
✓ 資金繰りが苦しい…
✓ 借入金の返済が滞りそうだ…
経営の危機に直面したとき、事業の継続を諦める必要はありません。
この状況を打開する強力な手段が「リスケ(返済条件の見直し)」です。
しかし、金融機関がリスケに応じるかどうかは、あなたの提出する「経営改善計画」の内容と、それを基にした交渉にかかっています。
この記事では、金融機関が納得し、前向きに支援を検討してくれるような経営改善計画の具体的な作り方から、計画を最大限に活かして交渉を成功させるための実践的なノウハウ、そして実際にリスケを勝ち取った成功事例まで、余すことなく解説します。
結論として、適切な経営改善計画を武器に戦略的に交渉に臨めば、厳しい資金繰りの中でもリスケを実現し、事業を再建することは十分に可能です。
この記事を読み終える頃には、あなたの会社が再び成長軌道に乗るための具体的な道筋が見え、金融機関との交渉に自信を持って臨めるようになるでしょう。
タップできる目次
1. 経営改善計画でリスケを成功させる第一歩

事業を継続する上で、資金繰りの悪化は避けられない局面の一つです。特に中小企業においては、急な売上減少や予期せぬ出費により、借入金の返済が困難になるケースも少なくありません。このような状況に陥った際、事業の継続と再生のために検討すべき最も重要な手段の一つが「リスケ(リスケジュール)」です。
リスケは、単に返済を一時的に停止するだけでなく、その後の事業再生を見据えた経営改善計画と密接に連携することで、初めてその真価を発揮します。本章では、リスケの基本的な知識から、なぜ経営が悪化したら真っ先にリスケを検討すべきなのか、その第一歩を詳しく解説します。
1.1 リスケとは何かそのメリットとデメリット
「リスケ」とは、「リスケジュール(reschedule)」の略であり、金融機関との交渉を通じて、既存の借入金の返済条件を変更することを指します。具体的には、元金返済の一時停止、返済期間の延長、利息のみの返済への切り替えなどが挙げられます。これにより、一時的に企業のキャッシュフローを改善し、資金繰りの窮迫を回避することが可能になります。
リスケは、事業を立て直すための時間稼ぎとして非常に有効な手段ですが、メリットだけでなくデメリットも存在します。これらを正確に理解した上で、慎重に判断することが求められます。
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 資金繰り | キャッシュフローが改善し、資金ショートを回避できる | 新規融資の実行が困難になる可能性が高まる |
| 事業継続 | 倒産を回避し、事業を継続するための時間的猶予が得られる | 金融機関からの監視が強化され、事業計画の進捗報告が求められる |
| 金融機関との関係 | 早期相談により、金融機関との信頼関係を維持・再構築できる | 追加担保や保証を求められるケースがある |
| 経営改善 | 抜本的な経営改善策を策定・実行するための猶予期間となる | 信用情報に影響を及ぼし、将来的な資金調達に支障が出る可能性がある |
| 信用保証協会 | 信用保証協会の保証付融資もリスケの対象となる場合がある | リスケが長期化すると、信用保証協会の保証が受けられなくなるリスクがある |
リスケは、あくまで一時的な措置であり、その間に抜本的な経営改善を図ることが不可欠です。デメリットを最小限に抑え、メリットを最大限に活かすためには、金融機関を納得させる具体的な経営改善計画の策定が不可欠となります。
1.2 経営が悪化したらまず検討すべきリスケ
「まだ大丈夫」「もう少し頑張れば」と、資金繰りの悪化を放置してしまう企業は少なくありません。しかし、経営が悪化し始めた兆候が見られたら、できるだけ早い段階でリスケを検討することが極めて重要です。なぜなら、手遅れになる前に対応することで、選択肢が広がり、より有利な条件で交渉を進められる可能性が高まるからです。
具体的に、以下のようなサインが見られたら、すぐにリスケを検討し、金融機関への相談準備を始めるべきです。
- キャッシュフローが赤字に転落し、預金残高が減少している
- 売上が継続的に減少し、利益率も低下している
- 仕入先や外注先への支払いが遅延し始めている
- 手形決済や借入金の返済に不安を感じている
- 役員報酬や従業員の給与支払いに影響が出始めている
金融機関は、企業が倒産するよりも、リスケを通じてでも返済を継続してくれることを望んでいます。そのため、「返済が困難になる前に」自ら積極的に相談を持ちかけることで、金融機関も協力的な姿勢を見せやすくなります。中小企業庁のウェブサイトでも、資金繰り支援策としてリスケジュールが挙げられており、公的な支援も期待できます。例えば、中小企業庁の「中小企業再生支援協議会」なども、リスケに関する相談に応じています。
リスケは、単なる延命措置ではなく、事業を再構築し、再び成長軌道に乗せるための重要な戦略的選択です。この機会を最大限に活かすためにも、経営改善計画の策定と並行して、早期の行動が求められます。
2. 金融機関が納得する経営改善計画の作り方

金融機関がリスケジュール(返済条件の見直し)に応じるかどうかは、提出される経営改善計画の内容にかかっています。単に「返済が苦しい」と訴えるだけでは不信感を持たれるだけです。金融機関が納得し、「この会社は計画通りに改善を進め、将来的に確実に返済を再開できる」と判断できるような、具体的かつ実現可能性の高い計画を作成することが不可欠です。
ここでは、金融機関の視点に立ち、どのような要素を盛り込み、どのような点に注意して計画を作成すべきかを解説します。
2.1 経営改善計画に盛り込むべき必須項目
金融機関は、提出された経営改善計画を詳細に審査します。以下の項目は、計画に必ず盛り込むべきであり、それぞれが明確な根拠と具体性を持っている必要があります。
| 項目 | 概要 | 金融機関の着眼点 |
|---|---|---|
| 現状分析 | 事業の現状、財務状況、市場環境、競合分析、強み・弱みなどを客観的に記述 | 企業の置かれている状況を正しく認識しているか |
| 経営課題の特定 | 現状分析に基づき、改善すべき具体的な問題点を明確化 | 問題の本質を理解し、的確に捉えているか |
| 具体的な改善策と行動計画 | 課題解決のための具体的な施策、担当者、実施時期、目標(KPI) | 計画の実行可能性、実効性、効果測定の仕組みがあるか |
| 資金計画と収支計画 | 改善策実行後の売上高、費用、利益、キャッシュフローの予測 | 計画が数字に裏付けられ、財務改善が見込めるか |
| 返済計画 | リスケ後の新たな返済スケジュール、完済までの道のり | 無理のない現実的な返済計画であり、完済の蓋然性があるか |
| 経営者の覚悟とコミットメント | 経営者の責任、自己資金投入、役員報酬カットなど、本気度を示す行動 | 経営者自身の強い意思と覚悟が感じられるか |
2.1.1 現状分析
経営改善計画の出発点となるのが、企業の現状を客観的に分析することです。単に「売上が落ちている」だけでなく、なぜ落ちているのか、何が原因なのかを深掘りします。具体的には、過去数期分の損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書といった財務諸表の分析はもちろん、事業内容、主力製品・サービスの強みと弱み、顧客層の変化、市場環境(競合他社の動向、業界トレンドなど)も詳細に記述します。金融機関は、経営者が自社の状況を正確に把握しているかを重視します。
2.1.2 経営課題の特定
現状分析の結果から、具体的な経営課題を特定します。「コストが高い」だけでは不十分で、「どの部門のどのコストが、なぜ高いのか」まで掘り下げます。例えば、「特定の仕入れ先の依存度が高く、仕入れコストが高止まりしている」「非効率な生産プロセスにより残業代がかさんでいる」「Webマーケティングの知識不足で新規顧客獲得が停滞している」など、具体的な課題を複数洗い出し、優先順位をつけて記述します。
2.1.3 具体的な改善策と行動計画
特定した経営課題に対して、「誰が、何を、いつまでに、どのように実行し、どのような成果を目指すのか」を明確にした具体的な改善策と行動計画を策定します。例えば、「仕入れ先の多角化を検討し、〇月までに新たな取引先を2社開拓する(担当:購買部A氏、目標:仕入れコスト5%削減)」のように、具体的な担当者、期限、目標値(KPI:重要業績評価指標)を盛り込みます。抽象的な表現ではなく、実行可能性が高く、効果測定が可能な計画であることが重要です。
2.1.4 資金計画と収支計画
改善策を実行した場合に、企業の財務状況がどのように変化するかを数字で示します。具体的には、今後3~5年程度の月次または年次の売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益、経常利益、そして最も重要なキャッシュフローの予測を立てます。これらの数字は、改善策の効果を織り込んだ現実的なものである必要があり、楽観的な見通しは金融機関の信頼を損ねます。予測の根拠も明確に記述し、計画の実現可能性を裏付けることが求められます。
2.1.5 返済計画
リスケジュール後の新たな返済計画は、資金計画と収支計画に基づいて作成されます。「いつから、いくらを、どのように返済していくのか」を明確に示し、無理のない現実的なスケジュールであることが重要です。金融機関は、返済が再開され、最終的に完済されるまでの道のりが明確に描かれているかを重視します。必要であれば、「いつまでに収益が改善し、通常の返済に戻れるのか」といった具体的な時期も盛り込むと良いでしょう。
2.1.6 経営者の覚悟とコミットメント
金融機関は、計画の内容だけでなく、経営者自身の「本気度」を非常に重視します。役員報酬のカット、自己資金の投入、私財提供の検討など、経営者が自ら痛みを伴う覚悟を示すことで、金融機関は「この経営者は真剣に会社を立て直そうとしている」と判断しやすくなります。口頭だけでなく、計画書に明記し、具体的な行動を示すことが、金融機関の信頼を得る上で極めて重要です。
2.2 計画作成で避けるべき落とし穴
せっかく時間をかけて経営改善計画を作成しても、金融機関の信頼を得られない、あるいは計画が頓挫してしまう原因となる「落とし穴」が存在します。これらを事前に理解し、避けることで、より質の高い計画を作成できます。
2.2.1 非現実的な目標設定
「来期には売上を倍増させる」「コストを半分にする」といった、根拠に乏しい、あるいは過去の実績や市場環境からかけ離れた楽観的な目標は、金融機関から信頼を得られません。金融機関は、計画の実現可能性を最も重視します。目標設定は、現状分析に基づき、具体的な改善策の効果を積み上げた現実的で達成可能な範囲に留めるべきです。過度な目標は、かえって経営者の見通しの甘さを露呈することになります。
2.2.2 具体性の欠如
「コスト削減に努める」「営業を強化する」といった抽象的な記述では、金融機関は何をどう改善しようとしているのか理解できません。「誰が、何を、いつまでに、どうするのか」が明確でなければ、計画は絵に描いた餅に終わります。例えば、「人件費を削減する」ではなく、「〇月までに、残業時間を〇時間削減するための業務効率化ツールを導入し、A部署の人件費を〇%削減する」といったように、具体的な行動と数値目標を盛り込むことが不可欠です。
2.2.3 客観性の欠如
経営者の主観や希望的観測のみで作成された計画は、金融機関から評価されません。市場調査データ、競合他社の動向、業界レポートなど、外部の客観的なデータや情報に基づいた分析と予測が必要です。例えば、売上予測の根拠として、過去の販売実績の推移、顧客アンケートの結果、新規事業の市場規模予測などを提示することで、計画の信頼性が高まります。第三者の視点を取り入れることも有効です。
2.2.4 進捗管理体制の不在
計画は作成して終わりではありません。計画が実行され、目標達成に向けて進んでいるかを定期的に確認し、必要に応じて修正していく「PDCAサイクル」を回すことが重要です。計画書には、「いつ、誰が、どのような指標(KPI)を用いて進捗を確認し、問題が発生した場合にどう対応するか」といった進捗管理体制を明記する必要があります。金融機関は、計画の実行力と、その後のモニタリング体制まで含めて評価します。
2.3 誰に相談すべきか専門家の活用
経営改善計画の作成は、専門的な知識と経験を要する作業です。自社だけで作成するのが難しいと感じた場合は、外部の専門家の力を借りることを強くお勧めします。専門家の支援を受けることで、計画の質が向上し、金融機関からの信頼も得やすくなります。
2.3.1 認定支援機関(経営革新等支援機関)
認定支援機関とは、中小企業庁が認定した、中小企業の経営課題解決をサポートする専門家集団です。税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士などが認定されており、国が中小企業の経営改善を支援するために設けた制度です。認定支援機関を通じて経営改善計画を策定することで、金融機関からの評価が高まるだけでなく、場合によっては信用保証協会の保証料減免や、中小企業再生支援協議会の利用など、様々なメリットを享受できる可能性があります。
2.3.2 税理士・公認会計士
税理士や公認会計士は、財務・会計の専門家です。企業の財務状況を正確に分析し、資金計画や収支計画といった数字に裏付けられた計画の作成において、その専門性を発揮します。特に、過去の財務データから将来のキャッシュフローを予測する能力は高く、金融機関が最も重視する「返済能力」を具体的に示す上で不可欠な存在です。顧問税理士がいる場合は、まず相談してみるのが良いでしょう。
2.3.3 中小企業診断士
中小企業診断士は、経営全般に関する幅広い知識と実務経験を持つ、経済産業大臣登録の国家資格者です。企業の現状分析から経営課題の特定、具体的な改善策の立案、事業計画の策定まで、一貫して支援してくれます。特に、事業戦略やマーケティング、生産管理といった非財務面からの改善策の提案に強みがあります。金融機関が納得する事業計画の策定において、非常に頼りになる存在です。
経営改善計画・リスケ相談の専門家支援
資金繰り悪化や返済条件見直しでお悩みの企業様へ。
弊社KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)では、認定経営革新等支援機関並ならびに中小企業診断士(経済産業大臣登録)として、次のご支援をしています。
01 経営改善計画の策定支援
02 金融機関交渉を見据えた計画設計
03 リスケを前提とした再生ストーリー構築
早期のご相談が、選択肢を広げます。まずは現状整理からご相談ください。
3. 経営改善計画を武器にしたリスケ交渉術

作成した経営改善計画書は、単なる書類ではありません。それは、金融機関との信頼関係を築き、リスケジュール(返済条件変更)を成功させるための強力な武器となります。この章では、その武器を最大限に活用し、交渉を有利に進めるための具体的な心構え、伝え方、そして準備について詳しく解説します。
3.1 金融機関との交渉に臨む心構え
金融機関との交渉は、感情的にならず、常に冷静かつ論理的に進めることが重要です。金融機関も営利企業であり、預金者の資産を預かる立場として、貸し倒れリスクを最小限に抑えたいと考えています。その視点を理解し、以下の心構えで臨みましょう。
| 心構え | 具体的な行動・考え方 |
|---|---|
| 誠実さと透明性 | 現状の厳しさや課題を隠さず、正直に伝えることが信頼構築の第一歩です。都合の悪い情報も開示し、質問には誠実に答えましょう。 |
| 経営者の覚悟を示す | リスケはあくまで一時的な猶予であり、根本的な解決は経営改善にかかっています。経営者自身が事業再生への強い覚悟と責任感を持っていることを明確に伝えましょう。 |
| 金融機関の立場を理解する | 金融機関は、貸付金の回収と健全な経営維持が使命です。彼らが納得できる客観的な根拠と実行可能性を示すことで、協力的な姿勢を引き出せます。 |
| 建設的な対話を意識する | 一方的に要望を伝えるのではなく、金融機関の懸念事項をヒアリングし、それに対してどのように対応していくかを対話を通じて示す姿勢が重要です。 |
| 悲観的になりすぎない | 現状を正確に認識しつつも、未来への希望と改善への強い意志を伝えることで、金融機関も支援の余地を見出しやすくなります。 |
特に、中小企業の経営者個人が保証している場合、「経営者保証に関するガイドライン」の存在も意識しましょう。これは、経営者保証の債務整理における私財処分を回避するための指針であり、金融機関との交渉において、経営者の生活再建への配慮を求める根拠となる場合があります。
3.2 経営改善計画を最大限に活かす伝え方
どんなに素晴らしい経営改善計画書を作成しても、その内容が金融機関に正しく伝わらなければ意味がありません。以下のポイントを押さえ、計画書を最大限に活かした伝え方を心がけましょう。
最も重要なのは、「なぜこの計画なら返済が可能になるのか」を論理的かつ具体的に説明することです。金融機関の担当者は、その計画が本当に実行可能か、そして最終的に債務が返済される見込みがあるかを最も重視します。
- 現状分析の明確化: なぜ資金繰りが悪化したのか、その原因を具体的に説明します。単なる業績不振ではなく、市場環境の変化、内部の問題点など、客観的な分析を提示します。
- 改善策の具体性: どのような施策を、いつまでに、誰が、どのように実行するのかを明確にします。例えば、「コスト削減」だけではなく、「〇〇部門の人件費を〇%削減」「仕入れ先を〇社見直し、〇%の原価低減」といった具体的な数値目標と行動計画を示します。
- 数値目標の実現可能性: 損益計算書や資金繰り表に基づき、計画が実現した場合の売上高、利益、キャッシュフローの改善見込みを提示します。楽観的すぎる予測ではなく、根拠に基づいた現実的な数値を提示しましょう。
- 経営者のコミットメント: 計画の実行に対する経営者自身の強い決意と、場合によっては自己資金の投入や役員報酬の削減といった具体的な行動を示すことで、金融機関の信頼を得やすくなります。
- 質疑応答への準備: 金融機関からは、計画の実行可能性やリスクに関する詳細な質問が予想されます。事前に想定される質問と回答を準備し、あらゆる疑問に即座に答えられるようにしておきましょう。
- 専門家の活用を明示: 税理士や中小企業診断士といった外部の専門家が計画作成に関与している場合、その旨を伝えることで、計画の客観性と信頼性が高まります。専門家が同席することで、より専門的な質問にも対応できます。
金融機関の担当者は、あなたの提出した計画を上司や審査部門に説明する必要があります。そのため、彼らが「上層部に説明しやすい」ような、分かりやすく整理された資料と説明を心がけることが、交渉を円滑に進める上で非常に重要です。
3.3 交渉を有利に進めるための準備
交渉は、事前の準備が成功を大きく左右します。経営改善計画書を提出するだけでなく、以下の準備を徹底することで、金融機関との交渉をより有利に進めることができます。
| 準備項目 | 具体的な内容とポイント |
|---|---|
| 必要書類の完備 | 直近の決算書(3期分程度)、試算表、資金繰り表、借入金明細(各金融機関からの借入額、金利、返済状況など)、そしてもちろん経営改善計画書を全て揃え、いつでも提示できるようにしておきましょう。追加資料を求められた際に迅速に対応できるかも重要です。 |
| 想定問答集の作成 | 金融機関から聞かれるであろう質問をリストアップし、それぞれの回答を事前に準備します。「なぜこの計画で改善できるのか」「資金繰りはどうなるのか」「経営者保証はどうするのか」「担保はどうなるのか」など、多角的な視点で質問を想定しましょう。 |
| 交渉シナリオの検討 | どこまでなら譲歩できるのか、リスケの条件として最低限譲れない点はどこかなど、事前に複数の交渉シナリオを検討しておきます。返済期間の延長、元金据置期間の有無、金利の調整など、具体的な条件を想定しましょう。 |
| 専門家の同席 | 税理士、中小企業診断士、弁護士など、経営改善計画の作成を支援した専門家に交渉に同席してもらうことで、計画の客観性と専門性をアピールできます。また、交渉の場で冷静な判断を助ける役割も期待できます。 |
| 公的支援機関の活用 | 中小企業再生支援協議会や商工会議所などの公的支援機関は、経営改善計画の策定支援や、金融機関との調整をサポートしてくれます。これらの機関の支援を受けていることを示すことで、金融機関も計画の信頼性を高く評価する傾向にあります。特に中小企業再生支援協議会は、金融機関との間に入って調整役を担ってくれるため、積極的に活用を検討しましょう。 |
| 複数金融機関への対応 | 複数の金融機関から借り入れがある場合、すべての金融機関に対して一貫した情報と計画を提示することが不可欠です。特定の金融機関にだけ有利な条件を提示することは避け、公平性を保ちましょう。 |
これらの準備を怠らず、万全の態勢で交渉に臨むことが、リスケ成功への近道となります。計画的な準備と誠実な交渉姿勢こそが、金融機関の理解と協力を引き出すための最大の武器となるのです。
4. 経営改善計画によるリスケ成功事例

ここでは、実際に経営改善計画を策定し、金融機関とのリスケ交渉を成功させた具体的な事例をご紹介します。これらの事例から、自社の状況と照らし合わせながら、成功へのヒントを見つけてみてください。
4.1 事例1 製造業の資金繰り改善
中小規模の部品製造業A社は、売上減少と設備投資負担により、運転資金が逼迫し、既存借入金の返済が困難な状況に陥っていました。
4.1.1 A社の課題と経営改善計画
A社は長年の取引先からの受注減少に加え、数年前に導入した最新設備への投資負担が重くのしかかり、キャッシュフローが大幅に悪化していました。このままでは黒字倒産の危機に瀕すると判断し、専門家の支援を受けて経営改善計画の策定に着手しました。
経営改善計画では、以下の項目に重点を置きました。
- 売上回復戦略:新規顧客開拓と既存顧客への高付加価値製品提案
- コスト削減:生産プロセスの見直しによる製造原価の低減、間接部門の効率化
- 在庫適正化:過剰在庫の削減と適正な在庫管理体制の構築
- 資金繰り計画:向こう3年間の詳細なキャッシュフロー予測と資金調達計画
特に、過剰な在庫が運転資金を圧迫していることを明確にし、その削減目標と具体的な施策を数値で示しました。また、新たな販路としてECサイトの活用も盛り込み、売上回復への具体的な道筋を描きました。
4.1.2 金融機関とのリスケ交渉と成功要因
A社は策定した経営改善計画を携え、メインバンクである地方銀行と信用保証協会に相談を持ちかけました。交渉においては、以下の点が成功に繋がりました。
- 計画の具体性:数値目標と実現可能性の高い施策が明確に示されていたこと。
- 経営者の覚悟:社長自らが計画内容を深く理解し、改善への強い意志を伝えたこと。
- 情報開示の徹底:財務状況だけでなく、今後の市場動向や自社の強み・弱みを包み隠さず開示したこと。
結果として、メインバンクはA社の計画を評価し、既存借入金の元金返済を1年間据え置き、その後の返済期間を延長するリスケジュールに応じました。信用保証協会もこれに同意し、一部の保証付き融資についても同様の条件変更が認められました。
4.1.3 リスケ成功後の成果
リスケにより、A社は一時的に資金繰りの重圧から解放され、計画に沿った経営改善に注力できるようになりました。具体的には、在庫削減によるキャッシュフロー改善、新規顧客獲得による売上回復が進み、計画策定から2年後には黒字転換を達成し、安定した経営基盤を確立することができました。この成功は、単なる延命ではなく、事業再生への大きな一歩となりました。
4.2 事例2 サービス業の事業構造転換
複数店舗を展開するサービス業B社は、市場環境の変化と競合激化により、既存事業の収益性が悪化し、債務超過寸前の状態に陥っていました。
4.2.1 B社の課題と経営改善計画
B社は、特定の地域で長年成功を収めてきましたが、近年はデジタル化の波と新たな競合の台頭により、顧客離れが深刻化していました。既存店舗への投資も回収が難しくなり、資金繰りは悪化の一途を辿っていました。
B社は、既存事業の縮小と並行して、新たな収益の柱となる新規事業への転換を盛り込んだ経営改善計画を策定しました。計画の主な内容は以下の通りです。
| 項目 | 内容 | 目標 |
|---|---|---|
| 既存事業の再編 | 不採算店舗の閉鎖、事業規模の適正化 | 固定費20%削減 |
| 新規事業の立ち上げ | オンラインサービスへの参入、新たな顧客層の開拓 | 2年以内に売上の30%を新規事業で確保 |
| マーケティング戦略 | デジタルマーケティングの強化、ブランドイメージの刷新 | 顧客獲得コストの最適化 |
| 財務改善 | キャッシュフローの健全化、債務超過の解消 | 3年以内に自己資本比率10%以上 |
この計画では、既存事業の課題を直視し、痛みを伴う事業再編と、将来性のある新規事業への大胆な投資を両立させる点が特徴でした。特に、新規事業の市場調査や収益モデルについては、綿密な分析に基づいた説得力のある内容となっていました。
4.2.2 金融機関とのリスケ交渉と成功要因
B社は、複数取引のある金融機関全てに対し、策定した経営改善計画を提示しました。交渉においては、以下の点が重要でした。
- 明確なビジョン:既存事業の現状認識と、新規事業で目指す未来のビジョンを具体的に提示したこと。
- 経営者のリーダーシップ:事業構造転換という大きな決断に対し、社長が強いリーダーシップと責任感を示したこと。
- 外部専門家の活用:中小企業診断士や弁護士といった外部専門家が計画策定と交渉を支援し、客観性と信頼性を高めたこと。
当初は既存事業の縮小に難色を示す金融機関もありましたが、新規事業の成長性とその具体的な戦略が評価され、最終的には全金融機関が既存借入金の返済条件緩和(元金の一部据え置きと返済期間延長)に応じました。一部の債務については、事業再生ADR制度の活用も視野に入れつつ、私的整理の枠組みで協議を進めることで合意に至りました。
4.2.3 リスケ成功後の成果
リスケによって得られた猶予期間を最大限に活用し、B社は計画通り不採算店舗の閉鎖と新規オンラインサービスの立ち上げを進めました。特にオンラインサービスは、計画を上回るペースで成長し、新たな顧客層を順調に獲得しました。結果として、既存事業の負の遺産を整理しつつ、新規事業を軌道に乗せることに成功。計画策定から3年後には、債務超過を解消し、V字回復を達成することができました。これは、単なる資金繰りの改善に留まらない、真の事業再生の事例と言えるでしょう。
経営改善計画・リスケ相談の専門家支援
本記事でご紹介したように、経営改善計画の内容と交渉設計次第で、リスケ後の事業再生は現実的な選択肢となります。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)では、製造業・サービス業を中心に、実行可能性を重視した経営改善計画を支援しています。
自社に当てはめた場合の
・改善余地
・金融機関との交渉論点
を整理する初回相談をご活用ください。
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5. リスケ後の経営改善を確実に進める

金融機関からリスケ(返済条件緩和)の承認を得ることは、経営再建への第一歩に過ぎません。重要なのは、その後の経営改善計画を確実に実行し、二度とリスケに陥らない強固な経営体質を築き上げることです。
この章では、リスケ後の企業が取るべき具体的な行動と、持続的な成長を実現するためのポイントを解説します。
5.1 計画実行と進捗報告の重要性
策定した経営改善計画は、単なる書面ではなく、日々の経営活動を導く羅針盤です。計画を絵に描いた餅で終わらせず、着実に実行に移すことが何よりも重要です。
5.1.1 計画実行のポイント
- 具体的な行動計画への落とし込み: 計画に盛り込まれた戦略や目標を、誰が、いつまでに、何を、どのように行うのか、具体的なタスクレベルまで細分化します。
- 責任者の明確化と期日設定: 各タスクに責任者を定め、達成目標と期日を設定することで、実行への意識を高めます。
- PDCAサイクルの確立: 計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)のサイクルを回し、進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて計画を修正します。
- 予実管理の徹底: 予算と実績を常に比較し、差異が発生した原因を分析することで、迅速な対応と軌道修正が可能になります。
5.1.2 金融機関への進捗報告
リスケの承認を得た企業は、通常、金融機関に対して定期的な進捗報告が義務付けられます。これは、金融機関が企業の改善努力を評価し、追加支援の判断材料とするためです。
報告は、企業の透明性と信頼性を高める絶好の機会と捉え、誠実かつ詳細に行うべきです。
| 報告項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 経営改善計画の進捗状況 | 売上目標達成度、コスト削減実績、新規事業の進捗など、計画の各項目に対する具体的な進捗 |
| 財務状況 | 月次試算表、資金繰り表、キャッシュフロー計算書など、最新の財務データ |
| 課題と対応策 | 計画との乖離が生じた場合の原因分析、その解決に向けた具体的な対応策 |
| 今後の見通し | 事業環境の変化や市場動向を踏まえた、今後の売上・利益・資金繰りの予測 |
報告の頻度や形式は金融機関によって異なりますが、一般的には月次または四半期ごとの書面報告と、定期的な面談が求められます。報告を怠ったり、不正確な情報を提供したりすることは、金融機関との信頼関係を損なうことになりかねません。
5.2 再びリスケに陥らないための対策
一度リスケを経験した企業にとって、最も重要なのは二度と経営危機に陥らないための恒久的な対策を講じることです。そのためには、抜本的な経営体質改善と、経営者の意識改革が不可欠です。
5.2.1 抜本的な経営体質改善
- コスト構造の見直し: 固定費(人件費、家賃など)の削減、変動費(原材料費、仕入費など)の効率的な管理を徹底し、損益分岐点を引き下げます。
- 売上向上策の継続: 新規顧客開拓、既存顧客との関係強化、商品・サービスの改善、新たな販路開拓など、多角的な視点から売上を伸ばす努力を続けます。
- キャッシュフロー経営の徹底: 売上高だけでなく、キャッシュの流れを重視する経営に転換します。資金繰り表を毎日確認し、現金の増減を常に把握します。
- 事業ポートフォリオの見直し: 不採算事業からの撤退や、成長が見込める事業への集中投資など、事業の選択と集中を進めます。
- 早期警戒体制の構築: 財務指標(自己資本比率、借入金月商倍率など)や、売上・利益の先行指標を定期的にモニタリングし、異常を早期に察知できる体制を構築します。
5.2.2 経営者の意識改革と継続的な支援活用
経営者の意識は、企業の命運を左右します。リスケを経験したことを糧に、常に危機意識を持ち、学び続ける姿勢が求められます。
- 情報収集と学習: 業界動向、競合他社の動き、新たな技術やビジネスモデルなど、常に最新情報を収集し、経営判断に活かします。
- 外部専門家との継続的な連携: 弁護士、税理士、中小企業診断士、コンサルタントなど、外部の専門家と定期的に相談し、客観的な視点からのアドバイスを受け続けることが重要です。
- 中小企業庁の支援制度活用: リスケ後の経営改善を支援する公的な制度もあります。例えば、「早期経営改善計画策定支援事業」(通称:ポストコロナ持続化補助金)などは、専門家への費用の一部を補助し、計画策定から実行までをサポートしてくれます。
- 中小企業再生支援協議会の活用: 地域の中小企業再生支援協議会は、経営改善計画の策定支援から金融機関との調整まで、中立的な立場で支援を行っています。継続的な相談窓口として活用を検討しましょう。
これらの対策を講じることで、企業は一時的な苦境を乗り越え、持続可能な成長へと転換できるでしょう。リスケは終わりではなく、新たなスタート地点です。
6. まとめ

経営が悪化した際、リスケジュールは事業を立て直すための有効な手段です。しかし、金融機関から融資条件の変更を引き出すためには、単なる嘆願ではなく、具体的で実現性の高い「経営改善計画」が不可欠であることをご理解いただけたでしょうか。
本記事で解説したように、金融機関が納得する計画には、現状分析、具体的な改善策、そして実現可能な数値目標が盛り込まれている必要があります。自社だけで抱え込まず、税理士や中小企業診断士といった専門家の知見を積極的に活用することが、成功への近道となります。
計画を武器にした交渉では、誠実な姿勢と具体的な説明が求められます。そして、リスケはあくまで一時的な猶予に過ぎません。計画実行後の進捗報告を怠らず、再び苦境に陥らないための抜本的な対策を継続することが、真の経営改善に繋がります。
経営改善計画は、単なる書類ではありません。それは、自社の未来を描き、金融機関との信頼関係を築き、事業を再生させるための羅針盤です。困難な状況に直面しても諦めず、この計画を最大限に活用し、事業再生の道を力強く歩んでいきましょう。
経営改善計画・リスケ支援のご相談窓口
リスケはゴールではなく、再生のスタートです。
適切な経営改善計画があれば
・金融機関との対話
・資金繰り安定
・事業再構築
は現実的に進められます。
KICKコンサルティング株式会社(銀座本社)では、
経営者の意思決定に寄り添いながら
実行まで見据えた支援を行っています。
資金繰りに不安を感じた段階でのご相談が重要です。
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