【重要】債務超過でも外国人受入れ通過の極意

「先生、うちは債務超過なんですが、外国人技能実習生を受け入れることはできますか?」

こういったご相談が、ここ数年で急増しています。建設業や製造業の経営者の方から、このような問い合わせをいただくたびに、私はこうお伝えします。

「債務超過だからといって、あきらめる必要はありません。企業評価書を適切に準備すれば、受け入れは可能です。」

ただし、何でもOKというわけではありません。「改善の見通しがある」と第三者が客観的に評価できることが前提です。この記事では、中小企業診断士として数多くの企業評価書作成を支援してきた立場から、企業評価書とは何か、審査が通るケースと通らないケース、具体的な書き方のポイント、実際の支援事例を実務レベルで解説します。

 

タップできる目次

企業評価書とは何か?なぜ必要なのか

外国人技能実習・特定技能・育成就労(2027年4月施行予定)の受け入れには、受入企業が一定の財務要件を満たす必要があります。具体的には、直近の決算期末において「債務超過」になっていないことが原則です。

そこで制度が設けたのが「企業評価書」という仕組みです。中小企業診断士・公認会計士・税理士(特定技能のみ)などの有資格者が、企業の財務状況と経営改善の見通しを客観的に評価した書面を提出することで、債務超過であっても受け入れ審査を通過できる可能性があります。

制度評価書作成者
外国人技能実習中小企業診断士・公認会計士
特定技能中小企業診断士・公認会計士・税理士
育成就労(2027年〜)中小企業診断士・公認会計士(技能実習に準じる見込み)

技能実習と育成就労では税理士は対象外である点に注意が必要です。

なぜ「債務超過」の企業が増えているのか

ここ数年、建設業・製造業を中心に、債務超過に陥る企業が増えています。理由は大きく3つあります。

① 資材・人件費の高騰による収益圧迫

2022年以降、鉄骨・コンクリート・木材などの資材価格が急騰しました。最低賃金の引き上げや職人不足による人件費上昇も続いています。「受注は取れている。でも利益が残らない」という状態が続き、気づけば純資産がマイナスに転落するケースが後を絶ちません。

② 設備投資・借入が純資産を圧迫

生産性向上のために設備投資を行い、借入を増やした結果、負債が膨らんで債務超過になるケースもあります。この場合、キャッシュフローはプラスでも、バランスシート上は債務超過という「見た目の問題」が生じます。

③ 代表者借入の未整理

代表者が個人のお金を会社に貸し付けている「代表者借入」が整理されないまま累積すると、財務上は債務超過でも実態は健全という企業も少なくありません。「数字の問題」と「経営の実態」は必ずしも一致しない。だからこそ、企業評価書が意味を持つのです。

企業評価書で審査が通るケース・通らないケース

審査が通りやすいケース

  • キャッシュフローはプラスで、借入返済も順調:毎月の資金繰りが安定しており、金融機関への返済が滞っていない場合、「経営改善の見通しがある」と評価しやすくなります。
  • 売上・受注が安定または増加傾向にある:直近2〜3期の売上が横ばい以上で推移しており、受注残が十分にある場合、将来の収益見込みを数字で示せます。
  • 代表者借入が実質的に自己資本と同等:「実質的に返済請求しない借入」と評価できれば、修正純資産はプラスになるケースがあります。
  • 具体的な経営改善計画がある:「いつまでに・どのように・いくら改善するか」が数字で示された計画書があれば、評価書の説得力が格段に増します。

審査が通りにくいケース

  • 3期連続赤字で改善の兆候がない:売上が右肩下がりで、コスト削減も進んでいない場合、「見通し」を客観的に示すことが困難です。
  • 金融機関からの借入がリスケ(返済猶予)中:リスケ中は審査に否定的な影響を与える可能性があります。
  • 直近期末に大幅な純資産マイナスがある:短期間での回復が難しい場合は評価書の作成者も「改善の見通しあり」と評価することが難しくなります。

審査通過のための企業評価書・具体的な書き方のポイント

ポイント① 財務分析は「現状の課題」と「改善の根拠」をセットで示す

企業評価書で最も重要なのは、「なぜ債務超過になったのか」と「なぜ改善できるのか」を数字で論理的に説明することです。建設業のA社(年商8億円)では、コロナ禍の受注減と資材高騰が重なり純資産がマイナス3,000万円になりましたが、受注残2億円超・粗利率2%改善・代表者借入2,000万円の覚書作成などを数字で整理し、「今後2年以内に純資産黒字転換が可能」という見通しを示した結果、審査を通過しました。

ポイント② 経営改善計画書を企業評価書と一体で作成する

企業評価書単独ではなく、経営改善計画書とセットで提出することで、審査担当者への説明力が大幅に高まります。向こう3年間の売上・粗利・営業利益の見通し、改善施策の具体的な内容、借入返済の見通し、債務超過解消の目標時期を盛り込みます。「精神論の計画」ではなく「数字に基づいた計画」が信頼感を与えます。

ポイント③ 代表者借入は「実質的な自己資本」として整理する

代表者が「向こう○年間は返済請求しない」旨を確認できる覚書等を作成し、この借入を「実質的な自己資本相当額」として評価書に記載します。これにより、修正後の純資産がプラスになるケースも少なくありません。「決算書の数字がすべてではない。実態を正確に伝えることが、審査通過の近道です。」

ポイント④ 直近の月次試算表・資金繰り実績を必ず添付する

直近の月次試算表と資金繰り実績表が不可欠です。決算書は最大1年前の情報ですが、月次データがあれば「今現在の状態」を審査担当者に伝えられます。「決算では赤字だが、直近6ヶ月の月次は黒字転換している」という事実が評価書の説得力を高めます。

実際の支援事例

事例①:建設業B社(年商12億円・純資産マイナス4,500万円)

鉄骨工事業を営むB社は、コロナ禍と資材高騰で2期連続赤字、純資産マイナス4,500万円。外国人技能実習生(溶接)の受け入れを希望するも監理団体から企業評価書が必要と指摘。債務超過の原因分解(設備投資2,000万円・代表者借入1,800万円・一時損失700万円)、受注残2.5億円・粗利率改善データの整理、2年間の経営改善計画書作成、代表者借入覚書の作成を行い、監理団体・機構への提出が認められ技能実習生の受け入れ許可を取得しました。

事例②:製造業C社(年商5億円・純資産マイナス800万円)

金属加工業のC社は設備投資の借入で純資産マイナス800万円。特定技能(機械金属加工)での受け入れを計画していたが財務要件で引っかかると指摘。純資産マイナスの主因が設備投資であることを整理し、設備投資効果・金融機関取引状況(正常先)・月次試算表(直近6ヶ月黒字)を添付した評価書を作成。特定技能の在留資格申請が通過し、3名の外国人材の就労が実現しました。

今日からできる3つのアクション

  1. 直近3期分の決算書を手元に用意する:企業評価書の作成に最低限必要な書類です。まずこれを整理しましょう。
  2. 月次試算表・資金繰り実績を最新版に更新する:「今現在の状態」を数字で示せる準備が審査通過の鍵になります。
  3. 代表者借入の状況を確認する:決算書上の「役員借入金」の金額と返済意向を把握しておきましょう。

「準備を整えた企業と、何も準備しない企業では、審査の結果が大きく変わります。」

まとめ:債務超過でも、正しく準備すれば道は開ける

外国人技能実習・特定技能の受け入れにおいて、「債務超過だから無理」とあきらめる必要はありません。重要なのは、①債務超過の原因を正確に分析すること、②「改善の見通し」を数字で客観的に示すこと、③経営改善計画書と企業評価書をセットで提出すること、この3点です。

KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)では、中小企業診断士が企業評価書の作成から経営改善計画の策定まで一貫して支援しています。「うちは債務超過だが外国人を受け入れたい」「企業評価書を作ってもらえる専門家を探している」という経営者の方は、まずは無料相談からご連絡ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 企業評価書は誰でも作れますか?

いいえ。技能実習・育成就労では中小企業診断士または公認会計士、特定技能ではこれに税理士が加わります。無資格者が作成した評価書は認められません。

Q. 企業評価書の費用はどのくらいかかりますか?

一般的に5万円〜15万円程度が相場です。企業の財務状況の複雑さや経営改善計画の作成の有無によって異なります。

Q. 債務超過の金額が大きくても審査が通ることはありますか?

金額の大小だけでなく、「改善の見通し」を客観的に示せるかどうかが判断の核心です。キャッシュフローが安定していれば、債務超過額が大きくても審査が通るケースはあります。

Q. 技能実習制度は廃止されると聞きました。企業評価書は今後も必要ですか?

技能実習制度は2027年4月に「育成就労制度」へ移行予定です。育成就労でも財務要件は基本的に維持される見込みであり、同様の評価書が必要になると考えられます。特定技能については引き続き同様の要件が適用されます。


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