外れてしまいます。だからこそ、債務超過の状態を客観的に説明できる材料が必要になるのです。
監理団体・監理支援機関側にも同様の要件がある
技能実習の監理団体や、育成就労制度で新設される監理支援機関にも、財産的基礎に関する要件があります。厚生労働省の資料には、直近期末に債務超過がある場合、「中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者が、改善の見通しについて評価を行った書面」の提出を求める旨が明記されています。
受入れ企業本体の債務超過についても、実務上はこれに準じた考え方で審査資料の提出を求められることが多く、この書面が「企業評価書」と呼ばれています。
2027年施行予定の育成就労制度でも同じ発想が引き継がれる
現在の技能実習制度に代わる新制度として、2027年4月に育成就労制度の施行が予定されています。監理団体は「監理支援機関」という名称に変わりますが、財産的基礎に関する考え方は引き継がれる見込みです。
つまり、今のうちから企業評価書の準備の仕方を理解しておくことは、今後も長く役立つ知識になります。制度が変わっても、「改善の見通しを客観的に示す」という本質は変わりません。
特定技能受入れの3つの手順-企業評価書のサンプルと書き方

債務超過があっても、正しい手順を踏めば特定技能の受入れは十分に可能です。ポイントは3つの手順に整理できます。
- 直近決算を分析し、債務超過に至った理由を整理する(債務超過 理由書の土台)
- 中小企業診断士に企業評価書(改善の見通しに関する評価書面)の作成を依頼する
- 監理団体・登録支援機関と連携し、提出書類として整える
手順1:債務超過理由書の土台をつくる
まず、なぜ債務超過になったのかを数字で説明できるようにします。溶接・機械加工業であれば「外注比率の上昇」「主要取引先1社への依存度」「設備更新の負担」など、原因を具体的な勘定科目に落とし込むことが出発点です。
ここが曖昧なままだと、後段の企業評価書も説得力に欠けたものになってしまいます。特に溶接・機械加工業では、次の3つの切り口で数字を整理しておくと、後の作成がスムーズになります。
- 外注比率の推移(自社加工と外注加工の割合が、ここ数期でどう変わったか)
- 主要取引先への売上依存度(上位1〜2社で売上の何割を占めているか)
- 価格転嫁の状況(原材料・電気料金の上昇分を、どこまで販売価格に反映できているか)
これらは特別な分析ツールがなくても、決算書と受注台帳を突き合わせれば整理できます。
手順2:企業評価書を中小企業診断士に依頼する
改善の見通しに関する評価書面は、中小企業診断士または公認会計士という、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格者が作成する書面です。税理士は、この書面の作成主体としては想定されていません。
「企業評価書 中小企業診断士」という組み合わせで検索する経営者が増えているのは、この事実が徐々に知られてきた表れとも言えます。
「改善の見通し」はどう書けば伝わるか
企業評価書の中でも、審査側が特に見ているのが「改善の見通し」の部分です。ここで大切なのは、根拠のない前向きな言葉を並べることではありません。
たとえば「外注比率を段階的に下げるための若手採用計画」「価格転嫁交渉の進捗と、取引先との合意状況」「設備投資による内製化の計画」など、すでに着手している具体的な取り組みを、数字とセットで示すことが説得力につながります。
逆に、「頑張って改善します」といった抽象的な言葉だけで終わる評価書は、審査側にも実効性が伝わりません。この部分をどう組み立てるかに、中小企業診断士としての実務経験が生きてきます。
手順3:監理団体・登録支援機関と連携して提出する
企業評価書ができあがったら、技能実習であれば監理団体、特定技能であれば登録支援機関と連携し、他の必要書類とあわせて提出します。書式や添付の順番は制度・機関によって細かな違いがあるため、実務担当者と事前にすり合わせておくと安心です。すでに監理団体・登録支援機関と付き合いがある会社は、早めに相談しておくと手戻りが少なくなります。
企業評価書の記載イメージを、一般的な構成項目として整理すると次のとおりです(架空の数値ではなく、記載すべき項目の一覧です)。
| 記載項目 | 記載内容のイメージ |
|---|---|
| 企業概要 | 沿革、事業内容、主要取引先、従業員数など |
| 財務状況・債務超過の理由 | 直近数期の決算の推移、債務超過に至った具体的な要因 |
| 改善の見通し | 収益改善の方向性、実行中・実行予定の施策、今後の見通し |
| 評価者の所見 | 中小企業診断士等による客観的な評価コメント |
詳しくは次のページにまとめています。
外国人技能実習・特定技能の企業評価書について 社長やご担当者の方へ。“あなた”は今、このようなお悩みを抱えていませんか。 外国人技能実習制度を活用したいが、企業評価書の作成方法が分からないという方 特定技能外国人の受入れにあたり、経営改善の見通しについて評価が必要だと言われた方 ...
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熟練工不足を乗り越え特定技能の受入れで手に入る未来

企業評価書をそろえて特定技能の受入れが実現すると、会社の景色は3つの軸で変わっていきます。
1つ目は「数字」の変化です。外注に頼っていた工程を自社内に戻せる分、外注費が減り、粗利率の改善につながります。生産能力が戻れば、これまで断っていた案件も受注できるようになります。
2つ目は「時間」の変化です。熟練工1人あたりの負担が減り、若手への技能承継に充てる時間を確保しやすくなります。技能実習・特定技能の人材は、単なる人手ではなく、次世代の技能承継を支える戦力にもなり得ます。
3つ目は「関係性」の変化です。金融機関に対して「改善の見通しを客観的に説明できる会社」として向き合えるようになり、次の融資や返済条件の相談もしやすくなります。取引先に対しても、安定した生産体制を示せることは、長期的な信頼につながります。
何より、外国人材にとっても「技能を教えてもらえる」「長く働ける会社」という印象は、定着率にも良い影響を与えます。受入れは一度きりの手続きではなく、その後の関係づくりまで含めて考えることが大切です。
これまで「人手が足りないから、今ある仕事をこなすだけで精一杯」だった状態から、若手の育成や新しい設備投資に目を向けられる状態へと、少しずつ変わっていきます。
債務超過という数字だけを見れば厳しい状況でも、正しい手順を踏めば、この3つを共に手に入れましょう。
自社だけで進める限界と、企業評価書に強い中小企業診断士の伴走支援

ここまでの手順を読んで、「自社だけでもできそうだ」と感じた方もいるかもしれません。ただし、実際に進めようとすると、いくつかの壁にぶつかります。
特に溶接・機械加工業のように、日々の生産管理や品質管理に追われる現場では、決算の数字と向き合う時間そのものを確保しにくいという声をよく聞きます。
1つ目は専門性の壁です。企業評価書は、財務諸表の分析力と、改善の見通しを説得力ある文章に落とし込む力の両方が求められます。社内に管理会計の知見を持つ人材がいない会社も多いはずです。
2つ目は時間コストです。本業の生産計画・受注対応と並行して、決算の分析や書面の作成まで手が回らない、というのが多くの経営者の本音でしょう。社長自身が現場に出ながら経理も見ている、という会社であればなおさらです。
3つ目は判断ミスのリスクです。「一定の基準」の要件を誤解したまま提出書類を整えてしまい、審査の段階でやり直しになるケースも実務では見られます。
だからこそ、企業評価書の作成に慣れた専門家に伴走してもらう経営者が増えています。KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)では、決算の分析から改善の見通しの整理、企業評価書の作成まで、中小企業診断士が一気通貫で支援します。
具体的には、次のような支援を行っています。
- 直近決算の分析と、債務超過に至った要因の整理
- 改善の見通しに関する評価書面(企業評価書)の作成
- 外注比率の見直しや価格転嫁交渉など、収益改善に向けた伴走支援
- 管理会計を活用した、利益が残る構造への転換支援
書類だけを預かって右から左へ処理するのではなく、会社の実態を理解したうえで、数字の裏付けがある改善の見通しを一緒につくるという姿勢を大切にしています。売上を伸ばす打ち手だけでなく、管理会計を通じて利益が残る構造へ転換することも合わせて伴走します。
ご相談は無料です。強引な営業は一切行いません。お断りいただいても構いません。まずは今の状況を整理するところから始めましょう。
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企業評価書のよくある質問|特定技能・債務超過の疑問を解消

Q. 企業評価書とは何ですか?
A. 正式には「改善の見通しについて評価を行った書面」と呼ばれる書類です。直近期末に債務超過がある会社が、特定技能や技能実習(育成就労)の受入れを進める際に、財務状況の改善見通しを客観的に示すために提出します。
Q. 企業評価書は誰が作成できますか?
A. 中小企業診断士または公認会計士など、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を持つ第三者です。税理士は、この書面の作成主体としては想定されていません。
Q. 特定技能は債務超過でも受入れできますか?
A. 受入れ自体は可能です。ただし定期報告の簡素化を受けられる「一定の基準」からは外れるため、企業評価書などの資料で改善の見通しを説明することが実務上重要になります。「特定技能は債務超過でも受入れできるのか」という不安は、正しい手順を知ることで解消できます。
Q. 外国人技能実習(育成就労)でも企業評価書は必要ですか?
A. 技能実習制度でも、監理団体側の財産的基礎の要件として同様の書面が求められる場合があります。2027年4月に施行が予定されている育成就労制度でも、監理支援機関に同種の要件が引き継がれる見込みです。
Q. 企業評価書のサンプルやひな形はありますか?
A. 公的な統一様式は定められていませんが、企業概要・財務状況と債務超過の理由・改善の見通し・評価者の所見という構成が一般的です。本記事のH2-2でも記載イメージを表にまとめています。
Q. 債務超過の理由書はどう書けばよいですか?
A. 「なぜ債務超過になったのか」を、外注費の増加や価格転嫁の遅れなど具体的な要因に分解し、数字で説明することがポイントです。原因が曖昧なままでは、改善の見通しの説得力も弱くなります。
Q. 監理団体・監理支援機関も債務超過だと影響しますか?
A. 影響します。厚生労働省の資料でも、監理団体側の財産的基礎について、直近期末に債務超過がある場合は同様の評価書面の提出が求められる旨が示されています。
Q. 企業評価書の作成にはどれくらいの準備が必要ですか?
A. 直近数期分の決算書と、債務超過に至った経緯を説明できる資料の準備が中心になります。決算書がすでに整理されていれば、ヒアリングと分析を通じて比較的短い期間で形にできます。逆に、資料が散在していると、その整理から始める分だけ時間がかかります。
Q. 企業評価書を作らないまま受入れを進めるとどうなりますか?
A. 審査の段階で追加の説明や資料提出を求められ、受入れのスケジュールが遅れる可能性があります。あらかじめ準備しておくことで、こうした手戻りを避けられます。
Q. 溶接・機械加工業に特有の注意点はありますか?
A. 外注比率の高さと、主要取引先への依存度の高さが、債務超過の理由として説明を求められやすいポイントです。改善の見通しでは、内製化の計画や取引先の分散といった具体策を示すと、審査側にも伝わりやすくなります。
Q. 相談すると、その場で契約を迫られませんか?
A. KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)では、初回のご相談で無理な勧誘や契約の即決を求めることはありません。現状をお聞きしたうえで、必要な支援内容をご提案します。
まとめ
溶接・機械加工業が熟練工不足から赤字・債務超過に陥るのは、決して珍しいことではありません。むしろ、業界全体が向き合っている構造的な課題です。
大切なのは、その事実を隠さず、改善の見通しを客観的に説明できる形にすることです。企業評価書は、そのための具体的な手段のひとつであり、中小企業診断士という専門家の力を借りることで、確実に整えることができます。決算の数字を自分たちだけで抱え込む必要はありません。
熟練工不足という壁を、特定技能の受入れという追い風に変えられるかどうかは、今日の一歩にかかっています。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。
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