
「債務超過だから、もう外国人を雇えないのではないか」
自動車部品の切削加工を手がける町工場・中小製造業の経営者の中には、そのような不安を抱えている方が少なくありません。24時間稼働が当たり前の現場で、特定技能外国人や技能実習生なしに操業を維持することは困難です。しかし、電気代の高騰、完成車メーカーの減産調整、設備投資の減価償却負担が重なり、決算書が債務超過の状態に陥ってしまった。その結果、監理団体や登録支援機関から「企業評価書」の提出を求められ、途方に暮れている…
結論から申し上げます。債務超過であっても、企業評価書を適切に作成すれば、技能実習生・特定技能外国人の受け入れは可能です。本記事では、自動車部品加工業に特化して、企業評価書の仕組みから具体的な改善計画の書き方まで、中小企業診断士の実務視点で解説します。
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自動車部品加工業を取り巻く「三重苦」の実態

自動車部品の切削加工を行う中小製造業は、複数の外部環境の悪化に直面しています。債務超過の原因を正しく理解することが、企業評価書の作成において最も重要な第一歩です。
自動車生産台数の変動と受注減
日本自動車工業会(JAMA)の統計によると、2024年の国内四輪車生産台数は前年比8.5%減の約823万5千台でした。認証不正による生産見合わせや海外市場の低迷が主因です。さらに、2025年に入ってからはトランプ政権の対日自動車関税(25%)の影響で、北米向け輸出の先行きに不透明感が増しています。経済産業省の資料でも、国内生産台数はリーマンショック前の2007年比で約27%減、コロナ前の2019年比でも約13%減と深刻な水準が続いていることが示されています。
完成車メーカーの減産は、部品サプライヤーの受注減に直結します。特に、特定の完成車メーカーに売上の大半を依存している町工場では、減産調整のたびに売上が大きく落ち込みます。
電気代の高騰
資源エネルギー庁の電力調査統計および各種統計データによると、産業向け(高圧・特別高圧)の平均電気料金単価は、2020〜2021年の約14円/kWh前後から2022〜2023年にかけて約24〜27円/kWhにまで高騰しました。2021年比で約1.7〜1.9倍の水準です。
その後やや落ち着いたものの、2025年以降も再エネ賦課金(2025年度は3.98円/kWh)や容量拠出金の上乗せ、政府補助金の終了が重なり、高止まりが続いています。切削加工の現場では、NC旋盤やマシニングセンタを24時間動かすため、月の電気代が数百万円規模にのぼる工場も珍しくありません。電気代は売上原価に直接はね返るため、利益率を大きく圧迫します。
深刻な人手不足
厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、2024年平均の全体の有効求人倍率は1.25倍ですが、製造業が該当する「生産工程の職業」の有効求人倍率は1.5倍前後で推移しています。つまり、求職者1人に対して1.5件の求人がある状態であり、中小製造業の現場では人の確保が非常に難しい状況です。
厚生労働省の「2022年版ものづくり白書」によれば、製造業の就業者数は過去約20年間で157万人減少しています。若い日本人が製造現場に就職しない以上、特定技能外国人・技能実習生は自動車部品加工業の操業を支える不可欠な存在です。
「うちみたいな会社でも大丈夫なのか」経営者が抱える不安

自動車部品加工業の経営者から、次のようなご相談をいただくことがあります。
「設備投資で借入が膨らみ、減価償却費で利益が圧迫されている。決算書上は債務超過だが、現金は回っている。それでも外国人の受入を続けられるのか」
この悩みは、設備投資依存型の業種に共通するものです。NC旋盤1台で1,000万〜3,000万円、5軸マシニングセンタであれば5,000万円以上の投資が必要です。償却期間は通常8〜10年。投資した直後の数期は、減価償却費が利益を上回り、帳簿上は赤字になることが珍しくありません。
さらに、完成車メーカーの減産による受注減と電気代の高騰が重なれば、一時的に純資産がマイナスに転じること、つまり債務超過に陥ることは十分にあり得ます。
重要なのは、出入国在留管理庁(入管)は「債務超過=即不許可」とはしていないという点です。入管が確認しているのは「事業の継続性」と「外国人を支援する体制」の2つです。つまり、債務超過に至った合理的な理由と、今後の改善見通しを具体的に示すことができれば、許可を得られる可能性は十分にあるのです。
企業評価書とは何か?債務超過でも許可されるロジック

企業評価書の法的位置づけ
企業評価書(正式名称:改善の見通しについて評価を行った書面)とは、技能実習制度運用要領や特定技能審査要領に基づき、直近の事業年度で債務超過がある企業に対して提出が求められる書類です。
具体的には、「中小企業診断士、公認会計士等の企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者」が、当該企業の改善の見通しを評価した書面とされています。
企業評価書は、税務申告や融資審査の書類ではなく、あくまで出入国在留管理法令および審査要領に沿って作成される必要があります。自社で作成しても認められず、必ず公的資格を持つ第三者が評価する必要がある点にご注意ください。
作成できる専門家
企業評価書を作成できるのは、次の公的資格を持つ専門家です。
| 専門家 | 特徴 |
|---|---|
| 中小企業診断士 | 経営改善計画・事業計画の策定に特化。製造業の現場改善に精通した専門家が多い。企業評価書の作成実績が豊富 |
| 公認会計士 | 財務分析に強み。大企業の監査経験を活かした評価が可能 |
| 税理士(一部対応) | 顧問税理士が対応できる場合もあるが、経営改善計画の策定経験がない場合は注意が必要 |
KICKコンサルティングでは、製造業の企業評価書の作成実績を多数持つ中小企業診断士が対応しています。自動車部品加工業の業界構造やコスト構造を理解した上で、入管審査を通過するための的確な評価書を作成します。
債務超過でも許可されるロジック
入管の審査において、企業評価書で証明すべき核心は1つです。それは、「この会社は今後も事業を継続でき、外国人労働者の雇用を安定的に維持できる」ということです。
具体的には、次の3つの論点を一つひとつ潰していく必要があります。
第一に、債務超過の原因が一過性・外的要因によるものであること。自動車部品加工業であれば、完成車メーカーの減産調整、電気代高騰、設備投資に伴う減価償却費の増加など、自社の経営能力とは別の要因で一時的に財務が悪化したことを客観データで示します。
第二に、改善計画に具体性と実現可能性があること。「売上を伸ばす」「コストを下げる」といった抽象的な記載では審査を通過できません。受注先名・受注金額・回復時期の根拠、電気代削減の具体策と金額効果など、数値とスケジュールで裏付けることが必要です。
第三に、外国人労働者の賃金支払い・生活支援を継続できるキャッシュフローがあること。債務超過であっても、営業キャッシュフロー(実際の現金の出入り)がプラスであれば、事業の継続性を主張できます。減価償却費は現金支出を伴わない費用であるため、「帳簿上の赤字」と「資金繰り」は別物であると説明することが重要です。
企業評価書に盛り込むべき内容(自動車部品加工業の場合)

企業評価書に記載すべき項目と、自動車部品切削加工業に特化した具体的な改善策を解説します。
改善計画(3〜5年)の策定
評価書の中核となるのが、向こう3〜5年間の改善計画です。事業の回復シナリオを、売上・原価・販管費・営業利益・純資産の各項目について、年度ごとに数値で示します。重要なのは「希望的観測」ではなく、根拠ある数字です。
たとえば、売上回復の根拠として「完成車メーカーA社からの内示書(見込み受注額)」「新規取引先B社との基本契約書」「日本自動車工業会の生産台数見通し」などを添付できると、説得力が格段に高まります。
キャッシュフロー見通し
先述のとおり、帳簿上の利益と実際の現金の流れは異なります。切削加工業では、設備投資の減価償却費が年間数百万〜数千万円にのぼることがあります。この減価償却費は現金支出を伴わない費用のため、「税引後利益 + 減価償却費」で簡易的なキャッシュフローを算出すると、帳簿上は赤字でも実際には手元にキャッシュが残っているケースが多々あります。
この点を明確に示すことで、「現金が回っているから事業は継続できる」というロジックを組み立てます。
売上回復の根拠
自動車部品加工業における売上回復の根拠としては、次のようなものが挙げられます。日本自動車工業会のデータによれば、2025年の国内生産台数は前年比で微増に転じており、認証不正の影響が一巡した完成車メーカーの生産回復が見込まれます。
具体的な受注先からの内示書や、新規取引先の開拓状況、さらには航空宇宙・医療機器・半導体装置など自動車以外の分野への受注先の多角化計画も、有力な根拠になります。
コスト改善策:4つの具体例
夜間電力の活用
24時間稼働の特性を活かし、電力使用の比率を夜間帯に寄せることで電力コストを削減する方法です。多くの電力会社では夜間(22時〜翌8時)の単価が昼間より安く設定されています。NC旋盤やマシニングセンタの稼働スケジュールを最適化し、重切削・荒加工など電力消費の大きい工程を夜間に集中させることで、電力コストを年間で10〜15%程度削減できるケースがあります。
高付加価値加工へのシフト
汎用的な量産部品だけに依存していると、完成車メーカーの価格圧力に対抗できません。5軸マシニングセンタや複合加工機を活用した精密加工・難削材加工(チタン、インコネルなど)にシフトすることで、加工単価を高めることができます。航空宇宙部品や医療機器部品など、自動車以外の高付加価値分野への展開は、売上単価の向上と取引先の分散を同時に実現できます。
取引先の分散
完成車メーカー1社への依存度が売上の50%を超えていると、減産の影響を大きく受けます。取引先を分散し、特定の1社への依存度を30%以下に抑えることが経営安定の鍵です。農業機械、建設機械、半導体製造装置、油圧機器など、自動車以外の分野にも切削加工の需要は存在します。
設備稼働率の改善
遊休設備を持つことは、固定費(減価償却費・リース料)の負担だけが発生する状態です。設備稼働率を現状の60〜70%から80〜90%に引き上げることで、固定費の単位コストが下がり、利益率が改善します。
外国人材の活用による24時間3交代制の安定運用は、稼働率改善に直結します。これは企業評価書において「だからこそ外国人の受入が必要である」という説得力のあるロジックにもなります。
通る評価書と通らない評価書!決定的な違い

通らない評価書の特徴
企業評価書を提出しても審査を通過できないケースがあります。通らない評価書には共通した問題点があります。
根拠のない売上予測。「来期は売上が20%増加する見込み」とだけ書かれていても、なぜ20%増加するのか、根拠となる受注実績・内示書・業界データがなければ説得力がありません。
業界特性を無視した記載。自動車部品加工業は、完成車メーカーの生産計画に大きく左右される受注産業です。評価書の書き手がこの業界構造を理解していないと、的外れな改善策が並ぶことになります。
キャッシュフローの説明がない。設備投資依存型の製造業では、減価償却費と実際のキャッシュフローの乖離を丁寧に説明する必要があります。損益計算書の表面だけを見ていては不十分です。
修正対応ができない。入管や外国人技能実習機構(OTIT)から追加資料の提出や修正を求められることがあります。評価書を作成した専門家が修正対応に応じてくれないと、審査が長期化し、受入が遅れます。
通る評価書のポイント
審査を通過する企業評価書には、次のような特徴があります。
債務超過の原因分析が明確。「2022年以降の電気代高騰により、年間の動力費が○○万円増加した」「完成車メーカーA社の認証不正に伴う減産により、2024年の受注額が前年比○%減少した」など、外部環境データと自社の数値を結びつけて説明しています。
改善策が具体的かつ実行可能。コスト削減額の見積もり根拠、新規受注先の開拓状況(商談段階・見積提出済み・試作品納品済みなど)、設備稼働率の改善シミュレーションなど、すべてが数値で裏付けられています。
キャッシュフローベースの説明がある。帳簿上の赤字と、実際の手元資金の流れが異なることを、具体的な数値で示しています。
外国人の受入が経営改善に寄与する理由が明記されている。「外国人材の受入により24時間操業の安定化が図れる → 設備稼働率が改善する → 固定費の単位コストが低下する → 利益率が改善する」というロジックが一貫しています。
よくあるご質問(Q&A)

Q. 債務超過だと必ず不許可になりますか
A. いいえ、必ず不許可になるわけではありません。出入国在留管理庁は、債務超過の企業に対して一律に受入を禁じてはいません。中小企業診断士等が作成した企業評価書により、改善の見通しが認められれば、許可される可能性があります。ただし、直近2期連続で売上総利益(粗利)がゼロまたはマイナスの場合は、事業の継続性が認められにくく、審査は非常に厳しくなります。
Q. 赤字でも評価書は通りますか
A. はい、赤字であっても通る可能性はあります。特に、設備投資に伴う減価償却費の増加や、一時的な外部環境(電気代高騰・完成車メーカーの減産)による赤字であれば、その原因と今後の改善計画を明確に示すことで審査を通過できるケースがあります。重要なのは、赤字の原因が構造的なものか一過性のものかという点です。
Q. 企業評価書の作成はどの専門家に依頼すべきですか
A. 制度上は中小企業診断士、公認会計士等の公的資格を持つ第三者であれば作成可能です。ただし、製造業の業界構造やコスト構造を理解し、企業評価書の作成実績が豊富な専門家に依頼することを推奨します。特に自動車部品加工業の場合は、設備投資と減価償却の関係、完成車メーカーとの取引慣行を理解した専門家が望ましいです。
Q. 企業評価書の作成にはどのくらいの時間がかかりますか
A. 必要書類(直近3期分の決算書、借入金一覧、受注明細など)が揃っていれば、ヒアリングから納品まで最短で数日〜2週間程度が目安です。ただし、改善計画の策定に追加の検討が必要な場合や、監理団体・入管からの修正指示が入った場合は、さらに時間がかかることがあります。お急ぎの場合は、早めにご相談ください。
Q. 企業評価書の費用はどのくらいですか
A. 費用は企業の規模や債務超過の状況により異なります。KICKコンサルティングでは、初回のご相談を無料で承っておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。費用のお見積もりは、ヒアリング後にご提示いたします。
まとめ(債務超過でも外国人材の受入をあきらめない)

自動車部品切削加工業が直面している債務超過の多くは、電気代の高騰、完成車メーカーの減産調整、設備投資に伴う減価償却負担という外部環境・構造的要因によるものです。こうした一過性・外的要因による債務超過であれば、企業評価書を適切に作成することで、技能実習生や特定技能外国人の受入許可を得ることは十分に可能です。
ただし、企業評価書は「書きさえすれば通る」というものではありません。債務超過に至った原因の客観的分析、具体的な改善計画の策定、キャッシュフローベースの事業継続性の証明。これらを一つひとつ積み上げていく必要があります。特に、自動車部品加工業の業界特性を理解した専門家のサポートが不可欠です。
KICKコンサルティングは、中小企業診断士として製造業の企業評価書作成を多数支援してきた実績があります。自動車部品加工業の経営改善に精通した専門家が、御社の状況に合わせた評価書の作成をサポートいたします。
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