倉庫の棚に、何年も動いていない本が積まれたままになっている。
先代の代に企画した本も、いまは絶版や品切れのまま止まっています。息子さんに会社を渡す日が近づいているのに、渡すものの中身をうまく言葉にできない——そんな気がかりはないでしょうか。
結論から申し上げます。既刊本の値打ちは、一冊ずつ中身を確かめて測り直して初めて、後継者にも金融機関にも伝わる形になります。
手を付けないままにすると、眠っている本は資産ではなく置き場所の費用として扱われます。引き継ぐ側には、中身の見えない在庫の山だけが残ります。
- 出版社を親族内承継で引き継ぐ予定の方
- 倉庫に眠る既刊本の扱いに迷っている方
- 電子化や音声化の余地を知りたい方
- 後継者に渡す資産を整理したい方
- 金融機関への説明に困っている方
- 既刊本の棚卸しとは何を調べる作業なのか、その守備範囲
- 既刊本を休眠資産のまま放置したときに起きること
- 既刊本の価値を測る4つの視点と、その順番
- 二次利用の余地と著作権・許諾の状態を確かめる手順
- 棚卸しの結果を後継者と金融機関に説明する形にする方法
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、法人支援150社以上の実績で承継の全体設計に伴走してきました。
読み終えるころには、明日どの台帳から手をつければよいかが見えてきます。
ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。その場でのご契約や、しつこい営業もありません。お断りいただいて構いません。まずは倉庫と台帳の現状をお聞かせください。
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出版社が既刊本の棚卸しを後回しにすると休眠資産になる

この記事が前提にするのは親族内承継です。ご子息やご息女など、家族の中の後継者へ会社を引き継ぐ場面を想定しています。
先に結論を述べます。出版社の承継でつまずく原因の多くは、既刊本の状態が誰にも分からないまま時間が過ぎることにあります。
本は一冊ずつ事情が違い、それを知っているのが社長一人、という会社が少なくないからです。
既刊本の棚卸しとは何を調べる作業か
事業の棚卸しとは、その会社の事業が将来も利益を生み続けられるかを、外から検証する作業のことです。出版社でそれを一冊単位に落とし込んだものが、既刊本の棚卸しにあたります。
財務の調査が決算書の数字の中身を確かめる作業だとすれば、事業の棚卸しは数字が生まれる仕組みそのものを確かめます。
出版社に当てはめると、調べる対象は刊行点数や編集体制だけではありません。倉庫に眠る本、権利の状態、二次利用の余地までが対象に入ります。
事業の棚卸しというと会社を売るときの話だと思われがちです。しかし親族内承継でも、引き継ぐ資産の姿をはっきりさせる道具として同じように使えます。
| 種類 | 主に確かめること | 出版社での例 |
|---|---|---|
| 事業の棚卸し | 稼ぐ仕組みが続くか | 既刊本の売れ方、著者との関係、二次利用の余地 |
| 財務の調査 | 決算書の数字の中身 | 在庫の評価、返品の見込み、売掛金の回収状況 |
| 法務の調査 | 契約と権利の状態 | 出版契約の有効期間、許諾の範囲、紛争の有無 |
3つは重なり合っています。既刊本の話は事業の棚卸しから入り、必要に応じて財務と法務の目で確かめ直す流れになります。
既刊本と休眠資産という言葉の意味
既刊本とは、すでに刊行され、新刊の扱いを終えた本のことです。版を重ねているものも、初版のまま倉庫に残っているものも含みます。
休眠資産とは、値打ちを持っているのに使われないまま置かれている資産のことです。絶版のまま止まっている本や、紙のままで電子化されていない本が当てはまります。
ここで大切なのは、休眠資産は「売れない本」と同じではない、という点です。
売り方を止めているだけの本と、読者がいなくなった本は、性質がまったく違います。前者は手を入れれば戻ってくる資産です。
なぜ出版社では既刊本の情報が散らばるのか
理由は3つあります。どれも出版という商売の性質から来るものです。
- 点数が多く、一冊ごとに契約の中身が違う
- 担当編集者の交代で、経緯が記録に残らず記憶に残る
- 在庫・売上・契約の台帳が別々の場所で管理されている
紙の契約書はキャビネットに、売上は会計ソフトに、在庫は倉庫会社の帳票に。それぞれ正しくても、一冊単位でつなぐ人がいません。
結果として、社長の頭の中だけが唯一の統合台帳になります。
棚卸しをしないまま承継したときに起きること
後回しにしたときに起きることは、だいたい決まっています。
よく起きる3つの困りごと
- 後継者が既刊本の判断をできず、動かせる本まで止まったままになる
- 倉庫費用と在庫の評価だけが目立ち、事業の値打ちが小さく見える
- 権利の状態が分からず、電子化や音声化の話が持ち込まれても返事ができない
とくに重いのが3つ目です。二次利用の相談は、相手の企画の都合で急に来ます。
権利の確認に時間がかかると、話はそのまま流れてしまいます。断ったわけではないのに、機会だけが失われます。
金融機関への説明でも同じことが起きます。後継者が代表になった後、既刊本について聞かれて答えられないと、事業の見通しそのものが疑われかねません。
要するに、既刊本の情報が整理されていない状態は、それ自体が承継のリスクです。既刊本の棚卸しは、このリスクを引き継ぐ前に減らすための作業だとお考えください。
出版社が既刊本の価値を測り直す4つの視点

結論を先に述べます。既刊本の価値は、次の4つの視点で順番に見ていくと形になります。
順番には意味があります。売れ方を先に押さえないと、二次利用の候補を選ぶ基準ができないからです。
| 視点 | 確かめること | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 売れ方の実績 | いま継続的に売れているのはどれか | 刊行年で判断してしまう |
| 二次利用の余地 | 電子・音声・翻案などの伸びしろ | 思い入れの強い本から手を付ける |
| 権利の状態 | 著作権と許諾がどこまで及ぶか | 契約書の所在が分からない |
| 在庫と原価 | 実物の数と、抱えている費用 | 帳簿の数と実際の数が合わない |
継続的に売れている既刊本を実績データで見分ける
最初にやるのは、印象を捨てて数字を並べることです。
見るのは点数ではなく、一冊ごとの動きです。取次からの報告、直販の記録、電子書店からの明細を、同じ期間でそろえて並べます。
そのうえで、本を3つに分けます。毎年一定のペースで動く本、季節や話題で波がある本、何年も動いていない本の3つです。
毎年動く本は、読者が入れ替わりながら続いている本です。学習向けや実務向けの本に多く見られます。
波がある本は、きっかけがあれば戻る本です。何が引き金になったのかを、当時の担当者に聞いて記録に残します。
ここで注意したいのは、返品の扱いです。出荷の数字だけを見ると、実際より売れているように見えることがあります。
返品を差し引いた数で見なければ、判断を誤ります。数字は必ず正味でそろえてください。
この作業の目的は、順位を付けることではありません。後継者が引き継いだ後も手を離してはいけない本を、はっきりさせることです。
電子化・音声化など二次利用の余地を洗い出す
二次利用とは、すでに刊行した本の中身を、別の形にして届けることです。電子書籍、オーディオブック、抜粋してのデジタル配信などが当てはまります。
洗い出しは、売れ方で分けた3つの群のうち、動きのある本と波のある本から始めます。
理由は単純で、読者がいることがすでに確かめられているからです。まったく動いていない本から始めると、手間だけがかかります。
確かめるのは次の4点です。
- すでに電子化されているか、されていないか
- 元データ(版下や組版データ)が手元に残っているか
- 図版や写真が多く、作り直しに手間がかかる本か
- 朗読に向く文章か、表や図に依存する内容か
元データの有無は見落とされがちです。古い本ほど、フィルムや紙の版しか残っていないことがあります。
この場合、電子化には作り直しの費用がかかります。値打ちがある本かどうかと、すぐ着手できる本かどうかは別の話です。
音声化についても同じです。会話や物語の多い本は向いていますが、図表を前提にした実務書は工夫が要ります。
ここまで整理すると、二次利用の候補が「すぐ着手できる群」と「準備が要る群」に分かれます。後継者が最初の一歩を選びやすくなります。
二次利用の可否は、次に確かめる権利と許諾の中身に左右されます。ここではあくまで「向き不向き」と「手間」の整理にとどめ、実行の判断は権利を確かめた後に行ってください。
著作権と許諾の状態を一冊ずつ確かめる
3つ目は、権利の状態です。ここが既刊本の棚卸しでもっとも時間のかかるところです。
確かめる項目を、契約書と突き合わせながら一冊ずつ記録していきます。
- 出版契約が今も有効か、期間や更新の定めはどうなっているか
- 許諾されている範囲に、電子や音声が含まれているか
- 共著・翻訳・監修など、権利者が複数いないか
- 装丁、写真、イラスト、図版の権利が別に存在しないか
- 著者と連絡が取れる状態か、窓口が変わっていないか
とくに古い本では、紙の本だけを想定した契約になっていることがあります。この場合、電子や音声を始めるには改めての話し合いが必要になります。
契約の解釈や、権利が及ぶ範囲の法的な判断は弁護士の領域です。自社だけで結論を出さず、判断が要る案件は切り分けて相談してください。
事業の棚卸しでやるべきことは、判断そのものではありません。「確かめ済み」「要確認」「要相談」の3つに仕分けし、状態を可視化することです。
この仕分けができていれば、二次利用の相談が来たときにすぐ返事ができます。返事の速さは、そのまま機会の多さにつながります。
権利と併せて、承継全体の設計をどう組むかも関わってきます。株式の移し方や後継者の育成まで含めた進め方は、既刊本の棚卸しを含む事業承継コンサルティングでご説明しています。
在庫と原価の実態を数え直す
4つ目は、実物と費用の話です。ここは財務の調査と重なりますが、事業の棚卸しの側からも見ておく必要があります。
まず、倉庫にある実物の数と、帳簿の数を突き合わせます。長く在庫を持つ出版社ほど、この2つはずれていきます。
次に、その在庫がいくらの費用を毎月生んでいるかを押さえます。保管料、移動の費用、傷んだ本の入れ替えなどです。
そして、動いていない本ごとに「置き続ける」「売り切る」「作り直す」「二次利用に回す」のどれに当てるかを決めていきます。
ここで大事なのは、費用が出ているから即座に処分、とは考えないことです。
権利が生きていて読者もいる本を、費用の都合だけで手放すと、後から取り戻せません。在庫の判断は、売れ方と二次利用と権利を確かめてから決めるのが順番です。
なお、在庫の評価をどう会計や税務に反映するかは税理士の領域です。事業の棚卸しの結果を持って、顧問の先生と相談する流れになります。
4つの視点を進める順番と期間の目安
実際の進め方は、次のとおりです。承継の話が動き出す前から始めておくと、後が楽になります。
- 売上と返品のデータを、一冊単位で1つの表にまとめる
- 3つの群に分け、動きのある本を先に扱うと決める
- その本の契約書を探し、権利の状態を仕分けする
- 二次利用の向き不向きと、必要な手間を書き添える
- 倉庫の実数を確かめ、在庫の扱いを本ごとに決める
- 結果を一覧にし、後継者と金融機関に説明できる形に整える
点数が多い会社では、全点を一度に扱おうとすると止まります。まず動きのある本から始め、範囲を広げるほうが続きます。
ここまでご相談いただいても、その場での契約を求めることはありません。まだ検討の段階だ、という状態で構いません。台帳の探し方から一緒に考えます。
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既刊本の棚卸しを終えた先に手に入る未来

棚卸しを終えると、会社の景色が3つの面で変わります。順に見ていきます。
後継者が引き継ぐ資産の姿がはっきりする
まず、後継者の迷いが減ります。
それまで「倉庫にたくさんある本」でしかなかったものが、群に分かれ、扱いが決まった一覧になるからです。
後継者は、どの本を守り、どの本から新しい形を試すかを、自分の判断で選べるようになります。
先代の記憶に頼らずに動けるという状態は、親族内承継では特に大きな意味を持ちます。
親子だからこそ、聞きにくいことがあります。一覧という形が間に入ると、話し合いが感情から事実へ移ります。
金融機関への説明がしやすくなる
次に、外部への説明が変わります。
承継の場面では、代表者の交代に合わせて借入や保証の話が動きます。金融機関は、代替わり後も事業が続くかを見ています。
そのとき、既刊本の売れ方と権利の状態が整理されていれば、事業の見通しを具体的に語れます。
「倉庫にある在庫」ではなく「毎年一定の読者が付いている本の群」として説明できるからです。
説明の材料がそろっている会社は、話が前に進みやすくなります。数字と権利の裏付けがある話は、受け取る側も検討しやすいためです。
社内と著者との関係が落ち着く
3つ目は、社内と著者との関係です。
権利の窓口や契約の状態が整理されていると、著者からの問い合わせに担当者が答えられます。
連絡が取れなくなっていた著者や、代替わりした権利者との関係も、棚卸しの過程で見つかります。
ここで一度連絡を取り直しておくと、承継後に慌てずに済みます。長く付き合ってきた相手ほど、丁寧な報告が信頼につながります。
編集部の側も、既刊本の扱いが決まっていれば新しい企画に時間を割けます。休眠資産に振り回される時間が減るからです。
後継者が迷わず動ける状態、金融機関に語れる材料、著者と社内の落ち着いた関係。この3つを、共に手に入れましょう。
自社だけで既刊本の棚卸しを進める限界と、事業承継士による伴走支援

先に申し上げると、4つの視点そのものは自社でも進められます。ただ、途中で止まる会社が多いのも事実です。
理由は能力の問題ではありません。日々の刊行を回しながら、過去を掘り起こす時間を確保するのが難しいためです。
自社だけで進めるときにぶつかる3つの壁
- 時間の壁 新刊の進行が優先され、棚卸しが後回しになる
- 判断の壁 思い入れのある本を客観的に扱いづらい
- 接続の壁 税理士・弁護士・金融機関との話が別々に進む
3つ目が、承継では特に響きます。
税理士は税務を、弁護士は契約を、金融機関は返済を見ています。どれも正しいのですが、既刊本という一つの資産をめぐって話がつながりません。
バラバラのまま時間だけが過ぎる状態が、承継でいちばん避けたい形です。
KICKが担う範囲と、担わない範囲
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士・事業承継士として、承継全体の設計と伴走を担います。認定経営革新等支援機関でもあります。
既刊本の棚卸しでは、次のような形で関わります。
- 売上・返品・在庫のデータを一冊単位でつなぎ、一覧の形にする
- 4つの視点に沿って、既刊本を群に分ける作業に同席する
- 権利の仕分けで「要相談」となった案件を、弁護士へつなぐ整理をする
- 在庫や評価の論点を、顧問税理士に相談できる形にまとめる
- 後継者と金融機関に向けた説明資料の組み立てを一緒に行う
- 承継後の万一に備える法人保険の役割を、承継計画と照らして点検する
担わない範囲もはっきりさせておきます。個別の税務判断・税務申告・税額計算は税理士の領域です。
契約の解釈や紛争の対応は弁護士、登記は司法書士、許認可は行政書士が担います。KICKがこれらを代わりに行うことはありません。
保険についても、商品を売ることが目的ではありません。承継の段階に合わせて役割を再設計し、守るべきものを守る形になっているかを点検するという順序で扱います。
削りすぎれば、万一のときに事業の継続や家族の生活に影響が出ます。増やせば安心という話でもありません。いまの目的と合っているかを確かめる価値がある、という温度でご説明します。
初回のご相談で、その場での契約をお願いすることはありません。売り込みも、その後のしつこい連絡もありません。話してみて合わないと感じたら、お断りいただいて構いません。
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既刊本の棚卸しと事業承継|よくある質問

Q. 既刊本の棚卸しはどれくらい期間がかかりますか
A. 刊行点数と資料の残り方によって大きく変わります。
売上データがそろっていて契約書の所在も分かっている会社と、紙の契約書を探すところから始める会社とでは、必要な手間が違うためです。
目安を知りたい場合は、まず動きのある本だけを対象に小さく始めてください。その進み具合から全体の見通しが立てられます。
Q. 事業の棚卸しと財務の調査は何が違いますか
A. 見ている対象が違います。事業の棚卸しは稼ぐ仕組みがこの先も続くかを、財務の調査は決算書の数字の中身を確かめます。
出版社でいえば、既刊本の売れ方や著者との関係、二次利用の余地を見るのが前者です。在庫の評価、返品の見込み、売掛金の回収状況を見るのが後者にあたります。
どちらか一方だけでは判断ができません。既刊本の扱いは棚卸しで方向を決め、数字の裏付けを財務の調査で確かめる、という組み合わせでお考えください。
Q. 絶版の本にも価値はありますか
A. 価値が残っている場合があります。絶版は「売り方を止めた状態」であって、読者がいなくなった証拠ではないためです。
権利が生きていて、内容が古びていない本であれば、電子化や音声化で届け直せることがあります。
まずは売れ方の記録と、著作権や許諾の状態を確かめてください。その2つがそろって初めて判断ができます。
Q. 電子化していない既刊本は不利になりますか
A. 直ちに不利とは限りません。電子化していないことは、伸びしろが残っているとも読めるからです。
ただし、元データが残っていない本は作り直しの手間がかかります。この手間の大きさが、実際に着手できるかどうかを分けます。
事業の棚卸しでは、電子化の有無だけでなく、着手までに必要な準備を本ごとに書き添えておくことをおすすめします。
Q. 契約書が見つからない本はどうすればよいですか
A. まず「要確認」として一覧に残し、探索の範囲を決めてから動いてください。
すべてを同時に探すと作業が終わりません。動きのある本と、二次利用の候補になる本から優先して探すのが現実的です。
それでも見つからない場合、権利の扱いは法的な判断が必要になります。弁護士に相談する案件として切り分けてください。
Q. 後継者はいつから事業の棚卸しに関わるべきですか
A. できるだけ早い段階から、一緒に手を動かすことをおすすめします。
既刊本の事情は、一覧を作る過程そのものに学びがあるためです。完成した資料だけを渡されても、判断の根拠までは伝わりません。
まずは売上データの整理から、後継者に担当してもらうとよいでしょう。数字から入ると、感情の議論になりにくくなります。
Q. 事業の棚卸しの結果は自社株の評価に影響しますか
A. 自社株の評価は、税務上の定められた考え方に沿って行われます。事業の棚卸しの一覧がそのまま評価額になるわけではありません。
評価には、類似する業種の指標を用いる方式や、純資産をもとにする方式などがあります。どの方式をどう使うかは個社の状況によって変わります。
具体的な評価や税額の計算は税理士の領域です。事業の棚卸しでそろえた在庫と権利の情報を持って、顧問の先生にご相談ください。
Q. 事業承継税制の特例は、いつまでに動けば間に合いますか
A. 期限が2つあり、性質が違うので分けて理解してください。
法人版の特例承継計画の提出期限は令和9年(2027年)9月30日です。一方で、贈与や相続を実際に行う期限は令和9年(2027年)12月31日で、こちらは延長されない見込みとされています。
計画の提出期限が延びたことをもって、余裕があると考えないでください。実行が間に合わなければ特例は使えません。
なお、この制度は納税を猶予するものです。要件を満たさなくなれば猶予が打ち切られる場合もあります。適用の可否は個社の状況によるため、税理士とお早めにご確認ください。
Q. 事業の棚卸しは会社を売るときだけのものではありませんか
A. 親族内承継でも役に立ちます。引き継ぐ資産の姿をはっきりさせる、という目的は同じだからです。
むしろ親族内承継では、身内であるがゆえに説明が省かれがちです。第三者に見せる前提で資料を作ると、その省略が埋まります。
金融機関や取引先への説明にもそのまま使えます。売却の予定がなくても、作っておいて損のない資料です。
Q. 倉庫の在庫は減らしたほうがよいのでしょうか
A. 費用の面だけで決めないことをおすすめします。権利が生きていて読者がいる本は、手放すと取り戻せません。
売れ方と二次利用と権利の結果を見たうえで、本ごとに扱いを決める順番が安全です。売り切る、作り直す、二次利用に回すという選び方もあります。
在庫の評価を会計や税務にどう反映するかは税理士の領域です。判断の材料をそろえたうえで相談してください。
まとめ

倉庫に眠る既刊本は、放っておけば費用の話にしかなりません。棚卸しをすれば、引き継げる資産の話に変わります。
そのための道具が、既刊本の棚卸しです。売れ方の実績、二次利用の余地、権利の状態、在庫と原価という4つの視点で順番に見ていきます。
この作業を承継の前に済ませておくと、後継者は迷わずに動けます。金融機関への説明も、具体的な言葉でできるようになります。
親族内承継は、時間をかけられるのが強みです。代替わりの日が決まる前に始めておくことが、いちばんの備えになります。
点数が多くて手が止まっている場合は、動きのある本から小さく始めてください。全部を一度に片づけようとしないことが、続けるこつです。
ご相談の場で、契約をお願いすることはありません。売り込みも、その後のしつこい連絡もありません。まだ何も整理できていない、という状態のままお越しください。
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