【経営者必見】M&A前に社長の退職金を法人保険で整える4つの備え

三冠バッチ

「会社を譲渡することは決めたのに、自分の退職金がいくら受け取れるのか、法人保険がどう関係するのか分からない」——第三者承継(M&A)を進める経営者から、こうした声をよく聞きます。

長年払い続けてきた法人保険は、契約者や被保険者の名義を整理しないまま放置されがちです。交渉の場で保険の扱いを聞かれても答えられないと、譲渡価格や引継ぎの話し合いが後手に回ってしまいます。

この記事では、第三者承継(M&A)で会社を譲渡する社長が、自分の退職金(役員退職慰労金)を法人保険でどう準備し、いつ受け取るかを整理する4つの備えを、中小企業診断士・事業承継士の立場から解説します。交渉の前に整理しておけば、税理士や仲介者との話し合いも落ち着いて進められます。法人支援実績150社以上の知見をもとに、契約の点検から規程の整備まで整理していきます。

この記事はこんな方におすすめです

  • 会社の譲渡(M&A)を検討し始めた社長
  • 自分の退職金が保険とどう関係するか不安な方
  • 法人保険の契約が創業時のまま止まっている方
  • 譲渡の交渉で保険の扱いを聞かれて困った方
この記事で分かること

  • M&A前に退職金の準備を後回しにするリスク
  • 法人保険を退職金の原資に整える4つの視点
  • 準備を終えた社長が手に入る3つの未来
  • 自社だけで進める限界と、専門家に相談する意味

ご相談いただいても、保険の売り込みは一切ありません。今の契約を否定するところから始めるのではなく、目的に合っているかを一緒に確認するだけです。

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事業承継(M&A)で退職金の準備が後回しになる理由

事業承継の悩みを抱える経営者

事業承継には、子や親族へ引き継ぐ親族内承継、役員や幹部社員へ引き継ぐ役員・従業員承継(MBO・EBO)、そして社外の第三者へ譲渡する第三者承継(M&A)という3つの型があります。第三者承継(M&A)は、親族内承継や役員・従業員承継と違い、社外の相手と条件を交渉しながら進める点が大きく異なります。企業価値の磨き上げや譲渡先探しに気を取られ、社長自身の退職金の準備は後回しになりやすいのが実情です。

特に、法人保険は「いずれ整理すればいい」と後回しにされがちな契約です。しかし交渉が具体的に動き出してから慌てて確認すると、必要な手続きに時間がかかり、譲渡のスケジュール全体に影響することもあります。企業価値の算定や譲渡先探しと並行して、少しずつでも整理を進めておくことが望ましい姿です。

被保険者が社長のまま残る契約

法人保険の多くは、社長自身を被保険者として契約されています。会社を譲渡したあとも被保険者が前の社長のままでは、買い手企業にとって扱いにくい契約になります。譲渡の交渉が進む前に、契約の目的と名義を整理しておく必要があります。

特に、複数の契約が積み重なっている会社ほど、どの契約が誰のためのものか整理し切れていないことがあります。1件ずつ丁寧に確認する時間を、譲渡交渉が本格化する前に確保しておきたいところです。

解約返戻金のピークとタイミングのずれ

法人保険には、解約したときに戻ってくるお金(解約返戻金)の割合が時期によって変わる特徴があります。譲渡のタイミングと解約返戻金のピークがずれていると、退職金の原資が想定より少なくなるおそれがあります。譲渡のスケジュールが見え始めたら、早めに保険会社や代理店に確認しておきたいところです。

譲渡の交渉が思ったより早く進むこともあれば、逆に長引くこともあります。どちらの場合でも対応できるよう、解約返戻金の推移を大まかにでも把握しておくと、慌てずに判断できます。

「全額戻る」という思い込み

法人保険は加入時期によって税務上の取扱いが異なります。2019年(令和元年)の通達改正以降に契約した定期保険等は、最高解約返戻率に応じて、保険料のうち損金にできる割合が区分される仕組みに変わりました。「保険料は全額損金になる」「解約すれば必ず戻ってくる」といった思い込みのまま交渉に入ると、想定していた資金が用意できず慌てることになります。

個別の契約でどの区分に当てはまるか、税務上どう処理すべきかは、税理士に確認すべき領域です。KICKでは契約内容の整理と全体設計をお手伝いしますが、税務判断そのものは税理士と連携して進めます。また、加入時期によって適用されるルールが異なる(法人向け定期保険は2019年7月8日以降の契約から新しい区分が適用される)ため、古い契約と新しい契約を同じ前提で語らないことも大切です。

自社だけで判断すると起きること

顧問税理士は税務、M&A仲介者は交渉と、それぞれ専門領域があります。しかし、法人保険の契約内容を退職金の準備という切り口で横断的に整理する役割は、誰の本業でもないことが多いのが実情です。結果として、「誰かがやってくれているはず」と思い込んだまま、交渉の直前になって手つかずだと気づくケースが少なくありません。

このまま契約を放置すると、譲渡交渉の直前になって「退職金の原資が足りない」「契約の名義が整理できていない」と慌てることになりかねません。早い段階で整理しておけば、交渉の場でも落ち着いて説明できます。

M&A前に法人保険を退職金の原資に整える4つの視点

退職金準備の手順を確認する

第三者承継(M&A)に向けて、法人保険を退職金の原資として整理するときは、次の4つの視点で確認するとよいでしょう。ポイントは4つです。順番に整理していくことで、交渉が本格化する前に必要な準備が見えてきます。

視点確認すること
①目的の整理退職金の原資なのか、納税資金なのか、契約ごとの目的を洗い出す
②契約内容の点検契約者・被保険者・受取人の名義、解約返戻金がピークを迎える時期
③規程と手続きの整備役員退職慰労金規程の有無、株主総会での決議、功績倍率法による適正額の考え方
④譲渡スケジュールとの調整解約返戻金を受け取る時期と、譲渡交渉・引継ぎのタイミングをすり合わせる

目的の整理

まず、いま契約している法人保険が「何のための保険か」を1件ずつ洗い出します。退職金の原資、納税資金の備え、万一のときの事業継続資金など、目的があいまいなまま続いている契約は珍しくありません。契約が複数ある場合は、1件ごとに「誰のための保険か」「何が起きたときに使う保険か」を書き出してみると、整理の手がかりになります。

長年同じ保険会社と付き合っているだけで、内容を見直したことがない、という会社ほど、この最初の棚卸しで新しい気づきが多くあります。目的が重なっている契約や、逆に必要な保障が抜けている契約が見つかることも珍しくありません。

契約内容の点検

契約者・被保険者・受取人の名義と、保険金額・解約返戻金の現在の水準を確認します。ここで、契約が創業時のまま更新されていないケースがよく見つかります。特に、被保険者が現社長のままで受取人が会社になっている契約は、譲渡後の扱いを事前に整理しておかないと引継ぎの場面で混乱を招きやすいポイントです。

解約返戻金の推移は、保険証券や保険会社から届く通知書で確認できます。今の水準がピークに近いのか、これから伸びる途中なのかによって、退職金として活用できる時期の見通しが変わります。

規程と手続きの整備

役員退職慰労金規程が整っていないと、退職金の金額を後から説明することが難しくなります。功績倍率法という考え方(最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率で目安を算定する方法)をもとに、株主総会での決議まで含めて手順を整えます。金額の適正さや損金算入の可否は、税理士が個別に判断する領域です。

規程が存在していても、内容が数十年前のまま更新されていないケースもあります。役員の在任年数や報酬水準が当時と変わっていないか、あらためて確認しておくと、いざというときに慌てずに済みます。

譲渡スケジュールとの調整

M&Aの交渉・引継ぎの時期と、解約返戻金を受け取る時期が離れすぎていると、退職金の支払いと譲渡の決済がかみ合わなくなります。スケジュールのすり合わせを後回しにすると、交渉の終盤で調整が難しくなるため、早い段階から関係者と共有しておくことが大切です。

交渉が具体的に動き出す前の段階から、税理士やM&A仲介者と情報を共有しておくと、退職金の支払いタイミングを譲渡契約の条件に織り込みやすくなります。準備を始める時期に「早すぎる」ということはありません。

要するに、目的・契約内容・規程・スケジュールという4つを順番に点検すれば、退職金の準備状況を第三者にも説明できる形に整えられます。1つずつで構いませんので、まずは契約している保険証券を手元に集めるところから始めてみてください。

4つの視点はどれも単独では完結しません。目的が整理されて初めて契約内容の点検が意味を持ち、契約内容が分かって初めて規程との整合性が確認でき、規程が整って初めてスケジュールとのすり合わせができる、という順番のつながりを意識すると進めやすくなります。

この4つを自社だけで整理するのは簡単ではありません。詳しくは次のページでまとめています。

契約内容の点検から規程の整備まで、事業承継専属の保険代理店として整理をお手伝いします。特定の保険商品をおすすめすることはありません。

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第三者承継(M&A)で4つの備えを終えた社長が手に入る3つの未来

事業承継を終えた経営者の安心

法人保険を退職金の原資として整理し終えると、社長には次の3つの未来が手に入ります。

未来①譲渡交渉で退職金の説明に迷わなくなる

契約者・被保険者・受取人が整理され、規程と決議の裏付けがあると、買い手企業や仲介者に退職金の考え方を落ち着いて説明できるようになります。交渉の場で慌てて資料を探すことがなくなり、聞かれたことにその場で答えられる安心感が生まれます。

未来②引継ぎ後も家族の生活を守れる

退職金の原資を計画的に準備しておけば、譲渡後の生活設計にも見通しが立ちます。保険を「削って終わり」にせず、必要な保障を見極めたうえで整理することが、家族の安心につながります。長年働いてきた社長自身の労いの意味でも、退職金の準備は軽視できないテーマです。

未来③税理士や仲介者との話が噛み合う

契約内容と規程が整理されていると、税理士による税務判断やM&A仲介者との交渉の場で、必要な情報をすぐに共有できます。それぞれの専門家が本来の役割に集中できる状態が整い、社長自身が板挟みになって右往左往する時間が減ります。

長年育ててきた会社を次の担い手に託すという大きな決断のなかで、社長自身の生活と労いも、決して後回しにしてよいテーマではありません。この3つの未来を、第三者承継(M&A)を進める社長の皆さまと共に手に入れましょう。

自社だけで進める限界と、事業承継士による伴走支援

KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)

税理士は税務、M&A仲介者は譲渡交渉、それぞれの専門家には得意な領域があります。ただし、法人保険の契約内容と退職金の準備を、事業承継全体の計画とつなげて設計する役割は、どの専門家も本業として担っていないことが多いのが実情です。

税理士・保険担当者・M&A仲介者の話がそれぞれ噛み合わないまま、時間だけが過ぎてしまうという声を、私たちはよく耳にします。誰か一人が間違っているわけではなく、全体を見渡して設計する役割が抜けているだけなのです。

KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士(認定経営革新等支援機関)として、事業承継の全体設計と伴走を行っています。加えて、事業承継専属の保険代理店として、法人保険を「売るもの」ではなく「承継フェーズに合わせて役割を再設計するもの」という立場で見直しをサポートしています。法人支援実績は150社以上です。

企業価値の磨き上げや譲渡先探しに時間を取られる中で、退職金と法人保険の整理まで手が回らない、というお声もよくいただきます。だからこそ、全体の設計図を描く専門家を早い段階で加えておくことが、あとから慌てないための備えになります。譲渡の話が動き出す前の、比較的落ち着いた時期にこそ、ご相談いただく価値があります。

保険は削れば削るほどよい、というものでもありません。削りすぎると、万一のときの事業継続や家族の生活に影響が出るおそれがあります。商品ありきの提案ではなく、事業承継の計画との整合性を優先した設計を大切にしています。

なお、登記の手続きは司法書士、許認可の引継ぎは行政書士が担う領域であり、KICKがこれらの手続きを代行することはありません。私たちの役割は、税理士・司法書士・行政書士・M&A仲介者といった専門家の間をつなぎ、法人保険と退職金の準備を事業承継全体の計画に組み込むことです。他の専門家を否定するのではなく、バラバラのまま時間だけが過ぎる状況を防ぐことが、私たちの一番の役割だと考えています。

初回のご相談では、契約している保険証券をお持ちいただくだけで構いません。難しい資料をそろえる必要はなく、現状を一緒に確認するところから始めます。

ご相談いただいても、その場での契約変更や、しつこい確認の連絡もありません。まずは今の契約内容を、第三者にも説明できる形に整えるところからで構いません。

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よくある質問|事業承継の退職金と法人保険を整理する

事業承継のよくある質問

Q. M&Aの前に法人保険を解約したほうがよいですか?

A. 一律に「解約すべき」とは言えません。契約の目的と解約返戻金の時期を確認したうえで、退職金の原資として残すか、他の資金と組み合わせるかを検討します。加入・見直しの最終判断は、目的と照らし合わせながらご自身で決めていただくものです。急いで解約すると、かえって受け取れる金額が想定より少なくなることもあるため、まずは現状の確認から始めることをおすすめします。

Q. 被保険者が社長のままの契約はどうなりますか?

A. 譲渡後に契約者や被保険者の名義変更が必要になる場合があります。買い手企業と早めに情報を共有し、引継ぎの手続きに含めておくとスムーズです。名義変更のタイミングを誤ると、保障が一時的に途切れてしまうこともあるため、事前の確認が欠かせません。

Q. 退職金の金額はどう決めればよいですか?

A. 功績倍率法(最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率)という考え方が広く使われています。ただし適正額の判断や損金算入の可否は、個別の事情によって異なるため税理士に確認する領域です。相場観だけで決めてしまうと、後から税務上の指摘を受けるおそれもあるため、規程の整備と合わせて進めることが大切です。

Q. 法人保険の保険料は全額損金になりますか?

A. 2019年(令和元年)の通達改正により、最高解約返戻率に応じて損金にできる割合が区分されるようになりました。「全額損金」と一律には言えません。契約時期によっても扱いが異なるため、契約内容を確認したうえで税理士に相談してください。

Q. 買い手企業から保険契約について確認されることはありますか?

A. あります。契約者・被保険者・受取人の名義や、解約返戻金の水準は、譲渡交渉の過程で確認されることが多い項目です。事前に整理しておくと、説明がスムーズになり、交渉全体の印象にも良い影響があります。

Q. 税務の相談は誰にすればよいですか?

A. 個別の税務判断・申告は税理士の領域です。KICKは全体の設計と伴走を行い、税務の詳細は税理士と連携してお手伝いします。顧問税理士がいない場合は、連携先の税理士をご紹介することも可能です。

Q. 役員退職慰労金規程がない場合はどうすればよいですか?

A. 規程がないまま退職金を支払うと、金額の妥当性を説明しづらくなります。まずは規程の整備と、株主総会での決議までの手順を確認することから始めます。創業から一度も規程を作っていない会社も少なくないため、今から準備しても遅すぎることはありません。

Q. 死亡退職金や弔慰金の非課税枠はどうなりますか?

A. 死亡退職金・弔慰金には一定の非課税枠が設けられています。具体的な金額の計算は個別の事情によるため、税理士に確認しながら進めることをおすすめします。第三者承継を控えている場合は、承継後にこの枠がどう扱われるかも合わせて確認しておくと安心です。

Q. 事業承継士とはどのような資格ですか?

A. 事業承継の実務知識を体系的に学んだ専門家に与えられる民間資格です。KICKでは中小企業診断士・事業承継士(認定経営革新等支援機関)として、法人保険を含む事業承継全体の設計と伴走を行っています。

Q. 相談したら必ず保険を見直すことになりますか?

A. いいえ。現状を点検した結果、今の契約のままでよいと判断されることもあります。売り込みは一切行いませんので、まずは現状をお聞かせください。

まとめ

第三者承継(M&A)を進める社長にとって、法人保険は退職金の原資として重要な役割を持っています。目的の整理・契約内容の点検・規程と手続きの整備・譲渡スケジュールとの調整という4つの備えを早めに整えておけば、交渉の場でも落ち着いて説明でき、引継ぎ後の生活の見通しも立ちやすくなります。

税務の判断は税理士の領域であり、KICKが税務代理をすることはありません。中小企業診断士・事業承継士として、事業承継専属の保険代理店の立場から、契約内容の整理と全体設計をお手伝いします。

「まだ交渉相手が決まっていないから早い」と感じるかもしれませんが、法人保険の点検や規程の整備には一定の時間がかかります。交渉が具体化してからでは間に合わないこともあるため、今から少しずつ準備を進めておくことをおすすめします。相手が決まっていない段階だからこそ、落ち着いて準備できるという見方もできます。

ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは現状をお聞かせください。

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