

クラウド会計ソフトの普及、AI記帳代行の登場、低価格競争の加速——これらの波に晒された公認会計士・税理士事務所では、従来の「記帳代行」「決算申告」だけのビジネスモデルが急速に陳腐化しています。
「顧問料を下げてほしい」「〇社が他事務所に切り替わった」「所員の手取りが減少している」——そうした声が経営陣から聞かれる昨今、「過去の税務を保証する人」から「未来の経営をプロデュースする人」へと自社を転換できない事務所は、5年先に淘汰される可能性すら現実的です。
ところが、多くの税理士事務所は「経営改善支援をやりたいが、ノウハウがない」「現場実装の方法がわからない」「通常業務が忙しく、新しい領域に手を出す余裕がない」という理由で、この変革から目を背けています。その結果、関与先企業は「他の認定支援機関(コンサルティング会社や診断士事務所)」に相談を持ち掛け、やがて税務顧問契約そのものを失うケースが多発しているのです。
試算表を見せて数字を説明するだけの関わり方から、資金繰りや利益構造にまで踏み込んだ経営助言ができる関わり方へ。この一段の踏み込みができるかどうかが、これからの税理士事務所・会計事務所の存在価値を分けます。
【共通の敵】それは「放置した現状」と「先送りの風土」。多くの税理士事務所が、顧問先企業の「本当の経営課題」に気づきながらも、「税務顧問の枠」に自らを閉じ込めている。その間に、企業の資金繰りは悪化し、銀行交渉は厳しくなり、再生機会は失われている。
本記事は、中小企業診断士・MBA・1級FP技能士の資格を持つ松本昌史(KICKコンサルティング株式会社代表)が、150社以上の企業支援実績を背景に、公認会計士・税理士事務所が「早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)」に低リスク・高単価で参入し、関与先企業の信頼を深掘りしながら、事務所の新たな収益柱を構築する方法を解説するものです。
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税務申告だけで中小企業経営者の信頼は得られない理由

年商5億円〜50億円規模の中小企業経営者が、税理士に求めるものは何でしょうか。
かつては「正確な税務申告」と「税負担の軽減」だけで十分でした。しかし今、経営者が本当に悩んでいるのは、「来月の資金繰りが回るのか」「銀行は融資を続けてくれるのか」「原価が上がる中、どうやって利益を守るのか」といった、毎日が「未来」に関する問題です。
にもかかわらず、税理士事務所の多くは「試算表を見せて経営状況を説明する」に留まっています。具体的な改善アクション、金融機関との交渉支援、現場実装までを視野に入れた経営助言をする事務所は、ほぼ皆無です。
その結果、経営者の心の中に「この税理士は、過去の数字整理はできるが、未来を一緒に作る存在ではない」という認識が刻まれます。
顧問報酬の下落は「競争の激化」ではなく「提供価値の陳腐化」
顧問報酬が下げられたり、乗り換えられたりするのは、顧問先企業が「安い事務所」を求めているからではありません。それは、「現在の事務所では、自社の経営改善に役立たない」と判断されているからです。
つまり、問題は「価格競争」ではなく「価値提供の停滞」にあります。税理士事務所が自ら「値下げして生き残ろう」と考えると、さらに価値が低下し、泥沼の価格競争へと陥っていくのです。
銀行との関係を握るのは、税理士ではなく「経営改善支援ができる専門家」
金融機関は、中小企業の融資判断において、その企業が「経営改善に真摯に取り組んでいるか」を極めて重視します。特に資金繰り悪化局面では、「認定支援機関が策定した経営改善計画」の有無が、融資継続判断の大きな分かれ目になります。
現在、この「経営改善計画策定支援」を提供できる認定支援機関(中小企業診断士、一部の税理士、一部のコンサルティング会社など)の数は限定的です。あなたの事務所がこの領域に参入できれば、金融機関からの信頼度は一段階上がり、「このパートナーなら信用できる」という立場を得ることができるのです。
あなたの事務所が「経営改善支援ができる認定支援機関」に変わると、何が変わるのか。その具体的な道筋は、このあとの章で解説します。
早期経営改善計画(バリューアップ支援事業)の基本を先に押さえたい方へ
国の支援を使って資金繰り改善の計画をつくる早期経営改善計画の仕組みと進め方を解説しています。
参入を先送りにすれば、年間数百万円の機会損失が生じる現実

「経営改善支援は重要だと思うが、来年から始めよう」——その判断は、実は極めて危険です。
1社あたりの報酬額の違いを数字で見る
次の比較表をご覧ください。
| 支援内容 | 一般的な年間報酬(1社) | 10社契約時の年間合計 |
|---|---|---|
| 従来型:税務顧問のみ | 約60万円〜120万円 | 600万円〜1,200万円 |
| 経営改善計画策定支援 (計画策定+伴走支援) | 月額15万円〜30万円 (年額180万円〜360万円) | 1,800万円〜3,600万円 |
→ 年間差額:1,200万円〜2,400万円
これを「参入していないため失っている」と考えると、毎年、単純計算で年間1,000万円以上の機会損失が生じていることになります。
他事務所やコンサルティング会社に「関与先を奪われる」リスク
さらに深刻なのが、次のシナリオです。
あなたの関与先企業が「資金繰りが悪化してきた」「銀行との交渉を強化したい」と考えたとき、その相談をあなたの事務所に持ち掛けなければ、何が起こるでしょうか。
答えは明白です。経営者は「他の認定支援機関(競合の税理士事務所やコンサルティング会社)に相談する」ことになります。そして、そこで「経営改善計画の策定」から「月々のモニタリング」まで一貫した支援を受けると、やがて基盤である「税務顧問契約そのものを乗り換えられる」ケースが多発しています。
つまり、参入を先送りすることは、「新しい報酬源を逃す」だけでなく、「既存の顧問先を失うリスク」まで増幅させることになるのです。
市場は「経営改善支援ができる税理士・会計事務所」を探している
中小企業庁の調査によると、中小企業の約60%以上が「経営改善・事業再生の支援が必要」と考えており、その多くが「信頼できる専門家(税理士や診断士など)による計画的な支援」を求めています。
つまり、「関与先企業の潜在的なニーズは存在するが、提供する事務所が不足している」という、売り手市場の状況が今、この瞬間に形成されているのです。この機会を逃せば、数年後には「参入したい」と思っても、競合の参入により市場が飽和し、単価下落に巻き込まれることになりかねません。税理士事務所だけでなく、会計事務所や社会保険労務士事務所など他の士業も、同様に経営改善支援へ動き始めています。
国の補助金を活用すれば、認定支援機関として低リスク・高単価で参入できる

ここまで、問題と危機感をお伝えしてきました。では、「どうやって参入するのか」という疑問が生じるのは自然です。
政府が用意した、有利な制度があります。それが「早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)」です。
国が補助金を出す理由:中小企業の「早期改善」が経済成長の鍵
なぜ政府は、計画策定にかかる費用の一部を補助するのでしょうか。
答えは、資金繰り危機に陥った企業が「本格的な事業再生」段階へ進むことを防ぐためです。本格的な再生は、多大な時間と費用(弁護士、再生コンサルタントなど)を要します。その前の「早期」段階で、軽微な経営改善計画を立て、実行すれば、企業の自助努力で立ち直る可能性が高まります。政府はこの考えに基づき、認定支援機関による「早期計画策定支援」に補助金を出しているのです。
補助金の仕組み:計画策定と伴走支援それぞれに3分の2を国が負担
具体的な補助内容は、次の通りです。
| 対象費用 | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 経営改善計画策定費用 | 3分の2 | 上限50万円 |
| 伴走支援(モニタリング)費用 | 3分の2 | 上限30万円 |
計画策定と伴走支援を合わせると上限は80万円になります。加えて、企業概要書の作成や金融機関交渉といった追加オプションを利用すれば、最大100万円まで補助を受けられる設計になっています(オプションの利用可否は個別の状況により異なります)。
つまり、あなたの事務所が「計画策定と1年間のモニタリング支援」を契約したとすれば、企業の自己負担は費用の3分の1にとどまり、残りは国から補助されるということです。このモデルなら、関与先企業の導入ハードルは劇的に下がり、「自己負担で専門家支援を受けるのは難しい」という経営者の心理的障壁を一気に取り除くことができます。
2025年の改定で、より使いやすい制度になった
この制度は運用が見直され、以前より活用しやすくなっています。
まず、かつて補助金の半分を協議会が預かっていた「2分の1留保」の仕組みは廃止されました。2025年4月1日以降に支払申請が行われた案件は、留保なしで補助金が支払われます。
また、計画策定後の伴走支援は必須の位置づけで、最初の決算時から3年間、決算期を含めて年最低2回のモニタリングと協議会への報告が求められます。ここを怠ると、費用の返還を求められる場合があるため注意が必要です。
この制度の目的は、単なる計画書の作成では終わりません。事業者自身がPDCAサイクルを構築し、自走できる体制を整えることが本来のねらいです。財務・非財務の特色を見える化する「ローカルベンチマーク」というツールを対話に使うと、経営者が腹落ちした計画を策定しやすくなります。
五つの理由:なぜ税理士事務所・会計事務所が「今すぐ」参入すべきなのか
理由1:金融機関との関係を「コンサルティング・パートナー」のレベルに引き上げられる
銀行は、中小企業の融資継続判断において、「認定支援機関が策定した経営改善計画」の質を極めて重視します。あなたの事務所が「計画策定と伴走支援ができる機関」として認識されれば、金融機関からの信頼度が高まり、「この企業は、専門家の支援下で改善に取り組んでいる」という好印象を得ることができます。結果として、融資継続やリスケジュール交渉がスムーズに進むようになります。
理由2:既存顧問先を失うリスクを回避しながら、より深い関係構築ができる
関与先企業が「経営改善支援を受けたい」と考えたとき、「あなたの事務所で対応できる」と答えることができれば、関与先との関係はグッと深まります。逆に断ってしまえば、関与先は他所へ相談に行き、やがて顧問契約そのものを失うことになります。
理由3:月額15万円〜30万円の「継続的な経営助言の報酬」を確立できる
計画策定だけで終わらず、その後の「モニタリング(伴走支援)」を行うことで、従来の顧問報酬とは全く別枠の継続的な収入源を作ることができます。これにより、1社あたりの年間報酬は「従来の60万円〜120万円」から「180万円〜360万円」へと跳ね上がります。
理由4:所員のスキルアップとモチベーション向上につながる
定型的な記帳代行や申告処理だけでなく、「企業の資金繰りを守り、未来をプロデュースする」という仕事に携わることで、スタッフのスキルが向上し、仕事への満足度が高まります。結果として、優秀な人材の定着率が改善し、事務所全体の競争力が上昇します。
理由5:ノウハウがなくても、外部専門家との提携で低リスク参入が可能
「現場実装のノウハウがない」「現在の人員では対応できない」という懸念があれば、中小企業診断士やコンサルティング会社(KICKコンサルティングなど)と提携し、共同で支援を行うことができます。このモデルなら、初期段階ではリスクを最小化しながら、実務を通じてノウハウを蓄積することができるのです。
【ここまでのまとめ】早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)は、政府の補助金を活用することで、あなたの事務所にとって「低リスク・高単価・高差別化」の三拍子が揃ったビジネスモデルだということです。
実務フロー:早期経営改善計画の策定から伴走支援まで5つのステップ

では、具体的に「どのような流れで、経営改善計画策定支援を実施するのか」を解説します。
ステップ1:関与先企業の適切なスクリーニングと提案
まず、あなたの既存顧問先の中から、「経営改善支援が必要な企業」を見立てることが重要です。判断のポイントは、試算表や資金繰り表から次の兆候が見られることです。
- 売上は維持されているが、利益率が低下している
- 月次の現預金残高が減少傾向にある
- 銀行借入金の返済が逼迫している
- 経営者が「資金繰りに不安を感じている」と発言している
該当する関与先企業に対しては、次のようにアプローチします。「弊事務所では、税務申告だけでなく、経営改善計画の策定・伴走支援も行っており、国からの補助金を活用することで、貴社の自己負担は抑えられます。資金繰り改善のために、一度ご相談されてはいかがでしょうか」と提案する。このアプローチなら、経営者の抵抗感は低いはずです。
ステップ2:中小企業活性化協議会への利用申請
実際の支援を開始する前に、関与先企業と一緒に、「中小企業活性化協議会」に利用申請を行う必要があります。この申請は、関与先企業が行うのではなく、あなた(認定支援機関)が代理で申請することもできます。
申請時には、次の資料が必要になります。
- 直近3期分の決算書(決算書がない場合は試算表)
- 経営者の基本情報
- 企業の現況(業種、従業員数、売上規模など)
- 簡易的な経営状況の説明
申請から承認までは、通常1週間〜2週間程度で完了します。
ステップ3:経営改善計画書の策定(最重要プロセス)
承認後、本格的な計画策定に入ります。このプロセスが、支援の質を左右する最も重要なフェーズです。
計画書に含めるべき内容は、次の通りです。
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 資金実績・計画表 | 過去12ヶ月の資金の流れを整理し、今後12ヶ月の資金繰り予測を作成 |
| ビジネスモデル俯瞰図 | 企業の事業構造(商品・顧客・利益構造)を図解化し、改善ポイントを明確化 |
| 損益計画 | 売上目標、原価削減、経費削減などを具体的に数値化 |
| アクションプラン | 改善施策を具体的に列挙し、実行時期・責任者を明記 |
| 金融機関への説明資料 | 融資継続の必要性と返済計画の根拠を明示 |
重要なポイント:ここで陥りやすい失敗は、「デスクワークだけで計画を完成させること」です。試算表の数字をこねくり回して「売上10%アップ、経費20%削減」といった、現場の実行力を無視した計画を作ると、金融機関にも見抜かれ、計画は破綻します。
必ず経営者や現場責任者へのヒアリングを行い、「実現可能性が高い改善施策」を抽出することが、計画の質を左右します。
計画策定に要する時間は、通常3週間〜1ヶ月程度。関与先企業訪問2回〜3回、経営者・現場責任者へのヒアリング、金融機関との事前協議などを含めた実務フローになります。
計画書の記載項目や進め方の詳細は、次のページにまとめています。
中小企業診断士 · 認定経営革新等支援機関 資金繰りの不安、 悪化する前に手を打てていますか。 「何とかなっている」うちに動くことが、経営改善の鉄則です。 KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、国の補助制度を活用した早期経営改善計画(バリューアップ支援事業)の策...
ステップ4:金融機関への計画提出と合意形成
計画書が完成したら、関与先企業が主取引金融機関に提出し、「この計画に基づいて経営改善に取り組む」ことを金融機関に宣言します。
金融機関からの反応は、通常次のいずれかです。
- 「了解した。融資は継続する。進捗報告をお願いしたい」(好意的な応対)
- 「計画は理解した。ただし返済条件の見直しを検討しよう」(条件変更への前向き検討)
- 「この計画内容なら、新規融資も検討できる」(追加融資)
いずれにせよ、「組織的な改善計画がある」という事実を金融機関に示すことで、「この企業は真摯に取り組んでいる」というシグナルを送ることになり、金融関係は改善するケースが多いといえます。
ステップ5:モニタリング(伴走支援)の実施
計画策定で終わってはいけません。その後の「モニタリング」こそが、支援の本質です。
3ヶ月ごと(または6ヶ月ごと)に関与先を訪問し、次の内容を確認します。
- 計画で掲げたアクションプランが、実際に実行されているか
- 計画と実績の乖離は何か、その原因は何か
- 乖離が生じた場合、計画をどう修正するか
- 資金繰りは改善方向に進んでいるか、悪化していないか
- 金融機関への進捗報告は、どのような内容を伝えるか
このモニタリングを確実に実施することで、関与先企業は「専門家に応援されている」という実感を得られ、改善への動機付けが高まります。同時に、あなたの事務所は「単なる記帳者」から「経営パートナー」へと格上げされるわけです。
モニタリングに要する時間は、1社あたり月1回1時間程度で十分です。これで月額15万円〜30万円の報酬を得ることができれば、時給換算では他に類を見ない高単価な業務になるのです。
- 申請対象企業が「中小企業基本法」上の「中小企業」に該当しているか
- 過去3年以内に、同様の補助金(経営改善計画策定支援など)を受給していないか
- 関与先企業の主取引金融機関との「事前意見交換」が済んでいるか(申請前の感触確認)
- あなたの事務所が「認定経営革新等支援機関」として登録されているか
実務フローの具体的な進め方や申請書式について、詳しくご相談をお受けしています。ご相談いただいても、売り込みは一切ありません。まずは現状をお聞かせください。
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税理士が経営改善支援で陥りやすい失敗パターンと「自社対応の限界」

ここまで進め方をお示ししましたが、同時に「失敗パターン」も知っておく必要があります。
失敗パターン1:デスクワークだけで「絵に描いた餅」の計画書を作成する
税理士が陥りやすい最大の落とし穴は、試算表の数字だけをこねくり回して、現実性を無視した計画を作ることです。
例えば「売上10%アップ、経費15%削減」という計画は、数字としては見栄えがよいかもしれません。しかし、現場にいない税理士がこれを立案すると、「その売上10%はどこから来るのか」「経費削減を実現するための具体的なアクションは何か」という基本的な質問に答えられません。
金融機関は、このような「根拠なき計画」を見抜きます。結果として「この計画は信用できない」と判断され、融資判断に悪影響を与えることすらあります。
経営改善計画の質を左右するのは、「経営者・現場責任者へのヒアリングの深さ」です。ここに手を抜けば、計画は失敗に終わります。
失敗パターン2:計画策定で終わってしまい、モニタリングが定着しない
補助金をもらって計画書を作って終わり、という「作りっぱなし」では、支援の意味がありません。
経営改善の本質は、「計画を立てること」ではなく「計画を実行し、進捗を管理すること」にあります。しかし、多くの事務所では通常業務(確定申告時期など)が忙しく、モニタリングまで手が回らず、計画が形骸化してしまいます。
この状況に陥ると、関与先企業の改善意欲も低下し、やがて「あの計画は実行されなかった」という経験が残ってしまいます。
失敗パターン3:ビジネスモデルの実構造が理解できず、的外れな改善提案をする
特に、製造業や建設業など「複雑な利益構造」を持つ企業では、試算表だけからは「本当の利益源がどこにあるのか」が見えません。
例えば、製造業で「製品A」と「製品B」を並行生産している場合、試算表上の売上では両製品の合計しか見えません。しかし実は「製品Aは利益率30%、製品Bは利益率マイナス5%(赤字)」という大きな差があることもあります。
このような「製品ごと・顧客ごとの原価と利益」を分析するには、現場の原価管理データを深掘りする必要があります。それを怠ると「的外れな改善提案」を生み出し、計画の実現性が失われるのです。原価管理まで踏み込んだ相談を受ける会計事務所も、少しずつ増えています。
自社対応の限界:「なぜプロに任せる経営者が増えているのか」
上記の失敗パターンを見ても明らかなように、経営改善計画の策定には次の専門性が必要です。
- 財務分析のスキル(資金繰り管理、損益分岐点分析など)
- 現場実装の知識(製造現場のコスト削減、営業プロセス改善など)
- 金融機関対応のノウハウ(リスケジュール交渉、融資申請の基準など)
- 経営者・現場責任者へのヒアリング能力(潜在的な改善案を引き出す力)
これらをすべて単一の事務所で備えることは、現実的には難しいのです。だからこそ、「税理士としての財務知識」と「診断士やコンサルタントとしての現場改善力」を組み合わせるモデルが、最も成功確率が高いのです。
【結論】自社だけで対応しようとすれば、計画の質が低下し、関与先企業の改善につながりません。プロの力を借り、共同で支援するモデルが、結果的に「最短で最良の成果」を生み出すのです。
KICKコンサルティングとの共同支援で、リソース不足と専門性の課題を一気に解決できる

ここまで、「経営改善支援への参入には高い専門性が必要」「自社だけの対応には限界がある」とお伝えしてきました。
では、「その専門性をどこから得るのか」という実務的な疑問が生じます。
答えが、「認定支援機関同士の提携」です。
KICKコンサルティングとのアライアンスモデル:「共同支援」の仕組み
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士(MBA・事業承継士・1級FP技能士保持者)による経営改善支援を専門とし、150社以上の企業支援実績を有する認定支援機関です。
同社では、次のサービスを提供しています。
- 経営改善計画書の策定支援(ビジネスモデル俯瞰図、損益分岐点分析、パレート分析など)
- 製造業・建設業・サービス業などの業種別コンサルティング(原価管理、利益構造分析など)
- 月次モニタリング(伴走支援)のサポート
- 金融機関交渉の支援アドバイス
多くの税理士事務所・会計事務所は、このようなコンサルティング会社と「共同支援機関」として提携し、次のように役割分担しています。
役割分担モデル:「財務」と「現場」の最強コンビ
| 支援機能 | 税理士事務所の役割 | KICKコンサルティングの役割 |
|---|---|---|
| 計画策定の総括 | 関与先企業との窓口、補助金申請の手続き支援 | 計画書作成のメイン実施者 |
| 財務分析 | 試算表・決算書の提供、月次データの整理 | 損益分岐点分析、資金繰り表作成、キャッシュフロー分析 |
| 現場ヒアリング | 経営者との信頼関係構築 | 現場責任者へのヒアリング、改善案抽出 |
| 月次モニタリング | 月次試算表作成、会計数値管理 | 進捗確認、アクションプラン実行状況のチェック |
共同支援モデルのメリット:なぜ「提携」が最適なのか
メリット1:初期段階では、リソースと専門性の負担を最小化できる
最初から「自社で計画策定をすべて行う」必要はありません。数件のプロジェクトでは、診断士やコンサルタントにメイン実施を任せ、自社は「窓口」と「財務データ管理」に注力することで、実務を通じた人材育成を実現できます。
メリット2:計画の品質が高まり、関与先企業の満足度が向上する
財務分析と現場改善が両立した計画は、実現性が高く、金融機関の評価も向上します。結果として関与先企業の改善成功率が高まり、「あの事務所は本当に企業を変える力がある」という評判につながります。
メリット3:報酬配分により、自社の利益も確保できる
補助金の対象となる「計画策定費用」と「モニタリング費用」の報酬は、税理士事務所とコンサルティング会社で分配します。具体的な配分は案件ごとに個別協議となるため、詳細はご相談の中でお伝えしています。
これにより、あなたの事務所も十分な報酬を得ることができ、かつ負担も軽減されるという関係が成立するのです。
提携のプロセス:「今すぐ」アクションを起こす方法
もし、あなたの事務所が「経営改善支援に参入したい」と考えているなら、次のステップで進めることをお勧めします。
Step1:情報交換(1回の面談で完了)
KICKコンサルティングに連絡し、「うちの事務所も経営改善支援に参入したいが、パートナーシップが可能か」と相談する。対応事例、サポート体制、報酬配分などを詳しく説明してもらう。
Step2:アライアンス契約の締結
基本合意ができたら、簡単な提携覚書(アライアンス契約)を交わします。これにより、関与先企業からの相談があった際に「共同支援体制を組める」という確実性が生まれます。
Step3:実案件での共同支援の実施
関与先企業から相談があったら、KICKコンサルティングと協力し、計画策定・伴走支援を実施。初期段階では、診断士側がリードしながら、あなたの事務所スタッフが実務を通じて学ぶスタイルが有効です。
Step4:社内ノウハウの蓄積と自社対応への移行
数件の案件経験を積み重ねることで、事務所内に「経営改善計画策定のノウハウ」が蓄積されます。その後は、自社で対応できる案件を増やしていく、という段階的なアプローチが現実的です。
提携初期段階では、強引な売り込みや継続の強制は一切ありません。情報交換から始まり、関与先企業の相談があってから提携を活用するという「関与先主導」の形です。あなたの事務所が「本当に必要」と判断した時点で、提携を活用すればよいのです。
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早期経営改善計画(バリューアップ支援事業)をまとめて確認したい方へ
国の支援を使って資金繰り改善の計画をつくる早期経営改善計画の仕組みと進め方を解説しています。
早期経営改善計画策定支援に関するよくある質問(FAQ)

Q1.「早期経営改善計画策定支援」と「経営改善計画策定支援(405事業)」は何が違いますか。
A1.早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)は、金融支援(リスケジュールなど)を前提とせず、資金繰り表やビジネスモデル俯瞰図といった簡易な計画書を中心に据えます。対して405事業と呼ばれる経営改善計画策定支援は、金融支援を前提とした、より本格的な経営改善計画を策定するものです。着手のタイミングも、前者は経営の兆候が出た早めの段階、後者は悪化が顕在化してからという違いがあります。
Q2.うちの事務所は「認定経営革新等支援機関」の認定を受けていないのですが、この制度を活用できますか。
A2.直接的には活用できません。ただし、既に「認定経営革新等支援機関」の登録を受けているコンサルティング会社や診断士事務所と「共同支援機関」として提携すれば、補助金を活用した計画策定支援は可能です。多くの税理士事務所が、このモデルで経営改善支援に参入しています。
Q3.補助金の申請から受給までには、どのくらいの期間が必要ですか。
A3.通常、申請から承認までは1週間〜2週間、計画策定期間が3週間〜1ヶ月です。そのあと、金融機関への計画提出と進捗確認を経て、最終的に補助金の支払い申請ができるのは、計画策定から3ヶ月程度後になります。つまり、申請から実際の報酬受取まで、全体で4ヶ月程度を見積もるのが目安です。
Q4.計画策定後の「モニタリング(伴走支援)」は、具体的に何をどのくらいの頻度で行うのですか。
A4.一般的には、3ヶ月ごと(または6ヶ月ごと)に訪問し、次の内容を確認します。①計画で掲げたアクションが実行されているか、②実績と計画の乖離は何か、③改善が必要な場合、どう修正するか、④資金繰りの推移です。所要時間は1社あたり月1回1時間程度で、そこから月額15万円程度の報酬を得ることができます。制度上、伴走支援は最初の決算時から3年間、年最低2回の実施が求められます。
Q5.計画作成に自信がないのですが、テンプレートや手引きはありますか。
A5.中小企業庁が公開しているひな形(様式)があり、それに基づいて計画を作成すれば基本的には問題ありません。ただし、企業の「実現可能な改善施策」を抽出するヒアリング能力は、テンプレートだけでは身につきません。初期段階は、経営改善支援の経験者(診断士やコンサルタント)と提携し、実務を通じてノウハウを蓄積することが最も確実です。
Q6.支援対象企業に「条件」はありますか。中小企業であれば誰でも対象ですか。
A6.基本的には「中小企業基本法」上の「中小企業」であれば対象です。ただし、次の企業は対象外になります。①過去3年以内に同様の補助金を受給している、②債務超過が著しく深刻である場合(本格的な再生支援が必要)、③脱税や法令違反のリスクがある、の3点です。事前に「中小企業活性化協議会」に相談すれば、対象判定は容易です。
Q7.「バリューアップ支援事業」という通称は、どこから来たのですか。
A7.政府が「単なる赤字補填や延命支援ではなく、企業の『バリューアップ(価値向上)』を目指す」という方針を強調するために、この通称を使用しています。正式名称は「早期経営改善計画策定支援」ですが、現場ではしばしば「Vアップ事業」と略称されます。
Q8.関与先企業に「補助金を活用した計画策定支援」を提案する際、どのような切り口が有効ですか。
A8.経営者の最大の関心事は「自己負担がいくらか」という点です。「国が費用の3分の2を負担してくれるため、自己負担は3分の1で済む」という提案が最も響きやすいです。さらに「計画策定後は、月々の進捗を確認し、改善へ向けた伴走支援も行う」と付け加えれば、経営者の信頼度は一段と高まります。
Q9.金融機関との事前協議は、必須ですか。
A9.補助金申請の条件ではありませんが、計画策定を進める前に「主取引金融機関の感触確認」を行うことを強くお勧めします。事前に「この企業が経営改善計画を策定する予定です」と伝えておくと、計画書が完成した際の提出がスムーズになり、融資判断も迅速になります。
Q10.このビジネスモデルで成功するために、最も重要な「心構え」は何ですか。
A10.「関与先企業の経営改善を本気で応援する」という姿勢です。補助金や報酬だけを目当てに、実現性の低い計画書を作ったり、モニタリングを怠ったりすると、関与先企業の改善は失敗に終わり、あなたの事務所の評判も低下します。
反対に「この企業を立ち直らせる」という強い決意で支援に取り組めば、企業は応えてくれることが多く、そこから生まれる新規顧客紹介も増加します。長期的には、このビジネスモデルが「最良の資産」になるのです。
Q11.経営改善計画の策定以外に、税理士事務所が行える経営助言にはどのようなものがありますか。
A11.経営改善計画策定支援は、税理士による経営助言の代表的な一つの形にすぎません。ほかにも、月次試算表を使った資金繰りのシミュレーション、原価管理の見直し、金融機関への説明資料の作成支援など、日々の関与の中でできる経営助言は数多くあります。
重要なのは、「税務申告のための数字」を見せるだけでなく、「経営判断のための数字」として使えるように加工し、伝えることです。経営改善計画策定支援は、そうした経営助言の型を、国の補助金を使いながら体系的に実践できる仕組みだと捉えると分かりやすいでしょう。
まとめ 税理士・会計事務所が今、経営助言に踏み出す意味
ここまで、早期経営改善計画策定支援(バリューアップ支援事業)を軸に、税理士事務所・会計事務所が経営改善支援へ参入する道筋をお伝えしてきました。
視点を変えて言えば、これは「制度の話」であると同時に、「税務の専門家」から「経営を語れる専門家」へと立ち位置を広げる話でもあります。試算表を見せるだけの関わりから、資金繰り・原価管理・金融機関対応まで踏み込んだ経営助言へ。この一歩を踏み出す事務所と、踏み出さない事務所の差は、数年後には顧問先からの信頼と報酬の両面で大きく開いていくはずです。
実際、税理士・会計事務所に限らず、社会保険労務士など他の士業でも、顧問先の経営そのものに踏み込む動きが広がっています。国の補助金という後押しがあり、認定支援機関との提携という低リスクな入口がある今は、経営改善支援という経営助言の形に着手する好機だといえます。
まずは自社の関与先の中に「経営改善支援が必要な企業」がいないか、試算表や資金繰り表を見直すところから始めてみてください。
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