支援事例 年商5億円の精密機器製造業が管理会計導入で経営構造を転換

01_資金繰り改善・事業再生(V字回復)

KICKコンサルティングが支援した精密機器製造業の経営者から、支援開始時にこのようなお悩みをお聞きしていました。

「売上は前年比10%増えたのに、利益は前年比30%も減った。このままでは銀行対応も厳しくなる」

この経営課題は、多くの製造業が抱える構造的な問題です。本ページでは、実際の支援プロセスと、月次ごとの改善の兆しをご紹介いたします。

 

支援対象企業の現状

企業プロフィール

項目内容
業種精密機器製造
年商5億円
従業員数非公開
支援開始時期2024年

支援開始時の経営課題

初回診断時に、この企業では以下のような経営上の課題が明らかになりました。

  • 原価計算がない:受注時に「過去の実績」と「経験」で価格を決定。原価根拠が曖昧で、受注判断が定性的
  • 不採算取引の混在:顧客過依存で値下げ圧力に抵抗できず、赤字受注が月間売上の15~20%を占める
  • 固定費が可視化されていない:設備投資や人員配置による固定費(月1,000万円以上)の負担が経営を圧迫
  • 月次の利益予測がない:決算時点で初めて赤字状況を認識する状態が続いていた
  • 現場と経営層が数値で繋がっていない:「売上目標」の指示のみで、利益体質への共通認識なし
  • 資金繰りの不透明性:売上増加時にも現金が手元に残らず、銀行との関係が悪化していた

結果として、この企業は「売上追求に過度に依存し、利益構造を軽視する経営」に陥っていました。

 

診断結果 問題の本質の可視化

限界利益率の分析

まず、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)を管理会計的に読み直し、費用を「変動費」と「固定費」に分類しました。

費用項目月額分類特徴
材料費約1,500万円変動費売上高に連動
外注費約600万円変動費売上高に連動
人件費約800万円固定費売上に関わらず発生
減価償却費約200万円固定費売上に関わらず発生

診断結果

  • 限界利益率:32%
  • 固定費(月):1,000万円以上
  • 損益分岐点(月売上):約3,125万円
  • 現状月平均売上:4,200万円(一見黒字のはずが、実際は微利益~赤字)

理由:赤字受注が月売上の15~20%混在していたため、実質的には損益分岐点を割っていた

利益増減要因の分解

支援開始直前の経営状況を分析すると、売上増加にもかかわらず利益が減少した原因は、以下の3点でした。

原因影響度詳細
販売価格の低下月-80万円主要顧客Aの取引量増加に伴い単価が15%低下
変動費率の上昇月-60万円材料費高騰(円安影響)で変動費率が65%→68%に上昇
固定費の相対比上昇月-50万円売上増加に比べ固定費がほぼ固定のため、利益への負荷が増加

結果:月平均売上が前月対比で約500万円(5%)増加にもかかわらず、月次利益は前月対比で約190万円(63%)減少していました。

 

支援内容 4つの財務分析ツール導入と現場レクチャー

フェーズ1:経営層向けレクチャー(限界利益率と損益分岐点の理解)

初回診断から1週間以内に、診断結果に基づいた経営層向けレクチャーを実施しました。

重点は以下の3点です。

  • 限界利益率32%の意味:売上が100万円増えても、実手取りは32万円だけ。残りの68万円は直接的なコストに消える
  • 固定費1,000万円の重さ:月1,000万円は「絶対に減らせない出費」。この額を回収してから初めて利益が生まれる
  • 赤字受注の真のコスト:限界利益がマイナスになる受注は、現場を疲弊させるだけでなく、他の利益受注から吸い上げている

フェーズ2:財務分析ツール4点の導入

以下の4つの管理会計ツールを段階的に導入し、経営判断の基盤を整備しました。

ツール1:財務レントゲン(B/S・P/L可視化)

貸借対照表と損益計算書を「変動費」「固定費」の視点から組み直し、利益構造を明確化。問題箇所の特定に活用しました。

ツール2:損益分岐点分析

固定費と限界利益率から、会社が黒字化するために必要な最小売上(損益分岐点)を算出。現状月売上4,200万円に対し、損益分岐点が約3,125万円であることを経営層に理解させました。

ツール3:利益増減要因図

「なぜ売上が増えても利益が減るのか」という問題を、数値で完全に分解。販売価格、変動費率、固定費の3要因が利益に与える影響を可視化しました。

ツール4:利益感度分析(月次シミュレーション)

「もし〇〇が△△になったら、利益はいくらになるか」というシナリオ分析を実施。以下の3ケースを比較検討しました。

シナリオ条件推定月利益
現状維持売上4,200万円、限界利益率32%約75万円
赤字案件排除不採算取引廃止(売上-15%)約150万円
赤字案件排除 + 価格改定不採算排除+単価5%UP約280万円

この分析により、経営層は「売上を減らしても利益は増える」という本質的な気づきを得ました。

フェーズ3:現場社員向けレクチャー(数値共有と見える化)

経営層の理解が進んだ後、製造現場と営業部門に対しても月1回のレクチャーを実施しました。

毎月の会議では、以下の情報を共有

  • 「今月の売上は4,300万円。利益を出すには損益分岐点3,125万円以上が必要」
  • 「材料費の高騰で変動費率が上がっている。現場での歩留まり向上が重点」
  • 「顧客Aとの取引は月300万円だが、限界利益は60万円。効率を考えると見直しが必要」
  • 「新規案件B:利益率40%。この案件を3件獲得できれば、月利益は300万円超になる」

このレクチャーを通じて、現場の「数値リテラシー」が段階的に向上し、生産現場での原価意識が高まりました。

 

支援成果 月次改善の推移

第1ヶ月:現状認識から行動へ

  • 経営層の意識転換:限界利益率32%の現実を受け入れ、「利益率向上」を経営目標に位置付けた
  • 営業部門の自発的な提案:赤字案件の洗い出しが営業から発案され始めた
  • 製造部門の取り組み開始:材料ロス削減への改善活動が現場から自発的に開始

第2~3ヶ月:構造改革の実行

  • 不採算取引の決定:赤字案件3件の廃止・見直しを経営判断で実行(売上ベースで月100万円のカット)
  • 主要顧客への価格交渉:原価構成を根拠に、顧客2社への「原価改定」に向けた価格交渉を開始
  • 月次利益予測シートの導入:経営判断の迅速化と予実管理の強化を実現
  • 限界利益額の改善:月平均で130万円→150万円へ上昇し始める(改善ペース)

第4ヶ月以降:持続的な改善の兆し

  • 利益額の継続的な改善:限界利益額が月150万円→180万円へ向上(改善ペース加速)
  • 不採算取引廃止による現場効率化:生産効率が向上し、現場の疲弊が軽減
  • 価格交渉時の説得力向上:原価計算による根拠のある価格交渉で、顧客の納得度が向上
  • 経営層と現場の一体化:「売上目標」から「利益目標」へシフトし、全社が同じ経営指標で動く体制へ
  • 金融機関対応の改善:月次試算表の提出により、銀行との信頼関係が段階的に改善

最も重要な変化は、企業全体が「売上追求」から「利益体質構築」へ経営の軸足を転換したことです。

この転換により、経営者の経営判断スピードが向上し、現場スタッフも「自分たちの仕事が会社の利益に直結する」ことを認識し始めました。

 

支援プロセス 実施内容と期間

フェーズ期間実施内容
初回診断初日(3時間)B/S・P/Lの分析、現状課題の洗出し、経営者ヒアリング
分析レポート作成1週間以内限界利益率、損益分岐点、改善シナリオの提示
経営層向けレクチャー月1回×3ヶ月管理会計の基礎理解、限界利益と損益分岐点の解釈、意思決定への活用
現場向けレクチャー月1回×3ヶ月月次数値の読み方、改善ポイントの共有、現場での行動変化の促進
月次フォロー・改善相談3ヶ月以降継続利益予測、改善進捗確認、追加施策の検討、銀行対応支援

 

同じ課題を抱える企業へ

この事例でご紹介した精密機器製造企業の課題は、多くの製造業が共通して抱えている問題です。

  • 「売上が増えているのに、通帳の残高が増えない」
  • 「銀行対応が厳しくなってきた」
  • 「原価がいくらなのか、実は分かっていない」
  • 「赤字受注を避けたいが、営業部門が反発する」
  • 「現場と経営層が同じ目標で動いていない」

このような課題に直面されている企業の経営者様に対して、KICKコンサルティングでは以下のアプローチで支援しております。

初回診断で明らかにできること

  • 貴社の真の利益構造(限界利益率、損益分岐点)
  • 売上増加時に利益が減る本当の理由
  • 今後3~6ヶ月で実現可能な改善シナリオ
  • 金融機関との協議時に活用できる経営改善計画の作成方法

30分の無料相談で、貴社の経営課題を診断いたします。

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よくある質問

Q1. 同じ支援を受けるには、どのような条件が必要ですか

A. 特定の条件はございません。製造業であれば、業種や規模を問わず、同様の支援体制を整備しております。

ただし、経営者や経営幹部が「数値ベースでの経営判断」に理解を示し、実行に移す姿勢が不可欠です。

 

Q2. 支援期間中に、具体的な改善結果が出ますか

A. 改善の兆しは2~3ヶ月で見え始めます。ただし、不採算取引の廃止や価格改定など「構造的改革」を伴う場合は、3~6ヶ月は覚悟が必要です。

本事例でも、第4ヶ月以降に限界利益額の改善ペースが加速しており、継続的な支援による効果が確認されています。

 

Q3. 原価管理を自社で実施することはできませんか

A. 数値の整理や損益分岐点の計算は可能です。しかし「その数値をもとに、どのような経営判断を下すのか」という解釈と活用が難しいというのが実情です。

また、経営層の思考枠組み自体を「限界利益ベース」へ転換させ、現場全体に浸透させるには、外部専門家による「伴走型レクチャー」が非常に効果的です。

 

Q4. 建設業やサービス業でも、この手法は使えますか

A. はい。原理は全く同じです。固定費・変動費の分類方法は業種で異なりますが、「限界利益率」と「損益分岐点」の考え方は、すべての業種で適用できます。

実際に、建設業や食品製造業でも同様の支援を実施し、成果を上げております。

 

中小企業診断士からのメッセージ

私は中小企業診断士として、この15年で約1,100名の経営者様と対話してきました。

その過程で、何度も見てきたのが「売上至上主義の罠」です。

売上を増やすことは、努力と工夫により、ある程度は誰にでもできます。営業努力と価格競争で、月次売上を数%増加させるのは容易です。

しかし、その売上が「本当の利益」に繋がるのか、それとも「経営を蝕む負債」になるのかは、完全に別の問題です。

本事例の精密機器製造企業のように、管理会計による「数値ベースの経営判断」が根付くと、企業は確実に変わります。

  • 経営層は「根拠のある意思決定」ができるようになり
  • 営業部門は「利益の出ない受注」を自発的に回避し
  • 製造現場は「自分たちの仕事が会社の利益に直結する」ことを理解し
  • 結果として、全社が一体となって、持続可能な利益体質へ向かう

これが、本来の「経営改善」であり、「黒字経営」の本質です。

貴社の経営課題も、同じプロセスで改善できる可能性が高いです。

今こそ、「売上追求」から「利益体質」への転換を実現しませんか。

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