
「来月、技能実習生の契約更新ができなかったら、工場のラインが止まる」
溶接業(造船・産業機械)の経営者であれば、この恐怖は他人事ではないはずです。
溶接業は今、かつてないほど厳しい状況に直面しています。熟練の溶接工は60代・70代が中心で、引退が加速しています。一方、若手の参入は年々減り続け、国土交通省の調査では溶接分野の有効求人倍率は4倍を超える水準です。つまり、「4社が1人の溶接工を奪い合う」という異常事態が続いています。
その結果、多くの溶接業者は外国人技能実習生・特定技能人材なしでは事業を維持できない状態にあります。
ところが、ここに大きな壁が立ちはだかります。鋼材価格の高騰、電気・ガスなどのエネルギーコスト増、大型案件の先送り。これらが重なり、直近決算が赤字、あるいは債務超過(会社の負債が資産を上回った状態)に陥っている企業が急増しているのです。
債務超過の企業は、技能実習生・特定技能人材の受入れ申請で「企業評価書」の提出を求められます。この書類がなければ、外国人材を確保できません。そして企業評価書は、中小企業診断士または公認会計士にしか作成が認められていない専門文書です。
結論を先にお伝えします。債務超過であっても、企業評価書で「改善の見通し」を適切に示せば、外国人材の受入れは可能です。
本記事では、溶接業(造船・産業機械)に特化して、企業評価書がなぜ必要なのか、どうすれば審査を通過できるのか、専門家にどう依頼すればよいのかを、中小企業診断士の実務経験にもとづいて解説します。
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溶接業で企業評価書が必要になる理由

溶接業の経営者が企業評価書を求められる理由は、制度上の決まりにあります。ここでは「そもそも企業評価書とは何か」「なぜ溶接業で特に問題になるのか」を整理します。
技能実習・特定技能の申請で、なぜ財務審査があるのか
外国人技能実習制度と特定技能制度は、日本で働く外国人の権利を守るために、受入れ企業の経営状態をチェックする仕組みを設けています。
具体的には、申請時に直近2期分の決算書(損益計算書と貸借対照表)の提出が必要です。審査機関(外国人技能実習機構や出入国在留管理庁)は、この決算書で「この会社は、外国人に安定して給料を払い続けられるか」を確認します。
通常、財務内容に問題がなければ決算書だけで審査は進みます。しかし、直近決算が債務超過の場合は、追加で「企業評価書」の提出が義務になります。
企業評価書とは何か
企業評価書(正式には「改善の見通しについての評価書」)とは、簡単に言えば「うちの会社は今は債務超過だけど、これから経営を立て直せる見込みがあります」ということを、第三者の専門家が客観的に証明する書類です。
この書類を作成できるのは、法令で決められた有資格者だけです。
| 制度 | 作成できる有資格者 |
|---|---|
| 技能実習 | 中小企業診断士、公認会計士 |
| 特定技能 | 中小企業診断士、公認会計士、税理士 |
ここが重要なポイントです。税理士は特定技能の企業評価書を作成できますが、技能実習の企業評価書は作成できません。行政書士にも作成権限はありません。顧問税理士に相談しても「うちでは対応できません」と言われるケースが非常に多いのは、このためです。
企業評価書の制度的な位置づけや提出が必要となる具体的な場面については、「外国人技能実習 企業評価書って何?|実は債務超過でも受け入れ可能です」の記事で詳しく解説しています。
溶接業で企業評価書の提出を求められるケースが多い背景
溶接業(造船・産業機械)は、業界構造として債務超過に陥りやすい特性を持っています(詳細は次章で解説します)。そのため、溶接業の経営者が技能実習生や特定技能人材を受入れようとした際に、企業評価書を求められる確率は他業種に比べて高いのが実情です。
しかも、溶接業は外国人材への依存度が極めて高い業種です。造船分野で働く外国人就労者のうち、約90%が溶接の仕事に従事しているというデータもあります(国土交通省資料より)。外国人材が確保できなければ、そのまま工場の稼働率が下がり、売上が減り、さらに経営が悪化するという悪循環に直結します。
なぜ溶接業は債務超過になりやすいのか

溶接業(造船・産業機械)が債務超過に陥りやすい原因は5つあります。いずれも業界の構造的な問題であり、「経営者の努力不足」ではないケースが大半です。この点は、企業評価書を作成する上でも極めて重要な視点です。
熟練溶接工の高齢化と引退ラッシュ
溶接は、「手の感覚」や「音の変化」で品質を判断する、極めて属人的な技能です。一人前になるまでに最低でも5年〜10年の実務経験が必要と言われています。
しかし現在、溶接業界の中核を担っているのは50代後半〜70代の熟練工です。彼らが一斉に引退する中で、後継者が育っていません。国土交通省の調査によると、造船・舶用工業の就業者数は2013年の約18万5,000人から2022年には約15万人にまで減少しています。
熟練工がいなくなれば、残った従業員では受注をさばけません。結果として、仕事はあるのに人がいないから受注を断る → 売上が減る → 赤字が拡大するという流れに陥ります。
人手不足による外注費の増大
自社の人員で対応できない場合、溶接の一部工程を外注に出すことになります。しかし溶接の外注先も同様に人手不足であるため、外注単価は年々上昇しています。
たとえば、以前はトン当たり5万円で受けてもらえた溶接加工が、現在は7万〜8万円まで上がっているケースもあります。外注費が増えれば、当然ながら利益は圧迫されます。
素材価格(鋼材)の高騰
溶接業にとって、鋼材(鉄やステンレスなどの金属素材)は最も大きなコストの1つです。鋼材価格は2020年後半から急騰し、鉄筋の価格は2020年6月の1トン当たり約6万6,000円から、2022年には12万円超まで約2倍に跳ね上がりました。
2025年以降は一部で値下がりの動きもありますが、コロナ前の水準には戻っていません。しかも、日本は鉄鉱石を100%輸入に頼っているため、円安が進めば鋼材価格はすぐに上がる構造になっています。
電気・ガスなどエネルギーコストの上昇
溶接作業には大量の電気やガス(アルゴンガス、炭酸ガスなど)を使います。エネルギー価格はロシア・ウクライナ情勢の影響もあり高止まりしており、溶接業者にとっては「同じ仕事をしても、以前よりコストがかかる」状態が続いています。
仮に売上が横ばいでも、鋼材とエネルギーのコスト増だけで利益が年間数百万円単位で削られることは、溶接業では珍しくありません。
受注産業特有のリスク ── 固定費の重さと景気変動
溶接業(特に造船・産業機械向け)は、典型的な「受注産業」です。受注産業とは、お客さまから注文を受けてから生産を始める事業のことです。
この業態には、次のような構造的なリスクがあります。
| リスク要因 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 大型案件中心で固定費が重い | 工場の賃借料、大型溶接機のリース料、熟練工の人件費など、受注がなくても毎月発生する固定費が大きい |
| 景気や設備投資の影響を受けやすい | 造船業や産業機械メーカーの設備投資が減れば、そのまま受注が消える。自社でコントロールできない |
| 代金回収までの期間が長い | 大型案件は完成・納品まで数か月〜1年かかることがある。その間の資金繰りは自社で持つ必要がある |
これらの要因が重なったとき、「たった1期の赤字」で一気に債務超過に転落する溶接業者は少なくありません。特に、資本金が少ない中小零細企業ほど、そのリスクは高くなります。
債務超過でも外国人受入れが許可される企業の共通点

債務超過の溶接業者でも、外国人技能実習生・特定技能人材の受入れが認められるケースは多数あります。審査を通過している企業には、3つの共通点があります。
共通点① 改善の見通しが「数字」で示されている
審査機関(外国人技能実習機構・出入国在留管理庁)は、「気持ち」や「やる気」では納得しません。今後3年〜5年の売上計画・利益計画・資金繰り計画を、具体的な数字で提示できているかが最大のポイントです。
たとえば、次のような情報が企業評価書に盛り込まれていれば、説得力は大きく高まります。
・来期の受注見込み額と、その根拠(内示書や取引先との協議状況など)
・コスト削減の具体策(外注比率の低減、エネルギーコストの見直しなど)
・債務超過が何年で解消できるかのシミュレーション
共通点② 債務超過の原因が「一時的」であることが説明されている
審査で最も厳しく見られるのは、「この債務超過は構造的なものか、一時的なものか」という点です。
溶接業の場合、次のような理由であれば「一時的」と認められやすい傾向があります。
・大型溶接設備の更新投資で一時的に減価償却費が増加した
・鋼材価格の急騰で原価率が想定を超えたが、翌期に価格転嫁ができた
・主要取引先の設備投資延期で受注が一時的に減少したが、翌期以降に発注が予定されている
こうした背景を、客観的な証拠(取引先の発注計画、鋼材価格の推移データなど)とセットで提示できるかどうかが分かれ目です。
共通点③ 資金繰りの裏付けがある
利益が出ていても、手元にお金がなければ従業員に給料を払えません。審査機関は、「外国人に毎月きちんと賃金を支払えるだけの資金余力があるか」を非常に重視します。
具体的には、金融機関との融資枠(借入可能な金額の上限)、手元現預金の水準、売掛金(まだ回収していない代金)の回収見込みなどが確認されます。
ある溶接業者の一般的なケースを紹介します。直近期で約500万円の債務超過だった企業が、「設備投資の減価償却が大きかった」「翌期以降に大型受注の内示がある」「メインバンクとの融資契約が継続している」という3点を企業評価書で証明し、技能実習生の受入れが認められました。
改善見通し計画の具体的な作り方については、「企業評価書に必要な改善見通し計画の作り方」の記事で詳しく解説しています。
企業評価書の書き方と審査通過のポイント

企業評価書の審査で通るかどうかは、「何を書くか」と「どう書くか」の両方で決まります。ここでは、溶接業に特化した記載のポイントと、よくあるNG例を解説します。
企業評価書に記載すべき6つの項目
| 項目 | 内容のポイント |
|---|---|
| 企業概要・事業内容 | 造船向け溶接、産業機械向け溶接など、事業の内容・強み・取引先の業種を具体的に記載 |
| 債務超過に至った経緯 | いつ、なぜ、いくらの債務超過になったかを時系列で説明。「鋼材高騰」「設備投資」など具体的原因を明示 |
| 財務分析 | 直近3期分の損益計算書・貸借対照表を分析。売上高、営業利益、経常利益、純資産の推移を示す |
| 改善計画(数値計画) | 今後3〜5年の売上・利益・純資産の見通し。債務超過解消時期を明示。根拠となる受注計画やコスト削減策も記載 |
| 資金繰りの見通し | 月次の資金繰り表、金融機関との取引状況、融資枠の有無など |
| 総合評価 | 中小企業診断士としての総合的な判断。「事業継続性に問題なし」「改善見通しは合理的」等の評価を記載 |
審査で落ちるNG例と、通過するOK例
【NG例】「今後は売上を増やして、コストを下げて、黒字化します」── これは「希望」であって「計画」ではありません。数字の根拠がなく、誰がどのような施策を、いつまでに実行するのかが不明確です。このレベルの企業評価書は、ほぼ確実に却下されます。
【OK例】「来期はA社からの造船ブロック溶接案件(年間約3,000万円)の内示を受けている。また、溶接ロボットの導入(○月完了予定)により外注費を年間約400万円削減できる見込みである。これにより、来期の営業利益は約○○万円を見込み、3年以内に債務超過を解消できると評価する」── このように、具体的な取引先・金額・施策・時期が数字で裏付けられた記載は、審査で高く評価されます。
溶接業で特に審査官が注目するポイント
溶接業の企業評価書では、一般的な製造業とは異なる視点で審査されることがあります。
技術力の維持・継承体制 ── 熟練工の引退後も溶接品質を維持できる体制があるか。外国人材を受入れた場合の技能訓練体制(OJTの計画、指導者の配置など)が整っているか。
受注基盤の安定性 ── 特定の大手造船メーカー1社に依存していないか。取引先が複数あり、受注が途切れるリスクが分散されているか。
安全管理体制 ── 溶接作業は高温・火花・有害ガスを伴うため、外国人労働者に対する安全教育や保護具の整備が十分かどうかも審査対象です。
企業評価書を専門家に依頼すべき理由

企業評価書は、国家資格を持つ専門家しか作成できない書類です。しかし、「資格を持っている人なら誰でも良い」というわけではありません。ここでは、専門家に依頼すべき3つの理由を解説します。
自社で作成しても審査を通過できないケースが多い理由
よくある誤解が「決算書の数字を並べて、改善計画を書けば通るのでは?」というものです。
しかし実際には、企業評価書は「自社で作る説明書」ではなく、「第三者の専門家が客観的に評価する書類」です。つまり、自社の経理担当者や顧問税理士が作った書類は、そもそも制度上の要件を満たしません(技能実習の場合は中小企業診断士・公認会計士のみ、特定技能の場合は税理士も可)。
また、審査機関は書類の「客観性」と「説得力」を重視します。自社に都合の良い数字だけを並べた計画書は、審査で厳しく指摘されます。中小企業診断士が第三者の立場で作成した評価書は、客観性が担保されるため、審査機関からの信頼度が格段に高くなります。
溶接業の業界構造を理解している専門家を選ぶべき理由
企業評価書の作成経験がある中小企業診断士であっても、溶接業や製造業の実態を知らなければ、的外れな評価書になってしまいます。
溶接業には、「受注産業特有のキャッシュフロー」「鋼材価格が利益に直結する原価構造」「熟練工の技能レベルが品質と直結する属人性の高さ」など、独自の事情があります。これらを理解している専門家でなければ、審査官が納得する評価書は書けません。
専門家に依頼した場合の費用と期間の目安
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 費用 | 5万円〜20万円程度(税抜)。債務超過の金額や事業の複雑さによって変動 |
| 作成期間 | 最短3日〜2週間程度。必要書類(直近3期分の決算書)が揃っていればスムーズ |
| 依頼の流れ | 問い合わせ → ヒアリング(オンラインも可) → 評価書の作成 → 納品・修正対応 |
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)では、中小企業診断士が年間数十件の企業評価書を作成しており、製造業・溶接業を含む幅広い業種の財務構造を熟知しています。企業評価書のサービス詳細は、「外国人技能実習・特定技能の企業評価書」サービスページをご覧ください。
よくある質問(Q&A)

Q. 赤字決算でも技能実習生の受入れは可能ですか?
可能です。赤字決算であっても、企業評価書で「改善の見通し」が合理的に示されていれば、受入れが認められるケースは多数あります。重要なのは「なぜ赤字なのか」「いつ黒字に転換できるのか」を数字で説明できることです。
Q. どの程度の債務超過なら受入れが可能ですか?
金額だけで一律に決まるものではありません。審査では、債務超過の「金額」よりも「原因」と「改善の見通し」が重視されます。たとえば、債務超過額が1,000万円であっても、改善計画に根拠がなければ却下されることがあります。逆に、債務超過額が数百万円であっても、利益がしっかり出ていて改善傾向が数字で示せれば通過する可能性は高まります。
Q. 企業評価書の作成にはどのくらいの期間がかかりますか?
直近3期分の決算書が揃っていれば、最短3日程度で作成可能です。ただし、債務超過の原因が複雑な場合や、追加のヒアリングが必要な場合は、2〜4週間程度かかることもあります。監理団体や登録支援機関からの提出期限が迫っている場合は、早めにご相談ください。
Q. 顧問税理士に企業評価書を頼めませんか?
技能実習制度の企業評価書は、税理士では作成できません。法令上、技能実習の企業評価書を作成できるのは中小企業診断士と公認会計士だけです。特定技能制度の場合は税理士も作成可能ですが、企業評価の専門性や審査ポイントの知識を考えると、実績のある中小企業診断士に依頼するのが確実です。
Q. 過去に企業評価書を提出して却下されたことがあります。再申請は可能ですか?
再申請は可能です。ただし、前回と同じ内容で再提出しても結果は変わりません。却下された原因を分析し、改善計画の具体性や根拠を補強した上で、再度提出する必要があります。審査での指摘事項を踏まえて企業評価書を修正・再作成する際こそ、経験豊富な専門家の支援が重要になります。
まとめ ── 溶接業の経営者が今すぐ動くべき理由

溶接業(造船・産業機械)は、熟練工の引退、鋼材高騰、エネルギーコスト増といった複合的な要因で、債務超過に陥りやすい業種です。しかし、債務超過だからといって外国人材の受入れを諦める必要はありません。
企業評価書で「改善の見通し」を合理的に示すことができれば、技能実習生・特定技能人材の受入れは認められます。
ただし、対応が遅れれば遅れるほど、リスクは大きくなります。
企業評価書の作成には、決算書の準備、専門家とのヒアリング、審査機関への提出まで、一定の時間がかかります。監理団体や登録支援機関から突然「企業評価書を○月○日までに提出してください」と言われてから動き始めると、間に合わないケースが少なくありません。
技能実習生の契約更新が迫っている方、これから新たに外国人材を受入れたい方は、まず専門家に相談することが最初の一歩です。
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KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)は、中小企業診断士が在籍し、年間数十件の企業評価書作成実績を持つ専門コンサルティング会社です。溶接業を含む製造業の財務構造を熟知しており、最短3日・全国対応(オンラインヒアリング可)で対応いたします。
「うちは債務超過だから無理では?」と思っている方こそ、まずはご相談ください。改善の見通しが立てられるかどうか、専門家と一緒に確認しましょう。








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